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Entry 2018/06/03
Update

映画『ラブレス』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【アンドレイ・ズビャギンツェフ】

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

ロシアの鬼才アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の映画『ラブレス』は、カンヌ国際映画祭審査員特別賞や数々の映画祭で賞賛を受けました。

また、米アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされるなど、映画関係者からの評価が高いものの、アンドレイ独自の語り部としての雰囲気や映像表現のリズム感、またはメタファー描写の読みの難しさを感じる映画ファンも多かったのではないでしょうか。

今回は映画『ラブレス』のあらすじと感想、ラストの考察をご紹介します。


 

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映画『ラブレス』の作品情報


【公開】
2018年(ロシア・フランス・ドイツ・ベルギー合作映画)

【原題】
Nelyubov

【脚本・監督】
アンドレイ・ズビャギンツェフ

【キャスト】
マルヤーナ・スピバク、アレクセイ・ロズィン

【作品概要】
『父、帰る』や『裁かれるは善人のみ』など、数々の映画祭で高く評価されたロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督作品。

失踪してしまった息子の行方を身勝手な両親の姿を描いたサスペンスドラマ。第70回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞しました。

映画『ラブレス』のあらすじとネタバレ


© 2017 NON-STOP PRODUCTIONS-WHY NOT PRODUCTIONS

一流企業で働くボリスと、高級美容サロンをマネージメンをすジェーニャの夫婦は、連れ添った関係に終止符を打ちたいと離婚の協議中でした。

12歳の息子アレクセイと3人で住んでいた、マンションも買い手が決まりそうになっていました。

そんなボリスとジェーニャは、すでにそれぞれ別々のパートナーもいて、一刻も早く新たな生活を送りたいと、互いの縁を切ることばかりを考えていました。

そのことに気がついているの息子アレクセイの様子は元気がありません。

そんな息子に対して関心のない母ジェーニャは、スマホを片手に交際相手とのやり取りばかりに気を取られ、息子に食事を与えるも態度にはイラつきしか見せていませんでした。

一方でボリスには、若くてすでに妊娠中の恋人マーシャがいたが、彼の会社の経営者が厳格なキリスト教徒のため、その事実を会社では隠していました。

ジェーニャには、成人して留学中の娘を持つ年上の恋人アントンがいて、母親に愛されることなく子ども時代を育ったジェーニャは、自分も息子は嫌いで愛せないとアントンに告白し、それでも自分を愛してと彼に深い愛情を求めます。

ボリスもジェーニャも夫婦では満足ができなかった心の隙間を、それぞれのパートナーと体を重ね合いながら、激しく愛し合います。

もはや、そんな2人の問題といえば、どちらがアレクセイを引き取り育てるのかしかありませんでした。


© 2017 NON-STOP PRODUCTIONS-WHY NOT PRODUCTIONS

ジェーニャはそんな息子を寄宿舎に送り出そうとしますが、ボリスは自分が引き取る気もないのに、妻の非難ばかりをしていました。

そんな2人は会う度に激しい口論となりました。

どちらも新生活を前に息子アレクセイの存在を必要としておらず、どちらが引き取るか激しい罵り合いを繰り返していました。

翌朝、学校に向かったはずのアレクセイの行方不明になり、ボリスとジェーニャは自分たちの未来のためにアレクセイを探しますが…。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ラブレス』ネタバレ・結末の記載がございます。『ラブレス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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学校から息子アレクセイは、2日間も登校していないと連絡がきたジェーニャ。

慌ててボリスに電話をしたジェーニャの訴えに、気の無い返事しかしない示さないボリスの態度に、怒りとともにスマフォを切りました。

行方不明になったアレクセイのために刑事が聞き取りにきましたが、ジェーニャは最後にいつ息子に会った聞かれても曖昧な返答しかできません。

とはいえ、刑事の方もすぐに帰ってくるだろうし、今は多くの事件を抱え忙しいので、市民ボランティアに相談した方がいいと職務を全うする気がありません。

ジェーニャは市民ボランティアの捜索救助団体ヴェラに搜索の協力依頼しました。

ヴェラは子どもの捜索を慣れているので安心してとジェーニャを諭します。

その後、コーディネーターの指示の下、ボランティア救助隊が活動を開始して、行方の知れないアレクセイを探します。

捜索の方法はアレクセイの友人への聞き取り、彼の使用するパソコンのSNS関係から向かいそうな場所へ調査、自宅マンションの周辺や周辺の緑の繁った森まで、しらみつぶしで開始します。

ボランティ救助隊の人数も日を重ねるごとに、命の危険に配慮し増やされていきます。

それでも一向に息子アレクセイを見つかる気配はありませんでした。

その後も肉親関係で唯一、アレクセイが向かいそうなジェーニャの母親の元にボランティ救助隊の女性と向かい尋ねてみました。

屋敷に向かう道には門が設置され、厳重なまでに他者との関わり絶ったジェーニャが息を潜めて暮らしていました。

たどり着いたのが深夜ということもありましたが、ボランティ救助隊の女性がジェーニャの母親がいることを確認すると、ようやく一行を家の中に招きますが、アレクセイの姿はないばかりか、娘ジェーニャに母親は酷く罵ります。

男なんて皆子どもだ、ボリスとは別れて中絶しろと忠告しただろと、物凄い剣幕でジェーニャの話など聞き入れず、激昂するばかりでした。

そこからの帰りの車中のジェーニャとボリス。彼女は夫であるボリスに向かい、愛したから結婚したのではなくあの母親から逃げたかった言い、中絶すべきだったと母親と同じように激昂を見せます。

やがて、アレクセイ発見に至る進展がないなか、ボランティア救助隊のリーダーは、調査していたアレクセイのパソコンから、彼が友人と秘密基地を作っていたことを見つけ出しました。

学校に向かい、教師立会いの元、ボランティ救助隊のリーダーはアレクセイのクラスメイトに、秘密基地の場所を教えて欲しいと聴き出します。

捜索隊を指揮するリーダーとボリス、ジェーニャは秘密基地のある森の奥へと向かいます。

そこは大きな立っていたのは大きな廃墟で、リーダーは救助隊に安全確認を怠らないように調査指示を与えた後、数多くある壊れかけた部屋の隅々に至るまで、廊下や地下室まで隈なくしらみつぶしに、アレクセイを必死に見つけ出そうとしました。

しかし、手がかりすら見つけ出すことができない救助隊。その後、ボリスが懐中電灯で照らした先に、アレクセイの上着だけを見つけることができました。

アレクセイは廃墟にいたのは確かでした。しかし、それ以外の必死なまでに献身的な救助隊も手がかりすら見つけることはできませんでした。

一方で警察側もようやく重い腰をあげます。

長期にわたるボランティア救助隊の活動ですら見つからない事態にことの重さを痛感したのか、防犯カメラなどを調べ始めます。

また、捜索隊たちは、季節も変わり雪が舞うマンションで近所の聞き込みと、街頭の至る所でアレクセイの情報を呼びかけるビラの貼り紙を手分けして行います。

それでも一向に捜索は未解決のまま、ボリスもジェーニャも流石に不安は増して、愛人との関係どころでなくなり、疲労も困憊を見せるようになっていました。

そんな矢先、警察から連絡が入りました。

コーディネーターに付き添われてボリスとジェーニャが訪れたのは、不審な死を遂げたものが検視官によって解剖を行われる遺体安置所でした。

彼らが刑事から通されたのは、身元不明の少年の遺体の横たわる部屋でした。

ショックを受けないように刑事に促され、心配されるジェーニャですが、しっかりと意識を持って確認したいと意志を持って臨みます。

すると刑事は遺体に掛かっていたシートを捲って、その遺体を確認をした瞬間、ジャーニャは泣き崩れてしまいます。

しかし、遺体は息子アレクセイではありませんでした、刑事に息子の胸にはホクロがあると、興奮気味に答えるジャーニャ。

ですが刑事の方は見ただけでは判断できないと、DNA鑑定をするように持ちかけますが、酷い姿の遺体は違うものだと強く拒否を示すジェーニャはボリスに当たります。

ボリスもジャーニャに叩かれるまま、涙を流し安置所の床にへたり込みます。

すでに色褪せ気味になってしまった、行方知れずの息子アレクセイの捜索願いのビラ。

見つかることなく貼られたままで時も経っていました。

ボリスはテレビで映った内戦を起こしたニュースを虚ろに見ながら、恋人マーシャとの間に生まれた、幼い我が子を抱き抱えると、無造作に柵のあるベビーベッドに我が子を放り込みました。

ジェーニャの方も抜け殻のような空虚な表情を見せ、恋人であるアントンと共に、たまたま同じテレビニュースを見ており、ロシアの内戦紛争の被害者である民族の母親が訴える被害状況の叫びを目にします。

テレビから流れるロシア政府が強硬な姿勢で事態を鎮圧したニュース…。ボリスとジェーニャの元夫婦が行方知れずの息子を探すこと最早ないことが、ニュースと重なっていくようです。

そんな諦めの気持ちには、かつて住んでいた雪景色のマンション近くの沼を共に深くありました。

近くにあった枯れ木の枝には、アレクセイが下校時に投げたリボンが引っかかって風になびいていました。

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映画『ラブレス』の感想と評価


© 2017 NON-STOP PRODUCTIONS-WHY NOT PRODUCTIONS

結婚を見つめる現実的な視点

2011年にアンドレイ・ズビャギンツェフ監督は、自身にとって第3作目となる『エレナの惑い』を発表した後、「離婚」というモチーフに着目をしたそうです。

それ以後2014年に第4作目となる『裁かれるは善人のみ』を発表した後、本作『ラブレス』へと至ります。

映画『ラブレス』はアンドレイ監督が敬愛するイングマール・ベルイマン監督の1973年の公開作品『ある結婚の風景』と対になる作品にしたいと制作しました。

イングマール監督の『ある結婚の風景』は、ゴールデングローブ賞の外国映画賞を受賞した作品で、監督にとっては名優となるリヴ・ウルマン主演の映画で、舞台化もされています。

結婚10年目を迎えたヨハンとマリアンヌは、安定した暮らしを過ごしていましたが、夫婦関係の取材を受けたことをきっかけに、徐々に心境の変化をリアルに見せた人間をドラマした。

アンドレイ監督はこのイングマール監督の作品と対になる作品としながら、「離婚」をテーマにした『ラブレス』で描いた結婚観についてこのように語っています。

「本当に幸せな夫婦というのは残念ながらほとんどいません。家庭生活を続けるには、理解や忍耐、歩み寄りが必要で、自己実現をするという欲求とバランスを捉えなくてはいけません。それはとても危ういバランスです。相手を好きで結婚しても、恋愛感情だけでは夫婦生活を続けることができません。そこには愛とはまた別の、結婚生活を存続させようとする意識が必要なのです」

『ラブレス』に登場したボリスとジェーニャを筆頭に、彼らに関わる主要な人物たちは、「自己実現をするという欲求とバランス」を持ち合わせておらず、性的な快楽や短絡的にしか、相手について考えようともしていなかったように感じられます。

一方で無償で相手のことを優先して考えるといった、献身的で自制心の効いた立場を一手に引き受けていたのは、ボランティ救助隊の存在でした。

それ以外のボリスとジェーニャのそれぞれの恋人や肉親も、相手について夫婦生活を存続させるような意識はなかったように思ったのではないでしょうか。

その他者理解のなさ、共有意識のなさが本作「ラブレス』に登場した、マヤ暦の世紀末思想や、終幕に登場するテレビのロシアの2012年に起きた内戦のニュース映像の問いかけでした。

結婚や夫婦のあり方について、男女の相性や雰囲気の微妙な意味合いを読んで関係性を維持してくのではなく、意識を抱いて維持していく大切さを、本作『ラブレス』で見つめ直そうと発起したのでなないでしょうか。

息子アレクセイを消失したかいなを論点の中心に置かずとも、その後のボリスとジェーニャが恋人たちと過ごすようになった様子も、何ひとつ関係性を構築する意識がない姿は、彼らの本性として恐ろしいものに感じたのではないでしょうか。

息子を失ったことで誰かとの関係性が虚しくなったというよりも、他人に対しての無関心さの希薄が現実的で恐ろしいと見てとれたのです。

それが安心安全としての家庭の中心ににあるテレビ。その向こうに起きている内戦のニュース映像を「見る」という行為にシンクロさせた、アンドレイ監督は表現も実に巧みでした。

大切なのこと他人との関わりで、傍観者にならないことです。

「見る」から「知る」を経て、「行動する」ことに、ほかなりません。

例えば、刑事の仕事という業務的な無関心行動と、あまりに違ったボランティア救助隊が、とても印象的であったのもそのせいです。

ボランティア団体「リーザ・アラート」


© 2017 NON-STOP PRODUCTIONS-WHY NOT PRODUCTIONS

アンドレイ監督は、2014年に『裁かれるは善人のみ』の撮影を終えた後に、行方不明者を捜索するボランティア団体「リーザ・アラート」と出会います。

「リーザ・アラート」は、2010年に設立された後、25の地域に支部を持ったNPO団体で、2016年にロシアでは、6,150人の行方不明者が出そうですが、そのうちの89%を生存した状態で発見するといった成果を上げたようです。

この「リーザ・アラート」についてアンドレイ監督はこのように語っています。

「リーザ・アラートこそが市民意識を目覚めさせるものなのです。団体の名前は、1日見つけ出すのが遅くて命を落としたリーザという少女の名前にちなんでいます。彼らの存在が加わったことで、この物語に深みが生まれたと思います」

本作『ラブレス』のなかで、ボランティア救助隊のリーダーの下、救助隊のメンバーの誰もが感情的な一面を出さず、献身的にアレクセイを探し出そうとする姿が印象的でした。

しかも、アンドレイ監督はボランティア救助隊を必要以上に誇張もせず、ことさら彼らに人間味を描くような過剰さも与えていませんでした。

そのことで彼らボランティア救助隊の他人のために尽くす姿が、新しい恋人と付き合うようになったボリスやジェーニャの息子に関心がなかったことに比べると皮肉な対比として描かれていました。

アンドレイ・ズビャギンツェフ監督は、『ラブレス』で描いていたのは、「離婚」をモチーフに、他人への思いやりや共感、そして尊敬が大切なのかを、ボランティア救助隊の自制心と仲間との統率を取れた姿で見せてくれたのです。

まとめ

参考映像:『父、帰る』(2003)

本作のラスト・ショットで映し出される沼は何を意味していたのでしょう。

アレクセイはボランティア救助隊が手を付けることができない、あの沼底に沈んでいるのでしょうか。

あのショットでキャメラはそのままパン・アップして、枯れ木になびくアレクセイが手にしていたリボンを映し出します。

人には魂があるとすれば、今のアレクセイは穏やかで幸せなのだと信じたい気がしてなりません。

アンドレイ・ズビャギンツェフ監督を知る彼のファンとしては、2003年に公開された『父、帰る』を、どうしても思い出してしまうファンもいたことでしょう。

少年はすでに水死で亡くなっているのだとすれば、あまりに“子ども思いである”、あるいは“少年の1つの死に敬意を示した”アンドレイ監督の思いやりに満ちたラスト・ショットだったと言えば考えすぎでしょうか。

本作の少年アレクセイ、そして、初監督作品『父、帰る』のアンドレイと、彼を演じたウラジーミル・ガーリンに思いは尽きません…。


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