原作・谷崎潤一郎×監督・井土紀州、再び!
《100年愛された女・ナオミ》は、誰も知らない変貌を遂げる──
谷崎潤一郎の名作小説を、2023年に同じく谷崎作品を新解釈で映画化した『卍』で話題を集めた監督・脚本家の井土紀州が新たに挑戦した映画『痴人の愛』(2024)。
大西信満と奈月セナを主演に迎え、原作小説誕生から100年となる2024年、唯一無二の『痴人の愛』を生み出した本作。2024年11月29日(金)より池袋シネマ・ロサでの劇場公開が開始されると、好評により同館での12月12日(木)までの上映拡大が決定されました。
このたび、映画『痴人の愛』の池袋シネマ・ロサでの公開開始を記念して実施された、初日舞台挨拶の公式リポートが到着。
本記事では、主演の大西信満と奈月セナ、井土紀州監督が登壇した同イベントの模様をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『痴人の愛(2024)』初日舞台挨拶・公式リポート!
河合譲治役:大西信満さん
「スクリーンの中の像」に恋する男
2024年11月29日(金)より池袋シネマ・ロサでの劇場公開を迎えた映画『痴人の愛』。映画上映前には公開初日を記念した舞台挨拶を実施され、主演の大西信満さんと奈月セナさん、井土紀州監督が登壇しました。
2023年公開の映画『卍』の好評が、同じく文豪・谷崎潤一郎の名作小説『痴人の愛』の映画化という新たな企画の始まりとなったという井土監督。
また『痴人の愛』を選んだ理由について『卍』を含め谷崎の作品群でたびたび描かれる「絵画・写真などのスクリーンに映った像に恋してしまう、一種の偶像崇拝」に着目した上で、原作小説にて主人公・河合譲治が成長していくナオミを写真に記録し、現実のナオミだけでなく《写真の中のナオミ》も愛している点に、初恋が映画館で観たスクリーンの中の女優であった自身にとって「グッと来た」のが大きいと語りました。
ナオミの自身の心に素直な生き方
ナオミ役:奈月セナさん
本作で主人公・河合譲治役を演じた大西さんは「自分で『役を作ったつもり』になったところで、現場に行けば壊れるもの」というこれまでの経験に触れた上で、譲治を振り回すナオミを演じた奈月さんの芝居に対して《生》で反応しようと心がけていたこと、いかにみっともなく演じるかが譲治という「『かっこいい』とは本当に程遠い役」「ナオミを呆けたように見つめ続ける男」の肝だと思ったとコメント。
そして譲治の《運命の女》ナオミ役を演じた奈月さんは、様々な名優が演じてきたナオミを演じられるかというプレッシャーを抱きながらも、実際に演じていく中で自身の心に素直なナオミの生き方を感じとれたこと、頑固で理性的に生きようと日々考えながら生きていた自分にとって、ナオミのそんな生き方に心を支えられたことで彼女を演じられたと明かしました。
またお互いの印象について奈月さんは、脚本の読み合わせで初めて大西さんに会った際に「脚本の中の譲治そのままの姿で、とても真面目で実直な方」と感じたとのこと。
対して大西さんは「『譲治そのまま』は褒め言葉じゃないよ(笑)」と返しつつも、実際に会う以前に見かけたモデル・グラビア活動などでの煌びやかなイメージとは異なる奈月さんの真面目さが、完成した映画を観た際の「ナオミが芯の通った人に感じられた」という印象にも反映されていると語りました。
キャスト・監督それぞれの制作秘話
井土紀州監督
トークの話題は、撮影や共演キャスト陣のエピソードへ。井土監督は映画作中でのナオミの衣装に言及し、スタイリストが用意した物で「これは派手過ぎる」「流石にこれを着られる人はいない」と自身が感じた衣装でも、奈月さんが実際に着用すると見事に着こなしてしまい、候補が多過ぎて逆に衣装選びが大変だったとほめ殺しな制作秘話を紹介。
また奈月さんは、譲治のシナリオ講座仲間として出演した土居志央梨さん・佐藤峻輔さん・柴山葉平さんの和気藹々とした雰囲気が、共演していて「とても居心地が良かった」とコメント。
なお土居さんはNHK連続テレビ小説『虎に翼』でザテレビジョンドラマアカデミー賞・助演女優賞を受賞するなど注目を集め続けていますが、本作への出演はオーディションで決まったとのこと。
一方で大西さんは、本作で一番緊張感をもって演じた相手は、シナリオ講座の講師・椿役を務めたベテラン・村田雄浩さんだったと明かし「村田さんのおかげで自分を引き締めることができた」と感謝を伝えました。
そして「本当のネタバレになるので、役柄の詳細は明かせないが」と前置きした上で、映画終盤での吉岡睦雄さんの演技には「全部ぶち壊しやがって(笑)」と感じる程に驚かされたと称賛。他の二人もそれに同意し「ぜひ吉岡に注目です」という井土監督の言葉で舞台挨拶は幕を閉じました。
映画『痴人の愛(2024)』の作品情報
【公開】
2024年(日本映画)
【原作】
谷崎潤一郎
【監督】
井土紀州
【脚本】
小谷香織
【キャスト】
大西信満、奈月セナ、土居志央梨、佐藤峻輔、柴山葉平、中島ひろ子、芳本美代子、村田雄浩、川瀬陽太、吉岡睦雄、大久保 雛、丸 純子(友情出演)、中嶌駿介、佐藤真澄、詩 歩、たなかさと、華岡 稟
【作品概要】
世界的名匠・増村保造をはじめ、多くの映画人が挑んできた谷崎潤一郎の名作小説を、2023年に同じく谷崎作品を新解釈で映画化した『卍』で話題を集めた監督・脚本家の井土紀州が新たに挑戦。
『卍』で長編映画デビューを果たした脚本家・小谷香織と再タッグを組み、原作誕生から100年となる2024年、「小説『痴人の愛』の映画化脚本の執筆に挑戦する男」という入れ子構造の物語を通じて、谷崎と同じ《物語る者》として映画制作を志す者の青春、そして創作と恋人の間でもがき苦しむ男の悲哀も描き出した唯一無二の『痴人の愛』を生み出しました。
主人公・河合譲治役を務めたのは、映画初出演・主演作『赤目四十八瀧心中未遂』での毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞獲得、若松孝二『キャタピラー』での四肢を失った傷痍軍人役の怪演など、日本映画界でその存在感を放ち続ける大西信満。
そして譲治の《運命の女》となるヒロイン・ナオミ役を、20歳で「ミス・インターナショナル2016」日本代表選出大会に出場した類まれなる容姿を持つ奈月セナが演じ、本作ではヌードにも挑戦するなど「俳優・奈月セナ」の代表作と断言できる熱演を魅せています。
映画『痴人の愛(2024)』のあらすじ
かつてシナリオコンクールで受賞したものの、未だプロデビューを果たせずにいる脚本家志望の男・河合譲治(大西信満)。
ある日、同じシナリオ講座に通う若者たちと入った寂れたバーで、譲治はナオミ(奈月セナ)と名乗る美しい女性と出会う。店で働きながら俳優を目指しているという彼女に「シナリオ講座の講師」と勘違いされた譲治は苦笑しながらも、自身の身の上を明かす。
やがて譲治は、シナリオ講座の講師・椿(村田雄浩)に「自分の代わりに映画の脚本を書いてみないか」と誘われる。原作は、谷崎潤一郎の『痴人の愛』……譲治は二つ返事で依頼を引き受け、今度こそ成功してみせると脚本を書き始める。
脚本執筆に苦戦する中で、譲治はナオミと再会し、二人の関係は急速に近づいていく。しかしそれが、ナオミと執筆との間で身を引き裂かれる、甘く、苦く、狂おしい時間の始まりだった……。
まとめ
2024年11月29日(金)より池袋シネマ・ロサでの劇場公開を迎えた映画『痴人の愛』。
公開初日の舞台挨拶は多くの来場者の拍手ととともに無事幕を閉じたのみならず、公開2日目にはほぼ満席の大盛況に。SNS上でも多くの好評を得られたことで、ついに同館では12月12日(木)までの上映拡大も決定されました。
1924年の原作小説の誕生以来、幾度も映画化されてきた『痴人の愛』。しかし、原作を知る方であればあるほど「そう来たか!」と唸る脚色が施された《100年目の映画化》に相応しい作品となった本作。
監督・井土紀州、脚本・小谷香織、主演・大西信満&奈月セナによる映画『痴人の愛』を、ぜひ劇場でお楽しみください。