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Entry 2019/10/13
Update

松本穂香映画『わたしは光をにぎっている』あらすじネタバレと感想。光石研らキャストの魅力際立つ“終わり方”の物語

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『わたしは光をにぎっている』は2019年11月15日(金)より全国順次公開

『四月の永い夢』で国内外の映画賞を賑わした中川龍太郎監督の最新作。

時代と共に消えゆく街並みと人々の切ない「終わり方」を描きます。

主演を務めたのは、テレビドラマ『この世界の片隅に』などをはじめ、近年多くの話題作に出演し続けている松本穂香です。

映画『わたしは光をにぎっている』の作品情報


(C)2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

【公開】
2019年(日本映画)

【監督】
中川龍太郎

【脚本】
中川龍太郎、末木はるみ、佐近圭太郎

【主題歌】
カネコアヤノ『光の方へ』

【キャスト】
松本穂香、渡辺大知、徳永えり、吉村界人、忍成修吾、光石研、樫山文枝

【作品概要】
テレビドラマ『この世界の片隅』などで注目され、これまでにも多くの話題作に出演し続けてきた若手人気女優・松本穂香の最新主演作。

監督を務めたのは中川龍太郎。前作『四月の永い夢』(2018)では「世界4大映画祭」の一つであるモスクワ国際映画祭・コンペティション部門に選出され、国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰のW受賞を果たしており、『わたしは光をにぎっている』もモスクワ国際映画祭に特別招待・ワールドプレミア上映されました。詩人としても活躍する中川監督ならではの映像描写、心象描写が見どころです。

映画『わたしは光をにぎっている』のあらすじとネタバレ


(C)2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

野尻湖の民宿で祖母・久仁子の仕事を手伝っていた澪は、地元を離れ東京に向かうことになります。久仁子が病に倒れ、民宿を閉じることになったからでした。

東京に向かった澪を迎えたのは、今は亡き澪の父の古い友人・三沢京介。下町で銭湯の「伸光湯」を営む中年男性です。

建物の中の一室に下宿し始めた澪は地元のスーパーで職を得ます。「伸光湯」の常連で自主映画を撮っている緒方銀次とOLの島村美琴は、澪のために就職祝いの席を設けてくれます。

しかし、他人に対して思ったことをすぐに言えず、曖昧な態度をとってしまう澪にとってスーパーの仕事は向いておらず、すぐに辞めてしまいます。

次の仕事もなかなか決まらない中、澪は少しずつ「伸光湯」の手伝いをするようになります。

相変わらず他人と積極的に話すことはない澪ですが、こつこつと浴室の清掃をする彼女の姿を見て、京介は清掃のコツや窯の焚き方などを教えていきます。

番台に座り始め、常連客とも少しずつ言葉を交わせるようになり、やっと居場所を得た澪。

しかしある夜、泥酔して帰ってきた京介から「伸光湯」を含む町の一角が都市再開発のために立ち退きを迫られていることを告げられます。

居心地の良い場所となった街が、消えゆくあることを知らされ言葉を失う澪。

その時、電話が鳴ります。

以下、『わたしは光をにぎっている』ネタバレ・結末の記載がございます。『わたしは光をにぎっている』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

電話の内容は、澪の祖母・久仁子の訃報を伝えるものでした。

澪は京介と共に野尻湖に戻ります。静かに見送る澪。それを見守る京介。

葬儀を終えた後、「伸光湯」の後始末について語り合う二人。

そして、「ちゃんとした終い方」をしようと決めるのでした。

「伸光湯」の周りの店も順々に閉店していきます。

東京に戻ってきた二人は大感謝祭として、緒方が撮り上げた、地元の人々へのインタビューをまとめたドキュメンタリー映画を銭湯の浴場で上映します。

映画には、消えゆく街並みで暮らしていた人々の最期の言葉で溢れていました。

映画『わたしは光をにぎっている』の感想と評価

参考映像:『四月の永い夢』(2018)予告編

この映画は良い意味で「本当に何も起きない」映画です。そして何かが起きたとしても、決して語り切ることはない作品です。

中川龍太郎監督が詩人としての顔も持っていることも大きいのだと思いますが、本作はまさしく「余白」と「行間」を読ませる映画といえます。

長野県・野尻湖湖畔の街並みと、消えつつある東京の下町の銭湯のある街並みが、今となってはある意味幻想的・絵画的な印象を与える風景として映し出されます。

そして古い銭湯と民宿が消えていく中で、水や自然、そして「人は変わらずに存在していく」という当たり前のことを、「当たり前のこと」として描いているのです。

まとめ

主演を務めた松本穂香のナチュラルな演技がまず最初に目につきます。ここ数年で一気にブレイクした彼女ですが、今までは意外に戯画化されたちょっと特殊な状況の映画が続きましたが、今回は等身大のキャラクターを演じることで、その地力を感じさせます。

松本は完成した『私はひかりをにぎっている』を観た後、「自分の出演作で初めて泣いた」とのこと。肩の力が抜けた本作でのキャラクターは、どこか本人に共通する部分があったのかもしれません。

そして、彼女がナチュラルなままでいられるのは、渡辺大知や徳永えり、樫山文枝など実力派の共演陣、何よりも名バイプレイヤー・光石研の巧さがあってこそといえます。

すさまじい量の出演作によって、光石はもはや日本映画にとって「当たり前」の存在となりつつあるため忘れがちですが、彼の巧さはやはり稀有な存在です。強面な役柄が続いていますが、今回の光石研は普通の下町のオヤジを好演しています。

透明度の高いシンプルな物語ゆえに、演者たちの魅力はより際立って感じられます。





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