Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】センチメンタル・バリュー|あらすじ感想結末と評価考察。『私は最悪。』のヨアキム・トリアー監督が贈る父と娘の”こじれた家族愛”

  • Writer :
  • 星野しげみ

家を舞台に家族愛と歪が浮き彫りに。果たして親子の絆は修復可能か。

映画『センチメンタル・バリュー』は、愛憎入り混じる「親子」のしがらみをテーマにとりあげた家族ドラマ。

わたしは最悪。』(2022)で話題を集めたスウェーデンのヨアキム・トリアー監督が、その作品で主演を務めたレナーテ・レインスベを主人公に抜擢して、父と娘という親子の愛憎劇を描き出します。

家の土台に亀裂が入るように、いつしか忍び込む親子の絆の歪。年月が経てばこの亀裂は修復できるのでしょうか?

映画『センチメンタル・バリュー』を、ネタバレありでご紹介します。

映画『センチメンタル・バリュー』の作品情報


(C)2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINEMA / FILM I VAST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

【日本公開】
2026年(ノルウェー・フランス・デンマーク・ドイツ合作映画)

【原題】
Affeksjonsverdi

【監督】
ヨアキム・トリアー

【脚本】
ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト

【編集】
オリビエ・ブッゲ・クエット

【音楽】
ハニャ・ラニ

【キャスト】
レナーテ・レインスベ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング、アンデルシュ・ダニエルセン・リー

【作品概要】
家族ドラマ『センチメンタル・バリュー』は、『わたしは最悪。』(2022)のヨアキム・トリアー監督が手がけました。

レナーテ・レインスベが主人公ノーラを演じ、ステラン・スカルスガルドが映画監督の父グスタヴ役で共演。妹アグネスをインガ・イブスドッテル・リッレオース、アメリカの人気俳優レイチェルをエル・ファニングが演じています。

本作は、2025年・第78回カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞。第98回アカデミー賞では作品賞をはじめ8部門で計9ノミネートされました。

映画『センチメンタル・バリュー』のあらすじとネタバレ


(C)2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINEMA / FILM I VAST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

オスロで俳優として活躍するノーラ。華々しい舞台の片隅で、出番直前に極度の緊張に襲われ、なんとかして舞台に立たずにすむ方法なないかと右往左往している様が映し出されります。

ですが、ひとたび幕が上がって舞台に立つと、落ち着きを取り戻したノーラは観客をひきつける圧倒的な演技を披露し、圧巻の存在感を見せました。

場面は変わって回想シーン。12歳のノーラが学校で書いた作文が読まれます。ノーラは自分の住んでいた家目線で作文を綴り、その作文を読むことで自分の家のことを知ってもらおうとしました。

彼女が訴えたかったのは、妹・アグネスとの楽しかった幼年時代とやがて訪れた両親の不仲。そして突然家を出て行った映画監督の父・グスタヴへの喪失感でした。

母子家庭で育ったノーラ。俳優の道を目指し、オーディションでの朗読で自分の作文を読もうとしますが、心の傷を表明しているようだと気が付き、チェーホフの戯曲『かもめ』を朗読しました。

そんな試練を経て無事に俳優として活躍するノーラ。一方の妹アグネスは、よく夫と9歳の息子・エリックと共に家庭を築き、実家の家で穏やかな日々を送っていました。

そんなある日、長い間病床に伏していた母・シセルが亡くなりました。母の追悼式の最中、家を飛び出したきり長い間音信不通だった父のグスタヴが姿を現します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『センチメンタル・バリュー』ネタバレ・結末の記載がございます。『センチメンタル・バリュー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINEMA / FILM I VAST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

いったいなぜ今ごろ現れたのか。驚く葬儀に参列した人々ですが、グスタヴは少しも悪びれることなく平然とした態度で周囲の人々に接していました。

驚く姉妹ですが、ノーラよりもアグネスの方が落ち着きを取り戻し、息子に「おじいちゃんよ」と挨拶させます。

その後、グスタヴは話があるからと、ノーラを呼び出しました。ノーラが待ち合わせのカフェへ行くと、グスタヴは自伝的な要素を盛り込んだ「復帰作」の脚本を携え、ノーラに主演を依頼します。

ですが、かつて家族を捨てて家を出て行った父への怒りが癒えていないノーラは、その申し出を断りました。

ノーラに断られたグスタヴは、それでも自身の「最高傑作」を完成させようと決意。

映画祭で出会ったアメリカの若手女優、レイチェル・ケンプに主演をオファーし、新たなキャラを求めていたレイチェルは承諾します。

グスタヴの新作は、ノーラをモデルにしたものでした。さらにかつて家族と暮らしていた思い出の実家を撮影場所としていました。

詳細を知ったノーラは、父への抑えきれない感情を抱きます。

一方、ノーラの代わりに主演を引き受けたレイチェルは、自分が演じる役柄に成りきることが出来ずに悩んでいました。

そしてとうとう、降板を申し出ます。

グスタヴの窮地とレイチェルの降板を知ったノーラは、その作品の主演をすることを決心しました。

そして、最終撮影の日。レイチェルがどうしても理解できなかった主人公の行動を、ノーラはなんなくやり遂げます。

その役はもともとはノーラを想定して作られたものですから、ノーラなら演じ切ることが出来たのです。

「上出来だ」。本物のロケ場所ではなく、スタジオのセットとなった実家の部屋で、上機嫌のグスタヴの声が響きました。

グスタヴを見つめたノーラも満面の笑みを返します。

映画『センチメンタル・バリュー』の感想と評価


(C)2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINEMA / FILM I VAST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

幼少期に家族を残して家を出た父を持つ主人公・ノーラとその妹のアグネスの姉妹。

映画監督の父の血をひくノーラは、俳優の道を歩みます。反対に妹のアグネスは、素敵な伴侶をみつけ家庭に入り9歳になる息子と3人で堅実な生活を営んでいました。

本作はそんな2人の対照的な生き方と、母の告別式で突然姿を現した父との葛藤を描きだします。

父が娘をモデルにして書き上げた新作には、我が娘への秘かな懺悔の気持ちがあったのではないでしょうか。

映画のロケ地も実際に存在するノーラたちの実家を想定していました。ここにも過去を思う父の気持ちが籠っているようです。

過ぎ去った過去は取り戻せませんが、過去を懐かしむ気持ちは色あせるものではありませんから……。

作品のタイトル『センチメンタル・バリュー』は、「思い出の価値」という意味があるようですから、その意味が活きていると思われます。

他の人から見れば、特に感慨もないとるに足らないものでも、当事者にとっては特別な意味をもつ大切なものは数多くあります。本作では、その最も重要なものを、ノーラの実家にしていました。

家はノーラの祖母たちの時代からノーラたちが誕生し、やがて父が出ていき、今に至るまでの時の流れをしっかりと刻み込んでいます。

壁にできた亀裂やドアのきしみ。目立たないけれども確かに年数を経た傷を持つ家の存在は、ノーラにとっては「思い出の価値」あるものだったのに違いありません

物語の始まりの部分で、少女のノーラが自分の家を主人公にした作文を朗読しますが、そこには自分の家を愛してやまないノーラの優しい気持ちがにじみ出ています。

家に纏わる愛はそのまま過去の記憶となり、セピア色の過去を引きずりながら相まみえる父と娘。言葉では反発していても、心の底では何かを求めている2人が笑顔を交わす結末にホッとします。

心の傷は完全修復することは出来なくても、お互いを理解することで少しずつ歩み寄れるのではないか。そんな期待を感じさせる素敵なラストでした

まとめ


(C)2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINEMA / FILM I VAST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

わたしは最悪。』(2022)のスウェーデンのヨアキム・トリアー監督最新作『センチメンタル・バリュー』をご紹介しました。

本作で登場する、ノーラの実家や過去の思い出などの価値は一体どれぐらいのものなのでしょう。想像しても個人の思い出ですから、その人にしか価値はわかりません

同じ思い出を持ちながら哀しい別れをした家族ですが、やはり繋がっていた父と娘の絆に胸をなでおろす作品でした。




Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/demachi2026/cinemarche.net/public_html/wp-content/themes/stinger8-child/single.php on line 150

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『スティング』あらすじネタバレと感想。どんでん返しのラストが魅力のコンゲーム代表作

これぞ、詐欺師の中の詐欺師! お金よりも大切なものとは? アカデミー賞作品賞を始め、1973年度最多7部門を受賞した不朽の名作『スティング』。 同じく数々の輝かしい賞を受賞した、1969年製作映画『明 …

ヒューマンドラマ映画

映画『のさりの島』感想解説と評価レビュー。天草ロケ地と熊本弁の意味深い犯罪者の若者と老女の“やさしい嘘”

映画『のさりの島』は、2021年5月29日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開、天草、熊本にて5月先行公開予定。 タイトルにある「のさり」とは、熊本県天草地方に古くからある言葉です。 いいこともそ …

ヒューマンドラマ映画

舘ひろし映画『終わった人』あらすじと評価感想!エキストラ募集も

俳優の舘ひろしと黒木瞳が2018年公開の映画『終わった人』でダブル主演すること発表されました! 昔からの知人ではあったものの意外なことに映画では初共演の顔合わせ。しかも夫婦役を務めることで話題になりそ …

ヒューマンドラマ映画

朝倉あき映画『四月の永い夢』あらすじとキャスト。上映館公開情報も

朝倉あき主演の映画『四月の永い夢』は、5月12日より新宿武蔵野館ほか全国で順次ロードショー。最年少 第39回モスクワ国際映画祭にてダブル受賞を果たした本作の演出を務めたのは、東京国際映画祭2年連続入選 …

ヒューマンドラマ映画

フルーツチャン映画『三人の夫』あらすじと感想。過激なエロスに女優が挑む真意とは

2018年10月に開催された第31回東京国際映画祭のコンペティション部門選出の香港映画『三人の夫』。 フルーツ・チャン監督による、娼婦を主人公にした本作は、2000年公開の『ドリアン・ドリアン』、20 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学