祟りの森へ足を踏み入れた映画監督と助監督の運命は?
傑作を撮影する為、助監督の市川と「祟りの森」に足を踏み入れた、映画監督の黒石を不可解な現象の数々が襲う、ホラー映画『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』。
これまで、『ノロイ』(2005)『オカルト』(2009)『カルト』(2013)等、数々のフェイクドキュメンタリーや、POV(主観ショットの映画)を制作してきた白石晃士が、新たに挑戦する本作は「ジェットコースター・POV・ホラー・アドベンチャー」となっています。
恐怖の連続の末に辿り着く、異界と繋がる「祟りの森」に隠された秘密は?
とんでもない結末に突き進む、本作の魅力をご紹介します。
CONTENTS
映画『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』の作品情報
【公開】
2022年公開(日本映画)
【監督・脚本・撮影】
白石晃士
【キャスト】
堀田真由、飯島寛騎、筧美和子、宇野祥平、白石晃士、佐々木みゆ、中野英雄、池谷のぶえ
【作品概要】『
『貞子vs伽椰子』(2016)『不能犯』(2018)『地獄少女』(2019)など、数々の作品を手掛けてきた、ホラー映画界の鬼才、白石晃士。
これまで「戦慄怪奇ファイル コワすぎ」シリーズなど、フェイクドキュメンタリー作品も多く制作している白石晃士が、自身の集大成にして新境地とも呼べる作品に挑んだ、ジェットコースター・POV・ホラー・アドベンチャー。
主人公の助監督、市川を『かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦』(2019)などに出演している、堀田真由が演じる他、『仮面ライダーエグゼイド』の飯島寛騎や、数多くの日本映画に出演する宇野祥平、筧美和子が、それぞれ濃すぎるキャラクターを熱演しています。
映画『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』のあらすじとネタバレ
13年間ヒット作の無い、落ち目の映画監督、黒石。
ある時、黒石宛に奇妙な映像が送付されてきた為、黒石は真相を探る目的で、助監督の市川美保と共に、投稿主の三好麻理亜に会いに行きます。
動画は、隕石のような赤い光が森に落ち、その直後、謎の生物が麻理亜を襲うという内容でした。
市川は、動画の信憑性を疑いますが、黒石は投稿主の麻理亜が好みのタイプだったことから、取材に向かうことを決意します。
麻理亜の家に向かう途中、市川と黒石は、行方不明の女の子を探す、ボランティアの江野祥平と遭遇します。
江野から「森の奥は危険」と忠告されますが、猟銃を持って歩き回っている江野の方が、どう見ても異常な為、2人はこの忠告を無視します。
森の中にある麻理亜の家には、意味不明の張り紙が多数貼られており、市川は麻理亜の異常性を疑います。
麻理亜の家の中に入り、インタビューを開始した黒石と市川。
家の中には「霊体ミミズ」を捕まえた袋が多数置いてあり、ウジ虫の入ったお茶が出されるなど、麻理亜の異常性が際立っていました。
ですが、麻理亜は黒石の作品のファンで、今回の映像を「傑作にする」ことを、黒石は約束します。
さらに、動画を撮影した時の状況を再現する為、麻理亜が2階に上がります。
2階で麻理亜の話を撮影していた時に、扉や椅子が急に動き出すなどの怪現象が多発します。
さらに、謎の呪文を唱えて麻理亜が倒れた為、黒石と市川は麻理亜を連れて、家の外に出ようとします。
しかし、玄関のドアが閉まり、閉じ込められた状況となります。
さらに、麻理亜の中に入っていた、霊体ミミズが外に出て、謎の生物に変化します。
絶体絶命の状況となりますが、市川と黒石を気にしていた江野が助けに来て、猟銃で謎の生物を撃ち抜きます。
そのまま、外に脱出した市川と黒石、江野と麻理亜の4人。
ですが、外にも謎の生物が出現しており、市川達が乗って来た車を襲っていました。
市川達は、走って森の奥へと逃げ出します。
映画『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』感想と評価
これまで、数々のフェイクドキュメンタリー作品を制作してきた、白石晃士監督の新作『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』。
WOWOWで、放送されていた全6回のドラマを再編集した作品なので、タイトルが「THE MOVIE」となっています。
本作の冒頭では、長年傑作から離れている監督黒石と、助監督の市川が、一般から送られてきた謎の動画の真相を探る為、調査に行くという「ほんとにあった! 呪いのビデオ」シリーズのような展開から始まります。
では、本作はフェイクドキュメンタリー風のホラー映画かと言うと、そうではありません。
メインキャラクターの個性が、全員強すぎるんです。
監督の黒石は、どこか頼りない気弱な性格で、その黒石を支える助監督の市川は、気が強く毒舌です。
市川と黒石を助けてくれる、自称「正義の味方」のスーパーボランティア、江野と、強力な霊能力を操る、俺様キャラで、名前の無い霊媒師のナナシ、これに加えて、美人過ぎる変人の麻理亜が、事態をかき回していきます。
森の中で襲いかかって来る生物も、地球外生物なのか、霊体なのか正体そのものが不明です。
ですが、江野とナナシは、細かいことは何も気にせず、次々と謎の生物をなぎ倒していきます。
この様子を、黒石は傑作を撮る為に撮影し続けます。
観客は、黒石の撮影した映像を通して、まるでアトラクションを体験しているような感覚となります。
なので、本作は大枠はホラーですが、次々に迫る奇怪な現象をPOV(主観視点)で体験する、アトラクション型の作品となっており「ジェットコースター・POV・ホラー・アドベンチャー」というジャンルです。
『REC/レック』(2007)や『クローバーフィールドHAKAISHA』(2008)に近いですが、本作はホラー要素が薄いので、怖いのが苦手な方にもおススメです。
また、成り行きで集まった5人の関係性が変わっていく様子も面白く、麻理亜に一目ぼれした黒石と、黒石の本気を感じ取り、傑作映画の完成と、黒石の恋を本気で応援する江野や、市川がナナシに抱く信頼を越えた感情など、5人が徐々にチームになっていく人間関係の変化も見どころです。
本作の後半では「謎の生物が、カルト教団によって呼び寄せられたらしい」ということが分かり、戦いの舞台は森から、カルト教団の施設へと変わります。
このカルト教団は、自分達と同じ志の者は歓迎しますが、敵対する思想を持つ者には容赦が無く、「生贄の肉」としか見ていません。
「自分達は平和的な集団」と語りながら「生贄の肉」と認定した者へ、平気で残虐な仕打ちを行い、それを楽しんでいるように見えます。
このカルト教団の描写は、かなり寒気がします。
このカルト教団が「祟りの神」と呼ぶ存在を目覚めさせようとするのですが、これを止める為に、ナナシは「自然の法則を逆転させる」手段に出ます。
ナナシの提案は滅茶苦茶ですし、到底理解できるものではないのですが、ここまで一緒に戦ってきたチームであることから、市川達はナナシを信じることにします。
「不可解なものに、不可解な力で対抗する」という考え方は、実に白石晃士らしい展開と言えます。
とは言え、ナナシの提案はイマイチ理解が出来ませんが、ここから、江野が突然気の力で戦ったりし始めるので、細かいことは気にしなくて良いのではないでしょうか?
そして、本作のラストでは、無数の赤い光を纏った隕石が落下します。
完全に、この世の終わりですし、市川の「THE END?」という言葉と共に終了します。
実は、『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』はこれまでの、白石晃士作品と関連した部分が多く、麻理亜の家にあった霊体ミミズは『ノロイ』や「戦慄怪奇ファイルコワすぎ!」シリーズに登場する、お馴染みの存在。
主人公の市川美保は、「戦慄怪奇ファイルコワすぎ!」シリーズの市川実穂と同じ名前で、撮影スタッフ、強気な性格と共通点も多いです。
宇野祥平演じる江野祥平は、『オカルト』の主人公で、その他の白石晃士作品に度々登場していますし、口と態度が悪い霊媒師、ナナシは『貞子vs伽椰子』の常盤経蔵に近いキャラです。
『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』は、これまでの白石晃士作品の集大成的な部分があり、本作のラストで、この作品の世界が終わったとしても、また別の作品で、何かしら形を変えて登場する可能性は高いです。
『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』は、これまでの白石晃士作品を観賞しておけばニヤリとする要素が多いですが、全く知らなくても、アトラクション的な展開はじゅうぶん楽しめます。
手持ちカメラの臨場感を味わえる作品ですが、画面揺れが凄く、観賞後しばらく目が回る感覚に陥ったので、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』とか苦手な方はご注意ください。
まとめ
『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』は、本編公開前に劇場限定公開の短編『訪問者』が上映されます。
黒石の事務所を突然訪ねて来たおかしな男が、黒石と市川に自分の脚本を売り込むという『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』の前日譚的な内容です。
男に暴言を吐いて、ガンガン刺激する市川と、それに怯える黒石という、2人の名コンビぶりが楽しい内容です。
特にラストは「お分かりいただけただろうか?」的な演出で、あらためて本作が白石晃士の集大成的な作品なのだと感じました。