Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ホラー映画

Entry 2019/10/23
Update

ホラー映画『スクールズ・アウト』あらすじと考察。優等生の“怖い悪意”から破壊されていく日常と対立

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

「シッチェス映画祭」で上映された、選りすぐりの作品を日本で上映する「シッチェス映画祭」公認の映画祭「シッチェス映画祭ファンタステック・セレクション」が、東京と名古屋、大阪で開催されます。

今回は「シッチェス映画祭ファンタステック・セレクション」上映作品の、名門校に赴任した教師が、優秀な生徒たちの悪意に翻弄されるホラー映画『スクールズ・アウト』を、ご紹介します。

スポンサーリンク

映画『スクールズ・アウト』の作品情報


(C)Avenue B Productions – 2L Productions

【公開】
2019年公開(フランス映画)

【原題】
L’heure de la Sortie

【監督・脚本】
セバスチャン・マルニエ

【製作】
キャロリーヌ・ボンマルシャン

【キャスト】
ローラン・ラフィット、エマニュエル・ベルコ、グランジ、パスカル・グレゴリー

【作品概要】
名門中学のエリートコースを担当する事になった教師が、優秀な生徒たちの計画に翻弄される学園ホラー。

監督と脚本を、2016年のスリラー『欲しがる女』のセバスチャン・マルニエが手掛けています。

「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2019」上映作品。

映画『スクールズ・アウト』あらすじ


(C)Avenue B Productions – 2L Productions
名門サンジョゼフ中学で、成績優秀な生徒だけを集めたクラス「3年1組」。

「3年1組」の担任教師だったカパティスが、授業中に突然、自ら窓から飛び降りて亡くなるという事件が起きます。

カパティスに代わり、新たに「3年1組」を担当する事になった教師のピエール。

ですが、級長のディミトリとアポリーヌを含む一部の生徒が、ピエールを馬鹿にしたような反抗的な態度を取ってきます。

また、ピエールは「3年1組」の生徒が、他のクラスの生徒に嫉妬され、危害を加えられている場面にも遭遇します。

ある日、ピエールはリフレッシュの為に、近くの湖へ出かけます。

その帰り道、ピエールは偶然「3年1組」の生徒たちが廃墟にいる所を目撃します。

その廃墟で生徒たちは、高い場所の手すりに片手で捕まったり、1人の人間を集団で暴行するなど、命に関わる危険な行為を行い、その様子をビデオ撮影していました。

生徒たちがいなくなった後に、ピエールは彼らが何かを隠した場所を掘り返し、そこにあったディスクを持ち帰ります。

自宅で、ディスクに収められた映像を見たピエールは、自分のクラスの生徒たちが、何かを企んでいると感じるようになり…。

スポンサーリンク

『スクールズ・アウト』感想と評価


(C)Avenue B Productions – 2L Productions

優等生の悪意を描いたホラー

優等生ばかりが集められたクラスを担当する事になったピエールが、生徒の悪意を察知した事から始まる恐怖を描いた『スクールズ・アウト』。

本作の物語の主軸は、生徒たちの「悪意の正体」です。

生徒たちは、ピエールに反抗的な態度をとりますが、授業を妨害するなど、あからさまな事はしてきません。

逆に、生徒の名前を覚えられないピエールの為に、自分たちの名前を机に置くなど協力的です。

ピエールの授業に集中できない理由も、前の担任だったカパティスを失ったショックが強いからである事も、納得できます。

ですが「3年1組」の生徒を、他のクラスの生徒からピエールが守ろうとした際に、逆に「左翼」と罵られるなど、どこか噛み合いません。

次第にピエールは、生徒たちを不気味に感じるようになり、優秀な生徒の集まりである事から「馬鹿にされている」という劣等感を抱くようになります。

さらに、自分の命を危険にさらす、生徒たちの奇行を目の当たりにした事で、ピエールの生徒への不信感が強くなっていきます。

逆に、級長のディミトリやアポリーヌも、自分たちを監視しようとするピエールを、厄介に感じるようになります。

事あるごとに「自分たちに関わるな」とピエールに忠告してくる、生徒たちの目的は何なのでしょうか?

そして、ピエールは、教師としての役目を全うできるのでしょうか?

ゆっくりと確実に破壊される日常

学園を舞台にしたホラー作品である『スクールズ・アウト』。

ホラー作品ではありますが、残虐な描写や過激なシーンで怖がらせるのではなく、ゆっくりと観客の精神を揺さぶってくるような、何とも言えない不安な気持ちになってくる映画です。

作中では「3年1組」の生徒たちに不信感を抱くピエールに、無言電話がかかってくるようになったり、テロ対策の訓練が突然始まったりと、更に不安感をあおる出来事が起きるようになります。

サンジョゼフ中学の教師に赴任して以降、ピエールの日常は少しづつ、確実に破壊されていき、徐々に精神を病んでいくようになります。

監督のセバスチャン・マルニエは、インタビューで、黒沢清の影響を受けている事を語っていますが、徐々に破壊されていく日常の恐怖、何とも言えない不安な印象を受けるあたりは、1997年の『CURE』や2001年の『回路』などの黒沢清作品に近いです。

そして、作中で描かれる徐々に破壊されていく日常という感覚が、本作のテーマに繋がる部分でもあります。

コミュニティ同士の対立

本作では、大きく分けて2つのコミュニティの物語が描かれています。

1つは、ピエールが赴任したサンジョゼフ中学の、教師たちのコミュニティです。

優秀な生徒たちの集まりを相手にする、サンジョゼフ中学の教師たちは、教師同士の関係を超えた友人関係を作り出しています。

ホームパーティーやダンスイベントで親交を深め、生徒たちから自分を守るように、結束を固めていきます。

もう1つは、ピエールたちに反抗的な態度を取る、「3年1組」の生徒たちのコミュニティ。

不気味な動きを見せる、「3年1組」の生徒たちですが、ピエールの一方的な目線ではなく、アポリーヌたちの目線を交えて物語を進める事で、前述した「徐々に破壊されていく日常」という部分に厚みを持たせています。

やがて、ピエールは教師たちのコミュニティに属しながら、生徒たちのコミュニティと対立をしていくようになります。

それは「大人と子供」「教師と生徒」という枠を超えた、人間同士の対立です。

この対立の果てに迎える結末が、本作のテーマとなっています。

まとめ


(C)Avenue B Productions – 2L Productions
『スクールズ・アウト』は、学園を舞台にしたホラーでもあり、生徒たちに追い込まれるピエールの心情を描いたサスペンスでもあり、生徒たちや教師たちの人間ドラマでもあります。

情報が錯綜し複雑化していく現代社会では「大人と子供」のような、単純な関係性は成り立たなくなっており、本作のような、1つのジャンルではくくれない作品が生まれたと言えます。

作中のピエールのように、下に見ていた子供に、逆に劣等感を与えられ、子供相手に1人の人間として、感情的になってしまう事もあるでしょう。

本作で描かれている事は、決して特別な事ではありません。

では、複雑になっていく社会で、どう生きていくべきなのでしょうか?

それは本作のラスト、ある場面で語られています。

『スクールズ・アウト』は「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」にて上映される作品で、10月よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、名古屋のシネマスコーレの3劇場で開催されます。

感覚的に訴えて来る恐怖の先にある、セバスチャン・マルニエ監督が本作に込めたメッセージを、是非受け取ってください。



関連記事

ホラー映画

『ゴーストマスター』邦画への映画愛から考察!東映アクションの視点を見逃すな【ヤングポールの怪作『秘孔』紹介も】

映画『ゴーストマスター』は2019年12月6日(金)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー! 映像企画発掘コンペ「TSUTAYA CREATERS’PROGRAM FILM 201 …

ホラー映画

映画『ハロウィン( 2018)』あらすじネタバレと感想。続編ブギーマンの見どころとは?

映画『ハロウィン』2019年4月12日(金)全国ロードショー! 1978年ジョン・カーペンター監督の手によって生み出されたホラーアイコン“ブギーマン=マイケル・マイヤーズ”がシリーズ誕生40周年の年に …

ホラー映画

映画『ITイット2017』ネタバレラストは。原作者キングの感想も

予告編がインターネット上でアップされた際に、24時間で1億9700万回という史上最多の再生回数を記録し、全米で『エクソシスト』の持つホラー映画興行収入記録を塗り替えた本作。 原作はホラー小説界の頂点に …

ホラー映画

【ネタバレ考察】サスペリア(リメイク2018)の結末までの詳細に解説。戦争から心理学までに及ぶ内容とは

あのホラー映画の金字塔が鬼才の手で再構築された! 昨年のカンヌ映画祭の初お披露目から賛否両論の嵐で大激論を呼んでいるリメイク版「サスペリア」。 150分越えも納得の、様々な要素が絡み合いホラーの枠組み …

ホラー映画

映画『ドント・ヘルプ』あらすじネタバレと感想。悪魔祓いをモチーフに信仰心と人間性に問いかけた異色作

上院議員の家に強盗に入った、3姉妹が遭遇する恐怖を描いたホラー映画『ドント・ヘルプ』。 『グリーン・インフェルノ』や『ノック・ノック』などで知られるイーライ・ロス監督の作品の脚本を手がけ、監督から最も …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
映画『朝が来る』2020年10月23日(金)より全国公開
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学
国内ドラマ情報サイトDRAMAP