『沈黙のパレード』は9月16日(金)より全国東宝系にて公開!
福山雅治演じる、天才的頭脳を持つが少々変わった人物の物理学者・湯川学が、不可解な未解決事件を科学的検証と推理で見事に解決していく痛快ミステリー「ガリレオ」シリーズ。
2008年『容疑者xの献身』、2013年『真夏の方程式』に続く劇場版作品の第3弾『沈黙のパレード』は、これまでになく多数の人物が登場し、人々の心情と思惑が複雑に、繊細に絡み合う群像劇となっています。
このたびの映画の劇場公開を記念し、菊野商店街で定食屋を営む並木夫妻の長女で、歌手を夢見ていた女子学生・並木佐織役を演じられた、川床明日香さんにインタビュー。
佐織を演じられるにあたっての役作りや完成した映画を観た際に思い浮かんだ記憶、女優というお仕事の難しさと面白さなど、貴重なお話を伺いました。
CONTENTS
生前の佐織が感じていたもの
──作中で起こる事件に深く関わり、多くの登場人物たちの心に悲しみの記憶を遺していった本作のキーパーソンでもある佐織を、川床さんはどのように演じられていったのでしょうか。
川床明日香(以下、川床):東野圭吾さんの原作小説を撮影前に読ませていただいたんですが、小説では生前の佐織の心情描写は直接描かれていませんでした。ですので、「原作では詳しく言及されていない佐織の性格を、私のお芝居で掘り下げられるのか」「そもそも彼女の性格を、どのようにイメージして作っていけばいいのか」と不安を感じた瞬間もありました。
ですが、撮影前のリハーサルで西谷弘監督と何回かお話しさせていただき、リハーサルも重ねたことで「この場面で、佐織は何を感じていたんだろう」とより明確にわかるようになりました。そして佐織と自分との似ている部分、あるいは違う部分を見つけながら、キャラクターの芯となるものを作っていきました。
また西谷監督は、佐織の意思の強い性格をふまえた上で「大抵の人は相手の目をまっすぐ見て、何かを伝えようとするけれど、佐織は少し違うんだ」と言ってくださいました。それは、その時点の私には見えていなかった佐織の一部であり、実際に佐織を演じるにあたって、とても腑に落ちるものがありました。
ちなみに、佐織がとても意思が強い子である一方で、私自身には少し優柔不断なところがあります。佐織を現場で演じている中でも、彼女を見習いたいと思った瞬間がありました。
「久しぶりに、商店街のみんなに会いたい」
──完成した映画を初めてご覧になった際、川床さんの心の内にはどのような想いが浮かび上がったのでしょうか。
川床:完成した作品を初めて観た時、私は佐織がいなくなった後の商店街のみんなを見た瞬間に、強い寂しさを感じました。
これまで出演させていただいた作品でも、感慨深いものを感じる時はありましたが、本作では「佐織と私は、あの街で過ごしてきたんだ」という撮影の時の記憶がはっきりと蘇ってきて「久しぶりに、商店街のみんなに会いたい」と思ってしまったんです。
映画に参加させていただく中で、私は「キャストやスタッフの皆さんで作品を作り上げた」と実感できる瞬間が好きで、その瞬間が一番記憶に残ることが多いんです。
なので完成した作品を観ると、本編に実際に映っているキャストさんだけでなく、スタッフさんを含めその撮影現場にいたみんなの顔も思い浮かんできます。
「正解」も「正攻法」もないからこその面白さ
──川床さんにとっての女優というお仕事の難しさ、そして面白さとは一体何でしょうか。
川床:お芝居というものはあくまで正解はなく、近道のような正攻法もきっとないんだろうなと最近は感じています。
どの作品でも「この場面にはどういう意味や意図が込められているのか」「その上でどう演じるべきなのか」といった自分の中での問いと向き合い、悩み続けながら台本を読み込んでいます。そして、一度やってみて失敗したら別の方法を試す。そうやって試行錯誤の作業をずっと繰り返さなければならない仕事なんだと思います。
ただ、大変さを感じつつも、その作業が楽しくもあるんです。
自分が「この場面は、こういうお芝居になるかな」と想定していても、実際にやってみると全然違うものがお芝居の中で出てきてしまったり、逆にそれが良いお芝居に映っていたりと、自分が予測できないことが起きるのは凄く楽しいんです。
それに、「自分はこう演じたい」と思っていても、それが中々できない悔しさもまた、お芝居というものを突き詰めることの面白さの一つだと感じています。
自分自身を誇りに思える作品
──最後に、佐織役として出演された映画『沈黙のパレード』は、川床さんにとってどのような作品となったのかを改めてお教えいただけますでしょうか。
川床:女優のお仕事をさせていただく中で、演じ切ることができた時に「この役に出会えて良かったな」と思える役に出会うことがこのお仕事の目標の一つなんです。
本作で私が演じた佐織は、商店街のみんなや家族にとても愛されている役でした。普段生活していても、ここまで愛を感じることは中々ないことです。佐織がいなくなり商店街のみんなが悲しみに暮れる様を目の当たりにする中で、彼女のキャラクターや存在感を改めて実感しましたし、彼女を通してみんなの様々な愛を知れたと感じています。
また佐織の役作りは長い時間をかけて準備したので、クランクアップ直前にはもう客観視ができない状態にまで役へ思い入れができてしまい、「佐織=私」のような状態になっていました。ただ、そんな中だったからこそ、西谷監督からの「今の佐織、良かったよ」というさり気ない一言にはとても救われていました。
悩み迷いながらも、お芝居に対して向き合えたことを実感できたので、そういった意味でも自分自身を誇りに思える作品となりました。
インタビュー/河合のび
構成/タキザワレオ
撮影/田中舘裕介
川床明日香プロフィール
2002年生まれ、福岡県出身。2014年に「第18回ニコラモデルオーディション」グランプリを受賞。4年半に渡り同誌専属モデルとして活躍する。
2019年に『ピア〜まちをつなぐもの〜』で初の長編映画出演を果たす。以降、NHK連続テレビ小説『なつぞら』のスピンオフドラマ『十勝男児、愛を叫ぶ!』、NTV『俺の話は長い』、HBOアジア・オリジナルズ『フードロア:Life in a Box』、サカナクション「SAKANAQUARIUM アダプトTOUR」、竹内まりや「家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)」MVなどに出演。
『沈黙のパレード』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【原作】
東野圭吾『沈黙のパレード』(文春文庫刊)
【監督】
西谷弘
【脚本】
福田靖
【キャスト】
福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、飯尾和樹、戸田菜穂、田口浩正、酒向芳、岡山天音、川床明日香、出口夏希、村上淳、吉田羊、檀れい、椎名桔平
【作品概要】
原作は東野圭吾による「ガリレオ」シリーズ第9弾にあたる同名小説。『容疑者xの献身』『真夏の方程式』に続き福田靖が脚本を、西谷弘が監督を務める。
主人公の湯川学を演じるのは、主演の福山雅治。湯川のバディ的存在の刑事・内海薫を柴咲コウが、湯川の親友で内海の先輩刑事・草薙俊平を北村一輝が演じる。
共演キャスト陣は椎名桔平、檀れい、吉田羊、飯尾和樹、戸田菜穂、田口浩正、酒向芳、村上淳、岡山天音、川床明日香、出口夏希。
主題歌は福山雅治と柴咲コウによるユニット《KOH+》が担当。福山雅治が書き下ろした主題歌「ヒトツボシ」を柴咲コウが歌う。
『沈黙のパレード』のあらすじ
天才物理学者・湯川学の元に、警視庁捜査一課の刑事・内海薫が相談に訪れる。
行方不明になっていた女子学生が、数年後に遺体となって発見されたのだ。
内海によると容疑者は、湯川の親友でもある先輩刑事・草薙俊平がかつて担当した少女殺害事件で、完全黙秘をつらぬき、無罪となった男・蓮沼寛一。蓮沼は今回も同様に完全黙秘を遂行し、証拠不十分で釈放され、女子学生の住んでいた町に戻って来た。
町全体を覆う憎悪の空気……。
そして、夏祭りのパレード当日、事件が起こり、蓮沼が殺された。
女子学生を愛していた、家族、仲間、恋人……全員に動機があると同時に、全員にアリバイがあった。そして、全員が沈黙する。