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Entry 2019/05/30
Update

映画『アス』ネタバレ解説とレビュー評価。ジョーダンピール監督作品の怖さとは⁈

  • Writer :
  • 奈香じゅん

『Us / アス』は、世界中で大ヒットを記録した『ゲット・アウト』の監督及び脚本を務め、アカデミー賞脚本賞を受賞したジョーダン・ピールの最新ホラー映画です。

日本でも都市伝説などで取り上げられるドッベルゲンガーを題材としており、ピールはディテールにこだわった脚本を執筆。

観客は知性的と信じる監督がたくさんのヒントを配置しているので、謎解きを楽しめる作品になっています。

映画『Us/アス』の作品情報

【公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Us

【監督】
ジョーダン・ピール

【キャスト】
ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、シャハディ・ライト=ジョセフ、エヴァン・アレックス、ティム・ハイデッカー、エリザベス・モス

【作品概要】
『ゲット・アウト』の成功後、続編のオファーが殺到したジョーダン・ピール。しかし、幼い時個人的に怖いと感じていたドッペルゲンガーをテーマに、ピールが物語を一から創作しました。

80年代に起きる事件を全ての発端と設定し、当時世界中で爆発的な人気を得たマイケル・ジャクソンの伝説的MV『スリラー』をヒントにしています。本作の製作は、ヒットメーカーのブラムハウスプロダクション。

映画『Us/アス』のあらすじとネタバレ

1986年、カリフォルニア、サンタクルーズ。アデレードは、両親と一緒に海辺のテーマパークを訪れます。母はトイレへ行き、父はもぐら叩きに夢中。アデレードはビーチへ向かいました。

浜に設営されたびっくりハウスに惹かれたアデレードは、1人中へ入って行きます。

鏡に囲まれた通路を歩くうちに怖くなったアデレードが口笛を吹くと、答えるように口笛が聞こえてきました。

ふとアデレードが振り返ると鏡に映った自分の姿がゆっくりと振り向きます。アデレードの目が大きく見開かれます。

無事に保護されたアデレードは、トラウマによる自閉症と診断されました。

現在。結婚したアデレード・ウィルソンは、夫・ガブリエル、長女ゾーラ、長男ジェイソンと一緒に別荘へ夏を過ごしに来ます。

ジェイソンがサンタクルーズのビーチへ行くことを楽しみしていることをガブリエルから聞かされ、嫌々ながらアデレードは承諾します。

ビーチへ向かう途中、市民を支配しようと企む政府が飲み水にフッ素を混ぜているとゾーラがこの世の終末論を展開。誰も反応しないので、ゾーラはがっかりします。

ビーチに到着したウィルソン家は、家族ぐるみで付き合いがあるタイラー家と合流。

アデレードは、依然と存在するびっくりハウスを横目に過去の記憶が蘇り、終始落ち着かない時間を過ごしました。

その夜、見知らぬ家族が外に立っているとジェイソンが両親に報告します。
様子を見に行ったガブリエルの目の前に、赤いジャンプスーツを着た大人2人と子供2人がじっとこちらを見ています。

家の中に押し入って来た4人は、ウィルソン家全員のドッペルゲンガーでした。

以下、『Us/ アス』ネタバレ・結末の記載がございます。『Us/ アス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
お前達は誰だとガブリエルが訪ねると、アデレードのドッペルゲンガー・レッドは、酷くかすれた声で「アメリカ人」だと答えました。

レッドに脅されたアデレードは、ガラステーブルに自分の手を手錠で繋ぎます。ガブリエルのドッペルゲンガー・アブラハムは、ガブリエルを引きずって行き殴って気絶させます。

レッドは、ゾーラに逃げろと命じ、ゾーラのドッペルゲンガー・アンブラに後を追わせました。ジェイソンは、自分のドッペルゲンガー・プルートに手品を見せて気を引きます。

プルートが自分の動作を真似ることに気付き、隙を突いてクローゼットに閉じ込めました。

大きな鋏を抜き「長い間この日を待っていた」と言いアデレードを殺害しようと迫るレッドは、プルートの叫び声を聞き様子を見に行きます。

一方、意識を取り戻したガブリエルはゴミ袋に入れられてボートに乗せられていました。後ろ向きのアブラハムに襲い掛かり、ガブリエルは反撃に成功します。

アデレードは暖炉の引っ掻き棒を使って拘束を解き、ジェイソンと一緒に外へ脱出。アンブラから逃れたゾーラを連れたアデレードは、ガブリエルと共にボートで沖へ逃げます。

助けを求めてタイラー家へ行くと、彼等のドッペルゲンガーが家族全員を殺害していました。ゾーラとジェイソンの奮闘で全員を倒します。

テレビを点けると、国中でドッペルゲンガーが人間を襲っている光景を報道しています。

日が登り、タイラー家の車で逃げ出したウィルソン家がサンタクルーズへ着くと、行く手に炎上する自分達の車が道を遮っていました。

プルートを見たアデレードは車を降りますが、ジェイソンは罠だと気付き家族全員に外へ出ろと叫びます。

ガソリンが細長く敷かれており乗っていたタイラー家の車まで伸びていました。マッチを取り出すプルートに対し、ジェイソンが気転を利かして後ずさりします。するとプルートも真似して後ずさり、燃え盛る車の炎に包まれ倒れ込みました。

しかし、突然現れたレッドがジェイソンを奪います。怪我を負うガブリエルが息子の名前を叫び、アデレードが走り出します。

ビーチまで来ると、同様の赤い服を着た大勢のドッペルゲンガーが手を繋ぎ人間の鎖を作っています。

びっくりハウスへ入ったアデレードは、鏡の廊下を抜け階段を下り、更にエスカレーターで地下へ向かいます。

広い施設の廊下へ出るとたくさんの兎が放たれていました。一室にレッドを見つけたアデレードは、語気を強めてジェイソンの居場所を訊きます。

それには答えず、レッドは、積年の恨みを口にします。

公共の支配を目論んだ政府は、市民のクローンを作り出しました。しかし、身体的なコピーは出来ても心まではクローン化できず、実験は失敗に終わります。

実験対象にしか過ぎないクローンは、そのまま捨てられました。人間の動きに無理矢理同調してしまうクローンには自由も無く、地下施設で生き延びました。

そんなある日、レッドはアデレードに出会い、自分達と全く同じ存在が地上で思うまま生きていることを知ります。

以降レッドは今日を夢見て、一斉蜂起するため計画を練っていたのです。大きな鋏を抜いたレッドに闘いを挑むアデレードですが、動きが全て読まれています。

アデレードを交わしながら鋏で切りつけて行くレッド。叫び声を上げたアデレードは、別の部屋へ逃げ込みました。

後ろ向きに待っているアデレードの背中目掛けて、レッドが鋏を振り上げ襲い掛かります。

その瞬間振り向いたアデレードは、持っていた引っ掻き棒でレッドを突き刺します。

倒れ込むレッドは、口から血を出しながら口笛を吹きます。
アデレードはレッドの首を絞め、骨を折りました。

ロッカーに閉じ込められたジェイソンを助け出し、アデレードは地上へ出ます。乗り捨てられた救急車で待つガブリエルとゾーラに再会し、2人も乗り込みました。

ふとあの晩のことがアデレードの脳裏に蘇ります。びっくりハウスで振り向いた少女は、まるで生き写しのようなもう1人の自分・レッドでした。

レッドに首を絞められたアデレードは、意識を失い地下施設へ引きずられて来ます。

目を覚ますと、アデレードはベッドに手錠で繋がれています。目の前に居たレッドが自分の服を着て部屋を出て行きました。

レッドはアデレードの両親に保護されます。車の後部座席でニヤリと笑うレッド。

心理カウンセラーが自分はトラウマで自閉症だと話すのをじっと聞いていました。

ふと隣に座るジェイソンが自分の顔を不審な表情で見つめていることに気が付きます。レッドは、薄く笑い視線を逸らしました。

映画『Us/ アス』の感想と評価

スリラー作品として人気を博した『ゲット・アウト』に続き、ジョーダン・ピールの上手などんでん返しです。ドッペルゲンガーを題材にしながら、実は政府の陰謀で作られたクローン。

様々な場面に工夫を凝らした伏線を張っているため、見逃したヒントを探しに2度3度とピールの映画を観に行く人が多いです。

例えば、ウィルソン家に押入るクローン達の場面で、レッドに人生を奪われたアデレードは、自分がされた様に手錠でレッドを拘束します。

また、ジェイソンを奪われびっくりハウスに入ったアデレードは(この時点ではまだレッドだと分かりません) 道に迷うことなく地下へ下りて行きます。

彼女は、アデレードに成り代わる前まで住んでいた場所なので、当然施設内を熟知していたのです。

本作のテーマは二重性です。武器を鋏にした理由も同一の2枚刃で構成されているためとピールは説明しています。

クローンが来ている服について、『マトリックス』でも活躍したコスチューム担当のキム・バレットは、攻撃を象徴する赤を選んだと答えています。クローン達が地上への侵略に着る服を作る部屋も地下施設の元デザインに組み込みました。

『それでも夜は明ける』でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、本作の主人公アデレード/レッドを演じたルピタ・ニョンゴは、全く異なる2役を見事に演じ分け脚光を浴びています。

劇中レッドが出すしゃがれた声は、痙攣性発生障害を患う人が話すのを見たニョンゴが独自にリサーチし、言語療法士の協力を得て喉を傷つけないよう役に取り入れたとインタビューで本人が明かしています。

『Us/アス』のプレミアに登場したピールは、今自分達は他者に怯える時代に生きているが、真に恐れるべきは自分達自身かもしれないと本作に込めたメッセージを説明し、観客から盛大な拍手を受けました。

まとめ

普通の黒人家族が主役を演じるホラー映画を観たことがないと語るジョーダン・ピール。

最新作『Us/アス』も恵まれた者と虐げられた者を人間とクローンに置き換え、皆アメリカ人だと台詞に書いています。

用意したサプライズは、自分を陥れたクローンに逆襲する人間が率いたクローン集団のクーデターだったと分かるエンディング

社会派スリラーという新しいジャンルを確立したジョーダン・ピールは、『Us/アス』を通し、自分の中に潜むもう1人の貴方は、凄く怖いよと耳元で囁きます。

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