映画『卍』は2023年9月9日(土)新宿K’s cinema他にて全国順次ロードショー
谷崎潤一郎の不朽の名作を、数々の名作の脚本を手掛けてきた井土紀州監督が現代に蘇らせた映画『卍』が、2023年9月9日(土)新宿K’s cinema他にて全国順次ロードショーとなります。
女性同士が深い性愛にのめりこんでいくさまと、その後男女4人の愛憎が絡み合っていく業を描きます。
主演は『遠くへ、もっと遠くへ』(2022)の新藤まなみと『いずれあなたが知る話』(2023)の小原徳子。
美しい女性ふたりの官能シーンに加え、人間の弱さや苦悩を丁寧に掬い取った描写も大きな見どころとなっています。
映画『卍』の作品情報
【日本公開】
2023年(日本映画)
【原作】
谷崎潤一郎
【監督】
井土紀州
【脚本】
小谷香織
【編集】
桐畑寛
【キャスト】
新藤まなみ、小原徳子、大西信満、黒住尚生、ぶっちゃあ、仁科亜季子
【作品概要】
谷崎潤一郎の不朽の名作を、瀬々敬久監督初期作品で脚本を多く手がけ、近年『溺れるナイフ』(2016)、ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』などのシナリオを手掛ける井土紀州監督が現代に蘇らせました。
セレクトショップを営む人妻がモデルを務める若い女性との性愛に溺れ、その後互いのパートナーを巻き込んでもつれ絡み合っていく業深いさまを描きます。
『遠くへ、もっと遠くへ』(2022)で大胆な性愛シーンを演じた新藤まなみと、『いずれあなたが知る話』(2023)で脚本デビューを果たした小原徳子が主人公を演じています。
女性ふたりに翻弄される男たちを、大西信満と黒住尚生が好演。
映画『卍』のあらすじ
柿内園子は歯科医である夫の孝太郎の支えを得て、服のセレクトショップを経営しています。孝太郎の母から孫をせっつかれながらも、仕事優先でふたりで仲良く暮らしていました。
よいモデルを探していた園子は、孝太郎から光子という若い女性を紹介されます。光子は孝太郎が偶然店に立ち寄って知り合った喫茶店の店員でした。
光子のおかげでショップの売上がよくなり、新企画を立ち上げることにした園子は、さらに光子に協力を頼みます。光子は快く引き受けました。
次第に園子は小悪魔のような光子に魅了されていき、やがて同性愛の関係となります。
そんなある日、園子の前に光子の彼氏と名乗るエイジがやってきました。光子と園子の関係に気付いているエイジは、園子に「光子を2人で共有しよう」と提案します。
一方、孝太郎もまた光子と園子の情事を裏付ける証拠を見つけ出し…。
映画『卍』の感想と評価
性愛に翻弄されずにいられない人間の業をむき出しにする名作、谷崎潤一郎の『卍』を現代に蘇らせた一作です。
歯科医の妻で、セレクトショップを営む凛として美しい園子が、一見天真爛漫で明るく見えながらも小悪魔のような魅力を持つ光子との深い愛欲に溺れていくさまを鮮烈に描きます。
服を着こなせるモデルを探していた園子は、偶然夫の孝太郎がみつけてきた光子を気に入ります。写真の腕がある園子は、自身で光子の姿をファインダー越しに見つめることで、光子の放つ強い輝きに気づきます。
光子にすっかり魅せられた園子は、好意を示されたことをきっかけに、彼女との性愛におちていきます。
濃密な性愛描写に驚かされますが、この描写を避けて人間の業を表現することは不可能であることがよくわかります。体当たりで濡れ場を演じる女優ふたりの姿から、強い覚悟と意気込みを感じられることでしょう。
恋に溺れる園子の表情を小原徳子が見事に体現し、大きな瞳の魔性の女・光子を新藤まなみが魅力たっぷりに演じています。
光子に惚れきっているエイジの哀しさ、妻の浮気をひとり調べてまわる孝太郎の苦悩。やがて、生命力に満ちた魔性の女・光子が台風の目となり、周囲を大きな渦に巻き込んでいきます。
性愛に振り回される人間の弱さに加え、ひとりひとりが抱える孤独や悩み、そこから思わぬ形で立ち直り前へ進んでいくさまが丁寧に映し出されます。
まとめ
女性ふたりが性愛に溺れていくさまを描いた谷崎潤一郎の名作『卍』を、瑞々しい恋愛映画のシナリオを手掛けてきた井土紀州監督が新たに蘇らせました。
あどけなさを残す愛らしさで周囲を虜にしていく魔性の女性・光子と、彼女への苦しいほどの恋に身を焦がす園子。そこに彼女たちを愛する男たちも加わり、誰が悪いわけでもない中、愛憎がもつれあっていくさまは圧巻です。
人間の業の深さを思い知らされる作品となっています。
映画『卍』は2023年9月9日(土)新宿K’s cinema他にて全国順次ロードショーです。