過酷な運命に抗う3人の男女
『ドクトル・ジバゴ』は、『アラビアのロレンス』(1988)の巨匠デヴィッド・リーンによる傑作ヒューマンドラマ。
ロシア革命に翻弄された男女の愛を壮大なスケールで描き、第38回アカデミー賞で5部門に輝きました。
出演は『アラビアのロレンス』(1988)のオマー・シャリフ、『ダーリング』(1968)『赤い影』(1983)のジュリー・クリスティ。
ロシア革命の前後の厳しい環境の中、さまざまな思いが交錯します。過酷な運命の中、愛に生きた人々の姿を綴る名作の魅力をご紹介します。
映画『ドクトル・ジバゴ』の作品情報

(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
【公開】
1966年(イタリア・アメリカ合作映画)
【原作】
ボリス・パステルナーク
【監督】
デヴィッド・リーン
【脚本】
ロバート・ボルト
【キャスト】
オマー・シャリフ、ジュリー・クリスティ、ジェラルディン・チャップリン、トム・コートネイ、アレック・ギネス、ラルフ・リチャードソン、ロッド・スタイガー、シオバン・マッケンナ
【作品概要】
『アラビアのロレンス』(1988)、『戦場にかける橋』(1957)の巨匠デビッド・リーン作品。
ロシアの文豪ボリス・パステルナークの同名小説を映画化し、1966年・第38回アカデミー賞で5部門を受賞しました。挿入曲「ラーラのテーマ」も印象的で、作曲のモーリス・ジャールがアカデミー作曲賞を受賞しています。
ロシア革命で分断されたロシアを舞台に、医者のジバゴと2人の女性との愛を壮大に綴ります。
『アラビアのロレンス』(1988)のオマー・シャリフがジバゴ、『ダーリング』(1968)『赤い影』(1983)のジュリー・クリスティがラーラを演じます。
共演はジェラルディン・チャップリン、トム・コートネイ、アレック・ギネス。
映画『ドクトル・ジバゴ』のあらすじとネタバレ

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第二次大戦後、ソビエトの将軍イエブグラフ・ジバゴは、腹違いの兄ユーリの娘と思われる少女トーニャ・コマローバと、モンゴル国境近くのダムの事務所で会いました。
彼女は両親の顔も名前も知りませんでした。イエブグラフは、トーニャの父ユーリの生涯について話し始めます。
19世紀末。ユーリ・ジバゴは幼くして孤児となり、モスクワに住む親戚の科学者グロメーコに引き取られました。
その家の一人娘トーニャと共に不自由なく育てられ、ユーリは医学生となります。詩人としても活躍する彼は、トーニャと愛し合うようになり婚約しました。
一方、17歳のラーラは仕立屋を営む母アメリアと暮らしており、恋人のパーシャはボルシェビキに傾倒していました。アメリアのパトロンである弁護士コマロフスキーは、若く美しいラーラにも手を出します。
ある晩、デモに参加したパーシャはロシア帝国の騎馬隊に襲われ、顔に傷を負ってラーラの家に現れました。官憲に追われている彼は、ラーラに銃を預けます。
コマロフスキーと娘の関係を疑ったアメリアが服毒自殺未遂を起こしました。コマロフスキーから依頼を受けた医師のカート教授と共にユーリも現場に駆けつけます。
処置を終えたユーリは、偶然コマロフスキーとラーラのただならぬ関係を見てしまいました。
その後、ラーラがパーシャと結婚すると報告すると、コマロフスキーは嫉妬し、ラーラの純潔を無理矢理奪います。ラーラは怒りに震え、パーシャの銃を手に彼のいるクリスマスパーティー会場へ乗り込みました。
ユーリとトーニャの婚約が発表される中、ラーラはコマロフスキーに向けて発砲します。しかし、コマロフスキーは通報しないように周囲の人々に言い、ラーラは駆けつけたパーシャと共にその場を離れました。
ユーリはコマロフスキーの怪我の手当てをしてやりますが、彼がラーラへを軽蔑する言葉を言ったために不快感を抱きます。
その後、ラーラはパーシャと結婚して娘を授かりました。ユーリもまた、トーニャと結ばれて息子が生まれます。
1914年。第1次世界大戦が起き、パーシャは出征したまま戻りませんでした。医師として従軍したジバゴは、夫を探すために戦場で看護師として働いていたラーラと再会します。
映画『ドクトル・ジバゴ』の感想と評価

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雪の大地で織りなす壮大な愛の物語
極寒の大地を舞台に織りなす人間ドラマに圧倒される大作です。一面雪に覆われた、凍てつくロシアの厳しい気候。
逃げ出そうとする兵士や、権力に逆らう民衆を冷徹に撃ち殺していくロシアの上官たち。一番恐ろしいのは軍国主義の権力者だということが、ひしひしと伝わってきます。
主人公のユーリは正義心の強い医者であり、自由な心を持つ詩人でもありました。彼は幼い頃から共に育った妻トーニャを心から愛していながらも、美しく献身的な心を持つラーラと恋に落ちます。
ユーリを愛した二人の女性、ラーラとトーニャは、互いを素晴らしい人間だと認め合います。彼女たちはあまりにもユーリを理解しすぎていました。
夫宛の手紙をラーラに託した妻トーニャの深い思い。ユーリとの間に授かった娘に、トーニャと名付けたラーラの愛情深さ。ままならない人生の中で、懸命に生きる美しい女性たちの切なくも美しい感情が織りなすドラマに、心奪われることでしょう。
このように美しい魂を持つ女性2人を、ユーリが同時に愛してしまったのは必然だったと思わずにはいられません。
懸命に生きる人々の思い

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主要キャストのユーリ、ラーラ、トーニャを取り巻く人々の懸命な思いも、作品を重厚なものにしています。
コマロフスキーの揺れ動く心情は、ユーリたちの人生に重要な役割を果たします。17歳の若いラーラを誘惑し、貶めた悪人として登場しますが、最後は彼女の命を救うために奔走します。
助けるという申し出を一度強く拒絶されながらも、ストレルニコフ銃殺の翌日に再び駆けつけずにいられなかった強い思い。自身でも気づかないほどにラーラを深く愛していたのでしょう。
最終的に、ラーラの大事な娘トーニャの手を戦場で離してしまうという大きな失態を起こします。悪意はなかったかもしれませんが、未必の故意だったのではないでしょうか。
対して、ユーリの腹違いの弟のイエブグラフの存在感は圧倒的です。彼は本作の語り手としての重要な役も担っています。
感情を殺して生きてきたイエブグラフにとって、自由な心を持つ詩人のユーリは眩しく、愛さずにはいられない存在でした。
イエブグラフは最後までユーリを守り続け、ラーラのためにはぐれてた娘探しに尽力します。やがて、イエブグラフはラーラのことも愛するようになるのです。
そして長い年月をかけ、とうとうユーリとラーラの娘トーニャを見つけ出します。この少女の存在こそが、壮大なる本作を美しい完結へと導いたといえるでしょう。
トーニャが背負うバラライカは希望の灯火です。両親の顔さえ覚えていないはずの娘へと確かに受け継がれていた才能。イエブグラフの心の奥底に熱く広がる喜びが伝わってくる、最高のラストシーンです。
まとめ

(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
血を流す戦いに身をやつすことが、どれほど人々を傷つけ苦しめるかを描き出す超大作『ドクトル・ジバゴ』。現実の世にも通じる、悲しみと切なさを抱いた作品です。
過酷な環境にあるからこそ、人は幸福を求めずにはいられないのでしょう。凍てつく大地に生きるからこそ、人のぬくもりが何より大切に思えるに違いありません。
ユーリが愛するラーラに残した美しい詩、ユーリのために危険を承知でラーラが産んだ娘、そして、ユーリの母からつながるバラライカの絆。
人がこの世を去った後にも、受け継がれた美しいものたちがキラキラと輝き続けます。


































