雨宮慶太による、牙狼の称号を受け継ぐ魔戒騎士が、人間の邪心を元に発生する怪物ホラーとの戦いを描いてきたシリーズ。
このたび劇場版アニメとして映画『薄墨桜-GARO-』が公開されました。
映画公開にあわせて、星明役として出演する朴璐美さんにインタビューを行いました。
朴璐美さんは『鋼の錬金術師』『進撃の巨人』『NANA』などでも知られ、「第1回声優アワード」で主演女優賞を受賞するなど声優としては勿論のこと、映画・舞台・アニメ・吹き替え・ナレーション、プロデュースなどその活躍は多岐に渡ります。
今回は映画『薄墨桜-GARO-』の役作りから女優としての想いなど、“今を生きる朴璐美さんの魅力”をお届けします。
星明について
ー映画『薄墨桜-GARO-』(以下、『薄墨桜』)で朴さん演じる星明とはどんな役ですか?
朴璐美(以下、朴):魔戒法師で、陰陽師でもあるんですが、正統派の陰陽師というよりは少しアウトローな陰陽師といった役どころです。雷吼という魔戒騎士と一緒に行動している女の子です。この子自身の複雑な生い立ちがテレビシリーズでは描かれていました。
「GARO」シリーズは結構大人な作品で、今回の『薄墨桜』ではあまり描かれていませんが、(星名は)自分の身体を犠牲にした過去もあるんですよ。
ーその複雑な過去が、本作での憂いに通じていました。
朴:そうですね。雷吼との関係っていうのも、通り一遍等な関係ではなく、つっけんどんにしてるけれど、雷吼なしでは星明はいられないような関係でもありますから。
ー強さと弱さが渾然一体となりそこに色気がある。とても朴さんらしい役だと感じました。
朴:恥ずかしいですね(笑)。
テレビシリーズでは、オファーを受けた当初は宝塚の男役みたいな感じでやって欲しいと言われていたんです。
それで第1話の収録で現場に入ったら、ギャルでやってくれって言われて、星明はいったいどういう役なんだろうと改めて考えさせられ、この星明という役と一緒になるにはどうしたら良いのか、試行錯誤を繰り返しました。
それでやっと、そういうものを踏襲して『薄墨桜』に臨めたかなといったところはあります。
ーテレビシリーズで役に幅があったからこそ行き着いたところもあるのでしょうか?
朴:そうですね。あれがあったからこそ『薄墨桜』での今のカタチになったんじゃないかというのはありますね。
本物でいたいから「生き様」を「さらす」
ー『鋼の錬金術師』や『NANA』のころから、更に進化していて「大人の女性」という印象を受けました。
朴:もう46歳ですからね(笑)。いい加減大人にならないと。
いつまでも子供ではいられないので、ちゃんとしないとなって思いながらやってますよ(笑)。
役には結局「生き様」みたいものが出るので、がむしゃらに頑張ってた頃の自分よりも、40代に入って歳を取る事が楽しくなってきているし、歳を重ねたことで精神が自由になってくる。だけども肉体がちょっと追いついてこないっていう、すごいアンバラスな状態を、今とても楽しいなって感じている最中です。
そういった自分の今の状態もあるからこそ、この星明があるんだと思います。
ー「さらす」ことを意識しているのは何故ですか?
朴:フェイクが嫌いだからですかね。
嘘が嫌いだし、フェイクが嫌い。でも表現はフィクションであってフェイク。だからこそ本物でいたいなと心がけているし、「これは作りものです」とやってしまう事の予定調和がいちばん嫌いなんです。
だから自分をさらせなかったら、あんまり意味が無いかなって思っています。
そこにエネルギーを使って頑張ってる訳では無いですけど、自分の主義として「さらす」ということを選択しているんだと思います。
孤独と向き合い、進化し続ける
ー朴さんには「孤独」というイメージがあります。
朴:なにをやるにしても孤独じゃないと出来ないんじゃないかなって思っています。
孤独を自分が知っていれば、自ずと周りも見えてくる。それに孤独じゃない人なんて誰もいないし、誰かと一緒・同じっていう方が私はおかしくない?って感じてしまうんです。
まずは孤独に、独りで向き合ってみよう、というのがあるんじゃないかなって。そんなに意識はしていないんですけどね。
ーしかし、ひとたび共につくるとなると、強く繋がっていく印象もあります。
朴:「何かをつくる」とか、そういう目的があって、初めて人は一緒になれるのかなって。何もかも永遠に一緒って絶対に不可能だから、今こうした瞬間こそが繋がり得る時だと。
ー作っては消える「舞台」のような生き方ですね。
朴:そうやって舞台を作り続けるように繰り返し繰り返しやっていくしかないかなって思います。
舞台が終わると、さっきまで立っていた舞台はまた違う色付けがされていくように、凄く刹那的なことを私は選んでいる訳です。もしそこに永遠に続くものを求めるなら、自分が進化し続けるしかない。自分を独りにし続けないと見たい景色は見れないのかなっていうのはあります。
これからについて
ー朴さんは養成所で指導をしています。若い人たちはいかがですか?
朴:彼らには、声優や役者を育てようと思って私はやってないからと伝えています。
それをやりたいなら他所へ行きなさいと。
先生と呼んで欲しくないですし、あくまでもセッションだと思っています。
ウチの場合は人と上手に馴染むことが苦手な子が多かったりもするけれど、私はそういう子の言葉の方が信じることが出来るという(笑)。
馴染めない子たちって、表にはなかなか出せないけれど、その子なりの発想を持っているはずです。その扉が開いてくれたら嬉しいし「良いんだよ開いて」「自分というものを出して大丈夫なんだよ」っていうところの受け皿を作りたいからやってるんです。大変ですけどね(笑)。
でもそこであがくこと、自分が一生懸命に立ち向かおうとしているっていうことが、生きるエネルギーになるはずです。ひとりでも多くそういう子が増えてくれれば良いなあっていうところでやっています。
まあ、伝わったり伝わらなかったりで、その繰り返しですね(笑)。
ー朴さんご自身もそこで発見がありますか?
朴:若い子たちが他人に答えを求めて自分で答えを探さないという今の日本が抱えている問題を、その子たちを通して見たり触れたりしています。現代に必要なものを教えてもらっています。
ーパフォーマーとしては2019年に舞台『レ・ミゼラブル』出演が控えていますね
朴:ねえ!もう、心の臓が痛いです(笑)。この歳になってミュージカルに出るなんて夢にも思っていなかったですから。
ーミュージカルは初めてですか?
朴:初めてですよ〜。もう今からナーバスです。でも「チャレンジしなさい」っていう人生なんだなって(笑)。
自分の人生ですし、この先どんな風になって行くのか想像もつかないですけど、今あることをがむしゃらにやるしかないかなあって。そこからいろんなことが見えてくるかなあって思っています。
映画『薄墨桜-GARO-』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【原作】
雨宮慶太
【監督】
西村聡
【キャスト】
中山麻聖、朴璐美、矢島晶子、田中敦子、東啓介、堀内賢雄、浪川大輔、野村勝人、鵜殿麻由、中田譲治、関智一
【作品概要】
平安の世、栄華を誇る美しき都「京」。
見目麗しき二人の陰陽師が出会う時、哀しくも儚い美しい桜が1000年の時を経て咲き乱れます。
キャラクターデザインには『TIGER&BUNNY』『電影少女』など幅広い世代に圧倒的人気を誇る漫画家・桂正和。
脚本には『進撃の巨人』『ジョジョの奇妙な冒険』をはじめジャンルを問わず緻密なストーリーを作り上げる小林靖子。
監督は『うしおととら』『はじめの一歩』などを力強く、躍動感溢れる世界観で描く西村聡が担当します。
まとめ
いつでも、どこでも、誰に対してもオープンな朴璐美さん。
『薄墨桜-GARO-』の舞台挨拶でも、朴さんの飾らない正直さと溢れ出てくるエネルギーが、会場を明るく包み込んでいました。
そこには自身の孤独を受け入れ今の自分と向かい合い、心のままに「生き様」を生きるという、強さと儚さを併せ持つ朴さんがありました。
また、若い人たちと対峙して今を見つめながら、ともに時代を生き「さらす」ことで人生を謳歌されています。
そこにたどり着くには人知れぬ努力や苦労もあっただろうと推察しますが、そんな事など微塵も感じさせない笑顔でインタビューに答えて下さった朴さん。
朴さんは「孤独」だからこそ、人を抱きとめる優しさと温かさがあるんだと、改めて感じました。
2019年上演の舞台『レ・ミゼラブル』では人生初のミュージカルに挑戦するなど、今後もさらに進化を続ける朴さんにますます期待してしまうばかりです。
インタビューでも「歳を重ねた今、アンバランスな事が面白い」と仰っていたように、本作『薄墨桜-GARO-』星明役では、今でしか表現出来ないアンバランスでいて強い意志を持った朴璐美さんの魅力が詰まっています。
ぜひ映画館で『薄墨桜-GARO-』を、そして朴璐美の「生き様」をご覧ください!
映画『薄墨桜-GARO-』は2018年10月6日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー。
インタビュー/大窪晶
朴璐美プロフィール
朴璐美(パクロミ)1月22日生。東京都出身。桐朋学園芸術短期大学演劇科卒業、演劇集団円を経て、2017年11月に新たな活動基盤としてLALを設立。
映画・舞台・アニメ・吹き替え・ナレーション、プロデュースなどその活躍は多岐に渡り、第25回東京国際映画祭出展作品『あかぼし』では実写初主演を務めました。
女優として幅広く活躍する傍ら自身が主宰を務めるボイススクール「studio Cambria」では後進の育成にも力を入れています。
アニメ代表作は『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリック役、『∀ガンダム』のロラン・セアック役、『進撃の巨人』のハンジ・ゾエ役、『NANA』の大崎ナナ役、『BLEACH』の日番谷冬獅郎役ほか多数。
「東京国際アニメフェア2004」にて声優賞を受賞。「第1回声優アワード」で、『NANA』の大崎ナナ役で主演女優賞を受賞しました。
映画ではヘレナ・ボナム=カーター、エヴァ・グリーン、レディ・ガガはじめ多くのハリウッド女優の作品を吹き替えています。
一方、海外人気アニメ『アドベンチャー・タイム』のフィン役など、コミカルな役も定評があり、出演作は多数。『金曜ロードSHOW!』や『オイコノミア』ではナレーションも担当。
また、中島かずき作『戯伝写楽 -その男、十郎兵衛−』、『W・シェイクスピア HUMAN』、怪奇シリーズ『神楽坂怪奇譚-棲-』のプロデュースも行いました。
2019年4月より帝国劇場にてミュージカル『レ・ミゼラブル』マダム・テナルディエ役でミュージカル初出演が決定しています。