西部開拓時代を舞台にタイムトラベル騒動が完結する、シリーズ完結編を紹介
1989年11月に北米公開された第2作公開から、間を置かずに1990年5月公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』。
PART2の最後に流れる、西部劇の世界を舞台にしたPART3の予告編。一体次は何が起こるのかと、SFファンの注目を集めます。
当時日本の女子の間で、人気絶頂だった俳優マイケル・J・フォックス。アメリカを含む他の国々以上に、日本で待望の作品でした。
CONTENTS
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』の作品情報
【公開】
1990年(アメリカ映画)
【原題】
Back to the Future Part III
【監督・脚本】
ロバート・ゼメキス
【キャスト】
マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、メアリー・スティーンバージェン、トーマス・F・ウィルソン、リー・トンプソン、エリザベス・シュー
【作品概要】
前作のラストでデロリアンは消滅し、ドクも姿を消してマーティは1人1955年に残されます。そこにドクからの手紙がもたらされます。ドクは1885年の世界にいました。
マーティは過去の世界にいるドクを救出し、無事元の時代に帰ることができるのか。シリーズ完結編が始まります。
マイケル・J・フォックスのマーティと、クリストファー・ロイドのドクのお馴染みコンビが活躍します。ビフを演じたトーマス・F・ウィルソンは、どんな形で西部開拓時代に登場するのか。そしてドクを愛する女性を、タイムトラベル映画の古典『タイム・アフター・タイム』(1979)のメアリー・スティーンバージェンが演じます。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』のあらすじとネタバレ
1955年11月12日、午後10時3分。あと1分でヒルバレーの街の時計塔に落雷が落ちます。
この時代のエメット・ブラウン博士、通称ドク(クリストファー・ロイド)は、1985年からやって来たマーティ・マクフライ(マイケル・J・フォックス)を未来へ帰すため、時計塔で奮闘していました。
落雷の瞬間、走り抜けたデロリアンは姿を消し、未来へのタイムトラベルに出発しました。目の前で起きた出来事を目撃して喜ぶドク。
そこにPART2で、ビフ(トーマス・F・ウィルソン)の企てを阻止し歴史を正したものの、この時代に残されたマーティがやってきます。未来に帰した(Back to the Future)はずのマーティが現れ、ドクは卒倒します…。
ここまではPART2のラストと同じでしが、マーティはドクの車で家に向かっていました。
ニュートン、ベンジャミン・フランクリン、エジソンにアインシュタイン博士の肖像が並ぶ部屋のソファーで、マーティとドクは眠ります。傍らには1985年のドクの愛犬アインシュタインに似た、少し幼い犬のコペルニクスがいます。
TVから流れる「It’s Howdy Doody Time」(当時放送の腹話術人形が登場する子供番組。この人形が、映画『トイ・ストーリー』のウッディに影響を与えた)の歌で目覚めるドク。
時間は1955年11月13日午前7時1分です。ドクは昨日のタイムトラベルの詳細をレコーダーに吹き込み、その声でマーティも目覚めます。
あの時気を失ったドクは、マーティに連れ帰られたと知らず、昨晩の出来事を喋ります。目の前のマーティの姿を見て、驚いてホバーボートを踏み、倒れかけるドク。
マーティは必死に事情を説明しますが、ドクは聞く耳を持ちません。しかし1985年のドクは、今は1885年にいると聞くと、その奇妙な話に興味を示します。
疑問を唱えたドクに、マーティは1885年のドクから受け取った手紙を差し出します。
そこにはドグが1885年で暮らしていること、落雷を受けたデロリアンはタイム回路がショートし、飛行装置も破壊され、飛べなくなったと書いてありました。
1885年のドクは鍛冶屋として暮らしつつ、修理に必要な部品を集めようと試みますが、不可欠な部品は1947年まで発明されないと知り、修理を断念します。
それでも鍛冶屋として、生計を立て暮らしていると書いていました。将来の自分が、憧れの西部開拓時代にいると知って、興奮し喜ぶ1955年のドク。
手紙には続きがあります。ドクは修理不能のデロリアンを、廃鉱となったデルガード鉱山に埋めたのです。
場所を示す同封の地図もあります。上手くいけば1955年まで、そこにデロリアンは保存されています。車内には修理の指示書が用意しました。
それに従って1955年のドクが修理すれば、マーティは1985年に帰れます。その後マーティは、タイムマシンを破壊しろとドクは指示していました。
決して自分を連れ戻しに現れるなと、厳しく書いてあります。タイムトラベルを繰り返せば、更に時空連続体を混乱させるというのです。
最後に彼はマーティに、愛犬アインシュタインの世話を頼み、歳の離れた友への別れの言葉を書いていました。自分はこんな感動的な文章が書けるんだと、妙に感心するドク。
1985年のドクを過去に送った原因は自分だと、マーティは悔やみます。それでもドクと共に、墓地の隣にある廃鉱に向かうマーティ。
入口を爆破し、廃坑の中を進む2人。ドクは地底を進む姿に、「地底旅行」などのジュール・ベルヌが書いたSF小説を読み、科学の道を志した思い出を語ります。
マーティはドクのイニシャルが記された、塞がれた坑道を見つけます。その中にデロリアンがありました。車はこの場所に、70年間と2ヶ月と13日眠っていたと話すドク。
車には修理指示書もありました。小さな電子回路が故障の原因と知り、それが日本製と知り当然だと納得する1955年のドク。未来の製品は事情が違うとマーティは説明します。
デロリアンを回収する間、ドクは自分の過去の行動が、歴史に記録されているかもしれないと思い付きます。廃鉱を出ると、隣の墓地で驚くべき墓標を見つけたマーティ。
それはドクの名が刻まれた墓でした。1885年9月7日、あの手紙を書いた1週間後にドクは死んだのです。
この墓標はドクの愛したクララという人物が贈り、ドクは80ドルの金を巡って争った、ビュフォード・タネンに背後から撃たれたと記されていました。
2人は図書館で過去の資料を調べます。ビュフォード・タネンは悪名高い早打ちガンマンで、短気な性格から”マッド・ドック”と呼ばれた無法者です。
他にウィリアム・マクフライという人物の家族の写真もありました。曽祖父の名がウィリアムだと覚えていたマーティ。
ドクの祖先はこの時代、ヒルバレーの街にいないはずです。ところが2人は、裁判所に設置する大時計の前に立つ、ドクにしか見えない人物の写真を見つけます。
写真の日付は1885年9月5日。墓に埋められた人物は、自分だとドクは認めました。
マーティはドクの死を阻止すると告げます。デロリアンが直れば1985年に行き、必ずドクを連れ戻すと決意するマーティ。
ドクは指示書に従い、真空管の部品を使いデロリアンを修理します。マーティはドクの用意した、過去の西部の街にあう衣装を着ますが、それはショーに使うような派手なものでした。
西部劇のクリント・イーストウッドはこんな格好はしない、と文句を言ってもドクに理解できません(1954年にデビューしたイーストウッドは、当時無名の端役役者)。
服装の他にトランシーバー、PART2で2015年から持ってきたホバーボート、ヒントになりそうな過去の写真などを、マーティはデロリアンに積み込みます。
タイムマシンの修理は終わりました。これから1985年に向かいますが、人目のつく場所に出現しては騒ぎになり、障害物のある場所は危険です。今回はヒルバレーの中心部から離れた、郊外のドライブインシアターでタイムトラベルを行います。
ドクは手紙の日付の1日後、1885年9月2日午前8時を目的時間に設定します。ドクが撃たれるのは7日。その間に鍛冶屋をしているドクを探し出せ、と告げる1955年のドク。
準備は終わりました。あとは下部に西部劇のインディアンの絵が描かれた、ドライブインシアターのスクリーンに向け、時速88マイル(約142㎞)で突き進むだけです。
マーティはスクリーンに突っ込むと恐れますが、その前に時空を越えるとドクは説明します。
過去に旅立つマーティに、未来で会おうとドクは告げます。それに対し、今度は過去で会うよ、と答えるマーティ。
もう空は飛べないデロリアンを、スクリーンに向け加速させるマーティ。まもなくインディアンの絵を突き破る瞬間、車は時空を越えました。
すると目の前に、武器を持ち馬に乗ったネイティブアメリカンの一団が現れ、西部劇映画のインディアンそのままの姿で、デロリアンに向け進んできます。
慌ててマーティはハンドルを切り、西部の荒野を走ります。見つけた洞穴にデロリアンを隠すと、今度は騎兵隊が現れます。マーティは騎兵隊とインディアンの追跡劇に巻き込まれました。
デロリアンにインディアンの放った矢が刺さり、燃料漏れを引き起こしていました。しかも洞穴は熊の棲みかで、僅かな荷物を手に取って逃げ出すマーティ。
用意したウエスタンブーツを捨て、ナイキのスニーカーのままマーティは走ります。彼は崖を転げ落ち、牧場の柵にぶつかり気を失います。
ベットで目覚めたマーティの前に、母ロレインそっくりの女マギー(リー・トンプソン)がいました。ここはマクフライ農場だと告げるマギー。
マーティは名を聞かれ、とっさに”クリント・イーストウッド”と答えます。彼はマギーの夫、シェイマス・マクフライ(マイケル・J・フォックス)に助けられたのです。
この夫婦のまだ赤ん坊の子供が、マーティの曽祖父ウィリアムでした。
自分の先祖に歓迎されたマーティですが、食事の肉は鉛の弾入り、出された水は泥水で戸惑います。お人好しらしいシェイマスは、マーティに日よけの帽子を与え、明日ヒルバレーの街に続く、鉄道の線路に案内すると告げます。
マギーは赤の他人を泊めることに心配しますが、マーティに抱かれたウィリアムが泣かないことからも、彼に妙な親近感を覚えるシェイマス。
翌日、マーティは線路沿いを歩いてヒルバレーに到着します。そこは西部の開拓者が切り開いた粗末な街でした。横断幕を見て、9月5日の夜に祭があると知るマーティ。
派手で間抜けな服装のマーティは、住人たちの目を引きます。建設中の裁判所の建物は、用意された大時計の取り付けを待っていました。
目当ての鍛冶屋が見つからず、酒場に入ったマーティは注目を集めます。バーテンに鍛冶屋の場所を聞いた彼に、マクフライと声をかける男がいます。
それはマーティをシェイマスと間違えた、ビフの先祖の無法者、ビュフォード・タネン(トーマス・F・ウィルソン)とその手下でした。
名を聞かれ”クリント・イーストウッド”と名乗るマーティ。もめ事でもあるのか、鍛冶屋の行方をバーテンに聞くタネン。
ようやく相手が何者か気付き、“マッド・ドッグ”と口にしたマーティ。その名を聞くと酒場にいた人々は逃げました。
タネンは、人から“マッド・ドッグ”と呼ばれることを嫌っていました。キレた彼はマーティの足元に、何発も銃弾を撃ち込んで脅します。
弾を避けるマーティの無様な動きは、やがてマイケル・ジャクソンのムーン・ウォークに代り、皆があっけにとられます。そして床板を強く踏み、勢いでタン壺をタネンに飛ばすマーティ。
中身を浴びて怒ったタネンたちは。マーティを狙い発砲します。慌てて酒場から逃げ出すマーティ。馬を操るタネンの投げ縄に捕えられ、マーティは地面を引きずられました。
建設中の裁判所の前で、首に縄をかけられ吊るされたマーティ。その縄を何やら、もの凄い照準器が付いたライフルで撃ち、切断する人物が現れます。
その人物こそPART2のラストで、1885年に飛ばされたドクでした。マーティはドクとタネンの会話から、墓標に刻まれた通り、2人は80ドルを巡り争っていると知りました。
いつか必ず背中に弾を撃ち込むとドクを脅し、去ってゆくタネンと手下たち。
ドクはなぜ指示に従って、大人しく1985年に帰らなかったとマーティを責めます。そして、また会えてて嬉しいとマーティに告げるドク。2人は固く抱き合います。
指示に従わず1885年に現れた理由を知らせるため、マーティは1955年で見つけた、ドクの墓の写真を見せます。ドクは自分が9月7日に死ぬと知りますが、それ以上の驚きは、自分を愛したクララなど知らないことでした。
ドクは未来から来た自分が、過去の人物と関係を持てば、時空連続体を破壊しかねない、女性を愛するなど論外だと言い張ります。
そこに町長が現れ、明日学校の新任女教師が到着するので、約束通り迎えにいって欲しいと頼みます。その教師の名は、クララ・クレイトンでした。
この人物こそ最愛の人、クララでしょうか。冷やかすマーティに、科学者たる自分が一目惚れなどする訳ない、と否定するドク。
ともあれ、今から2人で元の時代に帰れば、クララにも会わず万事解決します。出発に向け荷物をまとめる2人。
しかしマーティから、デロリアンの燃料管が破損したと聞かされ、ドクは表情を変えます。この時代にガソリンはありません。デロリアンを6頭の馬に曳かせても、タイムトラベルに必要な時速88マイルに遠く及びません。
代わりに強い酒を燃料にしても無駄で、かえって故障させる始末。万策尽きたかに思えますが、ドクの目に蒸気機関車の姿が飛び込んできます。
駅を訪ねた2人は、機関車の運転手から何も牽引せず、平坦な線路を全力で走れば、時速88マイルで走るのも可能かも、と聞きました。
次に汽車が現れるのは月曜日、9月7日の午前8時。その時に汽車を平坦な地形の、引き込み線に誘導して、デロリアンを押して走らせようと考えるドク。
地図を見て計画を練ります。ドクは線路の行先クレイトン峡谷が、この時代の地図ではショナッシュ峡谷と表記されていると気付きます。
2人が峡谷を訪れると、鉄橋は完成しておらず線路は崖に突き出した状態で途切れています。マーティは諦めますが、ドクはその前に時速88マイルに到達すれば、未来には完成している線路の上を走るはずと考えました。
そこで暴走する馬車を目撃するドク。2人は馬を駆って助けに向かい、ドクは馬車が崖に転落する寸前、乗っていた女性を助け出します。
助けた女性から礼を言われ、その顔を見て息を飲むドク。その女性はクララ・クレイトン(メアリー・スティーンバージェン)と名乗りました。
2人は彼女をヒルバレーの町に送り届けます。ドクとの出会いは運命だと感謝し、彼を科学者と知ると、さらに興味を示すクララ。
ドクが彼女に恋したと悟るマーティ。しかし彼は、彼女こそクレイトン峡谷の名の由来と気付きます。100年前に峡谷に落ちて死んだ教師の名が由来でした。
ドクは気付きます。自分が彼女を助けた行為は、峡谷に落ちて死ぬはずの、女性の運命を変えたのかもしれません。
タイムマシンは問題ばかり起こすと、改めて悟るドク。彼はこの時代で死なず、マーティと共に1985年に帰ることができるのでしょうか…。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』の感想と評価
参考映像:デレビ朝日開局35周年特別番組「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」(淀川長治解説)
今や不朽の3部作とされている、「バック・トゥ・ザ・フューチャー(以下BTTF)」シリーズ。PART2の紹介記事で、「ドラえもん」的な内容が、特に日本で愛されたと紹介しました。
一方アメリカでは、1955年の古き良きアメリカを描いた第1作が、絶大な支持を得ています。ならば更に懐かしい西部劇の時代を描いたPART3も、人気がありそうに思われます。
ところが劇場公開された際、全世界だけでなくアメリカでも、PART3が一番少ない興行成績を記録しました。しかし日本でのPART3の興行成績は、PART2をやや下回るものの、第1作を圧倒する成績を残しています。
第1作はともかく、シリーズ3部作として見れば当時、日本人が一番「BTTF」を愛していた、と言っても過言ではありません。
意外にもPART3がアメリカで人気が伸び悩んだ理由、しかしその後シリーズは忘れ去られることなく、世界で人気を伸ばし、今も愛されている理由を解説しましょう。
西部劇映画を作ることがリスクだった時代
西部劇と言えばアメリカ人の憧れです。PART3でデロリアンが1985年に現れるシーンに、インディアンと騎兵隊が登場するのは、名作映画『駅馬車』(1939)へのオマージュで、西部劇映画でお馴染みのロケ地で撮影されました。
マーティは偽名に”クリント・イーストウッド”の名を使用するなど、西部劇映画への憧れを込めたアイテムが数多く登場します。しかし当時、アメリカで西部劇は扱いにくい存在でした。
60~70年代(この3部作が描かなかった時代です)、公民権運動とベトナム反戦運動の影響を受け、インディアンを悪役にしたかつての西部劇は、批判の対象となります。
ハリウッドでもネイティブアメリカン支持が叫ばれ、インディアンの虐殺を描いた映画などが登場し、西部開拓時代の負の側面が強調された時代でした。
そんな風潮がやや落ち着いた時期に、ロバート・ゼメキスと脚本のボブ・ゲイルが、自分たちが子供の頃慣れ親しんだ、西部劇映画への憧れを込めて作ったのがPART3です。過去の名作へのこだわりも、そんな背景から生まれました。
その一方で、ネイティブアメリカンの呼び名が広まった時代に、「インディアン」と叫ぶマーティ、白人だらけの西部の町…。今見るとドキっとするような描写もあります。
これは昔懐かしい西部劇映画の再現であって、差別的な意図はありません。この作品に対し当時、猛烈な批判が浴びせられた訳でもありません。
奇しくもPART3公開と同じ年、ネイティブアメリカンに寄り添った映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)が公開され、アカデミー賞12部門ノミネート、7部門受賞の快挙を遂げています。
そんな時期に本作を娯楽として楽しむのは、アメリカ人にはややハードルが高いものでした。そんな背景をあまり意識せずに済んだ、日本人観客の方が楽しめたのです。
ハリウッドで西部劇が新たな形で復活するには、PART3でマーティが偽名に使った人物、クリント・イーストウッド主演・監督作品、『許されざる者』(1992)の登場を待たねばなりませんでした。
シリーズを育て上げた男ボブ・ゲイル
参考映像:USJ「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」(2016年5月31日クローズ)
シリーズ完結後、監督のロバート・ゼメキスは様々な映画を手がけ、革新的な映像技術にこだわった作品を発表するなど、活躍を続けています。
しかし彼の大学時代の同級生で、脚本執筆のパートナーであったボブ・ゲイルは、その後映画の世界では大きな活躍をしていません。
3部作として楽しめ、見るたびに新たな発見がある「BTTF」シリーズは、ビデオが普及した時代、繰り返し見て楽しむのに最適な作品でした。
こうして新たなファンを獲得したこのシリーズを、守り育てることにボブ・ゲイルは尽力します。「BTTF」のTVアニメやコミックシリーズ、ビデオゲームの製作を監修します。
2020年3月11日にイギリスで初演された、ミュージカル「BTTF」にも関わっています。しかし初演から1週間もたたずに、コロナ感染症対策で休演になったのは、残念な出来事でした…。
ともあれボブ・ゲイルは、ゼメキス監督と共にこのドル箱シリーズの安易な続編製作を許さず、そのイメージを守って育て続けています。その姿は「スター・ウォーズ」シリーズを大切に扱った、ジョージ・ルーカスに重なるものがあります。
世界のユニバーサル・スタジオ・テーマパークに存在した、「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」はタイムトラベルの世界観を広げ、子供にも楽しめるアトラクションでした。
ボブ・ゲイルによって新たな世代にも広まった「BTTF」シリーズ。それはタイムトラベル・パラドックス、多元宇宙といったSF設定を世界に広め、新たなクリエイターに刺激を与えました。
今や古典的とも言える「BTTF」のタイムパラドックス描写。それを更に発展させた、映画「アベンジャーズ」シリーズを含むマーベル映画など、こういったテーマのSF映画は世界中で、当たり前のように受け入れられています。
それを世界に広めた要因の1つが「BTTF」シリーズであり、その功績者こそボブ・ゲイルです。
まとめ
見事にシリーズを完結させた『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』。PART2の紹介でこの作品は日本人にとって、「ドラえもん」のような存在だと紹介しました。
ところで「ドラえもん」の設定には、誰もが気付く大きな問題があります。それは未来からのび太を助けにやってきたドラえもんが、便利なひみつ道具を渡すことで、かえってのび太を怠け者にしていることです。
作者の藤子・F・不二雄は、それに気付いていました。のび太を成長させるのは、実は便利な道具ではなく、長編漫画や劇場映画に代表される「冒険」です。
第1作のまま終わっていれば、実はマーティは堕落していたとPART2の冒頭で説明します。彼はドラえもん=ドクと一緒に時空を超える冒険を経験し、1作目の父ジョージと同様に、マーティはPART3で成長を遂げたのです。
「BTTF」を「ドラえもん」に例えてきましたが、ここで多くの人が間違えそうなクイズを出させて頂きます。のび太を苛めるジャイアンのように、マーティを苛める人物は誰でしょうか?
あの有名なビフではありません。彼が苛めるのは、マーティの父ジョージです。マーティに絡み、彼の人生を歪めたのは、PART2・3に登場するニードルスです。
このニードルスを演じているのが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのオリジナル・メンバーのベーシスト、”フリー”とも呼ばれるマイケル・ピーター・バルザリーです。
いかにもジャイアン風の容貌をしていますが、彼も幼少時代はいじめられっ子でした。”フリー(Flea=ノミ)”の由来はステージを飛び回る姿とも、落ち着きのなかった幼少時代の振る舞いから付いた、あだ名とも言われています。
ジャイアン的なキャラを演じたのは、実は元いじめられっ子で、仲間との出会いで人生が変わり、世界的ロックスターに成長した人物でした。映画のマーティの姿に重ねると、心憎いエピソードではないでしょうか。
ところで、予想を超える大ヒットを記録した映画『STAND BY ME ドラえもん』(2014)。私はあの映画を観た大人たちの大多数が、「BTTF」のファンであると睨んでいます。
「ドラえもん」と「BTTF」、考えれば考えるほど似ていませんか?のび太も無駄に射撃の名手です。マーティがあやとりの名人だったら…もう完璧ですよ。