映画『おかあさんの被爆ピアノ』は2020年7月17日(金)より広島・八丁座にて先行公開、8月8日(土)より東京・K’s cinemaほか全国順次ロードショー!
被爆ピアノを巡る平和運動で知られる実在のピアノ調律師・矢川光則さんをモデルに、「戦争」「原爆」を知らない人たちへの切なるメッセージを描いた物語『おかあさんの被爆ピアノ』。
2020年7月18日(金)に広島・八丁座で先行公開を迎えた本作。この初日には本作の主人公のモデルとなったピアノ調律氏の矢川光則さんが来場、映画公開の感想などを語っていただきました。
本記事では矢川さんのコメントに加え五藤利弘監督と、八丁座の蔵本健太郎支配人のコメントを合わせて公開初日の様子をお届けします。
CONTENTS
映画『おかあさんの被爆ピアノ』先行公開初日リポート
2020年7月17日(土)に広島・八丁座で先行公開された、映画『おかあさんの被爆ピアノ』。当日は物語の主人公のモデルとなった主人公のモデルとなったピアノ調律氏の矢川光則さんが来場しました。
苦しい時だからこそ伝えなければならないもの
現在コロナ渦の影響により、八丁座も使用座席数を減らしている状況。それでも当日第一回の上映は満席となり、次回や次の日以降の上映を待つという客もいる盛況ぶり。
第一回の上映を見られなかった方に対して矢川さんは申し訳ないという気持ちを訴えながらも「初日に満席なんて願ってもないことですね」と注目を受けたことに感謝の言葉を表します。
また今回、全国の感染状況から来場を見合わせた五藤監督も、現状苦境に立たされている映画事情の中、公開にたどり着いたことについて「“伝えなければならないこと”というものもあると思うし、こういった文化活動というものがあるからこそ人間らしい生活ができるのではないかと思っています。その意味でこうして上映できるというのはすごくありがたいです」と感謝の言葉をにじませます。
そして本作のテーマに対して「やはり伝え残していかなければならないことだと思うんです。今年は被爆75周年という節目の年でもありますし、コロナ渦だからといろんなことが伝わらなくなってはいけないと思っています。だから何とかこの映画により被爆ピアノの音色が、みなさんの心に届けば」と、自身の思いをメッセージとして語りました。
矢川さんも「今までとは違った形で被爆ピアノの存在を知らない方に、この活動で平和運動をしている人がいることを知ってもらい、改めてこの平和の尊さを考えてもらえる一つのきっかけになっていけばと思っています」とアピールしました。
長い年月で築いた信頼関係
普段は自身でピアノを運び全国を飛び回る矢川さんですが、現在はその活動を自粛していることもあって、遅れながらも本作が公開にたどり着き、そういった行動への代わりとなることを実感し「こういった形は、ある意味平和の種まきになると思いますし、これをきっかけに来年以降はまた忙しくなるんじゃないかという気さえしています」と将来に向けた希望を語ります。
矢川さんと五藤監督との出会いは10年ほど前。被爆ピアノに携わる矢川さんの姿を追うテレビ向けのドキュメンタリー番組を五藤監督が製作し、その後映画を作りたいという思いから始まりました。
五藤監督は矢川さんに対し「とにかく被爆ピアノを弾いて感じてもらいたいという思いで“誰には貸せない”みたいな思想信条など分け隔てなく届けられている、そんな姿勢がすごいと思いました」という強い印象から、映画作りのモチベーションを得たことを振り返ります。
そしてその長い期間の中では映画作りが頓挫しかけたことも数多くありながらも矢川さんに辛抱強く付き合ってもらったことを回想。矢川さんもその年月を振り返りながら「やはりよくよくの縁がないと(ここまで付き合えなかったと思います)。だからこその今日があるのだろうと思いますし」と映画を完成へと導いた五藤監督との縁を実感していました。
この時、この場所で映画を上映する意味への実感
また、先行上映となった広島・八丁座のある総合百貨店・福屋はもともと被爆建物でもあり、映画のテーマにも非常につながりの深い場所でもあります。
毎年8月には“平和”をテーマとした映画を特集して上映している場所でもあり、今回の先行上映に関し蔵本支配人は「特に今年は被爆75年ですし、こうした平和をテーマにした映画を出せることは、とても意味のあることがあるだと思っています」と今回の上映に対し強い意義を感じている様子を見せます。
以前、映画『この世界の片隅に』が上映された際には、この場を聖地として多くのツアー客が訪れたことを振り返りながら、本作についても「広島ロケの作品でこうして知っていただくのは本当に嬉しいですし、広島県、地元で応援してくださる方もおられるので、ここからさらに全国に広がっていけばいいなと思っています」とさらなる影響の広がりに期待を寄せます。
また蔵本支配人はコロナ渦の影響は八丁座にも例外なく押し寄せ、1カ月半ほどの休業を余儀なくされていたことを回想しながら「こうして広島でいろんな映画を上映できるということ自体が、まず一番の平和だと思いましたし、(営業を)再開して本当に上映できるありがたさを感じています」と改めて映画を披露できる喜びを振り返っていました。
映画『おかあさんの被爆ピアノ』の作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【監督・脚本】
五藤利弘
【特別協力】
矢川光則
【キャスト】
佐野史郎、武藤十夢、森口瑤子、宮川一朗太、大桃美代子、南壽あさ子、ポセイドン・石川、谷川賢作、鎌滝えり、城之内正明、沖正人、小池澄子、若井久美子、中山佳子、石原理衣、鈴木トシアキ、竹井梨乃、笹川椛音、原岡見伍、栩野幸知、内藤忠司、増井めぐみ、田村依里奈、クラーク記念国際高等学校のみなさん、中原由貴、谷本惣一郎、にかもとりか、藤江潤士、大島久美子、森須奏絵
【作品概要】
被爆ピアノによる平和運動で知られる実在の人物・矢川光則さんの活動をベースに、ドラマ『限界団地』などの佐野史郎と、 AKB48の武藤十夢のダブル主演で描かれた物語。被爆ピアノを携えて全国を巡る広島のベテランピアノ調律師と、そのピアノを巡り自らのルーツをたどるヒロインの出会いから広島までの旅路を描きます。
監督は『美しすぎる議員』などを手掛けた五藤利弘。五藤監督は本作と合わせノベライズ作品を執筆しました。主人公・矢川光則役はもともとベテラン俳優の大杉漣にオファーされていましたが、大杉との共演も多かった佐野が引き継ぎ演じています。またヒロイン江口菜々子役を武藤、その母役を森口瑤子、父役を宮川一朗太らが担当。さらに広島出身の俳優・栩野幸知らも出演に名を連ねています。
映画『おかあさんの被爆ピアノ』のあらすじ
自分も被爆二世であり、平和に対する並々ならぬ思いを募らせるピアノ調律師・矢川。彼は1945年の広島への原爆投下で被爆したピアノをさまざまな所有者から任され、自身の手で修理し、全国各地より依頼があればどこにでも持参してコンサートを開き、その音色を人々に聴かせる平和運動をしていました。
その日も自ら運転する4トントラックに積んで全国を回っていた矢川でしたが、コンサートの後片付けをしているときに彼は、東京で暮らしているという一人の女子大生・菜々子と出会います。
菜々子は自分の母親が祖母から受け継いだという被爆ピアノを矢川に寄贈していたことを知りこのコンサートに訪れたことを明かします。そしてこの出会いは、知られざる菜々子のルーツを明かしていくきっかけとなっていくのでした。
まとめ
矢川さんは「私のやっている活動そのものがそのまま映画になっているもので、自分にとってはちょっと恥ずかしいところもあるんですが」と、映画の印象に対して少し恥ずかし気に語っておられました。
この日劇場を訪れた多くの方々に、気さくに感謝の言葉を贈られていた矢川さん。本作で佐野史郎が演じたその矢川さんのキャラクターは、まさしくその性格そのもの、人に対して壁を感じさせず、かつ正直ながら思いやりも感じさせるものであり、五藤監督はそういった矢川さんの被爆ピアノに対する熱意を映画に表したといいます。
そういった思いはさまざまな障害を乗り越えてあるべき姿に向かう。そんな雰囲気が会場いっぱいに広がり、平和という意味を改めて考えるとともに、その道へ進む人の思いの重要さを改めて実感させられるひと時となりました。
映画『おかあさんの被爆ピアノ』は2020年7月17日(金)より広島・八丁座にて先行公開、8月8日(土)より東京・K’s cinemaほか全国順次公開!