映画『哭悲/THE SADNESS』は2022年7月1日(金)より全国ロードショー!
恐ろしいウイルスの感染拡大で地獄と化した台湾の街。二人の男女はこの恐怖から逃げ切れるのか?
台湾で感染拡大をつつけていたウイルスが人間の凶暴性を冗長する種として変異し、街を阿鼻叫喚地獄へと変貌させていく様を描いた『哭悲(こくひ)/THE SADNESS』。
ホラー映画の大ファンでもあるという台湾在住のカナダ人監督ロブ・ジャバズが、『死霊のはらわた』や『セルビアン・フィルム』などの傑作ホラー映画よりインスピレーションを得て作り上げたエクストリームホラーです。
映画『哭悲/THE SADNESS』の作品情報
【日本公開】
2022年(台湾映画)
【原題】
THE SADNESS
【監督・脚本】
ロブ・ジャバズ
【出演】
レジーナ・レイ、ベラント・チュウ、ジョニー・ワン、アップル・チェン、ラン・ウエイホア
【作品概要】
人間の凶暴性を助長するという架空のウイルスが蔓延した台湾で、危機的状況から脱すべく再会を目指す男女の恋人たちの、合流までの経緯を二人それぞれの視点で描いたホラームービー。
本作が長編デビューとなる台湾在住のカナダ人監督ロブ・ジャバズが本作を手がけました。キャストにはレジーナ・レイ、ベラント・チュウら実力派若手俳優に『祝宴!シェフ』『1秒先の彼女』などのジョニー・ワンらベテランを織り交ぜたバラエティな面々が名を連ねています。
映画『哭悲/THE SADNESS』のあらすじ
台湾の街中で暮らすカイティンとジュンジョーのカップル。いつもの平穏な朝を迎えた二人でしたが、ジュンジョーはベランダからとある不吉な光景を見かけ、不安な気持ちになります。
通勤列車の駅までバイクでカイティンを送るジュンジョー。二人は途中で凄惨な交通事故らしい現場を遭遇しますが、かまわず駅に到着、カイティンを見送ります。
彼らが見過ごした現場が、実は台湾で感染拡大していた謎のウイルスが突然変異しさらに猛威を振るった結果の出来事であったことを、二人は知る由もありませんでした…
映画『哭悲/THE SADNESS』の感想と評価
ウイルスの感染拡大により人間が人間と認められない存在となる状況が拡大、残された人の絶望的な未来を描いていくという本筋を見ると、いわゆる「ゾンビフォーマット」的な方向性がうかがえます。
しかし本作に登場するウイルスは感染した人間の脳に影響を与え、凶暴性を助長するというもの。感染した人間が意識を持ち続けているという点では、1973年にジョージ・A・ロメロが発表した『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』を彷彿する物語となっています。
但し、『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』では病気そのものに対する人間社会への影響的な方向を中心に描いているのに対し、本作では人間の本能的な欲求、性や暴力といった欲求の抑制に作用するという設定で、より人間自身の性質に言及しています。
『ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖』に登場する感染者は、奇行に転じながらもその行動の意識がないという性質でしたが、本作は全く正反対に、感染者はその行動にのみ意識を集中します。
本作に登場する感染者の姿は目の輝きを失っているだけで、人間としての姿かたちを大きく変えるわけではありませんが、それだけに己の欲求にのみ従い行動する姿は凄惨でおぞましいもの。
映像としてもショッキングなシーンにおけるタイミングの取り方など、近年のホラー映画としても秀逸で衝撃的であり、ロブ・ジャバズ監督のホラームービーに対しるマニアックぶりがうかがえるものであります。
一方で注目すべきは、感染者に襲われる人々の姿にもあります。最初はとにかく感染者に襲われ逃げまとうばかりですが、いつしか戦うしかないと感染者に戦いを挑んでいきます。その様は戦いを重ねていくたびに残虐になり、ふと「どちらが感染者なのか?」と疑いすらわいてきます。
総じて見ると感染者、非感染者という境目が実際には非常に曖昧であり、感染拡大の恐怖というよりは人間自身の根底にある怖さに言及していると見ることもできます。
まとめ
台湾在住のジャバズ監督はこの国に対して非常に好印象を持っており、国の政府と国民との間に強い信頼感を覚えていたといいます。
それゆえに台湾という国において、本作のような物語を描いていくことに対して非常に困惑したと語っています。その意味でも作品の本質は台湾に関わらず人間の芯の部分に言及した非常に普遍的な部分へアプローチした作品と見ることもできるでしょう。
タイトルにある「哭悲」(こくひ)という言葉は「哭泣する」という意味、「哭」とは「声をあげて泣き叫ぶ」という意味を示しています。劇中では奇行に及ぶ感染者が最初に涙を流すという行動から次の行動に移るという習性を見せており、「THE SADNESS」という原題はこの意味からのネーミングとなっています。
ちなみに一方で残虐性を誘発するという傾向からは、「悲しい」を意味する「Sad」だけでなく、加虐性欲を意味する「Sadism」という意味にもとれる、掛けことばを思わせるところもあります。
ショッキングなシーンの連続に目を奪われがちでもありますが、彼らはなぜ涙を流したのか、その真意を考えながら作品を鑑賞すれば、単にホラーというジャンルに収めてしまうには惜しいと思えるくらいに深い広がりが味わえるものでもあります。
映画『哭悲/THE SADNESS』は2022年7月1日(金)より全国ロードショー!