世界各国から集めた選りすぐりの危険な映画たちを上映する、「モースト・デンジャラス・シネマ・グランプリ2018[MDGP2018]。
その第5弾、最後を飾る作品が『カッターヘッド 真夜中の切断魔』です。
危険な殺人鬼が、危険な映画たちの最後を飾るのです。
CONTENTS
映画『カッターヘッド 真夜中の切断魔』の作品情報
【公開】
2018年(アメリカ映画)
【原題】
He’s Out There
【監督】
クイン・ラシャー
【キャスト】
イヴォンヌ・ストラホフスキー、アンナ・ピニョフスキ、アビゲイル・ピニョフスキ、ジャスティン・ブルーニング、ジュリアン・ベイリー
【作品概要】
湖畔の別荘を訪ねた若い母と幼い2人の娘が、謎の殺人鬼に襲われるホラームービー。
ヒロインを演じるイヴォンヌ・ストラホフスキーは2018年公開の『ザ・プレデター』に出演、そして海外TVドラマ『CHUCK/チャック』のメインキャストであるサラ・ウォーカー役でお馴染みの人物です。
また彼女の2人の娘を演じているのは、実の姉妹であるアンナ・ピニョフスキとアビゲイル・ピニョフスキ。共に多くの出演経験を持つ注目株の子役姉妹です。
母親は謎の殺人鬼から、幼い2人の娘を守ることが出来るのか。そして殺人鬼の正体は。
映画『カッターヘッド 真夜中の切断魔』のあらすじとネタバレ
絵本を読む姉のケイラ(アンナ・ピニョフスキ)と「ベイビー・ゾンビ」と名付けた人形で無邪気に遊ぶ妹のマディ(アビゲイル・ピニョフスキ)。
2人は母ローラ(イヴォンヌ・ストラホフスキー)と共に、これから車で森の中にある湖畔の別荘に向かおうとしています。父ショーン(ジャスティン・ブルーニング)は、母娘と後から合流する事となっているのです。
こうして父より先に別荘に着いた3人ですが、門の鍵が開かずに苦労していたところを、近所に住む男オーウェン(ジュリアン・ベイリー)が手助けしてくれます。
その際ローラはオーウェンから、別荘の前の住人にはジョンという息子がいた事と、その息子が行方不明になってしまい、残された家族は失意の内に引っ越してしまった事を聞かされたのです。
到着すると姉妹は早速庭にあるブランコで遊びますが、そこで赤い糸を見つけます。その糸は木の幹や枝に張られています。興味を持った2人は糸の先へと、森の中へとどんどん進んで行きます。
2人は別荘に戻りましたが、この出来事を母ローラには伝えませんでした。しかしローラはケイラが机の引き出しに、何かを隠した事には気付きます。
別荘に向かっている夫のショーンからローラに電話がかかってきましたが、その際に彼女はショーンに卵を買ってくる事を頼むのでした。
夜になり3人は共に過ごしながら父の到着を待っていましたが、何故かマディの具合が徐々に悪くなってゆきます。
やがてマディはローラの前で吐いてしまいますが、ローラはマディの口の中に何かがある事に気付きます。それは「HELLO」と書かれた小さなリボンの切れ端だったのです。
ローラは姉のケイラに何があったのかを尋ねます。昼間赤い糸に導かれて森の中に入った2人は、その先にある切り株に、お茶会の様に置かれた食器類と、2つのカップケーキを見つけたのです。
マディはそのケーキを食べてしまい、ケイラが机に隠したものは残りの1つだったのです。ローラがそのケーキの中身を探ってみると、中から「GOODBYE」と書かれたリボンの切れ端が出てきたのです。
ローラは別荘の電話で救急の連絡をしようとしますが、電話は通じませんでした。その時物音がして姉妹は怯えますが、ローラはスマホを探すべく外に出て車の中を探ります。
しかしそこにスマホは無く、車内には綺麗に梱包されたマディの人形「ベイビー・ゾンビ」があったのです。
異様な雰囲気に怯えたケイラは外にでる事を拒みますが、マディの容態を案じたローラは姉妹を連れ車に乗りこみます。すると突然車の窓ガラスが破られ、皆はパニック状態になったのです。
何とか車を動かしたローラでしたが、車のタイヤが外れて動けなくなってしまいます。いつの間にか車に細工がされていたのです。やむなく3人は別荘に戻る事になります。
こうして別荘にこもった母娘ですが、外にいる何者かの行動に徐々に追い詰められていきます。そんな中ケイラが「外にパパがいる」と叫びます。ローラが確認すると怪しい何者かの姿が見えたのです。
そんな中室内に置かれたケイラが読んでいたあの絵本に、「ジョン」という名前が記されている事が示されます。
ようやく車で別荘に到着したショーンですが、開いているはずの門に鍵がかかっています。しかも門には「こっちへ」との張り紙と、あの赤い糸が張ってあったのです。
妻ローラのスマホに連絡するショーンですが、何故かスマホの着信音が森の中から聞こえてきます。電話のやりとりを怪しみながらもショーンは、張られた糸の先へと進んで行きます。
糸の先の切り株に、またお茶会の様に食器が並べてあります。しかし今回はショーン一家4人を模した木彫りの人形が並べられ、切り株の上にはローラのスマホが置いてあるのです。
スマホを手に取ろうとするショーンの背後に、怪しい人影が迫ります。
一方別荘では、妹マディの容態がさらに悪くなっていました。しかも怪しい物音が母娘を更に追い詰めていくのです。
突然ドアをノックする音が鳴り響きます。そして外からショーンの声が聞こえてきます。その声は先程のスマホの会話のものですが、それを知らぬローラは扉を開けます。
そこにはロープで吊り下げられたスマホがあったのです。そしてローラの目前にショーンの死体が落ちてきます。その遺体の眼はえぐられていたのでした。
この事態にローラは意を決して2人の娘と共に家を出ますが、外のブランコに姉妹を模した木彫りの人形が乗せられ、その間にローラを模した人形が吊るされている事に気付きます。
そして何かを投げつけられ、恐怖に駆られて別荘に戻った3人ですが、姉のケイラは母に先程の人形と同じ光景が、あの絵本に書き加えられていた事を指摘するのです。
別荘の一室に籠った3人ですが、先ほど投げつけられたものが卵である事に気付いたローラは、外にはショーンの車がある事に気付きます。ローラは何とか夫の遺体から車のキーを手に入れるのです。
しかし怪しい音がする外に、娘を連れて出る事がローラには出来ません。そこにクラクションの音が鳴り響きます。外を見ると到着時に会ったオーウェンが、懐中電灯を手に近づく姿が確認出来たのです。
ローラは必死に叫びますが窓が開かずその声はオーウェンに届きません。その彼の背後に忍び寄る影。ようやく声が届いた時には、彼は謎の人物に襲われてしまうのです。
ついに外部からの助けの望みを断たれた母娘3人。そしてあの絵本は、いつの間にか各ページに新たな絵が、上から貼られているのでした。
その絵の内容はいままで起きた惨劇であり、そしてこれから3人の身に降りかかるであろう光景だったのです。そして最後のページには「THE END」の文字が記されています。
意を決し1人外に出ようと扉に近づいたローラですが、突如扉のガラスが殺人鬼によって破られ、彼女はそこから外へ引きずり出されてしまいます。
もはや別荘に残されたのは、幼い2人の姉妹のみになってしまったのです。
映画『カッターヘッド 真夜中の切断魔』の感想と評価
カッターヘッドって実のところ誰なの?
ホラー映画に登場する殺人鬼には、インパクトのある名前が不可欠です。
その意味では邦題に付けられた“カッターヘッド”、実に良い名を頂いたと言えるでしょう。
しかし本編中で殺人鬼のジョンさんが、“カッターヘッド”と呼ばれる事は無いのです。
またこの映画は、オリジナルの脚本では“Scarecrow”のタイトルだったそうで、彼の顔面に包帯を巻いた容姿はそこから頂いたものなのでしょう。
同時に“真夜中の切断魔”とも呼ばれていますが、実のところ切断するシーンもありません(切断しようとするシーンはありますが…)。
確かに真夜中に活躍しますが、意外にもクライマックスは朝日の中が舞台なのです。
そんなこんなに加えて、邦題のイメージより随分流血シーンは控え目だなぁ…なんて油断していると、ガツンと来るシーンがあるので、苦手な方は要注意です。
この映画で、最もインパクトがあるのは邦題と殺人鬼のビジュアルと評して納得頂けますよね。
ピニョフスキ姉妹の演技と今後に注目
本作の出演者で一番知名度があるのは、イヴォンヌ・ストラホフスキー。
他のキャストは馴染みが無いと思いながら鑑賞しました。
しかし、劇中で姉妹を演じた、実際に姉妹でもあるアンナ・ピニョフスキとアビゲイル・ピニョフスキが実にイイ演技を見せています。
幼いとはいえ仕掛けられた罠にはあっさり引っかかり、恐怖で動けぬ姉と体調を崩し動けぬ妹、…ハッキリ言ってお荷物です。
イヴォンヌ・ストラホフスキーはハンディを背負って殺人鬼と対決するのです。
この展開にイライラする方もいるかもしれません。実際に小さなお子さんを持っている、またその経験のある方には、実にリアルな悪夢的展開に感じるはずです。
映画では意外な形で母親が一時退場します。すると今まで母に頼りきっていた姉妹が2人だけになると、けなげにも支え合うのです。
これも実感が出来る人には、かなりグッとくる展開ではないでしょうか。
日本ではまだ馴染みが無いもののこの姉妹、調べると共に既に多くの作品で活躍しています。姉のアンナ・ピニョフスキは、ケイシー・アフレックが監督・主演の務めた新作『Light of My Life』でその相手役を務めているのです。
こういった作品の楽しみの一つは、将来有望な俳優さんを発見する事。ピニョフスキ姉妹の今後にご注目下さい。
まとめ
ホラー映画に限らず映画を楽しむ方には、大きく分けて2つのタイプが存在します。
1つは映画を客観的に、あれやこれや分析しながら、どこか醒めた視点で見る事ができる人。映画の中で起こる様々な事象に対し、心の中で時に感嘆し時にツッこむ事を楽しみながら見るタイプです。
もう1つは映画の登場人物に感情移入し、その体験に共感しながらのめり込んで見る人。映画の中の出来事を自分の物に置き換えて素直に受け止め、大いに泣き大いに笑う事ができるタイプです。
『カッターヘッド 真夜中の切断魔』は、前者のタイプの方は大いにツッコミながら楽しむ事をお薦めします。
随分大ががりな準備をした割りに、色々と詰めが甘い殺人鬼。この行動は無いだろうという被害者一家。
あの状況から元気良く反撃するイヴォンヌ・ストラホフスキー。
そもそも紹介した通りに、邦題からしてツッコミ所が満載です。どうぞ大いに楽しみながら鑑賞して下さい。
一方で感情移入して観るタイプの方は、劇中の母親そして姉妹の視点になって大いに臨場感を味わって下さい。
恐怖に震える環境で、母が娘の為に何をしようとするのか。姉が妹の為に何をしようとするのか。
この視点に徹してこそ、本作が描こうとした一番の恐怖を味わえるのです。そしてその先に感動すら覚えるでしょう。
あなたはどちらのタイプの鑑賞者でしょうか。どちらのタイプの方でも楽しめる映画ですよ。
感想は両者では大いに異なるかもしれませんけどね。そして最後に、ピニョフスキ姉妹には、本当に注目して下さい!