映画『囚われた国家』は2020年4月3日(金)よりイオンシネマほかでロードショー。
地球外からの侵略者に支配され、絶滅の危機に瀕した地球。果たして人類に未来はあるのか?
エイリアンの侵略に降伏した現代の地球で、複雑なテロの計画から決行までの経過をあふれる緊張感とともに描いた、SFサスペンス映画『囚われた国家』。
鬼才ルパート・ワイアットが製作・監督・共同脚本とマルチな才能を発揮。さらにジョン・グッドマン、アシュトン・サンダース、ヴェラ・ファーミガら人気俳優陣がキャストに名を連ねています。
映画『囚われた国家』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
CAPTIVE STATE
【監督・共同脚本】
ルパート・ワイアット
【キャスト】
ジョン・グッドマン、アシュトン・サンダース、ジョナサン・メジャース、ヴェラ・ファーミガ
【作品概要】
地球外生命体に支配された近未来のアメリカを舞台に、自由を取り戻そうと立ち上がるレジスタンスの戦いを描くSFサスペンス。『猿の惑星:創世記』を手掛けたルパート・ワイアットが製作・監督・共同脚本を担当しています。
エイリアンに従い人類を統制、不穏な動きを見せる人物を排除する組織「ザ・ローチ」の司令官マリガンを『バートン・フィンク』などのジョン・グッドマン、エイリアンの侵攻で両親を失い、レジスタンスの兄とも生き別れた主人公ガブリエル役を『ムーンライト』などのアシュトン・サンダース、レジスタンスの最高司令官ジェーン・ドゥ役を『死霊館』シリーズなどのヴェラ・ファーミガらが務めます。
映画『囚われた国家』のあらすじ
2018年、地球は地球外生命体からの侵略を受け、アフリカ系警察官であるジョン・ドラモンドの一家4人は占領された市からの脱出を試みました。ジョンと妻は、無残にもエイリアンに虐殺され、長男のラファエルと二男のガブリエルは九死に一生を得ます。
そして侵略を受けてから9年後の2027年、シカゴ。
エイリアンの攻撃に降伏を余儀なくされ、制圧されたアメリカ政府は「統治者」の操り人形となり、市民の多くは犯罪抑止と称して体にデータチップを埋め込まれ、徹底した監視社会が築かれていきました。
そんな中で貧富の差はかつてないほど拡大し街は荒廃していました。しかし、一方でこの圧政に対して反抗する者があらわれ、自由を取り戻すために秘かにレジスタンス・グループを結成。
「マッチをすり、戦争を起こせ」という合い言葉のもと「統治者」への反逆を企てます。
その挑戦はいつもことごとく失敗に終わりますが、それが繰り返される度に彼らの「統治者」への敵対心は強くなるばかり。
そしてある日、レジスタンスは市内スタジアムで開催される「統治者」による団結集会への爆弾テロを計画。このきっかけでガブリエルは、かつてレジスタンスたちの先頭に立ち死亡したと思われていたラファエルと再会します。
そして時は二人を、「統治者」とレジスタンスとの壮絶な戦いの渦に引き込んでいく…。
映画『囚われた国家』の感想と評価
メッセージを色濃くしたリアリティの追究
本作の時代背景を、まずは地球外生命体の侵略を2018年ごろ。そして物語の現在をその9年後としており、いわゆる現代の地球という設定でストーリーを描いています。
地球外生命体の管理下に置かれた政府による不都合な事実の隠蔽、メディアを巻き込んだ情報操作、そして暴走する権力の危険性といった、いまの現代社会にも浮かび上がるさまざまな問題を想起させています。
作品設定から地球外生命体という存在を、何か別の権力の存在として置き換えると、危機的な現代の一面をそのまま描いているのは誰もが気付かされることでしょう。
それは映像からもハッキリとした表現で意向が感じられます。SFサスペンス作品の体裁を成していながら、社会への警告としてのメッセージと映像のリアリティの思惑が大きく関与した作品です。
この作品のリアリティが何処にあるかと言えば、地球外生命体の宇宙船やクリーチャーよりも、むしろ現代社会そのものの姿を、ありのままに描くことに重きをおいています。
ワイヤット監督は本作の撮影をアメリカのシカゴで行い、ロケーション撮影に注力していたとインタビューで振り返っています。
つまり、あり得ないものをあたかも実際にあるように撮ることよりも、風景や人物をとらえることを意識しており、そのようなことを心がけることで、非現実なSF作品をより身近に感じさせ、自分たちが抱えている問題の当事者意識として深く感じさせています。
シカゴという都市は様々な側面を持ち、アメリカ国内のではある意味において、典型的かつ象徴的な場所とされています。
例として、近年ドラマ『シカゴ・ファイア』(2012)『シカゴ・PD』(2014)『シカゴ・メッド』(2019)という一連のシリーズ作品が発表されています。
これら作品は、この場所をまさにアメリカを象徴した場所として取り上げていることで、作品をアメリカという国の中でもこのエリアの存在感がそういった位置づけにあることがよくわかることでしょう。
その意味では、撮影のロケーションより深く現実性のリアリティーを追究しているわけです。
一方でVFX自体も抜かりなく処理されており、ユニークなデザインのクリーチャーや、ポスタービジュアルにある岩石型宇宙船やモビルスーツ型機動兵器など質感などもしっかり作りこまれていますが、実際に設定上でこれらがどのように動くのか、物語の中でどのような存在になるのかはあまりハッキリと描かれていません。
そういったあいまいな部分もヒューマンストーリーを作りあげる上で、必要な構成要素として、敢えてそのような存在としているのでしょうし、劇中で登場するものの陰影はかなり練りあげたことがうかがえます。
多面的で複雑な視点の構築
参考作品:『アルジェの戦い』(1967)
さらにこの作品の大きな特徴は、主人公を取り巻く人の関係であります。
本作でワイヤット監督は、第27回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『アルジェの戦い』(1967)、 ジャン=ピエール・メルヴィル監督の『影の軍隊』(1969)といった過去の映画作品を、手本に本作の内容を構成したことを明かしています。
この両作品からワイヤット監督が受けたインスピレーションとして認めているのは、戦争の中にあるレジスタンスの立ち位置にあります。
例えば『インデペンデンス・デイ』(1996)などの過去のSF作品では、侵略者という存在はあくまで悪しきもので、それに立ち向かっていく地球人レジスタンスは良きものというイメージとして明確に描かれる傾向が強くあります。
しかしワイヤット監督は、先述の名作2作品でこの関係はもっと複雑に、お互いの善悪がはっきりしないグレーな存在として描かれていると認識したのでしょう。
その傾向とは、グレーである存在や関係を物語で描くことで、登場する者たちをよりクローズアップするといった演出を行っているのです。
本作にはガブリエルという主人公が存在しますが、彼が何らかの機会で別のキーパーソンと接触した際に視点が切り替わり、今度はその人物を取り巻くさまざまな出来事が描かれます。
視点を単一的にするともっと白黒のハッキリした物語になりますが、そこを敢えて複雑な視点を絡ませることで、この作品が提起しようとしているメッセージの深さを表現しているのです。
まとめ
本作は、現在のことを別のハプニングを仮定して作り上げられた、ある意味パラレルワールド的な世界を描いています。
しかし物語で描かれている地球外生命体という存在を、例えば地球上の何か別の存在と置き換えてストーリーを想像してみると、近年世界で起きているさまざまな事件、事情とオーバーラップし、何かあり得ない話ではないと思えてゾッとした気分になります。
エンディングのショッキングな展開からは、そんな気持ちをさらに増長させられることでしょう。
「地球外生命体の侵略」というテーマで作られた作品は、これまでも多く発表されてきましたが、いろいろな局面を想起させるメッセージ性も強く、SF作品の中でも社会派SF問題作として『囚われた国家』挙げられるものであります。
映画『囚われた国家』は2020年4月3日(金)よりイオンシネマほかで公開されます!