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Entry 2024/09/02
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『とりつくしま』あらすじ感想と評価。東かほり監督x小泉今日子が死後モノに生まれ変わった魂を温かくユーモラスに見つめる

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『とりつくしま』は2024年9月6日(金)より新宿武蔵野館、9月27日(金)よりテアトル梅田、10月18日(金)より出町座、10月19日(土)より元町映画館ほかで全国順次公開!

長編デビュー作『ほとぼりメルトサウンズ』(2022)で注目を集めた東かほりが監督・脚本を手がけた映画『とりつくしま』が2024年9月6日(金)より新宿武蔵野館ほかで全国順次公開となります。

原作は監督自身の母である作家・東直子の同名小説で、「死んでしまった後、モノになって大切な人の近くにいられたとしたら何になりますか」と問いかける、切なさと温かみある物語です。

本作は『カメラを止めるな!』(2018)を生み出したENBUゼミナール「シネマプロジェクト」の第11弾作品であり、ワークショップで選ばれた橋本つむぎ、櫛島想史、小川未祐らが出演。そして重要な役“とりつくしま係”を、小説のファンである小泉今日子が演じます。

命を終えた人々はそれぞれの「とりつくしま」を選び、静かに愛する人に寄り添います。自分だったら何になるだろうかとつい考えてしまうかもしれません。生と死を温かくみつめる本作の魅力をご紹介します。

映画『とりつくしま』の作品情報


(C)ENBUゼミナール

【公開】
2024年(日本映画)

【原作】
東直子

【監督・脚本】
東かほり

【編集】
中村幸貴

【キャスト】
橋本つむぎ、櫛島想史、小川未祐、楠田悠人、磯西真喜、柴田義之、安宅陽子、志村魁、小泉今日子

【作品概要】
『カメラを止めるな!』(2018)を生み出したENBUゼミナール「シネマプロジェクト」第11弾作品。

長編デビュー作『ほとぼりメルトサウンズ』(2022)が、大阪アジアン映画祭、ニッポン・コネクション(ドイツ)などに選出された東かほり監督が、母である東直子さんの小説「とりつくしま」(筑摩書房)を原作に、脚本・監督を手がけた特別な映画です。

ワークショップオーディションには399名がエントリーし、『めためた』(2023)の橋本つむぎ、櫛島想史、『よこがお』(2019)の小川未祐ら23名の俳優が出演。そして小説のファンである小泉今日子が、重要な役どころとなる“とりつくしま係”として物語に寄り添います。

2024年3月・新宿K’s cinemaでの全5回のイベント上映では全回満席が続出。小泉、監督、東直子のアフタートーク回は発売開始直後に即完するほどの話題に。また同年5月には『ほとぼりメルトサウンズ』に続き、ニッポン・コネクション(ドイツ)のNIPPON VISIONS部門に選出されました。

映画『とりつくしま』のあらすじ


(C)ENBUゼミナール

人生が終わってしまった人々の前に現れる“とりつくしま係”は、「この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ」と告げます。

トラックにひかれて突然この世を去った妻は、夫のお気に入りのトリケラトプス柄のマグカップになることにしました。

だいすきな青いジャングルジムになった男の子、孫にあげたカメラになった祖母、ピッチャーの息子を見守るため、野球の試合で使うロージンになった母。

人生のほんとうの最後に、モノとなって大切な人の側で過ごす時間が映し出されていきます。

映画『とりつくしま』の感想と評価


(C)ENBUゼミナール

4つの短編から成るファンタジーヒューマンドラマ『とりつくしま』どの作品もそれぞれ味わい深く、小粒の作品にぎっしりと詰められた人々の交錯する思いに心を揺さぶられます

観るほどにじんわりと胸に染み、目には涙がいつの間にか溜まっていることでしょう。大切な人を遺していく者と遺される者、それぞれの悲しみと、その後も続く生活の営みが淡々と温かく綴られます

夫の愛用するマグカップになることを選んだ妻。そのカップは博物館で一緒に選んだ思い出の品で、個性的なトリケラトプスが描かれています。

マグカップそのものに詰まっている、ふたりの特別な思い。彼女には、夫がきっといつまでもそのカップを大切にするのだとわかっていたのかもしれません。

どの作品でも、あの世にいった人とこの世にとどまった人は、変わらず思いが通じ合っています。離ればなれになりながらも、お互いの心が向き合っていることに感動せずにいられません。

さまざまなモノに姿を変えた死者たちの語り口は皆とてもユーモラスで、生命の本編を終えた清々しささえ感じさせます。生死を扱う物語は、ともすれば重くなりすぎてしまうものですが、最後まで微笑ましく、見守りたくなる作品に仕上げた東監督の絶妙なバランス感覚に脱帽です。

“とりつくしま係”を演じるキョンキョンの温かな話し声にも注目です。小説のファンだという彼女が、本作を芯から理解し、作品の要であるファンタジックな役をユーモアをたたえながら演じています

まとめ


(C)ENBUゼミナール

東かほり監督が、母である作家・東直子の小説を見事に映像化した『とりつくしま』少し長めの人生のエンディングロールをもらえたファンタジーの住人たちを、温かな視線で見つめた作品です。

死んだらすぐに目の前からいなくなってしまうのではなく、こんな風に少しだけ長くこの世にとどまって、ゆっくりさようならが言えたならどれだけいいでしょうか。

死別をただ悲しいものとしてではなく、永遠に続く温かな双方向の思いとして描いた心温まる素敵な作品です。ぜひスクリーンでご覧ください。

映画『とりつくしま』は2024年9月6日(金)より新宿武蔵野館、9月27日(金)よりテアトル梅田、10月18日(金)より出町座、10月19日(土)より元町映画館ほかで全国順次公開!



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