ジャン=ピエール・レオ主演の映画『ルイ14世の死』は、5月26日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
太陽王と呼ばれたルイ14世の病床に伏せてから死に至るまでの数週間を描いた本作。
高熱を出してから、次第に食事も取れなくなり、衰弱していくルイ14世の姿が淡々と映し出されており、たった一切れのビスケットを口にするだけで「ブラボー」と叫ぶ周りの貴族の陳腐な様子も描かれています。
偉大な一人の王はどんな死を迎えたのか、そのとき王は何を思いながら逝ったのか、周りの人々はルイ14世の死で“何”を見たのか…。
CONTENTS
映画『ルイ14世の死』の作品情報
【公開】
2018年(フランス映画)
【原題】
LA MORT DE LOUIS XIV
【監督】
アルベルト・セラ
【キャスト】
ジャン=ピエール・レオ、パトリック・ダスマサオ、マルク・スジーニ、イレーヌ・シルヴァーニジャック・エンリック、ベルナルド・ベラン
【作品概要】
映画『ルイ14世』は、『騎士の名誉』や『私の死の物語』で世界を彷彿とさせた「21世紀の前衛」と称される異才アルベルト・セラが監督・脚本を務めた作品。
ひとりの中心人物と周りを取り囲む貴族、そして舞台はルイ14世が生涯に幕を下ろす寝室。セラ監督は、昆虫学者が箱のなかの昆虫を観察するような形で映画の独創性を表現したとのこと。
サン=シモンの回想録と、廷臣ダンジョーの『覚え書、別名ルイ14世宮廷日誌』を元に、ドラマティックなクライマックスを一切排除しつつ、大胆に描いた”偉人の死”。
ブルボン朝第3代のフランス王国国王ルイ14世役を演じるのは、フランスを代表する名優ジャン=ピエール・レオ。ルイ14世の侍医ファゴン役は、フランスで著名の舞台俳優として知られているパトリック・ダスマサオが演じています。
アルベルト・セラ監督のプロフィール
参考映像:『騎士の名誉』(2006)
アルベルト・セラは、歴史的や古典的な人物を現代風に新しい解釈で描くことで、“21世紀の前衛”と評価されているスペイン・カタルーニャ出身の監督。
映画のみならず映像やパフォーマンス、戯曲の執筆を手がけていることから”異才”の異名を持ち、2006年の作品でドン・キホーテとサンチョ・パンサを描いた『騎士の名誉』や、本作『ルイ14世の死』と同じく、2013年には偉大なジャコモ・カサノヴァの終末を描いた『私の死の物語』が代表作です。
作家でありアーティストでもあるセラ独特の作風は、評論家たちのド肝を抜く作品ばかりで、まさに世界中から注目されている監督といっても過言ではありません。
2018年2月には、ドイツ・フォルクスビューネ劇場での舞台『リベルテ』で初演し、拍手喝采を浴びています。
ジャン=ピエール・レオのプロフィール
参考映像:『大人はわかってくれない』予告編
ジャン=ピエール・レオは、1959年の映画『大人は判ってくれない』で映画デビュー。
その演技は、演出を務めたヌーヴェルヴァーグの旗手として活躍したフランソワ・トリュフォー監督からも高く評価されました。
演技力をトリュフォーに認められたジャン=ピエール・レオは、ヌーヴェルヴァーグの運動を行なっていた監督たちの作品に出演するほか、トリフォーの盟友ジャン=リュック・ゴダール監督の1966年の映画『男性・女性』などにも多々出演しました。
参考映像:『男性・女性』(1966)
また、トリュフォー監督の死の前後、不安定な時期もあったというジャン=ピエール・レオ。
その後、復帰し、74歳になった現在も活躍し、2016年にカンヌ映画祭で名誉パルム・ドールを受賞しました。
参考映像:『ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー』(2010)
映画『ルイ14世の死』のあらすじ
1715年8月9日。マルリーでの狩りを終え、宮中に戻って来たルイ14世は、左足に激しい痛みを感じました。
その症状に侍医ファゴンは、坐骨神経の病気だと診断を下します。
ルイ14世は激しい痛みに耐えながら公務をこなしていましたが、夜には食事を取れなくなるほど悪化していました。
日に日に衰弱し、食事もだんだんと受け付けなくなっていきます。
それでも宴の席では、痛みをこらえながらも貴族たちと挨拶を交わしたりビスケットを食べたりしてみせましたが、夜にになると痛みはさらに激しさを増していったのです。
症状は悪くなり、ついにはベッドから出ることも出来なくなったルイ14世。
パリ大学から4人の医師が宮廷を訪れて王を診察しましたが、医師らは王の足の変色を危険視し瀉血を進めるも、王は侍医ファゴンの診断を仰ぎます。
しかし、数日後、王の足には壊疽が広がっており、すでに手遅れの状態となっていた…。
映画『ルイ14世の死』の感想と評価
ルイ14世は、ヴェルサイユ宮殿を建てた歴史上の偉大な人物で、太陽王とも呼ばれていました。
豪華絢爛な美しい宮殿の寝室で、食べ物さえ喉を通らなくなったルイ王が、スープを一口のめば周りの貴族たちは拍手喝采。
医者たちは何か手立てがないものかといじくり回し、悪化の一途を辿り王はさらに衰弱していきます。
さらには、激痛を帯びていた足は壊疽が広がりついには真っ黒になってしまう…。豪華な寝室の美しさとは正反対のおぞましい映像のギャップに圧倒されます。
最大の見どころは、「死にゆく王」と周りで見守る貴族たちの空気感。
この中に、心から王の生還を望む者はいるのだろうか、王の死を嘆くものはいるのだろうかと、強く印象付けられます。
また、王の死後の扱いからは、この時代の死はとても陳腐なものであったと言わざるを得ません。
スクリーンに一歩踏み込むと、そこはまさに、ルイ14世が命の幕を下ろそうとしているその瞬間。
死の臭いまでもが漂いそうな空気の緊張感を、ぜひ味わって頂きたい作品です。
本作の情される劇場は
【関東地域】
東京 イメージフォーラム 5月26日〜
神奈川 川崎市アートセンター 近日
栃木 宇都宮ヒカリ座 8月18日〜8月31日
【中部地域】
長野 松本CINEMAセレクト 7月14日
名古屋 名古屋シネマテーク 6月23日~
【近畿地域】
大阪 第七藝術劇場 6月2日~
京都 京都シネマ 近日
兵庫 神戸アートビレッジセンター 7月14日〜7月27日
【山陰・四国地域】
広島 横川シネマ!! 近日
岡山 シネマクレール 近日
山口 西京シネクラブ 近日
【九州・沖縄地域】
宮崎 キネマ館 近日
沖縄 桜坂劇場 近日
*上記の記載は4月27日現在のものです。作品の特性上、セカンド上映や順次公開される場合がございます。お近くの劇場をお探しの際は。必ず公式ホームページをご覧ください。
まとめ
“21世紀の前衛”と称賛され舞台演出や映像を手がけてきた異才アルベルト・セラが、ヌーヴェルヴァーグの申し子であるジャン=ピエール・レオと共にタッグを組み、“王の死”をテーマにした映画『ルイ14世の死』は、5月26日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開される予定です。
監督を務めたアルベルト・セラも来日を予定しているとのことなので、この機会にぜひ、ご観賞頂ければと思います。
あえて、人の死にスポットを当てた『ルイ14世の死』。あなたはこの作品を観て何を思うのでしょうか。