Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

映画『ICE ふたりのプログラム』あらすじ感想と評価解説。フィギュアスケートの活躍は再起不能とナージャが手にした“感動”とは⁈

  • Writer :
  • 谷川裕美子

何度も立ち上がるヒロインの美しさ

フィギュアスケートにすべてを捧げてきたヒロインの夢と恋を描くロシア発のハートフルラブストーリー『ICE ふたりのプログラム』は2023年2月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショーです。

監督はオレグ・トロフィム。本国ロシアで大ヒットを記録した話題作で、2020年に公開された続編『ICE2』(英題)も人気を博しました。

主演をロシアの名女優クセニア・ラパポルトの娘アグラヤ・タラーソヴァが務め、人気俳優のアレクサンドル・ペドロフ、マリヤ・アロノーヴァが共演します。

美しいフィギュアスケートシーンとクオリティの高い映像制作技術に心奪われる一作です。

亡くなった母とともに抱いた、フィギュアスケートへの夢をひたすら追い続けるヒロインの姿に胸打たれます。

最後にナージャが手にしたものとはいったい何だったのでしょうか。

氷で凍てつく大地の風景も印象的な、本作の魅力についてご紹介します。

映画『ICE ふたりのプログラム』の作品情報


(C)2017 VODOROD PICTURES LTD., ART PICTURES STUDIO LTD., FSUE VGTRK, All Rights Reserved

【公開】
2023年(ロシア映画)

【監督】
オレグ・トロフィム

【脚本】
アンドレイ・ゾロタレフ、オレグ・マロビチュコ

【出演】
アグラヤ・タラーソヴァ、アレクサンドル・ペトロフ、ミロシュ・ビコヴィッチ、マリヤ・アロノーヴァ

【作品概要】
オレグ・トロフィム監督による、フィギュアスケートに人生を懸けてきたヒロインの夢と恋を描く心温まるラブストーリー。

2018年に本国ロシアで公開され、『ブラックパンサー』(2018)『フィフティ・シェイズ・フリード』(2018)などの大作を抑えて2週連続1位を獲得しました。

その年の年間興行収入4位を記録し、2020年に公開された続編『ICE2』(英題)も大ヒットを記録しています。

主演はロシアを代表する名女優クセニア・ラパポルトの娘アグラヤ・タラーソヴァ。

本国で最も有名な授賞式の一つゴールデンイーグル賞で2度の受賞を果たす人気俳優アレクサンドル・ペドロフ、続編『ICE2』(英題)での演技が認められゴールデンイーグル賞助演女優賞を受賞したマリヤ・アロノーヴァらが共演しています。

映画『ICE ふたりのプログラム』のあらすじ


(C)2017 VODOROD PICTURES LTD., ART PICTURES STUDIO LTD., FSUE VGTRK, All Rights Reserved

幼いころからフィギュアスケート選手になることを夢見ていたナージャ。コーチのイリーナからスケートには向いていないといわれてしまいますが、母は変わらず娘の力になってくれていました。

しかしその母が早くに亡くなってしまい、ナージャは叔母に引き取られます。

ナージャは偶然再会したイリーナにスケートを教えてほしいと頼みますが、再び断られてしまいました。それでもあきらめないナージャに根負けしたイリーナは、彼女を生徒に受け入れます。

厳しい訓練を乗り越えたナージャは、最高のスケーターであるレオーノフのパートナーに選ばれ、ペアスケートで国を代表する競技者へと成長しました。私生活でもふたりは恋人となります。

しかし、ある大会でのレオーノフのミスによりナージャは大怪我を負い、下半身が動かなくなってしまいました。

レオーノフと別れてイリーナのもとに帰ってきたナージャは、希望を失い塞ぎ込みます。イリーナは、アイスホッケー選手で明るく前向きな青年サーシャに、ナージャのリハビリの手伝いを頼みました。

無茶なサーシャに振り回されながらも、ナージャは元気を取り戻し始めます。ある日、アクシデントに驚いたナージャは、思わず車いすから自分の足で立ち上がりました。

その後、ナージャの足は順調に回復していき、とうとう再びリンクに立つ日を迎えましたが…。

映画『ICE ふたりのプログラム』の感想と評価


(C)2017 VODOROD PICTURES LTD., ART PICTURES STUDIO LTD., FSUE VGTRK, All Rights Reserved

胸を打つヒロインの不屈の精神

観終えた後にじわーっと幸せな気持ちがあふれ出る、ハートフルなラブストーリーです。数々の試練にあいながらも負けずに何度も立ち上がり、人生に立ち向かうヒロインの姿に心揺さぶられます。

主人公のナージャは、幼くして母を亡くすという悲しい運命を背負いながらも、スケートへの情熱を失わない強い女の子でした。初めはナージャに素質はないと思っていたコーチのイリーナも、誰よりも努力家である彼女の強さを認め、国を代表する選手にまで成長させます。

兵士を訓練するかのように子どもたちに対して厳しいイリーナですが、実はとても心温かな女性です。イリーナとナージャの熱い師弟関係も本作の大きなみどころとなっています。

しかしその後、優れたスケーター・レオーノフの公私ともにパートナーとなり、スケートでも恋でも絶頂にあったナージャは、競技中に大ケガをして歩けなくなってしまいます。

心も壊れかけたナージャのために動いたのは、親同然に彼女を育て愛してきたイリーナでした。彼女は明るくてちょっと乱暴なアイスホッケー選手のサーシャを、ナージャのリハビリ相手に選びます

ナージャを救うサーシャは本当に魅力的です。少年のような瞳を持ち、スター・ウォーズが大好きで、粗野な面があるけれどもどこまでもやさしい彼は、誰もが愛さずにはいられない青年でした。 

最初は無茶な彼に振り回されて反発していたナージャも、彼の温かさを理解してからは心を開き、とうとう自分の足でリンクに立てるまでに回復を遂げます。

お互いに孤独な魂を持つふたりが、次第に心通わせていく姿から目が離せません。

歌が紡ぐ喜びと悲しみ


(C)2017 VODOROD PICTURES LTD., ART PICTURES STUDIO LTD., FSUE VGTRK, All Rights Reserved

途中で何度も歌が挿入されミュージカル調となっていることが、本作の大きな特徴です。そのときどきの心情を映し出す歌詞とメロディが効果的に流れます。

小さな女の子たちが厳しいスケートレッスンを受けるシーンの悲喜こもごもや、ナージャがレオーノフとパートナーと組むことになったときの高揚感など、さまざまなシーンを魅力的な彩る曲たちに心奪われることでしょう。

このミュージカル的な構成が、思わぬ形でラストシーンにつながります。どうぞ楽しみにしながら、最後までナージャの姿を見守ってください。

まとめ


(C)2017 VODOROD PICTURES LTD., ART PICTURES STUDIO LTD., FSUE VGTRK, All Rights Reserved

冷たい氷の上で繰り広げられるストーリーなのに、観るほどに心がポカポカと温まる『ICE ふたりのプログラム』

フィギュアスケートの華麗な映像や、厚く氷の張った湖の景色、主人公たちの心がやさしく溶け合っていくさまなど、みどころたっぷりとなっています。

困難に立ち向かうことで愛と希望を手に入れていくヒロインから、たくさんの大切なことを教えられる作品です

氷上のハートフルラブストーリー『ICE ふたりのプログラム』は2023年2月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショーです。



関連記事

ラブストーリー映画

映画『ラブセカンドサイト』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の評価。大人のラブストーリーをフランソワ・シビルが演じて“真実の愛”を知る

最愛の女性が自分を知らない世界に迷い込み本当の“愛”を知るラブストーリー 『あしたは最高のはじまり』のユーゴ・ジェラン監督、『エール!』の制作陣が再タッグ! 若くして結婚したユーゴ・ジェラン監督が「一 …

ラブストーリー映画

映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』ネタバレあらすじと感想評価。山田杏奈と鈴木仁で青春漫画実写化を瀬田なつき監督が描く

『ジオラマボーイ・パノラマガール』は2020年11月06日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開! 1980~90年代に若者たちのリアルな恋や友情を描くマンガを数多く生み出し、今でも熱狂的な指示を受 …

ラブストーリー映画

窪田正孝映画『初恋』あらすじネタバレと感想。結末で三池崇史のラブストーリーはどう終止符を打つのか解説

『初恋』の日本公開日は2020年2月28日。 今回ピックアップするのは日本国外でも人気を博す映画監督、三池崇史による初のラブストーリー『初恋』です。 日本での公開は2020年2月28日ですが、先駆けて …

ラブストーリー映画

『マンティコア』あらすじ感想と評価解説。心に“怪物”を宿したゲームデザイナーを取り巻くインモラルロマンス

タブーを超えた衝撃の境地。この結末は愛か、悲劇か? 2014年の長編デビュー作『マジカル・ガール』で第62回サン・セバスチャン国際映画祭グランプリ&監督賞を受賞したカルロス・ベルムトの最新作『マンティ …

ラブストーリー映画

『アイスクリームフィーバー』あらすじ感想と評価解説。キャスト吉岡里帆らの青春ラブストーリーが小さな“アイスクリーム屋で展開”⁈

映画『アイスクリームフィーバー』は2023年月7月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイント他にて全国ロードショー! 芥川賞作家・川上未映子の短編小説『アイスクリーム熱』を原案に、世代の …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学