文月悠光(原案)×東海林毅(監督)×イシヅカユウ(主演)
いましなやかに泳ぎ出す。
ゲイ老人の性と苦悩を描いた『老ナルキソス』(2017)がレインボーリール東京や上海クィア映画祭などで最高賞を獲得し、以降に監督した作品も世界のLGBTQ+映画祭で高い評価を得ている東海林毅。
自分を不完全な存在だと思い込み、自信を持てないまま社会生活を送るひとりのトランス女性が新たな一歩を踏み出そうとする…。
そんなささやかな瞬間の物語を、詩人・文月悠光の詩を原案として、東海林毅が丁寧に映像化した映画『片袖の魚』が、新宿K’s cinemaにて2021年7月10日(土)より公開することが決定しました。
映画『片袖の魚』について
本制作開始にあたっては、日本で初めてとなるトランスジェンダー女性当事者の俳優オーディションを開催。
多数の応募者の中から主役に選ばれたのは、ファッションモデルとして活躍し、これが映画初主演となるイシヅカユウ。
主人公の友人には同じくオーディションで選ばれた広畑りか。
高校時代の同級生に黒住尚生、職場の同僚に猪狩ともか、そして原日出子が包容力ある職場の上司を演じています。
音楽は、蓮沼執太フィルでドラマーを務める尾嶋優(Jimanica)がオリジナル楽曲を提供。
主題歌「RED FISH」の歌詞は、原案の文月悠光が映画のために書き下ろしました。
また本作では新型コロナウィルス対策として少人数かつスピーディーな制作に対応するため、全編にわたりスマートフォン(Sony Xperia1)1 台のみで撮影が行われました。
監督:東海林毅のコメント
東海林毅監督は、イシヅカユウを主演に抜擢したことに以下のようなコメントを寄せています。
映画の中でイシヅカユウさんが「演じて」いるのは彼女とは生い立ちも考え方も違う、全く別人の一人のトランスジェンダー女性です。僕はこの作品制作を通して人間の魅力というのは属性もポリティカルコレクトネスも超えて輝くものだということをイシヅカユウさんから教えられました。どうか「トランスジェンダー当事者が演じるトランスジェンダー」というフィルターを超えて届く光を見届けて欲しいです。
原案:文月悠光 (ふづき・ゆみ)のプロフィール
文月悠光は1991年北海道生まれの詩人。東京在住。
中学時代から雑誌に詩を投稿し始め、16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年のときに発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少18歳で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』『わたしたちの猫』。
近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』、『臆病な詩人、街へ出る。』が若い世代を中心に話題になりました。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読、詩作のオンライン講座を開くなど広く活動中。
映画『片袖の魚』の特報映像
この度解禁された特報映像では、主演のイシヅカユウが熱帯魚が泳ぐ水槽を見つめる横顔からはじまります。
「あなたが誰かのものになっていく。
触れることもせず、
祈るように見つめるわたし。
彼らの暮らす水槽は、
あまりに澄んでいたから。」
と原案となっている文月悠光の詩「片袖の魚」の一部が朗読されます。
詩の言葉が映像と紡ぎあう瞬間に期待が高まります。
映画『片袖の魚』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本映画)
【原案】
文月悠光「片袖の魚」 (『わたしたちの猫』/ナナロク社刊)
【監督・脚本】
東海林毅
【キャスト】
イシヅカユウ、広畑りか、黒住尚生、猪狩ともか、田村泰二郎、原日出子ほか
映画『片袖の魚』のあらすじ
トランスジェンダー女性の新谷ひかり(イシヅカユウ)は、ときに周囲の人々とのあいだに言いようのない壁を感じながらも、友人で同じくトランス女性の千秋(広畑りか)をはじめ上司である中山(原日出子)や同僚の辻(猪狩ともか)ら理解者に恵まれ、会社員として働きながら東京で一人暮らしをしています。
ある日、出張で故郷の街へと出向くことが決まります。ふとよぎる過去の記憶。
ひかりは、高校時代に同級生だった久田敬(黒住尚生)に、いまの自分の姿を見てほしいと考え、勇気をふり絞って連絡をするのですが…。
まとめ
本作はささやかながらも確かな一歩を刻む34分をスクリーンに映し出します。
それは、わたしがわたしを生きる物語。
そして本作の映像化にあたり、文月悠光が書き下ろした主題歌「RED FISH」。この歌詞の言葉と映像が出会い交錯しながら、イメージがたおやかな像となって結ばれてゆきます。
東海林毅監督が丁寧に映像化した映画『片袖の魚』は、2021年7月10日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショーです。