2017年夏にアニメーション映画としてリメイクされ話題を集めた岩井俊二監督の映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。
悩みを抱える女の子と、そんな彼女に密かに想いを寄せる男の子の小さな逃避行の物語。純粋な気持ちに共感し、懐かしい記憶を思い出します。
CONTENTS
1.映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の作品情報
【公開】
1993年(日本)
【監督】
岩井俊二
【キャスト】
奥菜恵、山崎裕太、反田孝幸、小橋賢司、ランディ・ヘブンス、桜木研人、石井苗子、深澤加奈子、山崎一、田口トモロヲ、中島陽子、麻木久仁子、光石研、小山励基、酒井敏也、こばやしふしまさ、蛭子能収
【作品概要】
1993年4月から9月まで放送されていたオムニバスドラマ『ifもしも』の一篇であったが、テレビドラマでありながら日本映画監督協会新人賞を監督を務めた岩井俊二が受賞したことで、再構成され劇場公開に至った作品。
この作品はミュージックビデオやテレビドラマの監督として活動していた岩井俊二の評価を上げ、映画作品を製作する大きなきっかけとなりました。
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2.映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のあらすじとネタバレ
花火大会の当日、小学校に登校していた典道は友達の祐介と共に当番であるプール掃除をサボってプールで遊んでいました。
そこにふたりが想いを寄せるなずなが現れます。
その日の朝、なずなは親の離婚をきっかけに二学期から転校する事が決まっていたのだが、そんなことは夢にも思わず典道と祐介はなずなに告白することを賭けて50メートル競走をします。
最初はリードしていた典道でしたが、25メートルで折り返しのターンを失敗し祐介に逆転負けをしてしまいます。
まだ典道が泳いでいる中、審判をしていたなずなと顔を見合わせた祐介は意外にもなずなの方から「好きだから」という理由で花火大会に誘われます。
祐介はこの誘いを受けますが、教室で友達の和弘らが話し合っていた打ち上げ花火は平べったいか?丸いのか?の議論に興味を持ち、その真意を確かめる為に灯台に登って横から花火を見る計画に参加してしまいます。
折り返しのターンで打った足の傷を祐介の実家の病院に診せにいくことになった典道は、祐介に「うちになずながいたら、今日行けなくなったって言っといてくんないかな」と耳打ちされます。
これをきっかけに典道は祐介がなずなに花火大会に誘われたことを知ります。
「なんでいかねぇの?」と疑問を投げかける典道に「あんなブス好きな訳ねぇじゃん」と祐介は言い放ちました。
典道が病院に着くと浴衣姿にスーツケースを持ったなずなが診察室で待っていました。
祐介は来ないことを典道が告げると、なずなは「あっそ」と病院を出ていきました。
なずなが気になった典道はあとを追いかけます。
気がついたなずなに「もし君を誘ってたら裏切らないで来てくれた?」と話しかけられた典道は「裏切らないよ」と返事をしますが「裏切るよきっと」となずなに言われてしまいます。
そしてまもなく、鬼の形相をしたお母さんに見つかったなずなは泣きながら家に連れ戻されてしまいました。
ちょうどその時灯台に向かう為、典道を迎えに来ていた祐介らと鉢合わせます。
「逃げんなよ」と祐介の顔を見た典道は声を荒げながら祐介を殴ります。そしてあの時、俺が勝手いればとひどく後悔しました。
ここで時が遡り、場面は典道と祐介の50メートル競争に戻ります。
今度は典道は折り返しのターンを失敗することなく祐介に勝ち、審判を務めるなずなに花火大会に誘われました。
浴衣姿に大きなスーツケースを持って来たなずなと家を飛び出した典道でしたが、なずなは花火会場には向かわずバスに乗り込んでしまいます。
振り回されるように仕方なくバスに乗り込んだ典道が「どこいくんだよ?」と聞くと「駆け落ち」となずなは言いました。
駅でバスを降り、電車を待つ30分の間になずなは大きなスーツケースに入っていた大人びた洋服に着替えます。
口紅をひき、私が養ってあげるから安心してというなずなは典道に「どう?16歳に見える?」と聞きます。
電車が到着し、切符を買って居なかったことに気づいたなずなは慌てて買いに行きます。
しかし、何も買わないまま戻って来ました。電車も行ってしまいます。典道が「切符は?」と聞くと「えぇ?なんのこと?」となずなは急にトボけて、家に戻るためのバスに乗り込んでしまいます。
すっかり花火は終わってしまっている中帰ってきた典道となずなは夜の学校のプールに忍び込み、服を着たまま水に浸かり楽しそうにはしゃぎます。
そしてなずなは最後に「今度会えるの二学期だね。楽しみだね」と典道に言い残し帰って行きます。
典道は帰り道、お祭りの屋台で偶然出会った担任の先生に紹介して貰った花火師に余った花火を打ち上げて貰い、真下から見ることで花火は平べったいのではなく、丸いことを知りました。
3.映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の感想と評価
幼くも不安定に揺れる、奥菜恵演じるなずなの愛らしさにハートを撃ち抜かれてしまいました。きっとこの映画を観た人の中にも同じような犠牲者は多いはずです。
元水泳部だった僕の口から言わせて貰いますと、水の中から見上げるプールサイドの女の子というのは本当に可愛いく天使のように見えるものなのです。
岩井作品の『四月物語』の松たか子しかり、『リリィ・シュシュのすべて』の蒼井優しかり、岩井俊二監督は女性を魅力的に撮るのにすごく長けているなとつくづく感じます。
「大人に近づいていく」というのがこの作品のテーマだと思うのですが、やはりこれを作品上で体現しているのもなずなです。
小学生には逃げ場という物がほぼ存在しません。突然、都合を突きつけられてしまえば従う他無いというのがおおよその事実だと思います。
その都合が訪れてしまったなずなは「裏切り」という小学生には似合わないなずなのセリフからも痛いほど分かるように深く絶望し、またしても似合わない「駆け落ち」という形で反発するものの最後には全てを受け入れて、笑顔で「二学期が楽しみだね」と典道に告げます。
本当に切ない花火のようななずなの逃避行は、形は違うものの自分自身の思い出と重なり懐かしくも儚い気持ちで胸がいっぱいになりました。
花火のようにパッと弾けて、そして燃え終わる時に“大人”というものに近づくものなのかも知れません。
あらすじでは省いてしまいましたが、花火を横から見る為に灯台に向かう祐介ら一行はロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』のようで、こちらもとても楽しめました。
目的に向かって悪戦苦闘する少年たちってどうしようもなく輝いてみえます。和弘の容姿は『スタンド・バイ・ミー』に登場するテディにとてもよく似ています。
田口トモロヲ、蛭子能収、酒井敏也など脇を固める大人たちもとても個性的で魅力的です。
特に蛭子さんの「なんだったっけなぁ?」は何度観ても、独特のゆるさがあり大好きなシーンです。
思いがけない役者が出演しているので、そちらに注目して見るのもこの映画を楽しむひとつの方法かも知れません。
まとめ
幼少時代にしか起こらない素敵で儚い感情が胸いっぱいになること間違いなしです。
なずなの逃避行に連れられて、懐かしい記憶を思い起こしてみましょう。
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