映画『タレンタイム~優しい歌』は2024年7月20日(土)より公開
『細い目』(2019)のヤスミン・アフマド監督の没後15年を記念して、遺作にして最高傑作の『タレンタイム~優しい歌』が2024年7月20日(土)より公開されます。
日本ではアフマド監督急逝後の2009年10月開催の東京国際映画祭で上映されたのち、8年後の2017年に劇場公開されました。
音楽コンクールに挑戦する生徒たちの青春と共に、民族や宗教の混在するマレーシア社会を映し出す『タレンタイム~優しい歌』。
それぞれに異なる土壌を持ち、守るべきものが異なる人々が共に暮らす難しさ。すべての垣根を越えて心が通い合うさまを美しく描く、本作の魅力をご紹介します。
映画『タレンタイム~優しい歌』の作品情報
【日本公開】
2024年(マレーシア映画)
【監督・脚本】
ヤスミン・アフマド
【キャスト】
パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール、モハマド・シャフィー・ナスウィップ、ハワード・ホン・カーホウ
【作品概要】
51歳の若さで亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの最高傑作で、長編映画としての遺作になった『タレンタイム〜優しい歌』。ついに8年の時を経て初の劇場公開となりました。
ヤスミン・アフマドは、母方の祖母は日本人。2003年に監督デビューし、2004年の『細い目』(2019)が東京国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞し、国際的にも注目を集めましたが、本作『タレンタイム〜優しい歌』を発表後、急逝しました。活動期間はわずか6年で、その間に長編は6本を残しました。
音楽コンクール“タレンタイム” に挑戦する若き生徒たちの青春を描きながら、マヘシュの叔父に起きる悲劇や、ムルーとの交際に強く反対するマヘシュの母、闘病を続けるハフィズの母など、民族や宗教の違いによる葛藤を抱えた人々の様子を通して、多民族国家としてのマレーシア社会を映し出します。
映画『タレンタイム~優しい歌』のあらすじ
ある高校で、音楽コンクール“タレンタイム” (マレーシア英語=学生の芸能コンテストのこと)が開催されることになりました。
オーディションに合格したピアノの上手な女子学生ムルーをリハーサル会場まで送迎してくれることになったのは、耳の聞こえないマヘシュでした。返事をしない彼を無礼に思っていたムルーでしたが、ハフィズにマヘシュが聴覚障害者だと教えられます。二人はいつしか恋に落ちていました。
二胡を演奏する優等生のカーホウは、成績優秀で歌もギターも上手な転校生ハフィズに成績トップの座を奪われ、わだかまりを感じていました。
マヘシュの叔父に起きる悲劇、ムルーとの交際に強く反対するマヘシュの母、闘病を続けるハフィズの母。マレー系、インド系、中国系など、民族や宗教の違いによる葛藤も抱えながら、いよいよコンクール当日を迎えますが…。
映画『タレンタイム~優しい歌』の感想と評価
さまざまなルーツや宗教を持つマレーシアの人々の姿を、温かく見つめたヒューマンドラマです。バッハやドビュッシーの美しいピアノ曲が静謐な作品にやさしい彩りを加えます。
音楽コンクールに出場する生徒ムルーやハフィズ、その送迎を引き受けることとなった聴覚障害の少年マヘシュを中心に、彼らの家族の絆や、いろいろなルーツを持つ人々が描かれます。
ピアノの弾き語りで出場するムルーと、耳の聞こえない美しい少年マヘシュの切なく純粋な恋。3人姉妹で賑やかな家庭に育ったムルーが、静かな世界に住むマヘシュに心惹かれるさまがとても美しく映し出されます。ムルーの心のこもった愛の歌を聴くことが叶わないマヘシュ。
そんなふたりの恋に、マヘシュの母は強く反対します。恋をするために、越えなければならない高い壁がいくつも存在するマレー社会。人種や宗教の異なる世界で暮らす厳しさが伝わってきます。
優等生でギターの上手なハフィズには、重い病に苦しむ母がいました。彼の母親への思慕、しっかりしなければと自らを律し奮い立たせるさまを見ていると胸が引き絞られます。少年は辛い思いに負けることなく、愛する母のためにタレンタイムで全力を出してオリジナルソングを歌います。
優秀なハフィズに嫉妬心を燃やすカーホウや、病と闘いながら息子のことだけを心配し続けるハフィズの母。さまざまな人々の思いが交錯します。
多くの垣根を越えて人々が寄り添い合う姿に胸打たれる素晴らしい作品です。
まとめ
それぞれに大切な何かを抱きしめて生きる人々の姿を、愛と寛容の視点で温かく描き出したヤスミン・アフマド監督の傑作『タレンタイム~優しい歌』。
アフマド監督没後15年を迎えても尚、愛され続ける素晴らしい作品です。8年の時を経て劇場公開されるこの機会に、ぜひ大きなスクリーンでヤスミンワールドを堪能してください。
映画『タレンタイム~優しい歌』は2024年7月20日(土)より公開です。