『Us / アス』は、世界中で大ヒットを記録した『ゲット・アウト』の監督及び脚本を務め、アカデミー賞脚本賞を受賞したジョーダン・ピールの最新ホラー映画です。
日本でも都市伝説などで取り上げられるドッベルゲンガーを題材としており、ピールはディテールにこだわった脚本を執筆。
観客は知性的と信じる監督がたくさんのヒントを配置しているので、謎解きを楽しめる作品になっています。
映画『Us/アス』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Us
【監督】
ジョーダン・ピール
【キャスト】
ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、シャハディ・ライト=ジョセフ、エヴァン・アレックス、ティム・ハイデッカー、エリザベス・モス
【作品概要】
『ゲット・アウト』の成功後、続編のオファーが殺到したジョーダン・ピール。しかし、幼い時個人的に怖いと感じていたドッペルゲンガーをテーマに、ピールが物語を一から創作しました。
80年代に起きる事件を全ての発端と設定し、当時世界中で爆発的な人気を得たマイケル・ジャクソンの伝説的MV『スリラー』をヒントにしています。本作の製作は、ヒットメーカーのブラムハウスプロダクション。
映画『Us/アス』のあらすじとネタバレ
We are our own worst enemy. From the mind of Academy Award-winner @JordanPeele, US is in theaters now.
— Us (@UsMovie) April 1, 2019
1986年、カリフォルニア、サンタクルーズ。アデレードは、両親と一緒に海辺のテーマパークを訪れます。母はトイレへ行き、父はもぐら叩きに夢中。アデレードはビーチへ向かいました。
浜に設営されたびっくりハウスに惹かれたアデレードは、1人中へ入って行きます。
鏡に囲まれた通路を歩くうちに怖くなったアデレードが口笛を吹くと、答えるように口笛が聞こえてきました。
ふとアデレードが振り返ると鏡に映った自分の姿がゆっくりと振り向きます。アデレードの目が大きく見開かれます。
無事に保護されたアデレードは、トラウマによる自閉症と診断されました。
現在。結婚したアデレード・ウィルソンは、夫・ガブリエル、長女ゾーラ、長男ジェイソンと一緒に別荘へ夏を過ごしに来ます。
ジェイソンがサンタクルーズのビーチへ行くことを楽しみしていることをガブリエルから聞かされ、嫌々ながらアデレードは承諾します。
ビーチへ向かう途中、市民を支配しようと企む政府が飲み水にフッ素を混ぜているとゾーラがこの世の終末論を展開。誰も反応しないので、ゾーラはがっかりします。
ビーチに到着したウィルソン家は、家族ぐるみで付き合いがあるタイラー家と合流。
アデレードは、依然と存在するびっくりハウスを横目に過去の記憶が蘇り、終始落ち着かない時間を過ごしました。
その夜、見知らぬ家族が外に立っているとジェイソンが両親に報告します。
様子を見に行ったガブリエルの目の前に、赤いジャンプスーツを着た大人2人と子供2人がじっとこちらを見ています。
家の中に押し入って来た4人は、ウィルソン家全員のドッペルゲンガーでした。
映画『Us/ アス』の感想と評価
The #1 Movie in America! It's US. #WatchYourself
— Us (@UsMovie) March 25, 2019
スリラー作品として人気を博した『ゲット・アウト』に続き、ジョーダン・ピールの上手などんでん返しです。ドッペルゲンガーを題材にしながら、実は政府の陰謀で作られたクローン。
様々な場面に工夫を凝らした伏線を張っているため、見逃したヒントを探しに2度3度とピールの映画を観に行く人が多いです。
例えば、ウィルソン家に押入るクローン達の場面で、レッドに人生を奪われたアデレードは、自分がされた様に手錠でレッドを拘束します。
また、ジェイソンを奪われびっくりハウスに入ったアデレードは(この時点ではまだレッドだと分かりません) 道に迷うことなく地下へ下りて行きます。
彼女は、アデレードに成り代わる前まで住んでいた場所なので、当然施設内を熟知していたのです。
本作のテーマは二重性です。武器を鋏にした理由も同一の2枚刃で構成されているためとピールは説明しています。
クローンが来ている服について、『マトリックス』でも活躍したコスチューム担当のキム・バレットは、攻撃を象徴する赤を選んだと答えています。クローン達が地上への侵略に着る服を作る部屋も地下施設の元デザインに組み込みました。
『それでも夜は明ける』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、本作の主人公アデレード/レッドを演じたルピタ・ニョンゴは、全く異なる2役を見事に演じ分け脚光を浴びています。
劇中レッドが出すしゃがれた声は、痙攣性発生障害を患う人が話すのを見たニョンゴが独自にリサーチし、言語療法士の協力を得て喉を傷つけないよう役に取り入れたとインタビューで本人が明かしています。
『Us/アス』のプレミアに登場したピールは、今自分達は他者に怯える時代に生きているが、真に恐れるべきは自分達自身かもしれないと本作に込めたメッセージを説明し、観客から盛大な拍手を受けました。
まとめ
They look just like us. US is now playing in theaters. Get tickets: https://t.co/h6ojaQ1rZu #WatchYourself
— Us (@UsMovie) April 1, 2019
普通の黒人家族が主役を演じるホラー映画を観たことがないと語るジョーダン・ピール。
最新作『Us/アス』も恵まれた者と虐げられた者を人間とクローンに置き換え、皆アメリカ人だと台詞に書いています。
用意したサプライズは、自分を陥れたクローンに逆襲する人間が率いたクローン集団のクーデターだったと分かるエンディング。
社会派スリラーという新しいジャンルを確立したジョーダン・ピールは、『Us/アス』を通し、自分の中に潜むもう1人の貴方は、凄く怖いよと耳元で囁きます。