菅田将暉と、本作が俳優デビューとなる「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukaseの共演による映画『キャラクター』が、2021年6月11日より公開となります。
『20世紀少年』など数多くの浦沢直樹作品にストーリー共同制作者として携わってきた長崎尚志によるオリジナル脚本を、『世界から猫が消えたなら』『帝一の國』の永井聡監督により映画化しました。
主人公・山城圭吾(やましろけいご)を演じるのは、第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を始めとする各映画賞を総なめにし、若手屈指の演技派俳優として活躍が目覚ましい菅田将暉。
漫画家デビューを目指しながら、有名ホラー漫画家・本庄のアシスタントを務めている山城圭吾。画力はあるものの、登場人物の“キャラクター”描写ができず、伸び悩んでいました。
清田と真壁は、通報者であり事件を目撃した可能性のある山城を取り調べます。犯人の顔をちらっと見たと言う山城に、犯人の顔をスケッチするよう頼みますが、思い出せないの一点張り。
山城は、犯人の顔をはっきりと見たことを警察には隠していました。犯人が脳裏に蘇ります。スケッチブックに犯人の姿を描きますが、輪郭や服装は描けるのに、顔は思い出せませんでした。
山城は、次に描いたマンガでデビューできなかったら、夢を諦めるつもりでした。いつかはすごいキャラクターを生み出せると励ます綾に、山城はそれが無理だと気付いたと話します。
翌日は、恋人の夏美とのデート。夏美とは、大学の合コンで出会いました。明るくて歌が上手い夏美に心を奪われた山城。彼から交際を申し込み、以来付き合いは続いています。また、偶然にも夏美は綾の高校の同級生でもありました。
久しぶりのデートだというのに、山城は自分の弱音ばかり。「いい人」な自分は、深みのあるキャラクターが描けない、悪魔に魂を売ってイヤなやつにならないとと語る山城に、イヤな人にならなくても描けるマンガはあるから、魂を売ってはいけないと諭す夏美。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『キャラクター』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『キャラクター』をまだお読みになっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
山城は、父の馴染みのバー「パブ13番地」にひとりで訪れ、カウンターで飲んでいました。マスターは父の知人で、夏美と婚約したことをすでに知っていました。
薄給のアシスタント業なのに結婚を決めてしまった不安を打ち明ける山城。マスターは来店した常連客の相手をしに行ってしまいました。
ひとりになった山城に、ピンク色の髪をした童顔の男が声をかけます。両角と名乗った男は本庄のファンらしく、スタジオの場所を聞いてきました。
彼の質問は、山城の家族構成にまで及びます。両角に違和感を覚えながらも、4人家族だと答える山城。
漫画家デビューしたら、自分を悪役か殺人鬼で登場させて欲しいと言う両角の声は、あの日あの現場で聞いた犯人の声でした。
幸せの象徴である4人家族に天罰を下してやりたくなると語る両角。山城は恐怖で彼の顔を見ることができません。
沈黙ののち、両角の方を向く山城でしたが、そこには誰もいませんでした。
戻ってきたマスターに両角のことを聞くも、心当たりはない様子。ビールのコースターの裏に、両角の似顔絵を描く山城。
マスターは見たことがないと答えますが、記念に似顔絵を店の壁に貼りました。
警察は、事件の容疑者をマークしていました。それは、事件現場の近くに住む、辺見という中年男性。30年以上前に、ストーカー殺人事件を起こし、医療少年院に入っていことがあります。
任意同行を求めようと警察が辺見に近づくと、辺見は謝りながら、一家殺人事件は自分がやったと言い出しました。
しかし、事情聴取をしても、事件の詳細は曖昧。清田は真犯人は別にいるのでは無いかと疑います。
本庄のスタジオで辺見逮捕のニュースを見た山城。本庄は「本物の殺人犯を見たのに、それを作品に生かさないなんてチャンスを逃したな」と、山城に嫌味を言います。
仕事を終えた後、本庄への怒りからひとり酒で泥酔。以前スケッチブックに描いた犯人の姿に、辺見の顔を描き込みますが、どうもしっくりと来ません。
辺見の顔を消し、感じるがままに顔を描き込んでいきます。書き上がったのは、少年のような顔立ちをした、ピンク色の髪の毛をした若い男。
山城は、マンガ史上最凶最悪のキャラクターの誕生を喜びます。
そのキャラクター「ダガー」を殺人犯としたマンガ『34(サンジュウシ)』で、山城は一躍人気漫画家になりました。
清田と真壁は、山梨県の山道で起こった一家殺害事件の現場へ向かっています。被害者である4人家族は車の中で刺殺され、車ごと崖から突き落とされていました。
清田は、辺見が逮捕された一家殺人事件の模倣犯ではないかと考えていました。彼は、被害者の車の天井に裂け目があるのを見つけ、その中から血がついた刺身包丁を発見します。
不審に思った真壁は、なぜ凶器が隠してあるのがわかったのかと清田に詰め寄ります。清田は山城が描いたマンガ『34』の単行本を見せました。
殺人鬼「ダガー」を捕まえるため、刑事、民俗学者、霊能力者の3人が協力するというそのマンガには、今回の事件とそっくりな描写が展開。
車の天井に隠された凶器のことまで描いてあります。そして清田は、『34』の第1話は、山城が目撃した一家殺人事件とそっくりだったと告げました。
清田と真壁は、辺見は冤罪であり、一連の事件は同一犯の犯行ではないかと考えます。清田は非番の日に、個人的に山城を調べることにしました。
はじめに当たったのは、本庄のスタジオ。本庄は山城が急にアシスタントを辞めたことを残念がり、山城が「ダガー」のようなキャラクターを生み出したことを驚いていました。
その後、山城の担当編集者・大村と待ち合わせ、山城仕事場へ向かう清田。大村は、才能がないと切り捨てていた山城の変貌を語ります。そして、山城は以前とは人が変わり、描くことに憑かれたようになっているといいました。
仕事場で出迎えた山城は、以前清田が取り調べた青年とは全く異なり、鬼気迫る形相に変わっていました。
山梨で起こった事件と、『34』の関係性を聞いても、心当たりが無いようす。ですが、清田が「ダガー」のモデルはいるのかと聞くと、かすかに山城の顔に動揺が浮かび、すぐさま「いない」と否定しました。
続けて清田は、『34』の展開について尋ねます。天井から発見された包丁は、一家殺害の凶器なのかと。山城は、どういう展開にするかはまだ決めていないと答えました。
清田と大村が帰り、山城は次回話のネームを練ります。ですが、清田が話した事件のことと、パブで出会ったピンク髪の青年・両角の顔が頭から離れず、思うように捗りません。
気分転換に実家に帰った山城は、両親から、来月綾が彼氏を連れてくると聞かされます。しかし、綾は山城には来てほしくないと言いました。
実は、連載が決まった直後、山城と夏美は別れていました。夏美から唐突に別れを告げられ、別れたにも関わらず、綾は山城に激怒しています。
聞けば、夏美は山城との子どもを妊娠しており、未婚の母になる決心をしたんだそう。山城は明日、夏美に会いに行くことにします。
実家を出る直前、母から「原五月」という見知らぬ差出人からの封筒を渡されました。山城は「パブ13番地」に向かいます。
そんな彼を、清田が尾行していました。清田は、山城の実家の温かそうな様子を見て、犯人ではないのかもと思い始めます。
「パブ13番地」に偶然訪れたかのように入り、カウンターに座っている山城の隣に座る清田。警戒する山城に、マンガのどういうところが好きなのかと聞きます。
負け側だった主人公たちが努力して奇跡を起こすのが好きだと答える山城に、『34』はどうなのかと突っ込む清田。職業柄、被害者や遺族と触れ合う機会が多い彼にとって、『34』の殺人シーンはリアルすぎるものでした。
最後は主人公側が勝つ展開にするつもりだと山城が言うと、清田は驚きます。「ダガー」のキャラクターが立ちすぎて、山城が愛着があるのは主人公たちではなく、「ダガー」だと思っていたからです。
その後、清田は自分の名刺を渡し、山城の携帯番号も聞き出します。お互いに、好印象をいだく清田と山城。そこへ真壁から電話があり、清田は席を外します。
山城の携帯にも、知らない番号から電話がかかってきます。出ると、その相手は両角でした。彼は山城が「パブ13番地」にいることも、刑事が隣にいたことも知っていました。
両角は、車の中の殺人事件を実現したことを告げます。そして、車の天井から見つかった刃物の扱いをどうするのか決めずに描いたことを指摘した上で、あるアイデアを山城に与えました。山城は、そのアイデアのおもしろさに食い付きます。
真壁との電話が終わって、清田が店に戻ると、すでに山城は退店していました。清田は店の壁に貼られたコースターに描かれた「ダガー」のイラストに目を止めます。
マスターに聞くと、それはこの店にいた客をスケッチしたものだそう。「ダガー」は実在する人物をモデルにしているのかもしれないと清田は考えます。
翌日、山城は夏美に会いに行きます。お腹が大きくなった彼女に、認知させてほしいと頼む山城。夏美は「ありがとう」と答え、別れた理由を語り出します。
楽しそうに殺人鬼を描く山城のこと。そして、悪夢でうなされていた彼が、ある時からうなされたあとに笑い始めるようになったこと。それが夏美には恐ろしかったんです。
夏美は、山城に乗り移った「ダガー=両角」を感じ、恐怖を抱いていました。山城は、悪魔に魂を売ってしまった自分は、夏美とやり直すことが出来ないと確信します。
清田は『34』最新話が掲載された雑誌を読み、驚愕しました。そこには、車中で見つかった刃物が、最初の殺人事件で使われた凶器だったことが描かれています。
真壁に問いただすと、実際の刃物も、以前の一家殺人事件の凶器だったことが判明。これで山城が事件に関わっていることが確実になりました。
山城は「ダガー」による殺戮場面を嬉々として描いています。連載当初は主人公側の目線で書いていましたが、今や彼には「ダガー」が乗り移ったかのよう。
そこへ両角から電話が。引退するはずが山城のせいで呼び戻されたんだから責任を取ってと言います。そして、ファンレターに目を通すように指示した後、一方的に電話が切れました。
さっきまで楽しんで書いていたマンガは、陰惨なものにしか見えず、山城の手が止まります。
そして、母から手渡された封筒のことを思いだします。差出人の「原五月」とは、車中で殺された一家の娘の名前で、両角が気を引くために使ったようです。
封筒の中には、広島県のとある場所の住所と、そこにサインを送るようにと指示した手紙が入っていました。
山城は書かれた住所に向かいます。そこは更地でした。近所の人の話では、建っていた家が昨年の大晦日に火事にあって全焼し、一家4人の焼死体が見つかったとのこと。
事件についてネットで調べてみると、遺体には無数の刺し傷があり、警察は無理心中と見立てて捜査をしているとのことでしたが、山城は、両角の犯行だと気づきます。
広島駅で東京行きの新幹線を待っていると、両角が現れました。彼は、『34』の第一話を読んで、自分のことを理解してくれた山城に感動したと伝え、さらに、山城と『34』を応援するために、自分は殺人をやめることはできないと言います。
傍観者から共犯者になっていく自分自身を憂い、責任を感じた山城は、最新話で被害者を生存させ、両角の暴走を止めようと計画。
掲載された最新話に沿って両角は犯行を重ねますが、生存者を出すということは、彼の「創作」を未完成にするものであり、山城に憤っていました。
生き残った被害者は、意識が戻らず、とても犯人のことを話せる状態ではありません。
山城は『34』をやめようと決意し、大村と掲載誌の編集長に掛け合います。しかし人気作である『34』を手放したくない編集長たちは反対し、長期休載という形を取ることになりました。
休載告知を読んだ両角は、山城をターゲットに定めます。
綾の彼氏が実家に来る日、綾からの頼みもあり、山城は実家に訪れます。家からはオペラが流れています。
綾が紹介したその彼氏は、華奢な体型にピンクの髪の毛。……両角でした。流れていた曲は、初めて彼に会った、あの殺人現場で流れていた『ミカド』です。
帰れと叫ぶ山城に、彼らふたりにしかわからない話を飄々とする両角。山城がとびかかろうとした瞬間、両角は殊勝な面持ちで綾に謝り、玄関へ向かいます。
そして、山城に、『34』をいつまでも休載しているならば勝手に自分が再開すると告げ、去っていきました。
山城は、家族にいままであったことをすべて打ち明けます。家族は山城の過ちを指摘しながらも、冷静に受け止めてくれました。綾に促され、山城は夏美にも話しにいくことにします。
山城を張っていた清田は、実家から出てきた「ダガー」そっくりなピンク髪の若者(両角)に目をつけ、尾行を開始。しかし勘の良い両角は尾行に気づき、清田を巻きます。
清田は山城を囮に、両角を誘き出せないかと画策。そこへ、山城から、聞いてもらいたいことがあると電話がかかって来ました。
山城の職場で、清田と真壁は、山城から犯人の顔を見ていたけれど黙っていたこと、両角と山城の妙な関係についてを明かされます。
清田は、山城を罪に問わない代わりに、両角の逮捕に協力してくれないかと交渉。山城は『34』を再開し、両角を誘き出すと約束します。
辺見は、嫌疑不十分で釈放され、マスコミは彼のことを悲劇の英雄に仕立て上げていました。
清田ら警察は、両角逮捕に向けて動き、街の防犯カメラなどをチェックし、彼の生活拠点を洗い出しました。その商店街にある古書店が気になった清田は中へ入り、店主に話を聞きます。
店主によると、両角は常連で、「両角キララ」というカルトな女流漫画家の作品を集めているとのこと。両角キララは、30年ほど前にデビューしたものの、過激な内容からマイナーな雑誌に移り、2000年前後には新作を発表しなくなったそう。
ファンの間では、美人でスター作家だったものの宗教にハマって田舎に引っ込んで結婚、その後夫と別れて逃げていると言う噂が立っていました。
清田の携帯が鳴ります。真壁が亡くなったとの連絡でした。両角のアジトを捜査していた真壁は、アジトに潜んでいた辺見に刺殺されたんです。辺見は逃亡し、警察は彼の足取りを追っています。
実は、辺見は両角に協力していました。両角キララのマンガで辺見の起こした事件を知った両角は彼に共感し、手紙を書いて信頼を得て、
一家殺人事件のアドバイスを受けながら同化していきました。
本来なら清田を刺殺する予定だったものの、真壁を刺したことで捜査対象が辺見に戻ったため、両角は再び自由に動けるようになりました。
両角のことを調べる清田ですが、「両角修一」という戸籍は全くの別人のもの。ですが両角キララとの関係に固執していたことから、両角姓を選んだのではないかと考えます。
両角キララを担当していた編集者に話を聞きにいく清田。元編集者は詳細は覚えていなかったものの、新人賞を獲った直後に、山梨で新興宗教を拓いている男を追って消えたらしいという話をします。
得られた情報をもとに、清田はインターネットでその宗教のことを検索します。
すると、4人一家族が幸福の一単位だと理想を掲げた宗教についての記事がヒット。最後に発見したニュースには、教祖である進藤という男が服毒死し、宗教に属していた人間全員が消えたと言うものでした。
進藤の遺体を発見した駐在に電話で話を聞く清田。当時、宗教の村人全員が消えたと郵便局員から聞いた駐在が村に向かうと、教祖の進藤が絶命していたとのこと。
宗教の人間が殺害した疑いもありましたが、消えた十世帯の手がかりは皆無。住民票移動の際に提出された書類は全て他人のものでした。
進藤の妻は若くて綺麗な女性だったそうですが、途中から見なくなったと言います。子どもも村にはたくさんいたものの、みな無戸籍で、誰がだれの子どもなのかもわからなかったそうです。
清田は、進藤の妻が両角キララであり、ふたりの子どもこそが両角と名乗った男だと確信します。
山城の最新作である『34』のスピンオフマンガが雑誌に掲載、発売となりました。
主人公は「ダガー」の事件をモチーフにしたマンガでヒットを飛ばしている漫画家。作品についてのインタビューを終えた彼は、家族の待つ家へ向かいます。家族は、父、母、姉、そして主人公という4人。
漫画家は自室でマンガを描いているところをダガーによって殺されます。家族もダガーに惨殺。事件現場に『34』本編主人公である霊能力者たちがやって来て、霊能力者がダガーの招待に気づいたところでマンガは幕を閉じます。
漫画家は山城そっくりに描かれ、現実のふたりを描いたかのような、両角を挑発する内容でした。両角はマンガを読み、笑みを浮かべます。
山城の実家では、山城以外の家族は彼らによく似た警察官たちが成り代わり、両角を迎えるべく囮となっていました。本物の家族たちは警察の警備のもと、安全な場所に非難しています。
山城の携帯に、両角から電話がかかって来て、最終回はそこでは起こらないと言います。山城の両親は山城の前では「良い夫婦」「良い家族」のふりをしていましたが、父の浮気や、それによる母のストレスで、関係はぐちゃぐちゃになっていました。
仮面夫婦の家族なんて狙わないと言い、電話を切った両角に、山城は不安を抱きます。慌てて夏美に電話をし、お腹の子どもが双子かと尋ねる山城。
案の定、子どもは双子で、両角のターゲットは夏美でした。両角は夏美を縛り上げ、山城の到着を待ちます。
清田とともに夏美の元へ向かう山城。夏美のアパートの前で待ち構えていたのは、包丁を握った辺見でした。辺見には清田が立ち向かい、山城は夏美の部屋のドアを開けます。
暗闇の中、両角に足を刺される山城。夏美ではなく自分を先に殺すように、山城は煽ります。
防刃チョッキを纏っていたため、腹部には刺されずにすみました。動揺を浮かべた両角に、山城は襲いかかります。
まるでふたりのキャラクターが入れ替わったかのように、山城は笑みを浮かべながら両角に包丁を振り下ろします。
そこへ、清田がやって来ます。彼はふたりの状況が逆になっていたことに驚きながらも、両角を拳銃で撃ち抜きました。
山城は足の怪我で入院したものの、命に別条はなく、見舞いに来てくれた夏美と話をします。両角を殺そうとした記憶はあるのに、それをやめた記憶が無いと語る山城に、「刃物を下ろそうとした瞬間に、入れ替わっていたふたりの顔が戻っていた」と言う夏美。
事件から2ヶ月後。山城は清田に会いに行きます。清田も当時の記憶が抜け落ちていました。
しかし、山城が帰った後、彼は思い出します。両角を射殺する直前、両角のキャラクターになった山城と目が合った清田。その瞬間、両角のキャラクターが清田の中に入り込み、引き金をひいたんです。
自分の中の両角は消えたのか、それともまだいるのか、清田は疑問をいだきます……。
さらに後日。『34』をやめた山城は新作マンガを描き、編集部で大村から話を聞いていました。根っからの善人しか出てこないマンガを描き、それがダメならば漫画家を廃業しようと考えていました。
しかし大村は絶賛。登場するキャラクター全員が善人の皮を被った悪人で、こんな悪意のあるホームドラマは見たことがないと褒め称えます。
山城は複雑な思いで笑いました……。
「もしも、売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら?しかも、その顔を“キャラクター”化して漫画を描いて売れてしまったとしたら??」というアイデアを基に、長崎尚志が10年の歳月をかけて、練り上げた企画『キャラクター』。
仮に「ダガー」と名付けたその衝動は、目が合っただけで伝染します。しかし、全ての人間に感染るわけではありません。あくまでも、もともと「ダガー」の部分を抱えた人間を刺激する、いわば引き金のようなもの。
山城・両角・清田に関して言えば、みな4人家族であり、家庭内が崩壊していたことが共通点となっています。山城はまるで幸せな家族で育ったかのように描かれ、本人もそう思い込んでいましたが、実は両親の仲は最悪で、彼自身も自分の中の歪みと悪意を無意識に表出させていきます。
また、登場人物で特に強烈なのが両角なんですが、心情には共感できないものの、決してただのモンスターではない、ひとりの人間としてキャラクターが成立。新興宗教で育った幼少期、実の父を殺した過去などが、同情させすぎない程よい分量で明かされていきます。