『あん』『光』の河瀨直美監督最新作、いよいよ始動!
樹木希林を主演に迎え、国内外でヒットとなった『あん』(2015)、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門選出、同映画祭にてエキュメニカル審査員賞を受賞したオリジナル脚本による『光』(2017)、ジュリエット・ビノシュを迎えオール奈良ロケで挑んだ『Vision』(2018)。
これらに次ぐ新作として河瀨監督が題材に選んだのは、辻村深月による長編小説『朝が来る』です。
2020年10月23日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開される本作『朝が来る』の映画化発表に際し、監督と脚本を務める河瀨直美監督と原作の辻村深月からコメントが届きましたのでご紹介します。
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原作小説『朝が来る』とは
©『朝が来る』Film Partners
原作小説『朝が来る』第13回本屋大賞にて第5位に選出され、17万部を超えるベストセラーとなった感動のミステリードラマです。
長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子どもを手放すことになった幼い母。
それぞれの人生を丹念に描きだします。
監督・河瀨直美のコメント
©『朝が来る』Film Partners
河瀨直美監督は、本作の映画化について、以下のようにコメントを寄せています。
撮影中、涙する場面に遭遇する時がある。
それは、俳優達がその日常を生きて、脚本からもはみ出る感情を発露させた瞬間。
こういった現場は自分にとっても稀だと実感している。とにかく俳優が素晴らしい。生きているのだ。息づいているのだ。日本全国6か所のロケ場所で撮影は決行されている。
海があり、森があり、都市があり、旧所名跡があり、それぞれの街の特長が四季を通して旅の記録を「記憶」するように映画を創っている。生まれるはずのなかった命はやがて望んでも我が子を授からない夫婦の元にやって来る運命。
そこに差し込む光、眩いばかりのそれが、雨上がりの世界を浄化させてゆく光景と相まって、人々の運命を切り開く物語。原作『朝が来る』をこの世界に誕生させた辻村深月の才能に嫉妬する。その物語を映画化できる喜びに打ち震えている。
小説の中で、二人の母をつなぐ子供「朝斗」のまなざしが表現されている部分を読んだとき、ああ、この世界を映像化できれば素晴らしいなと感じた。その「まなざし」が見る未来を美しく描くことができればと願っている。誰しもが誰かの「子」であり、「母」から生まれてきた事実を思えば、この物語の根幹で心揺さぶられる感情があるだろう。
そこには、この世界を美しいと想える、無垢な魂が見た、世界の始まりがある。
キャストはまだ発表されていませんが、監督の言葉から確かな演技力を持った俳優陣が集結していると窺えます。
また、自然や都市などの特徴と空気を捉えた監督ならではの映像も、観客を映画の世界へと誘ってくれる事でしょう。
子どもの目線を丁寧に切り取りつつ、ふたりの母の心の揺れや葛藤を描き出してくれると期待しています。
監督・河瀨直美のプロフィール
映画作家。生まれ育った奈良で映画を創り続けています。
大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ)映画学科卒業。
映画表現の原点となったドキュメンタリー『につつまれて』(1992)、『かたつもり』(1994)で、1995年山形国際ドキュメンタリー映画祭国際批評家連盟賞などを受賞し、国内外で注目を集めました。
1997年劇場映画デビュー作『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少受賞。
2007年『殯(もがり)の森』でカンヌ国際映画祭 グランプリを受賞。
2009年には、カンヌ国際映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞」を受賞し、2012年には日本人監督として初めて審査員を務めました。
2013年には『2つ目の窓』がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に4度目となる正式招待を受け、好評を博します。
2015年1月には、フランス芸術文化勲章「シュヴェリエ」を叙勲。
近年の代表作に、樹木希林主演、国内外でヒットを記録した『あん』(2015)、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品、同エキュメニカル賞を受賞した『光』(2017)、ジュリエット・ビノシュを主演に迎えた『Vision』(2018)など。
映画監督他、CM演出、エッセイ執筆などジャンルにこだわらず表現活動を続け、なら国際映画祭ではエグゼクティブディレクターとして奔走しています。
原作者・辻村深月のコメント
©『朝が来る』Film Partners
原作者の辻村深月は、初めて河瀨直美監督監督に会った時の感動を、こう伝えます。
「この映画を撮るにあたって、朝斗のまなざしというものは必要不可欠だと思っています」
河瀨直美監督と初めてお会いしたホテルのラウンジで、正面に立った監督が開口一番、私をまっすぐに見つめて、そう言った。
まだ互いに自己紹介もしていない、目が合った瞬間のことだった。
原作『朝が来る』はよく、産みの母親と育ての母親、「二人の母の物語」だと言われてきた。しかし、河瀨監督はそこに、幼い「朝斗」のまなざしなくしては成立しない世界をはっきり見ておられた。
その瞬間、震えるような感謝とともに、この人に、朝斗と二人の母親を、『朝が来る』の世界を託したい、と強く思った。脚本を読みながら、河瀨監督に何度も感謝を覚えた。
それは、彼らの物語を最初に生み出した私以上に、朝斗の、ひかりの、佐都子の、清和のことを考え、彼らの思いがより強く届くためにどうしたらよいのかを、心を砕いて考えてくれている人がいるということに対する途方もない感謝だ。作家として幸せを感じた。
ラスト、「原作でもこうすればよかった」と思える構成がある。けれど私が小説で書いてもきっとその光景には届かなかった。映画だからこそ監督が彼らをここに送り届けてくれたのだということが、はっきりわかる。
映画『朝が来る』。
私が見たもの、河瀨監督がその先に見たもの、幼い子ども「朝斗」が見た世界を、できることなら、あなたにもぜひ見てほしい。
辻村深月と目が合った瞬間に、映像化するにあたり大事にしたいものを伝えてきたという河瀨直美監督。
それは原作者である辻村も思いを込めていた、ふたりの母の間に佇む幼い子どもの目線でした。
作者の思いをくみ取り、それをさらに昇華して脚本にした監督。
映像だから描ける世界を、ぜひご覧ください。
原作者・辻村深月のプロフィール
小説家の辻村深月(つじむら みづき)は、1980年山梨県生まれ。
2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞し、デビュー。
2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞を受賞しました。
そして2018年には『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。
また、『映画ドラえもん のび太の月面探査記』(2019)においては、自身初となる映画脚本を手掛け、小説版も執筆し、話題になります。
他の著書に『ぼくのメジャースプーン』 『ふちなしのかがみ』 『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 『オーダーメイド殺人クラブ』 『島はぼくらと』 『盲目的な恋と友情』など。
映画『朝が来る』の作品情報
©2020『朝が来る』Film Partners
【日本公開】
2020年(日本映画)
【原作】
辻村深月『朝が来る』(文春文庫)
【監督・脚本】
河瀨直美
【共同脚本】
高橋泉
【制作・配給】
キノフィルムズ(木下グループ)
映画『朝が来る』のあらすじ
自分たちの子どもを授かることが叶わず特別養子縁組という手段を選んだ夫婦、中学生で妊娠し断腸の思いで子どもを手放すことになった幼い母。
出産をめぐる女性たちの葛藤やれぞれの人生を丹念に描きだします。
まとめ
世界が注目する河瀨直美監督の映画『朝が来る』。
辻村深月による同名の長編小説を原作とし、出産をめぐる女性たちの葛藤に迫ります。
既に4月16日に都内でクランクインをしており、東京の湾岸エリア、栃木、奈良、広島、似島(広島市)、横浜と、日本全国6か所での撮影を敢行中。クランクアップは6月上旬を予定しています。
キャスト発表は後日行われるとのことで、期待が高まりますね。
映画『朝が来る』は2020年10月23日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開です!