スマッシュヒットしたタイムループホラー『ハッピー・デス・デイ』の続編が登場!
前作でビッチと呼ばれながらも、自力で犯人を突き止め、殺人ループからの脱出に成功したツリー。しかし映画は大ヒット、彼女がまたも同じ目に遭うのは当然の流れです。
またも殺され続ける“殺人ループ”に陥ったツリー。しかし前回と何かが違う。ループしているのは、彼女だけでは無かったのです。
しかもツリーは自分の周囲の人物が、今まで知っていた人物と異なる事に気付きます。今回ループする1日は、彼女の知っている世界と、明らかに何かが異なっていました。
彼女がタイムループに遭遇した原因とは、また殺害を繰り返した、犯人の正体とは。そしてオツムの出来は控え目な彼女に、この謎は解明できるのでしょうか…。
CONTENTS
映画『ハッピー・デス・デイ 2U』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Happy Death Day 2U
【監督・脚本】
クリストファー・ランドン
【キャスト】
ジェシカ・ローテ、イズラエル・ブルサード、ファイ・ブ、スラージ・シャルマ、スティーブ・ジシス、サラ・ヤーキン、ルビー・モディーン、レイチェル・マシューズ、チャールズ・エイトキン
【作品概要】
タイムループを扱ったホラー『ハッピー・デス・デイ』に、新たなSF要素を加えた新感覚ホラームービー。
監督・脚本は前作に引き続きクリストファー・ランドン。また主要キャストも前作と同じメンバーが揃う、正統派続編ながらストーリーには新機軸が加えられた異色作です。
単純な続編映画を作りたくなかったので、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に触発された映画にした、と語るクリストファー・ランドン。新たな仕掛けが盛り込まれた結果、SF・ホラーのジャンルを愛する映画ファンを唸らせる作品となりました。
前作から続投する登場人物が多い中、新たに主要な登場人物として加わったスラージ・シャルマは、『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』で主人公のパイを演じた俳優です。
映画『ハッピー・デス・デイ 2U』のあらすじとネタバレ
前作で“殺人ループ”から逃れたツリー(ジェシカ・ローテ)と、恋人となったカーター(イズラエル・ブルサード)。2人はカーターの部屋でラブラブ、おかげでカーターのルームメイト、ライアン(ファイ・ブ)は前作同様、部屋を追い出され車で一夜を過ごします。
目覚めたライアンは、寮の自室に向かいます。途中で老婦人の連れた犬に咆えられ、茂みの中から現れたホームレスに驚かされ、スケボーの男とすれ違い、寮の自室に着いたライアン。今朝もツリーとカーターのお熱い姿を見せつけられます。
そんなライアンに、すぐ研究室に来るよう連絡が入ります。彼は量子力学の研究仲間であるサマール(スラージ・シャルマ)とドレ(サラ・ヤーキン)と共に、ある実験を行っていました。
彼らが開発した装置“シシー”はまだ未完成で、制御出来ない状態ですが、昨晩装置が作動したとライアンに説明するサマールとドレ。そこにブロンソン学部長(スティーブ・ジシス)が現れると、2人はライアンを残して逃げ出します。
研究成果を出さず、膨大な電力を消費し停電まで起こす“シシー”を金食い虫と責め、6時には没収すると、ライアンに告げる学部長。
残されたライアンのスマホに、メールが送られてきますが、中身は自分を映した写真。不審に思う彼は、研究室の中の物音に気付きます。その音の正体を確かめようと扉を開けたライアンは、中に潜んでいた“ベビー・マスク”の男に刺殺されます…。
車の中で目覚めたライアン。今まで起きた事は夢だったのでしょうか。しかし車を出た彼は犬に咆えられ、茂みの中にはホームレスがおり、スケボーの男とすれ違います。
寮の部屋に入り、同じ1日を繰り返していると感じたライアンは、デジャブの様な感覚に襲われていると、ツリーとカーターに訴えます。殺されて目覚めたと語る彼に、“殺人ループ”を体験したツリーは、彼が自分の体験と同じタイムループに陥ったと説明します。
ツリーの話を信じられないライアンは、映画『インセプション』の様に、夢の中で夢を見ているんだと考えますが、カーターに股間を叩かれ、これは間違いなく現実だと認めます。
“殺人ループ”から逃れるには犯人を倒すまで、と3人はライアンが殺害された場所に向かいますが、そこに犯人の姿はありません。
背後から現れた“ベビー・マスク”の男を殴り倒しますが、正体はサマールでした。ライアンは自分が殺された時、彼は別にいたと思い出し、サマールは犯人ではないと説明します。
彼らはこの状況について語り合います。しかしライアンらが作ったシーシュポス量子冷却反応装置、略して“シシー”に、タイムループを発生させる機能は無いはずだと考えます。
そこにツリーの女子寮を仕切るダニエル(レイチェル・マシューズ)が現れます。前作と変わらぬ高慢な態度で、彼らの集まりを「コミコン会議」と馬鹿にすると、彼女は去って行きます。
ツリーが11回死んだのと同様に、自分もまた殺されると訴えるライアンを、カーターは人目のある場所なら安全と、大学のバスケチームの試合会場に連れ出します。
良いアイデアに思えましたが、応援席には大学チームのマスコットキャラ、“ベビー・マスク”を着けた人物が溢れ、ゲンナリするツリーとライアン。
ツリーは自分が“殺人ループ”に陥った理由は、自分と母の誕生日であり、同時に母を失った特別な日だからだと信じていました。それが科学的実験の偶然がもたらした出来事と知り、少し悲しく感じていました。
いきなり試合会場に非常放送が流れ、皆は外へと避難します。2人と離れたライアンの前に、人の流れに逆らって彼に迫る“ベビー・マスク”の男。
必死に逃れるライアンは、“ベビー・マスク”の男に追い詰められますが、間一髪ツリーとカーターに助けられます。倒した男の“ベビー・マスク”を取った3人は、その正体を知り驚きます。
ライアンを襲った男もまた、ライアンでした。彼を研究室に運び込んだ一同は、間違いなく異常な事態が発生していると思い知らされます。
新たに現れたライアンは平行時空、すなわち別次元から現れたと語り、今は次元の並列タイムループに陥ったと説明します。この状態が続くとバタフライ効果で、更に悪い事が起きると訴えます。
現れたサマールとドレもこの事態に困惑します。ともかくタイムループと次元の交差を閉じるべく、“シシー”を作動させるライアン。
そこに“シシー”を没収すべく現れたブロンソン学部長と警備員。混乱の中で“シシー”が作動し、光と波動が彼らを包みます。
そしてツリーは目覚めます。今日は誕生日の18日の朝、あの“殺人ループ”の日に戻ったと知って叫び、何も知らずカーターの部屋に現れたライアンに、彼女は“シシー”で元の世界に戻すよう怒鳴りつけます。
またしてもあの日の、同じ光景を目にして怒り狂うツリー。しかし以前体験した“殺人ループ”の1日とは、何かが異なっていると気付きます…。
映画『ハッピー・デス・デイ 2U』の感想と評価
殺人ループからパラレルワールドへ
前作『ハッピー・デス・デイ』をご覧の方は、最初のユニバーサル映画のロゴがループして登場していた事にお気づきでしょう。
そして『ハッピー・デス・デイ 2U』では、ユニバーサル映画のロゴの画面は2つに、3つにと別れ、前作同様映画の内容を示すお遊びを行っています。
本作に意図してSF要素を加えた監督のクリストファー・ランドン。その発想の原点は、前作のカーターのルームメイト、学園コメディ映画にありがちな口の悪い人物が、実は物語の原因であり、ある種の天才だったら、と考えた事にあると語っています。
この映画の為に、量子物理学や宇宙論をリサーチした監督は、同時に映画化するに当たっては、複雑な設定を単純化して描く事を試みたと話しています。映画の中では「本物の科学」と「でたらめ(bullshit)の科学」の、両方が見いだせると告白しています。
『ハッピー・デス・デイ 2U』の続編を示す「2U」、音は無論「トゥー・ユー」を現しますが、同時に「2つのユニバース(世界・宇宙)」を現しているのです。
前作から成長を遂げた“ビッチ”な主人公
主人公のツリーは、前作では人から好かれない性悪女から、クールで魅力的な人物に成長する姿を描く事が出来た、と監督は評しています。
それだけに今回、彼女をどう描くのかを悩んだと語るクリストファー・ランドン。最終的に彼が選んだのは、彼女が母と対峙するストーリーでした。
このアイデアをプロデューサーのジェイソン・ブラムに語ると、それは素晴らしい、その内容で脚本を書くべきだと後押しされたと振り返っています。
主人公のツリーを演じたジェシカ・ローテは、この映画の役柄について聞かれたあるインタビューに対し、ここ2年間で3人の祖父母を失った個人的体験を語っています。
実際に母親とは親密な関係である、と語るジェシカ・ローテ。祖父母との別れを経験した彼女にとって、母の身に何か起きる、という事は考えるだけでも大きなものでした。
クリストファー・ランドンはその事実を知っていた、と彼女は言葉を続けます。それを踏まえて監督と、事前に役柄について語り合ったジェシカ・ローテ。
さらに彼女は、脚本に愛する母との個人的体験、共に旅行をした事や、細やかな日常の一コマを書き加えます。監督はセリフを語る時に、これらの出来事を心に留めるよう望みます。こうして主人公のツリーは作り上げられました。
まとめ
前作『ハッピー・デス・デイ』は完成後のテスト試写で、観客から評価を得られずラストを取り直す事になりました。
それは衝撃的な出来事だった、と振り返る監督のクリストファー・ランドン。そして今回は逆に、完成後何の変更も加えず、ラストの再撮影も無かったと語っています。
前回のテスト試写の評価はともかく、エンディングを撮り直していない映画を手がけた事は一度もない、と彼は告白しています。より良い映画を作る為の、試行錯誤は当たり前という環境で撮影している彼には、今回の出来事こそ驚きだと振り返っています。
ところで今回の映画でツリーは、ライアンに対し自分は“殺人ループ”で11回死んだ、と語っていますが、実際死んだ回数と違う、前作のセリフと違うと、見た方からツッコミが入っています。
別にこれは再撮影するような間違いではないんでしょう。なんせパラレルワールド、何があっても不思議はありません。
そもそもこの映画は、どこまでが科学的に、そして脚本的に正しいのか、今一つ判断出来ません。考えれば考える程頭が痛くなるので、止めておきます。
ツリーの様に“殺人ループ”ならぬ“自殺ループ”で学習すれば、天才にも負けない知識を獲得できるようですが、…遠慮したいものです。