美しく情熱的なエマに誰もが魅了されてしまう。そんなエマが仕掛ける“愛の罠”
一人の奔放な女性の愛を描く『エマ、愛の罠』は10月2日から新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラスト有楽町ほかにてロードショー。
官能的でエモーショナルなダンスで人々を魅了し、火炎放射器を構えた姿は中性的な魅力を感じる、新時代のヒロイン、エマ。チリの名監督パブロ・ララインが手掛けた奔放な愛が展開します。
突然養子縁組した息子を奪われ、仕事も奪われてしまったエマが人々を魅了し、手玉にとりながら虎視淡々と計画を実行していく……そのきわめて不道徳な“愛の罠”を知ったとき、観客は衝撃をうけ、エマに魅了されてしまいます。
映画『エマ、愛の罠』の作品情報
【日本公開】
2020年(チリ映画)
【原題】
Ema
【監督】
パブロ・ラライン
【製作】
フアン・デ・ディオス・ラライン
【脚本】
ギレルモ・カルデロン、パブロ・ラライン、アレハンドロ・モレノ
【撮影】
セルヒオ・アームストロング
【編集】
セバスティアン・セプルベダ
【音楽】
ニコラス・ジャー
【キャスト】
マリアーナ・ディ・ジローラモ、ガエル・ガルシア・ベルナル、パオラ・ジャンニーニ、サンティアゴ・カブレラ、クリスティアン・スアレス
【作品概要】
監督を努めたのは『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』(2017)、『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』(2017)などで知られるチリの名監督パブロ・ラライン。本作で初めて現代のチリを舞台に描き、新たな時代のヒロインエマの奔放な愛を描くドラマ。
そんな主演エマを演じたのはチリの新鋭女優、マリアーナ・ディ・ジローラモ。パブロ・ラライン監督が出会って10分後にはこの映画の主演をオファーしていたというほど、魅力に溢れた女優だったそうです。エマの夫である振付師のガストンを演じるのは『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)、『バッド・エデュケーション』(2004)などで知られるメキシコの俳優ガエル·ガルシア·ベルナル。
映画『エマ、愛の罠』のあらすじとネタバレ
燃える信号機、火炎放射器を持つエマの姿。センセーショナルなシーンが映し出された後、場面が切り替わります。
若く美しいダンサー・エマ(マリアーナ・ディ・ジローラモ)は、振付師の夫・ガストン(ガエル·ガルシア·ベルナル)との間に子供はなく、養子縁組で移民の子ポロを息子として迎え入れますが、ポロが火をつけエマの姉に火傷をさせたことにより、ポロは施設に返されてしまいます。
ポロを奪われた上に、エマは金髪の派手な姿やポロの問題が原因で仕事先も止めることになってしまいます。
そして、エマは夫が性的に不能であることを責め、夫はエマがポロを捨てたと責め、2人の結婚生活は次第に破綻していきます。
また、夫が振付師を務めるダンサーグループでも、エマを中心とした友人らと、夫との間で対立が生じ、エマは友人らとそのダンスグループすらやめてしまいます。
一方でエマは女の友人らと“ある計画”について話し、その計画を実行し始めます。
映画『エマ、愛の罠』感想と評価
火炎放射器で火を吹き放ち、エモーショナルで官能的なダンス。何を考えているかわからず、何かを狙っているような目つき。まさに新しい時代のヒロインにぴったりな、ジェンダーレスで魅力的なエマ。
燃えている信号機から始まるこの映画。危険を警告する役割を持つ信号機が燃やされているということは、この映画が描こうとしている愛の形、ヒロインであるエマのあり方に対して観客に警告の象徴と捉えることもできるのではないでしょうか。
そんなシーンから始まる本作はまさに固定概念を覆す規格外の映画と言えるかもしれません。
養子の息子ポロが事件を起こし、施設に返されてしまいます。児童福祉局にポロの行き先をたずねに行っても教えてもらず、外見などを理由に仕事もなくなってしまいます。
そんなエマは取り戻されたものを取り返すかのように、緻密に計画を実行していきます。児童福祉局の知り合いなどを伝ってポロの現在の養子縁組先を聞き出し、その夫婦にそれぞれ取り入り、自身の魅力にしてしまう。
その人の求めるものを与えるエマの天性の魅力。自由奔放で性別などお構いなく関係をもち、不適に笑う。
2人を虜にしたエマは性的に不能な夫の代わりにポロの養子縁組先である消防士の子を授かります。
そしてポロのいる学校に就職することで、ポロとの再会も果たし、いよいよ夫婦の前に妊婦として姿を表すのです。
自由奔放に行動していたかのように見えたエマの行動が全て繋がりその計画の全貌が見えた時、観客はショックと驚きと、様々な感情を覚え、エマの虜になってしまうでしょう。
そしてエマの大胆な行動の奥には、家族というものに対する固執・愛ではないでしょうか。
計画を実行し、自身の子供とポロと再会を果たし、かつてのようにやや歪ながら家族になれたエマは心なしか幸福そうに見えます。
彼女の行動の奥にある“愛”は新たなヒロイン像と共に印象強く残ります。
まとめ
チリの映画、『エマ、愛の罠』について紹介してきました。
昨今、今までの固定概念を覆す、ボーダーレスな映画、考え方が広まっています。そんな中公開された本作は、刺激的でありながらも観客自身の固定概念をも覆し、新たな視点で新たなヒロイン像を打ち出した画期的な映画と言えるでしょう。
この映画、そしてヒロイン・エマを象徴ともいうべきエモーショナルなレゲトンダンスも魅力の一つです。
魂の開放を象徴し、官能的で、大胆で美しいダンス。そして世界観を彩るエモーショナルな音楽と映像美をぜひ堪能してみてください。