Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

新作映画ニュース

Entry 2019/08/28
Update

イラン映画『少女は夜明けに夢をみる』あらすじ。上映公開日が11月2日に決定した少女更生施設のドキュメンタリー

  • Writer :
  • 石井夏子

無垢な魂は、悲しみの羽をもつ。
残酷な世界で、愛を乞う叫びに心震えるドキュメンタリー。

イランの少女更生施設を舞台に、強盗、殺人、薬物、売春といった罪を犯した少女たちの物語に光をあて、第66回ベルリン国際映画祭 アムネスティ国際映画賞を受賞したドキュメンタリー映画『少女は夜明けに夢をみる』(原題:Royahaye Dame Sobh/英題:Starless Dreams)の劇場公開が決定しました。

2019年11月2日(土)より岩波ホールほか、全国順次ロードショーとなる本作。

作品の詳細や、公開に先駆けて寄せられたコメントをご紹介致します。

映画『少女は夜明けに夢をみる』について

©Oskouei Film Production

監督はイランを代表するドキュメンタリー作家のメヘルダード・オスコウイ。撮影許可に7年もの歳月をかけ、施設で過ごす少女たちの繊細な内面に丁寧に分け入り、その本源的な“痛み”を深い共感をこめて描き出します。

社会と断絶された空間で、無邪気な表情をみせる少女たち。

しかし、自分の犯した罪と、人生の悲しみを思う時、少女たちの瞳からは自然と涙が溢れ出します。

家族に裏切られ、社会に絶望してもなお、家族の愛を求め、社会で生きていかざるをえない少女たち。

「見えない存在(インビジブルピープル)」として疎外されてきた少女たちとオスコウイ監督が築き上げた強固な信頼関係と親密な時間から生まれた崇高なドキュメンタリーです。

映画『少女は夜明けに夢をみる』へのコメント

©Oskouei Film Production

公開に先駆け、本作に寄せられたコメントをご紹介します。

寮美千子(作家・奈良少年刑務所元講師)

誰にも助けてもらえない「ISOLATE(孤独)」な状態が、 少女たちを犯罪に追い詰めている。
世界中、きっとどこでも同じだ。犯罪の陰には悲しみがある。
そのことを知ってほしい。

鈴木大介(文筆業)

更生・矯正が必要なのは少女たちなのか?それが必要なのは、彼女らを「正」ではない行為に追いやった環境や社会ではないのか。

傷つき道を失った少女たちに、大人がしてやれるのは「あなたは悪くない。悪かったのはあなたではなかった」と、繰り返し語りかけてあげることでしかない。日本から7500km離れたイランで撮られたこのドキュメンタリーを通じて、改めてそのことを痛感した。

杉山春(ルポライター)

社会構造のひずみは、最も立場の弱い者の上に現れる。日本でもイランでも。
この作品は、どこにでも社会の歪みにより深い裂け目が広がっていること。
そして、その裂け目を繕おうと努力している人たちがいることを伝えてくれる。

映画『少女は夜明けに夢をみる』の作品情報

©Oskouei Film Production

【日本公開】
2019年(イラン映画)

【原題】
Royahaye Dame Sobh(英題:Starless Dreams)

【監督】
メヘルダード・オスコウイ

映画『少女は夜明けに夢をみる』のあらすじ

©Oskouei Film Production

雪が黒い土や建物を覆う、クリスマス前の少女更生施設。

雪が降り積もり、無邪気に雪合戦に興じる、あどけない少女たち。

その表情は、ここが高い塀に囲まれ、厳重な管理下におかれた更生施設であることを感じさせないほど瑞々しく見えます。

やがて少女たちが施設に入ることになった背景が、彼女たち自身の言葉によって、解き明かされていきます。

むごい虐待に耐えかねて、父親を殺してしまった少女。叔父の性的虐待からのがれて、家出をし、生きるために犯罪を繰り返す少女。幼くして母となり、その夫に強要され、ドラッグの売人となった少女…。

義父や叔父による性的虐待にさいなまれ、あるいはクスリよって崩壊した家庭は、少女たちにとって安息の場所ではありえないんです。

映画『少女は夜明けに夢をみる』の映画祭受賞歴


©Oskouei Film Production

世界各国の映画祭に出品され、高い評価を得ている本作。

その輝かしい受賞歴の一部をご紹介します。

第66回ベルリン国際映画祭(ドイツ)/ジェネレーション部門 アムネスティ国際映画賞
第13回トゥルーフォルス映画祭(アメリカ)/トゥルービジョンアワード
第19回フルフレームドキュメンタリー映画祭(アメリカ)/グランプリ、インスピレーションアワード
第13回クロノグラフ国際ドキュメンタリー映画祭(モルドバ)/グランプリ、女性特別賞、撮影賞
第4回シネマインスニーカーズ映画祭(ポーランド)/スペシャルメンション
ニューディレクターズ映画祭(ポルトガル)/観客賞、名誉賞
第10回アジア太平洋映画賞ベストドキュメンタリー賞

まとめ


©Oskouei Film Production

ストリートにも家庭にも自らの居場所がない少女たち。

少女たちの罪の深さと、人間の罪深さとを、その心の嗚咽が問いかけます

イランの少女更生施設を舞台に、罪を犯した少女たちの物語に光をあてたドキュメンタリー映画『少女は夜明けに夢をみる』は2019年11月2日(土)より岩波ホールほか、全国順次ロードショーです。

©Oskouei Film Production

関連記事

新作映画ニュース

映画『ストックホルム・ケース』あらすじ/キャスト/公開日。実話の強盗事件をイーサン・ホーク主演で描いたエンタメ作品!

イーサン・ホーク×『ブルーに生まれついて』監督最新作! 俳優のみならず脚本家、映画監督、演出家としても多方面で活躍するイーサン・ホーク。 そんな彼が伝説のトランペット奏者チェット・ベイカーを演じスマッ …

新作映画ニュース

オーストラリアで人気の青春サーフィン文学を映画化!『ブレス あの波の向こうへ』の予告編が解禁

オーストラリアで10週連続TOP10入りの大ヒットを記録した青春サーフィン映画! © 2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions …

新作映画ニュース

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』あらすじとキャスト。公開日は2020年1月24日と決定したミステリー

「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ出版秘話に基づく本格ミステリーが誕生 大ベストセラーの原稿をめぐり、機密に集められた各国の翻訳家たち。思いもよらない展開にハラハラすること間違いなしのミステリー映画『9 …

新作映画ニュース

『写真の女』公開日/予告動画。東京国際映画祭でのキャストと監督のコメントも紹介!

映画『写真の女』予告編解禁! 第33回東京国際映画祭での上映イベントも実施。 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭での“SKIPシティアワード”受賞をはじめとする世界の映画祭でのアワード15冠を果たし、さ …

新作映画ニュース

フランクデュボスクのコメディアン資質が監督業にも。映画『パリ、嘘つきな恋』本編映像解禁

本国フランスで動員200万人超、NO.1大ヒット! フランス全土が恋をした、とびきり楽しくて、心ときめくラブストーリー『パリ、嘘つきな恋』が2019年5月24日(金)から新宿ピカデリーほかで全国公開さ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学