Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

インタビュー特集

Entry 2022/02/14
Update

【中田秀夫監督インタビュー】映画『嘘喰い』横浜流星が生んだ“人間性を持った獏”と親近感によるキャラクター演出

  • Writer :
  • ほりきみき

映画『嘘喰い』は2022年2月11日(金)より全国ロードショー!

天才ギャンブラー“嘘喰い”こと斑目貘がイカサマも、殺し合いも、なんでもありの“超危険なデス・ゲーム”に挑む!

映画『嘘喰い』は、主人公の斑目貘(まだらめ・ばく)が日本の政財界を支配する闇倶楽部「賭郎」のトップを目指し、一流のイカサマ師たちとの最高にクレイジーな頭脳心理戦を繰り広げる姿を描きます。


(C)Cinemarche

主人公・斑目貘を演じるのは横浜流星。2022年にはTBS×イスラエル共同制作の日曜劇場ドラマ『DCU Deep Crime Unit 〜手錠を持ったダイバー〜』に出演しているほか、映画『流浪の月』『アキラとあきら』などの劇場公開作も控えています。

そして監督を務めるのは、社会現象をも巻き起こした『リング』などで知られるジャパニーズ・ホラーの名手の中田秀夫。このたび、中田監督に本作での演出のポイントや、キャストの印象について語っていただきました。

スポンサーリンク

獏と梶の「バディ」としての関係性を軸に


(C)迫稔雄/集英社(C)2022映画「嘘喰い」製作委員会

──主人公の貘だけでなく、どの登場人物もキャラ立ちしていて虚構性が高いのですが、一方で「この世界観の中なら、彼らは実在するのではないか」というリアリティも感じられました。

中田秀夫監督(以下、中田):確かに虚構性は高いのですが、登場人物たちの感情の起伏を豊かにすることで、感情移入そのものでなくても、「私たちのすぐそばにはいないけれど、こういうストーリーの中ならいるかもしれない」という親近感を持ってもらえるよう心がけていました。

例えば貘と梶に関していえば、梶は日雇い労働を終えて、その日のわずかな収入を手にしたところ。貘は賭けに勝って大金は持っているけれど小銭がない。知らない同士だった2人が自販機の前で出会い、梶は貘にコーヒー缶1本を譲り、貘は機転を利かせて金の取り立て屋から梶を救う。

原作にコーヒー缶のエピソードはありませんが、貘が梶を救うという展開は原作の通りです。そういったやりとりから、2人がお互いを求めているという関係性が出せればと思いました。そして2人のバディとしての関係性を、本作のドラマとしての軸にしました。

「人間性を持った獏」を生み出してくれた横浜流星


(C)迫稔雄/集英社(C)2022映画「嘘喰い」製作委員会

──横浜流星さんが演じられた主人公・班目獏はギャンブルに魅せられ、自信たっぷりな一方でどこか飄々としているところが魅力的でした。また横浜さんは地毛を銀色にして、撮影中も何度も染め直していたとお聞きしました。

中田:クランクイン前に3回ほど会って話し合う機会がありましたが、横浜くんは役との向き合い方がものすごく真剣なんです。髪に関してはカツラを使うという案もありましたが、覚悟を決めて銀色に染めてくれました。

僕は「役になり切ればいい」という考え方があまり好きではありません。撮影期間中に別の仕事をしなければいけない時もありますし、横浜流星としての生活がある以上、役になり切れるわけがない。衣装や髪型は原作に寄せるけれど、横浜流星は生身の人間ですから声や人間的な温かみがある。それは原作とは少し違うかもしれないですが、そもそも表現する媒体として映画とコミックは違うわけですから。

横浜くんが「人間的な温かさが出ちゃいますが、むしろそれは出していこうと思います」と言っていました。彼は本能的に、その違いが分かっている人なのでしょう。貘というキャラクターを常に意識し、どうすれば自分と貘というキャラクターがオーバーラップしてより面白い貘になるかを考えてくれていました。彼が演じたからこそ、人間性を持った貘になったのです。

僕も「横浜流星にしか演じられない貘を演じてほしい」と思っていたので、横浜くんの役に対する姿勢は理想でした。非常に尊敬できる俳優ですね。

──横浜さんは中学3年生の時に極真空手の世界大会で優勝したという経歴をお持ちですが、そうした高い身体能力が発揮された場面などはありましたか。

中田:原作の貘は、ほとんど体力がないという設定なんです。もちろん銃は使えますし強いのですが、いわゆる速く走る、重いものを持ち上げるというフィジカル面は得意ではない。180度違う設定のことをさせるわけにはいかないので、敵の攻撃をひらっとかわすくらいです。

「賭郎」の立会人を演じた村上弘明さんや本郷奏多さんにはアクションシーンがあったので、横浜くんはやりたくてしょうがないという風に羨ましそうに見ていましたね。

スポンサーリンク

求められた芝居を察知した佐野勇斗/白石麻衣の新たな一面


(C)迫稔雄/集英社(C)2022映画「嘘喰い」製作委員会

──先述でも触れた、本作での獏のバディ的存在である梶隆臣を演じられた佐野勇斗さんの演技はいかがでしたか。

中田:佐野くんは、僕が思うこの作品の人物のキャラクター性について、演技の質としていちばん近いことを最初からやってくれていました。

僕はリハーサルの時に「わかりやすい芝居をしてほしい」と俳優さんに伝えました。声をしっかり出して、怒鳴る時は怒鳴り、泣く時は泣き、大声で笑うところは大声で笑ってほしかったのです。ただ俳優さんは、本作のように虚構性が高い作品でも文芸調といいますか、内面的な芝居をしてしまう傾向が強いんです。

しかし佐野くんは「監督が考えるわかりやすい芝居って、こういうことだよね」とすぐに察知して、きっちりわかりやすくやってくれました。例えば梶がホテルで1人で豪遊する場面。僕が伝えたことをちゃんと自分の中に落とし込んでいないと、ああいう芝居はできない。佐野くんには本当に感謝しています。

──鞍馬蘭子を演じた白石麻衣さんは『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』に続いて中田監督の作品に出演されたのは2回目ですが、前作とはかなり印象が違う役柄と感じられました。

中田:本作での白石さんは演じるのに若干、苦労されていたと思います。『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』のキャラクターも白石さんご本人の柔らかい雰囲気とは違いますが、今回は「暴力団の跡目を継いだ闇カジノのオーナー」というさらに突拍子もない役でしたから。

映画オリジナルの設定で隠れた恋心を持つというところは乙女チックですが、それ以外は生き馬の目を抜くというか、人殺しをも辞さない冷酷な世界で生きてきた女性として、ドスの利いた声と迫力は必須。「声を低めに出してほしい」とお願いしましたが、戸惑うこともあったと思います。それでも「ここはアフレコでもうちょっと修正しよう」となった時も根気よく付き合ってくれました。ビジュアル面でも原作に寄せてメイクや衣装をどぎつくしてもらいましたが、こちらの要求に応えようと最後までがんばってくれました。

また、映画の劇場公開日の21時に配信されるdTVオリジナルドラマ『嘘喰い -鞍馬蘭子篇/梶隆臣篇-』では、主人公として出演しています。僕が『リング』の頃からずっと一緒にやっている佐伯竜一くんが監督をしているので撮影現場を見に行ったところ、白石さんは忙しそうでしたが、とても楽し気でもありました。かなりサディスティックな場面もありましたが、あそこでワイルドな鞍馬蘭子が開花したのかもしれません。

佐田国一輝の好感度の理由/映画『嘘喰い』の魅力


(C)Cinemarche

──三浦翔平さんが演じられた佐田国一輝はかなり危険な人物ですが、ある意味では作中で一番共感のできるキャラクターでもありました。

中田:佐田国は悪役ですが、佐田国なりの信念があって、それを成し遂げるためには組織のてっぺんに立つしかないと考えています。その辺りの役柄の把握が、三浦さんは的確でした。実は編集過程でもアンケートを取ったのですが、その際も「佐田国のキャラに共感を覚える」という感想が特に多く、佐田国の好感度は高かったです。

三浦さんはモデリッシュな八頭身。かっこいいですよね。そんな三浦さんが「お腹からしっかり声を出していきましょう」と僕が俳優のみなさんに言ったら、率先してやってくれましたし、原作やアニメーション作品におけるマッド・サイエンティストな佐田国のイメージを参考にされて、ご本人の地声よりもぐいっと下げて声を出してくれました。三浦さんにつられて横浜くんもお腹から声を出してくれたので、僕としてはしめしめでしたね(笑)。

──本作には中田監督ご自身が出演されているとお聞きしました。見つけるのはかなり難易度が高いとのことですが、もしよろしければ観客のみなさんへのヒントを教えていただけませんでしょうか。

中田:ヒントは最初の島です(笑)。

──最後に、これから映画『嘘喰い』をご覧になる方にひとことお願いします。

中田:作中に登場するゲームは見たことがあるものとないものが出てきますが、それらをどう戦うのか。そういった頭脳戦の面白さだけでなく、中盤にはバイオレンス描写を含むアクションシーンもかなり入っています。

難しいことを考えなくていいエンタメ映画に仕上げました。虚構性の高いストーリーですが、各キャラクターのカッコよさや展開の面白さをシンプルに楽しんでいただければと思います。

インタビュー/ほりきみき

中田秀夫プロフィール

1961年7月19日生まれ、岡山県出身。1996年に『女優霊』で映画監督デビューを果たし、その後『リング』(1998)、『仄暗い水の底から』(2002)などを手がけ、ジャパニーズ・ホラーの第一人者となる。

近年の主な監督作は『クロユリ団地』(2013)、『スマホを落としただけなのに』(2018)、『貞子』(2019)、『事故物件 恐い間取り』(2020)など。

スポンサーリンク

映画『嘘喰い』の作品情報

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
中田秀夫

【原作】
迫稔雄『嘘喰い』(集英社ヤングジャンプコミックス刊)

【脚本】
江良至、大石哲也

【出演】
横浜流星、佐野勇斗、白石麻衣、本郷奏多、森崎ウィン、櫻井海音、木村了、鶴見辰吾、村上弘明、三浦翔平

【作品概要】
原作は迫稔雄の同名コミック。2006年から2017年まで集英社ヤングジャンプで連載され、コミックスは49巻まで発売。シリーズ累計発行部数も880万部を突破している人気作。

監督は『リング』(1998)が社会現象を起こしたジャパニーズ・ホラーの第一人者にして、近年も『スマホを落としただけなのに』(2018)、『事故物件 怖い間取り』(2020)などのヒット作を手がけている中田秀夫。

通称「嘘喰い」と呼ばれる天才ギャンブラーの主人公・斑目貘を演じたのは横浜流星。共演には、『ドラゴン桜』『TOKYO MER 走る緊急救命室』『真犯人フラグ』と話題作ドラマへの出演が続く佐野勇斗をはじめ、白石麻衣、本郷奏多、森崎ウィン、櫻井海音、木村了、鶴見辰吾、村上弘明、三浦翔平が揃った。

映画『嘘喰い』のあらすじ


(C)迫稔雄/集英社(C)2022映画「嘘喰い」製作委員会

国家をも凌ぐ支配力を誇る、闇ギャンブル倶楽部「賭郎」。

その頂点を決する一世一代の大勝負でお屋形様・切間創一(櫻井海音)に敗れ、「賭郎」の会員権を剥奪された天才ギャンブラーの“嘘喰い”こと斑目貘(横浜流星)は、新たな会員の佐田国一輝(三浦翔平)が倶楽部を荒らしているという噂を聞きつけ、再び姿を現す。

闇金から貘に救われた人生負け組の青年・梶隆臣(佐野勇斗)、闇カジノのオーナーでヤクザ組長・鞍馬蘭子(白石麻衣)と協力して挑むのは、欲望にまみれた超一流のイカサマ師たち……極悪ディーラー、快楽殺人者、マッド・サイエンティスト……が仕掛ける、絶望的なギャンブル勝負の数々。

もし負ければ「賭郎」の立会人・夜行妃古壱(村上弘明)や目蒲鬼郎(本郷奏多)が、命を含む代償を容赦なく取り立てる。

殺しにイカサマ、裏工作が当たり前の頭脳心理戦で、貘は嘘を見破り、勝ち残ることができるのか!? 敗者には残酷な死が待ち受ける、史上最恐にヤバい究極の騙し合いゲームの幕が開く。





関連記事

インタビュー特集

【リエン・ビン・ファット インタビュー】映画『ソン・ランの響き』プロの俳優として進む覚悟ができた初主演作

映画『ソン・ランの響き』は2020年2月22日(土)より全国順次公開中 レオン・レ監督の長編監督デビュー作にして、ベトナム映画協会最優秀作品賞、北京国際映画祭最優秀監督賞、サンディエゴ・アジアン映画祭 …

インタビュー特集

【大西信満インタビュー】映画『柴公園』共演者や柴犬とともに作り上げていった演技プラン

「おっさん×柴犬×会話劇」による脱力系人気ドラマの続編となる映画『柴公園』が2019年6月14日(金)より全国ロードショー! いつもの公園で、飼い犬とともに集まるおっさん三人の物語を描いた人気テレビド …

インタビュー特集

【豊島圭介監督インタビュー】映画『三島由紀夫vs東大全共闘』討論会を通じて映し出したかった“血肉の通った議論”

映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』は2020年3月20日(金・祝)より、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開中 東大全共闘をはじめとする1000人をも超える学生たちを相手に繰り広げ …

インタビュー特集

【犬童一心監督インタビュー】映画『名付けようのない踊り』ダンサー田中泯の“一生懸命居る”踊りの世界観

映画『名付けようのない踊り』は2022年1月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9、Bunkamuraル・シネマ他にて全国公開。 1966年からソロダンス活動を開始し、1978年 …

インタビュー特集

【筒井武文監督インタビュー】映画『ホテルニュームーン』日本が観逃してきたイラン文化と風景の“最先端”を撮る

映画『ホテルニュームーン』は2020年10月24日(土)より名古屋シネマテーク、10月30日(金)よりテアトル梅田とアップリンク京都、以降も元町映画館ほかにて全国順次ロードショー!  10月31日(土 …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学