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Entry 2020/07/29
Update

映画『コントラ』が大林宣彦監督の名を冠した大林賞受賞。ジャパン・カッツ2020にてアンシュル・チョウハン監督がまたしても快挙!

  • Writer :
  • 石井夏子

ネクストジェネレーション・コンペティション部門の大林賞受賞作品決定。
アンシュル・チョウハン監督、劇場公開第二作目の『コントラ』に栄冠!

ジャパン・ソサエティー(JS)映画部が主催する北米最大の日本映画祭『JAPAN CUTS〜ジャパン・カッツ〜』。

2020年7月17日(金)より7月30日(木)まで(米国東部夏時間)開催されている、第14回『JAPAN CUTS〜ジャパン・カッツ〜』では、若手の映像作家の活動を後押しすることを目的に、ネクストジェネレーション・コンペティション部門として大林賞を新設しました。

故・大林宣彦監督(1938~2020年)の日本映画界での偉業を称えて名を冠した「大林賞」(Obayashi rize Prize)は、本ネクストジェネレーション部門において紹介している厳選した長編7作品の中から、映画関係者の審査員が総合的な観点から、将来性と才能を発揮している最も優れた作品を選出します。

記念すべき第一回大林賞は、アンシュル・チョウハン監督の作品『コントラ』に贈られることとなりました。

「大林賞」審査員のコメント

Kontora (C) 2019 KOWATANDA FILMS

ネクストジェネレーション部門「大林賞」の審査員を務めたのは、『0.5 ミリ』(2014)の安藤桃子監督映像キュレーターのジュリアン・ロス氏、そしてフリーストーンプロダクションの創業者の高松美由紀氏

『コントラ』受賞に際し、3名の審査員は次のようにコメントを贈りました。

「映画業界が危機的な変化に直面している今、ネクストジェネレーション・コンペティション部門は我々、審査員に日本映画界の未来を見据えるという意欲をかき立てました。受賞作品は、過去の重さと、それに一人ではなく、一緒に取り組む人たちの責任を探求しています。過去に根ざした作品でありながら、登場人物の少女が成長する過程の多感な状況をきめ細かく描かれていることと、少女がいかにして道導となったかに心を打たれました。この作品の監督は、映画という枠の中で彼独自の世界を創り上げるべく、日本を見ることができる双眼鏡を持ち続けることができる監督だと信じています。猛スピードで変化し、進化する。奇しくも最も大和魂を感じる一本、そしてこれからの未来に最も期待を覚えさせたのは後ろ向きに走る男を主人公にした映画だった。2020年日本映画祭ジャパン・カッツの第1回大林賞はアンシュル・チョウハン監督の『コントラ』に贈ります。」

In this year when the film industry faces irreversible change, the Next Generation competition challenged us as a jury to look to the future. The film we chose explores the weight of the past and our responsibility to engage with it not alone, but together. For a film rooted in the past, we were struck by its sensitive portrayal of a teenage girl, and how she became our guide. We believe in this director’s ability to look Japan straight in the eyes, all while using his own special binoculars.
The ‘next generation’ is something that never stops evolving. Curiously, it was the film that features a man running backwards that got us most excited for the future to come. The 2020 Obayashi Prize of Japan Cuts goes to Kontora by Anshul Chauhan.

ネクストジェネレーション・コンペティション部門について

動画:大林宣彦監督作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』(2020)

2020年より新しく設けられたネクスト・ジェネレーション・コンペティション部門では、日本映画の未来を垣間見ることができる次世代の若手監督の自主制作によるストーリー性の高い長編作品を7作品を厳選して上映

また、さらに新しく設けた故・大林宣彦監督(1938~2020年)の日本映画界での偉業を称えて名を冠した「大林賞」では、映画関係者の審査員が最も優れた作品を本ネクスト・ジェネレーション部門の中から1作品を選出

第1回目となる今回は、大林賞を受賞したアンシュル・チョウハン監督の『コントラ』の他に三澤拓哉監督の『ある殺人、落葉のころに』、鈴木冴監督の『神様のいるところ』、片山享監督の『轟音』壷井濯監 督の『サクリファイス』 、山田佳奈監督の『タイトル、拒絶』、そして中川奈月監督の『夜のそと』など、若手監督たちの厳選した7作品で構成されています。

大林監督は次の言葉を残されています。

「笑顔と、生きること、そして、今日より少し良い明日をたぐり寄せるために、ぼくは映画を拵えてきた。だから、ぼくの続きはみんながやってね。」

この言葉の通り「大林賞」は、独創的な宇宙感、創造性を特徴とする先駆的な映画人の大林宣彦監督に敬意を表して、次世代の映画作家に贈られます。

大林賞は、映画業界の専門家から構成される審査員により、総合的な観点から最も将来性と才能を発揮している若手の映像作家の活動を後押しすることを目的とし、本映画祭のネクスト・ジェネレーション部門で最も優秀な独立系長編映画監督に贈られます。

大林監督の長女で料理家、映画監督の大林千茱萸氏は、下記のように述べています。

「父が映画作家として歩んできた道がこうして、また新たな未来の作家さんたちへと受け継いで戴けること、たいへん光栄であり、誇らしい限りです。父と共に映画を作り続けてきたプロデューサー恭子さんも、涙ぐみながら『たいへん嬉しいです、感謝します』と、皆さまに伝えて欲しいとのことでした。」

映画祭『JAPAN CUTS〜ジャパン・カッツ〜』とは?

Kontora (C) 2019 KOWATANDA FILMS

ジャパン・ソサエティー(JS)夏の映画祭『JAPAN CUTS〜ジャパン・カッツ〜』は2007年の開始以来、累計でおおよそ7万人以上の観客を動員し、全米初公開作品を多く含む300本以上の邦画を上映してきました。

今までに、『告白』、『モテキ』『キツツキと雨』『フィッシュストーリー』『かもめ食堂』『愛のむきだし』『殯の森』『モンスターズクラブ』『ゆれる』『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』『春との旅』、『舟を編む』など、バラエティに富んだ作品を上映し、パネルディスカッションや、上映後のパーティー、映画監督や俳優達との質疑応答セッションも開催。

過去のジャパン・カッツには、樹木希林、役所広司、長澤まさみ、二階堂ふみ、北村一輝、安藤サクラ、オダギリジョー、斎藤工、小橋賢児、入江悠、藤原敏史、松井久子、藤原竜也、田口トモロヲ、豊田利晃、金子修介、河瀨直美、熊切和嘉、西川美和、 荻上直子、園子温、高橋玄、若松孝二、矢崎仁司、行定勲、瀬田なつき、山本政志、蒼井そら、石橋義正、小林政広、エリック・クー、原一男、佐藤信介らが参加・登場しています。

2020年は、本映画祭を開始以来初めて、オンライン上で開催され、ジャパン・ソサエティーの劇場内で開催されない初めての年。

JS映画部は、JSの芸術・文化プログラムの一環として、伝統的な作品から独立系の作品まで、多様で厳選された映画の数々を上映してきました。

また巨匠作品の回顧上映や、テーマに沿った映画シリーズ、全米初公開作品のプレミアも行っています。

ジャパン・ソサエティー(JS)について

ジャパン・ソサエティー(JS)は、1907年(明治40年)にニューヨークに設立された米国の民間非営利団体です。

全米最大の 米交流団体として、両国間の相互理解と友好関係を促進するため、多岐に渡る活動を1世紀以上にわたって続けています。

その活動範囲は、政治・経済、芸術・文化、日本語教育など幅広い分野にまたがる各種事業や人物交流などを通じて、グローバルな視点から日本理解を促すと同時に、日米関係を深く考察する機会を提供

今日、JSは日米の個人・法人会員をはじめ、政財界のリーダー、 アーティスト、教育関係者、学生など様々な参加者を対象に年間約200件のプログラムを提供しています。

映画『コントラ』の作品情報

Kontora (C) 2019 KOWATANDA FILMS

【製作】
2019年(日本映画)

【劇場公開】
2021年

【監督】
アンシュル・チョウハン(Anshul CHAUHAN)

【キャスト】
円井わん、間瀬英正、山田太一、小島聖良、清水拓蔵

【あらすじ】
第二次世界大戦時に記された祖父の日記を辿って、ソラ(円井わん)は不可思議な宝の探索を始めます。

その頃、無言で後ろ向きに歩くホームレス男(間瀬英正)が、ソラの住む街へと迷い込みました。

もしかしたら男は、ソラと彼女の父親との関係を溶かす触媒となり得るのかもしれません…。

映画『コントラ』監督アンシュル・チョウハンのプロフィール

画像:アンシュル・チョウハン監督


(C)田中舘裕介

映画『コントラ』の監督を務めたアンシュル・チョウハン(Anshul CHAUHAN) は、1986年に北インドで生まれました。

陸軍士官学校に通い、大学を卒業して芸術学部を卒業後、2006年よりアニメーターとして活動を開始。

2011年に拠点を東京に移し、ポリゴン・ピクチュアズに採用されます。

『トロン 蜂起』『トランスフォーマー』『ファイナルファンタジー15』『ファイナルファンタジー15』『FF7 リメイク』『ガンツ:O』などの大型プロジェクトを数多く手がけてきました。

アニメーターとして働く傍ら、監督としての情熱を追求し、これまでに『東京不穏詩(Bad Poetry Tokyo)』と『コントラ(Kontora)』の2作品を監督し、国際的な映画祭で数々の賞を受賞し、高い評価を得ています。

長編劇場デビュー作となる、2019年1月に公開された『東京不穏詩』では、ブリュッセル・インディぺンデント映画祭ではグランプリを受賞。

本作『コントラ』は、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭でグランプリ受賞と、いま日本で最も波に乗ったインディーズ映画の旗手といえます。

まとめ

Kontora (C) 2019 KOWATANDA FILMS

第15回大阪アジアン映画祭では最優秀男優賞を間瀬英正が受賞し、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭では、日本映画初の最優秀賞と最優秀音楽賞を受賞したアンシュル・チョウハン監督作『コントラ』。

第14回『JAPAN CUTS〜ジャパン・カッツ〜』では、故・大林宣彦監督の名を冠した「大林賞」を受賞しました。

『コントラ』の劇場公開は、2021年春。新宿K’sシネマほか全国公開を予定しています。




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