Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2021/02/06
Update

映画『MISS ミス・フランスになりたい!』あらすじ感想と評価解説。ジェンダーレスモデルのアレクサンドル・ヴェテールが自分らしく生きる“自由を解放”する

  • Writer :
  • 山田あゆみ

映画『MISS ミス・フランスになりたい!』は2021年2月26日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

映画『ミス・フランスになりたい!』は、主人公のアレックスが、少年のころ抱いた「ミス・フランスになりたい!」という夢を叶えるべく奮闘するヒューマンドラマ。

アレックスを演じたのは、ジェンダーレスモデル兼俳優としてNetflixドラマ『エミリー、パリへ行く』などに出演しているアレクサンドル・ヴェテールです。圧倒的美しさと枠にとらわれない魅力に注目です。

映画『MISS ミス・フランスになりたい!』の作品情報


(C)2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

【公開】
2021年(フランス映画)

【監督】
ルーベン・アウヴェス

【キャスト】
アレクサンドル・ヴェテール、パスカル・アルビロ、イザベル・ナンティ、ティボール・ド・モンタレンベール、ステフィ・セルマ、クエンティン・フォーレ、ムッサ・マンサリー、ハディ・プシュナヴァ

【作品概要】
監督、脚本を務めたのは『イヴ・サンローラン』や『あしたは最高のはじまり』などに俳優として出演しているルーベン・アウヴェス。本作が長編映画監督としては2作目の作品。

主演のアレクサンドル・ヴェテールはフランスでジェンダーレスモデルとして活躍している人物です。

俳優としてはNetflixドラマ『エミリー、パリへ行く』やAmazonプライムドラマ『マーベラス・ミセス・メイゼル』などに出演し、さらに活躍の幅を広げています。

映画『MISS ミス・フランスになりたい!』のあらすじ


(C)2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

9歳の頃学校で「ミス・フランスになりたい。」とみんなの前で話したことによって、全員に馬鹿にされた経験のあるアレックスは大人になってから夢はおろか自分らしい生き方ができないで鬱屈とした日々を送っていました。

そんな時再会した幼馴染のアリエスが夢を叶えて輝いている姿を見たことで、意を決してミス・フランスに挑戦することを決めたのでした。アレックスは友人らの助けを借り、大会へ挑みます。

映画『MISS ミス・フランスになりたい!』感想と考察


(C)2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

本作はサクセスストーリーというよりは、自分と真剣に向き合う尊さと勇気を描いたヒューマンドラマです。

ミスフランスになることが夢だったアレックスは、有名になることや美しくなることよりも「自分のやりたいこと」に挑戦したかったのです。

しかし作中でアレックスは、沢山のフォロワーができるなど生活が変わったことで自らを過信し目的を見失ってしまいました。
そんなときに、母親代わりの存在であるヨランダが掛ける言葉が印象的です。「あなたを理解しない人に自尊心を見せびらかすな。」とアレックスに伝えるのです。

人は承認欲求にかられると本来の目的や夢を見失いがちなもの。そんなときにヨランダのようにありのままの自分を受け入れてくれる存在が居てくれることがどんなに救いになり、強さに変えられるだろうかと考えさせられるセリフです。

また、コンテストを仕切るアマンダという女性も本作ではとても重要なキャラクターです。

ミス・フランスという伝統的でありながら、昨今の風潮では批判されかねないコンテストに対して、ポリシーを持って取り組んでいる彼女からは、女性のプライドや自由を守りたい信念が感じられます。

ビジネスのために厳しさは忘れないものの、「何ものかになりたい」というアレックスの強い願いを誰よりも理解していたのは彼女なのかもしれません。

ミス・フランスという題材ながらも、「自分の価値は自分で決める」という力強いメッセージが込められた作品となっています。

まとめ


(C)2020 ZAZI FILMS – CHAPKA FILMS – FRANCE 2 CINEMA – MARVELOUS PRODUCTIONS

昨今、トランスジェンダーの役をヘテロセクシュアルの役者が演じることについて批判が上がりがちなことについて、アレックス役を演じたアレクサンドル・ヴェテールがインタビューでこう語っていました。

「別の人間を演じることができるというのが俳優の本質です。ヘテロセクシャルの女性だからトランスジェンダーの役が演じられないのであれば、女優はパン職人の役も演じられないことになります。ジェンダーに閉じ込めることは良くない。しかも、そうした行為は、トランスジェンダーをトランスジェンダーの枠組みの中に押し込めてしまうことになりかねない。」

ジェンダーレスモデルとして活躍している彼が演じたことで、本作の魅力と説得力は増したように感じますが、もしヘテロセクシャルの男性がこの役を演じていたとしても批判が起きない社会になってほしいと願ってやみません。

『MISS ミス・フランスになりたい!』は2021年2月26日TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『チア男子!!』キャストの遠野浩司役は小平大智(こだいらだいち)。プロフィールと演技力の評価

『桐島、部活やめるってよ』『何者』で知られる直木賞作家・朝井リョウが、実在する男子チアリーディングングチームをモデルに書き上げた『チア男子!!』がついに待望の実写映画化。 監督を務めるのは、期待の新鋭 …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】6月0日|あらすじ結末感想と評価解説。“アイヒマンが処刑された日”に関わった者の物語が描く“歴史に触れる瞬間”

“6月0日”……それは、アドルフ・アイヒマンの処刑され、火葬された日。 ナチス親衛隊中佐としてユダヤ人大量虐殺に関与したアドルフ・アイヒマン。終戦後に逃亡しブエノスアイレスに潜伏していましたが、イスラ …

ヒューマンドラマ映画

映画『ハナレイ・ベイ』あらすじとキャスト。吉田羊の演技力が母親サチを可能にする

村上春樹の短編小説『ハナレイ・ベイ』を、映画『トイレのピエタ』や『オトトキ』の松永大司監督が映画化。 キャストに母親サチ役を吉田羊が演じ、息子タカシ役に佐野玲於(GENERATIONS from EX …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】マイスモールランド|感想解説とラスト結末のあらすじ評価。嵐莉菜で川和田恵真監督が描く“日本の難民を取り巻く課題”

『マイスモールランド』は、在留資格を失ったクルド人少女サーリャの成長と葛藤を描き出す。 映画『マイスモールランド』は、是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」に在籍する川和田恵真が商業映画としての初 …

ヒューマンドラマ映画

『長江哀歌』ネタバレあらすじ感想と結末ラストの評価解説。ロケット・ビルなど“シュルレアリスム的表現”を混在させた理由は?

時代のうねりに翻弄されながらも、 精一杯に生きた「三峡」の善人たち……。 今回ご紹介する映画『長江哀歌』は、2006年のベネチア国際映画祭にコンペティション作品として招待されながらも、タイトルすらも一 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学