『ナビィの恋』中江裕司監督6年ぶりの最新作『盆唄』が2月15日(金)にテアトル新宿ほかで全国順次公開します。
2018年11月に封切られ、興収100億円突破と大ヒットを記録している『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)をはじめとして『アリー/スター誕生』(2018)など世界はいまや音楽映画一色!
そんな中、中江裕司監督最新作『盆唄』はこれまでの数々の名作に匹敵するほどの音楽映画だった!?
本記事では『盆唄』をはじめとする、観客の魂を揺さぶる傑作音楽映画4選をご紹介します!
映画『盆唄』
故郷への想いをのせた太鼓・笛の音が鳴り響きます。
観ているだけでトランス状態に陥るかもしれません。
そして、それを100年以上前に移り住んだ福島の人々によって歌い継がれ、今でもハワイの人々によって歌われています。
『ボヘミアン・ラプソディ』に並ぶ傑作の予感です。
映画『盆唄』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【監督】
中江裕司
【キャスト】
福島双葉町の皆さん、マウイ太鼓ほか
【声の出演(アニメーション)】
余貴美子、柄本明、村上淳、和田聰宏、桜庭梨那、小柴亮太
【作品概要】
映画『ナビィの恋』(1999)や『ホテル・ハイビスカス』(2003)の中江裕司監督が3年の歳月をかけて撮り続けたドキュメンタリー映画です。
福島県双葉町の豊かな伝統芸能とハワイのボンダンス・日系文化にまつわる唄や音楽のドキュメンタリーですが、アニメーションの画像なども盛り込まれ、枠を超えた内容を期待させてくれます。
第19回東京フィルメックス特別招待作品。
観客アンケートでは満足度100%を記録しました。
映画『盆唄』のあらすじ
2015年。
東日本大震災から4年経過した後も、福島県双葉町の人々は散り散りに避難先での生活を送り、先念々守り続けていた伝統「盆唄」の存続の危機にひそかに胸を痛めていました。
そんな中、100年以上前に福島からハワイに移住した人々が伝えた盆踊りがフクシマオンドとなって、今も日系人に愛され熱狂的に踊られていることを知ります。
双葉の人々は盆唄を披露すべく、ハワイ・マウイ島へと向かうことにしました。
自分たちの伝統を絶やすことなく後世に伝えられるのではという、新たな希望と共に奮闘が始まりました。
やがて故郷と共にあった盆唄が、故郷を離れて生きる人々のルーツを明らかにしていきます。
盆踊りとは、移民とは。そして唄とは何かを探し求める200年におよぶ姿とは…。
懐かしく思い、日本人の心を呼び覚ます
『ナビィの恋』や『ホテル・ハイビスカス』など、中江監督といえば必ず連想するのが“音楽”。
音楽をただバックミュージックとして使うのではなく、台詞と同じように情を伝えるものとして尊重する映画を数々排出してきました。
そんな監督が今回、双葉町の「盆唄」に触れ、2時間以上も盆踊りを踊り続ける人々にはじめは衝撃を受けたといいます。
「単調のリズムで2時間以上踊り続けると、みんな無の状態になってくる。お囃子を演奏する人たちは、飽きさせないようリズムを絶妙に変えてながら演奏するので、みんなうずうずしながら踊るんです。そして“待ってました!”というタイミングでリズムを戻すと、音楽と人すべてがひとつになって爆発する瞬間がくるんです。もはや“トランス状態”!!それをラストで表現したかった!」
そのラスト約20分間の“やぐらの共演”に、試写会でも魅了される人が続出しました。
「踊っている人たちがなにも考えず、無心でリズムに引っ張られていくのが、観ているこちらが不思議な感覚になるぐらいの興奮だった!」「ラストシーンがなければ終われない!」と絶賛する声や、一世を風靡してる『ボヘミアン・ラプソディ』に匹敵するぐらいの名作という声も上がるほどです。
観ているだけで懐かしい盆踊りの世界へトリップできる映画は『盆唄』だけかもしれません。
次の章からは、傑作音楽映画4選
映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)
ワンフレーズでも耳にすれば、思わず心が躍り出す名曲で世界中を魅了する伝説のバンド“クイーン”。
華やかな活躍の裏で、崩壊寸前だったバンドが挑んだ20世紀最大の音楽イベントで“ライヴ・エイド”。
そこでのパフォーマンスに込められたフレディとメンバーの思いとは…。
その生き様が世界を変えた、感動の物語。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』の作品情報
【公開】
2018年(イギリス・アメリカ合作)
【原題】
Bohemian Rhapsody
【監督】
ブライアン・シンガー
【キャスト】
ラミ・マレック、ルーシー・ボーイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョセフ・マッゼロ、エイダン・ギレン、アレン・リーチ、トム・ホランダー、マイク・マイヤーズ、アーロン・マカスカー
【作品概要】
クイーンのボーカリストであるフレディ・マーキュリーを中心に、デビュー間もない1970年から85年に開催されたチャリティコンサート「ライブ・エイド」出場に至るまでが描かれています。
第76回ゴールデン・グローブ賞で作品賞、主演男優賞の2冠を果たし、先日発表された第91回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞含む5部門にノミネートされています。
興行収入も100億円を突破するなど勢いが止まりません。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』のあらすじ
1985年7月13日イギリス。
ロンドン郊外にあるウェンブリー・スタジアムで、アフリカ難民救済を目的とした大規模なチャリティーコンサート「ライブ・エイド」が開かれようとしていました。
ライブに参加するロックバンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーは起床し、咳払いをしつつ支度を整え、一人ステージに向かいます。
時代はさかのぼり、1970年のロンドン。
ファルーク・バルサラ青年は、これといった目的もなく空港で働いていました。
ペルシャ系インド人にしてゾロアスター教徒の両親を持つ彼は、その境遇や自身の歯並びの悪さもコンプレックスに感じており、さらにはファルークという名が嫌で、普段は「フレディ」と名乗っています。
ある夜に、気分転換にライブハウスに行ったフレディは、ライブ演奏をしていたギターのブライアン・メイとドラムのロジャー・テイラーのテクニックに魅了されます。
伝説のロックバンド“クイーン”のメンバーが運命的な出会いを果たしたのでした…。
クイーンの楽曲に浸る
世界的人気ロックバンド「クイーン」のボーカルで、1991年に45歳の若さでこの世を去ったフレディ・マーキュリーを描いた伝記ドラマ。
クイーンの現メンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーが音楽総指揮を手がけ、劇中の楽曲には主にフレディ自身の歌声を使用しています。
「ボヘミアン・ラプソディ」「ウィー・ウィル・ロック・ユー」といった名曲誕生の瞬間や、20世紀最大のチャリティコンサート「ライブ・エイド」での圧巻のパフォーマンスといった音楽史に残る伝説の数々を再現するとともに、華やかな活躍の裏にあった知られざるストーリーを描き出しています。
『ナイト ミュージアム』のラミ・マレックがフレディを熱演し、フレディの恋人メアリー・オースティンを『シング・ストリート 未来へのうた』のルーシー・ボーイントンが演じています。
監督は「X-MEN」シリーズのブライアン・シンガー。
圧巻のラスト20分はフレディはじめクイーンのメンバー全員の生き写しを観ているような錯覚を起こすほどです。
伝説のライブシーンを堪能した後は、誰もがクイーン漬けになること間違いなしですね!
映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(2017)
前作『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』がヒットしてから18年。
カットされた秘蔵映像も交えながら、カメラはメンバーたちの音楽的ルーツを、キューバ音楽の歴史とカルチャー、美しい自然と共に紹介してます。
亡くなる直前まで音楽に全身全霊を捧げたメンバーの姿を伝える音楽ドキュメンタリーです。
「誰にでも人生の花はいつか必ず咲き誇る」と最後の瞬間まで輝いた声明を描いています。
映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(2017)の作品情報
【公開】
2018年(イギリス映画)
【原題】
Buena Vista Social Club: Adios
【監督】
ルーシー・ウォーカー
【キャスト】
オマーラ・ポルトゥオンド、マヌエル・“エル・グアヒーロ”・ミラバール、バルバリート・トーレス、エリアデス・オチョア、イブライム・フェレール
【作品概要】
日本でも大ヒットを記録した1999年製作の音楽ドキュメンタリー『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』から18年、現メンバーによる最後のツアーを追いかけたドキュメンタリーです。
グループによるステージでの活動に終止符を打つと決めた彼らの「アディオス(さよなら)」世界ツアーを追うとともに、彼らのプロとしてのキャリアの浮き沈みやこれまで歩んできた旅路、さらにメンバーの死にも迫ります。
前作で監督を務めたビム・ベンダースが製作総指揮を務めました。
監督は『ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたルーシー・ウォーカー。今最も注目されているドキュメンタリー作家です。
映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(2017)のあらすじ
アメリカの偉大なギタリスト、ライ・クーダーがキューバでセッションした地元の老ミュージシャンたちに声をかけて結成されたビッグバンド「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。
1997年にリリースされたアルバムは世界的に大きな注目を集め、グラミー賞を受賞しました。
グループによるステージでの活動に終止符を打つと決めた彼らの「アディオス(さよなら)」世界ツアーを追います。
日本音楽界も絶賛。音楽は生き続ける
続編が決まるやいなや、坂本龍一、村上龍、三浦大知、トータス松本、久保田利伸など日本音楽界の著名人から続々と絶賛コメントが届きました。
歴史に刻まれたキューバのミュージシャンたちの最後のツアーに迫ったこの作品は、前作よりさらに歴史的背景を深く映しつつ、時代は変われども音楽は生き続けることを教えてくれます。
素晴らしいキューバの音楽は、誰もが聞き惚れ、やみつきになること違いなしです。
映画『セッション』(2014)
完璧さを求めるフレッチャーと、すべてをなげうち極へと這い上がろうするニーマン。
フレッチャーはニーマンを栄光へと導くのか、それとも叩き潰すのか…?
誰もが観たことがないクライマックスへ。
映画『セッション』(2014)の作品情報
【公開】
2015年(アメリカ映画)
【原題】
Whiplash
【監督・脚本】
デイミアン・チャゼル
【キャスト】
マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル
【作品概要】
第87回アカデミー賞助演男優賞、編集賞、録音賞と3部門受賞したほか、当時さまざまな映画賞で旋風を巻き起こした作品です。
「スパイダーマン」シリーズなどで知られるベテラン俳優のJ・K・シモンズがフレッチャーを怪演し、アカデミー賞ほか数々の映画賞で助演男優賞を受賞しました。
監督はこれまでに『グランドピアノ 狙われた黒鍵』『ラスト・エクソシズム2 悪魔の寵愛』などの脚本を担当し、弱冠28歳で長編監督2作目となる本作を手がけたデイミアン・チャゼル。
映画『セッション』(2014)のあらすじ
名門音楽大学に入学したニーマンはフレッチャーのバンドにスカウトされます。
ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然でした。
しかしニーマンを待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない完璧を求める狂気のレッスンでした。
浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。
ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていきます。
恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマンですが…。
音楽の復讐劇
本作の監督を務めたのは、大ヒットを記録した『ラ・ラ・ランド』(2017)を手掛けたデイミアン・チャゼル。
弱冠28歳という若さでこの衝撃作『セッション』を作り上げました。
力強いサスペンススリラーのような音楽映画。
しかし不安や恐怖、そしてネガティブな感情をも覆す音楽の世界独特の高揚感を感じさせるラスト9分19秒は痛快としか言いようがありません。
まとめ
近年に公開された4作品を厳選してご紹介しましたが、きっと皆さんが感動を覚えた音楽映画はまだまだあることでしょう。
ただ、日本人として懐かしさを感じるのは『盆唄』で福島の人々が奏でる音色ではないでしょうか。
太鼓の音、笛の音、そして盆踊り…。
親日家として知られたイギリスを代表するロックバンドに魅了されても、キューバのミュージシャンに心打たれても、ドラマーの狂気ともいえるドラムテクニックに圧倒させられても、やっぱり“ふるさと”を感じてしまいます。
福島の人々が伝統を後世に伝えるべく奮闘するドキュメンタリー映画『盆唄』は2019年2月15日(金)よりテアトル新宿ほかで全国順次ロードショー!
フォーラム福島、街ぽれいわきでも公開です!
ぜひ、お見逃しなく!