映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』は2020年12月11日(金)公開。
2020年12月11日(金)より、映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』が、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次公開されます。
主演はゾーイ・カザン。ニューヨーク・マンハッタンに2人の息子を連れて夫から逃れてきた女性クララを演じました。
彼女を取り巻くさまざまな人間模様が、『17歳の肖像』『ワン・デイ 23年のラブストーリー』を手がけたデンマーク出身の女性監督ロネ・シェルフィグによって、温かい目線で描かれていきます。
CONTENTS
映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』の作品情報
【日本公開】
2020年(デンマーク・カナダ・スウェーデン・ドイツ・フランス合作映画)
【監督・脚本】
ロネ・シェルフィグ
【キャスト】
ゾーイ・カザン、アンドレア・ライズボロー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、タハール・ラヒム、ジェイ・バルチェル、ビル・ナイ、ジャック・フルトン、フィンレイ・ボイタク=ヒソン
【作品概要】
舞台はマンハッタンで創業100年を超える老舗ロシア料理店「ウィンター・パレス」。
家族や仕事、恋愛にトラブルを抱える孤独な人々が、優しさを勇気と力に変えて、人生を再び取り戻す姿をロネ・シェルフィグ監督が描いていきます。
キャストは、『ルビー・スパークス』のゾーイ・カザン、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のアンドレア・ライズボロー、『預言者』のタハール・ラヒムらが顔をそろえ、イギリスを代表する俳優のビル・ナイが物語を引き締めます。
映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』のあらすじ
ニューヨークのマンハッタンで、創業100年を超える伝統を誇るロシア料理店「ウィンター・パレス」。
しかし、現在のオーナーであるティモフェイ(ビル・ナイ)は商売下手で、かつての栄華は過去の栄光となり果て、今では経営も傾いていました。
店を立て直すためにスカウトされたマネージャーは、マーク(タハール・ラヒム)という刑務所を出所したばかりの謎だらけの人物。
店を支える常連の一人である看護師のアリス(アンドレア・ライズボロー)も、恋人に裏切られて以来、救急病棟の激務に加え〈赦しの会〉というセラピーを開き、他人のためだけに生きる変わり者です。
そのアリスを、絶望的な不器用さから次々と仕事をクビになったジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)ら、ワケありの過去を抱えた者たちが慕っていました。
そんな「ウィンター・パレス」に、まだ幼い2人の息子を連れて、夫から逃げてきたクララ(ゾーイ・カザン)が飛び込んできます。
無一文で寝る場所もないクララに、アリスとマークにジェフ、そしてオーナーも救いの手を差しのべます。
しかし、ある事件をきっかけに、夫に居所を知られるのも時間の問題になり、追い詰めれたクララは、皆から受け取った優しさを力に変えて、現実に立ち向かうことを決意し…。
映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』の感想と評価
大都会の片隅で懸命に生きる人々
本作品の舞台は、大都会ニューヨーク。エンパイア・ステート・ビルやNY公共図書館、クイーンズボロ橋など、ニューヨークを象徴する景色が映し出されますが、物語のメインとなるのは、大都市の片隅で懸命に生きる人たちの姿です。
物語の冒頭で、本作品における主要な女性キャスト、クララとアリスの姿が描かれます。クララは夫から逃れるべく、夜中に2人の息子を連れて家出。大都会・ニューヨークへ向かいます。
救急病棟の看護師・アリスは、搬送される患者やその家族をフォローするために身を粉にして働いています。
専業主婦のクララと独身で仕事を頑張るアリス。女性として真逆の人生を歩んでいる2人ですが、子どもたちに暴力を振るう夫から逃げてきたクララと、恋人に裏切られた過去のあるアリスは、それぞれ心に大きな傷を持っています。
文無しで寝るところもないクララと、自分自身の時間を持つことも許されず、馬車馬のように他人のために働き続けるアリスが、疲労困憊して輝きを失っていく様は、心が痛くなります。
そして懸命に生きているのは、クララとアリスだけではありません。気は優しいのに、あり得ないぐらいの不器用さで、次から次へと仕事をクビになってしまうジェフ、麻薬中毒の弟の身代わりで刑務所に入っていたマークなど、華やかな都会の片隅でもがきながら暮らす男性たちの姿もそこにありました。
傷を負った人々のリアルな姿を描く
クララ、アリス、ジェフは、マークがマネージャーを務めるロシア料理店「ウィンター・パレス」で交流を深めていきますが、そこに至るまでは実に過酷な日々を送ることになります。
クララは2人の息子に「旅行をする」と嘘をついて家を出ました。一文無しの宿無しという切羽詰まった状況を息子たちに悟られたくないため、クララは必死に取り繕います。
ホテルのフロントで「あなたはみすぼらしい」と言われて宿泊を拒否されれば、デパートで高級な服を万引き。息子たちに何かを食べさせるために、セレブなふりをしてパーティーに忍び込み、食べ物をかばんの中に入れて持ち帰ろうとします。
なぜそうまでして、嘘をつき続けるのか、誰かに「助けてほしい」と言えないのか。夫の暴力によって傷ついた女性が、自分の殻に閉じこもってしまう姿をクララは体現しています。
そして次から次へと仕事をクビになるジェフは、家賃を滞納し、ホームレスになってしまいます。
極寒のニューヨークで凍死寸前だったジェフは、ボランティアの人たちに助けられますが、その時に放つ言葉が「俺のことは、ほっておいてくれ」。
仕事や住むところさえも奪われて、窮地に立たされた人が自暴自棄になる姿を、このセリフが物語っていると感じました。
人々の温かさが、勇気を与える
物語の前半は、クララをはじめとして、生きていくことの厳しさが描かれています。特にクララに関しては、ひょんなことから逃げてきた夫に見つかるなど、絶望的な気分になる場面も多いのですが、アリスやマークと出会うことによって、流れが変わっていきます。
アリスもマークもトラウマを抱えながら懸命に生きている人たちです。
恐らく自分の生活や仕事を守るのに精一杯だと思うのですが、アリスは、寝る場所に困っているクララたちを自らの仕事場で休ませ、マークは、マネジャーを務めるロシア料理店「ウィンター・パレス」に忍び込んできた母子に食事を与え、部屋を与えて匿います。
「都会の人は冷たい」という固定概念を覆す、心温まるシーンが物語の後半に描かれていきます。
それまで頑なに自分の置かれている状況を直視しなかったクララは、こうした人たちの優しさや助けによって、現実を直視する勇気を持つことができるようになるのです。
そしてクララを助けたアリスやマークも、考えることを避けてきた「自分自身の人生」を見つめなおすようになります。
「困っている人を助ける」というシンプルな優しさをきっかけに、登場人物それぞれが救われていく物語に、心がじわっと温かくなります。
まとめ
クララ、アリス、マーク、ジェフなど、癖のある登場人物たちが魅力的に描かれている本作ですが、クララの2人の息子、アンソニー(ジャック・フルトン)とジュード(フィンレイ・ヴォイタク・ヒソン)の名演技も見どころの一つです。
父親から暴力を受けていたことを告白するアンソニーの鬼気迫る演技、父親に見つかった時、恐ろしさで表情が凍り付いてしまうジュード。傷を負った子どもが見せるであろう、リアルな表情を見事に表現していました。
人とのつながりの大切さを再確認できる本作。「人間って、こんなに温かいものなんだ」「人生って捨てたもんじゃない」という気分にさせてくれる、寒い冬にぴったりな心温まる作品に出会えた気がします。
映画『ニューヨーク 親切なロシア料理店』は、2020年12月11日(金)より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次公開です。