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Entry 2018/01/06
Update

映画『勝手にふるえてろ』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

  • Writer :
  • 桃から生まれた尻太郎

中学生の頃から思いを寄せている“イチ”と告白された同僚の“二”。

好きな人と好きになってくれた人の間で揺れる、不器用で精神不安定気味な女の子の恋の物語。

主人公良香の妄想力が炸裂している愉快な作品をご紹介します。

1.映画『勝手にふるえてろ』作品情報


(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

【公開】
2017年(日本映画)

【監督】
大九明子

【キャスト】
松岡茉優、渡辺大和、北村匠海、石橋杏奈、趣里、前野朋哉、池田鉄洋、稲川実代子、柳俊太郎、山野海、片桐はいり、古舘寛治、松島庄汰、沖田育史、後藤ユウミ、増田朋弥、金井美樹、梶原ひかり

【作品概要】
芥川賞作家で知られる綿矢りさの小説『勝手にふるえてろ』を映画化した作品。映画『ちはやふるー結びー』などで評価を高めていた松岡茉優の初主演映画である。

第30回東京国際映画祭のコンペティション部門で観客賞受賞。

2.映画『勝手にふるえてろ』あらすじとネタバレ


(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

生まれてこのかた26年間彼氏も男性経験もないOLの江頭良香。

良香には中学生の頃から思いを寄せ続けている“イチ”という男性がいました。

イチはクラスの人気者で全員からの注目の的であり、良香は“視野見”という焦点を合わすのではなく、視野の隅っこで見るという方法でしかイチを見れずにいます。

しかし、体育祭でイチに服の裾を捕まれ「俺を見て」と言われました。

それ以来、卒業し会わなくなってからも良香の頭の中はイチでいっぱいなのでした。

ある日、良香は会社の飲み会に参加しています。

テンションの高いノリに居心地が悪く出て行こうとしたその時、会社の同僚に呼び止められます。

そして良香のことが前々から気になっていたことを告白し、この飲み会も良香と接点を持つ為に開いたことも白状し、付き合って欲しいむねを伝えます。

名前を覚えることが苦手な良香はその同僚が書類の1+1を間違えていた記憶から“ニ”と呼びます。

ニへの返事は保留のまま。イチへの思いが忘れられない良香は同級生になりすましたfacebookアカウントを作成し、利用してイチに会うべく同窓会を企画します。

同窓会当日、現れたイチの姿は良香が好きだったあの頃のままでした。後ずさりしてしまいそうな気持ちを懸命に奮い立たせ、良香はイチとの共通点である上京している組に声を掛けました。

そしてもう一度、上京した組で飲み直すという約束をすることに成功します。

IT関係の仕事で大成功している同級生が住むタワーマンションで行われることになった上京組飲み会に良香が向かう途中、偶然にもニが良香を見つけ話しかけます。

良香は邪険そうに返答をしますが、同じくタワーマンションに向かうイチを見つけ良香はその後ろを着いて行きます。

その光景に不安を持ったニは2人の後を追いかけタワーマンションに潜入しました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『勝手にふるえてろ』ネタバレ・結末の記載がございます。『勝手にふるえてろ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

なんとかニを振り切り飲み会に参加していた良香でしたが、軽いノリについていけず終始浮いてしまっており、なかなかイチと話す機会を見出せずにいました。

しかし夜も深まり他のメンバーは外出していたり寝てしまっていたりして、ふたりきりという絶好のチャンスが巡ってきます。勇気を出して良香は話かけ中学生の体育祭の思い出を告げると、イチも覚えていたのでした。

さらにふたりは絶滅した生物好きという変わった趣向も一致し、和気あいあいと会話は続きました。

いい雰囲気かと思われましたが、良香はあることに気づきイチに「イチって人のこと“きみ”って呼ぶ人だっけ?」と質問します。するとイチは笑いながら「ごめん。名前なんだっけ?」と返答します。

憧れの人に名前すら覚えてもらっていなかったことに深く傷ついた良香は、泣き笑いの表情を浮かべ飲み会をあとにします。

そんな時、良香の頭の中にはニのことが浮かびました。

その後、ちょうどいいって大切だと思う。バランスが悪いとつらいし、良いと収まりがいい。という考えを持って良香はニとのデートを繰り返します。

自分のことを思ってくれるニに心が安定し、良香は幸せを感じ始めていました。

そしてやがてピクニックをしている途中、ニと付き合うことになりました。歓喜するニは良香にキスを迫ります。しかし良香はこれに悲鳴を上げて逃げ出してしまいました。

翌日、会社でニは良香にキスを迫ったことを詫びます。「ごめん。良香は男性経験ないのに」と。

コンプレックスであった男性経験がないことを友人から聞き出していたこと、友人が漏らしたことに憤慨した良香は表情を無くします。

ニに「いまの言葉で決めた」とこぼし、ずっとイチという思いを寄せ続けている男性がいること、イチのことが好きなこと、だからニとは付き合えないことを告げ、冷たくニを振りました。

何もかもがどうでも良くなった良香は、妊娠したと嘘をつき会社を休もうとします。

しかし許可はおりず結局、妊娠したらしいという嘘が社内中に流れ、有給休暇をとることになってしまいました。

なにもかも失い、ひとりきりで過ごす数日を通して「これが孤独か」と良香は漏らします。

徐々に徐々にニのありがたさが込み上げてきた良香は意を決してニの携帯に連絡します。しかし、ニはすでに良香のことを着信拒否していました。

良香は発狂し、今度は会社のお問い合わせに電話をかけニを呼び出すと「今すぐ来て」と告げました。

大雨の中、やって来たニは「一応来たけど、何?」と面倒臭そうに良香に伝えます。

良香は妊娠したことが嘘であること、本当に自分が今思っていることをニにぶつけました。

ニは「それでも好きだと思ってしまっている。それでも一緒にいたいと思ってしまっている」とどうしようもないといった表情で良香に告げます。

ニの言葉を聞いた良香は「絶対うまくやる。絶対うまくやるから、これからも好きでいて」とニに抱きつきました。

そして“霧島くん”と初めてニの名前を呼びキスをしました。

3.映画『勝手にふるえてろ』感想と評価


(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

情緒が不安定な女性が主人公と言えばこの人。と僕の中でおなじみであり愛しの綿矢りさ原作映画。

今回も非常に情緒が不安定で悩んでいて錯乱していて非常に魅力的な主人公でした。

とにかく松岡茉優がすごい!

この作品の主人公は嬉しがったり、落ち込んだり、ポジティブだったり、ネガティブだったりetc…、星の数ほどある感情が主人公の頭の中でめまぐるしく変わります。

観ている観客が「今はどう思ってるんだろう?」と置いてけぼりにされることもしばしばあるほど、しかしそれが先の読めないこの映画の面白味にも繋がっています。

行動や思考自体に悪意があったり、負の感情だったり気持ちのいいものばかりではないので、主人公のことが嫌いになる人もいるんじゃないかという役なのですが松岡茉優は愛想の良いキラキラした表情、無、憤慨、理不尽などその全てを魅力的に演じていました。

“痛い女”や“救えない女”として観客が主人公を見放すのではなく“面倒臭いけどなんだか頑張って欲しい女の子”として感情移入できます。

これはこの作品を映像化を成功させる上で非常に大きなウエイトを占めていおり、鬼門だったと思うのですが松岡茉優は見事達成しています。

松岡茉優が魅力的だった『ちはやふる 下の句』(2016)

また、2016年4月に公開された『ちはやふる 下の句』の中で、松岡茉優は非常に魅力的なライバルを演じていました。

主人公を演じる広瀬すずも魅力的ですし、作品も気持ちのいい青春映画ですので『勝手にふるえてろ』で茉優ちゃんが気になった方は是非観てみてください。

さらに松岡茉優も引き続き、『ちはやふるー結びー』に出演するということで非常に楽しみです。

突然始まるミュージカル!

この作品の演出の素晴らしさをご紹介させて下さい。

冒頭から中盤あたりまで性格を拗らせており、引っ込み事案な良香が不自然なまでに可愛いカフェの店員や釣りをしているおじさん、三つ編みのコンビニ店員、オカリナを吹く隣人などと親しく自分の近況を話します。

内容は本当に些細なことで、可愛いカフェの店員さんに「綺麗な髪だね」とか釣りをしているおじさんに「今日もいるね!」などです。

人当たりのいい女の子なんだなとなんとなく納得して物語は進んで行くのですが中盤、良香の心境の変化をきっかけにミュージカルが始まります。

そのミュージカルは次々と良香の現実を明らかにしていきます。
可愛いカフェの店員さんはお人形さん見たいで話したかった。
いつも釣りをしているおじさんは普段何をしているか聞きたかった。
三つ編みのコンビニ店員はこんな特徴的な人と話して見たかった。

などなど、これまでの親しく話していたものは全て良香の妄想であり実際はよく見かけるだけの他人だったことが判明します。

これによって如何に良香の日常が人との関わりが少ないか、希薄かということが浮き彫りになりとても切ないです。

またこれは現実世界を生きる僕たちにも言えることであり、激しい共感を覚えました。

この演出もこの作品の大きな魅力のひとつです。

ミュージカルで種明かしというのも、散々なことを明るく言ったりする良香らしくてとても素晴らしいなと思いました。

4.まとめ


(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

男の僕でも十分に楽しめる作品でしたが、鑑賞した女性の友人が良香の思考や行動に共感の嵐を起こしていたので女性に非常におすすめな作品だと思います。

モヤモヤが爆発してしまいそうなあなた、爆発しきっているこの作品を観てすっきりしてみてはいかがでしょうか?

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