無垢な魂は、悲しみの羽をもつ。
残酷な世界で、愛を乞う叫びに心震えるドキュメンタリー。
イランの少女更生施設を舞台に、強盗、殺人、薬物、売春といった罪を犯した少女たちの物語に光をあて、第66回ベルリン国際映画祭 アムネスティ国際映画賞を受賞したドキュメンタリー映画『少女は夜明けに夢をみる』(原題:Royahaye Dame Sobh/英題:Starless Dreams)の劇場公開が決定しました。
2019年11月2日(土)より岩波ホールほか、全国順次ロードショーとなる本作。
作品の詳細や、公開に先駆けて寄せられたコメントをご紹介致します。
CONTENTS
映画『少女は夜明けに夢をみる』について
監督はイランを代表するドキュメンタリー作家のメヘルダード・オスコウイ。撮影許可に7年もの歳月をかけ、施設で過ごす少女たちの繊細な内面に丁寧に分け入り、その本源的な“痛み”を深い共感をこめて描き出します。
社会と断絶された空間で、無邪気な表情をみせる少女たち。
しかし、自分の犯した罪と、人生の悲しみを思う時、少女たちの瞳からは自然と涙が溢れ出します。
家族に裏切られ、社会に絶望してもなお、家族の愛を求め、社会で生きていかざるをえない少女たち。
「見えない存在(インビジブルピープル)」として疎外されてきた少女たちとオスコウイ監督が築き上げた強固な信頼関係と親密な時間から生まれた崇高なドキュメンタリーです。
映画『少女は夜明けに夢をみる』へのコメント
公開に先駆け、本作に寄せられたコメントをご紹介します。
寮美千子(作家・奈良少年刑務所元講師)
誰にも助けてもらえない「ISOLATE(孤独)」な状態が、 少女たちを犯罪に追い詰めている。
世界中、きっとどこでも同じだ。犯罪の陰には悲しみがある。
そのことを知ってほしい。
鈴木大介(文筆業)
更生・矯正が必要なのは少女たちなのか?それが必要なのは、彼女らを「正」ではない行為に追いやった環境や社会ではないのか。
傷つき道を失った少女たちに、大人がしてやれるのは「あなたは悪くない。悪かったのはあなたではなかった」と、繰り返し語りかけてあげることでしかない。日本から7500km離れたイランで撮られたこのドキュメンタリーを通じて、改めてそのことを痛感した。
杉山春(ルポライター)
社会構造のひずみは、最も立場の弱い者の上に現れる。日本でもイランでも。
この作品は、どこにでも社会の歪みにより深い裂け目が広がっていること。
そして、その裂け目を繕おうと努力している人たちがいることを伝えてくれる。
映画『少女は夜明けに夢をみる』の作品情報
【日本公開】
2019年(イラン映画)
【原題】
Royahaye Dame Sobh(英題:Starless Dreams)
【監督】
メヘルダード・オスコウイ
映画『少女は夜明けに夢をみる』のあらすじ
雪が黒い土や建物を覆う、クリスマス前の少女更生施設。
雪が降り積もり、無邪気に雪合戦に興じる、あどけない少女たち。
その表情は、ここが高い塀に囲まれ、厳重な管理下におかれた更生施設であることを感じさせないほど瑞々しく見えます。
やがて少女たちが施設に入ることになった背景が、彼女たち自身の言葉によって、解き明かされていきます。
むごい虐待に耐えかねて、父親を殺してしまった少女。叔父の性的虐待からのがれて、家出をし、生きるために犯罪を繰り返す少女。幼くして母となり、その夫に強要され、ドラッグの売人となった少女…。
義父や叔父による性的虐待にさいなまれ、あるいはクスリよって崩壊した家庭は、少女たちにとって安息の場所ではありえないんです。
映画『少女は夜明けに夢をみる』の映画祭受賞歴
世界各国の映画祭に出品され、高い評価を得ている本作。
その輝かしい受賞歴の一部をご紹介します。
・第66回ベルリン国際映画祭(ドイツ)/ジェネレーション部門 アムネスティ国際映画賞
・第13回トゥルーフォルス映画祭(アメリカ)/トゥルービジョンアワード
・第19回フルフレームドキュメンタリー映画祭(アメリカ)/グランプリ、インスピレーションアワード
・第13回クロノグラフ国際ドキュメンタリー映画祭(モルドバ)/グランプリ、女性特別賞、撮影賞
・第4回シネマインスニーカーズ映画祭(ポーランド)/スペシャルメンション
・ニューディレクターズ映画祭(ポルトガル)/観客賞、名誉賞
・第10回アジア太平洋映画賞/ベストドキュメンタリー賞
まとめ
ストリートにも家庭にも自らの居場所がない少女たち。
少女たちの罪の深さと、人間の罪深さとを、その心の嗚咽が問いかけます。
イランの少女更生施設を舞台に、罪を犯した少女たちの物語に光をあてたドキュメンタリー映画『少女は夜明けに夢をみる』は2019年11月2日(土)より岩波ホールほか、全国順次ロードショーです。