世の中には様々な愛の形が溢れていますが、今回取り上げるのは等身大の人形と恋をした男の物語『ラースと、その彼女』です。
観終わった後幸福感でいっぱいになる、ライアン・ゴズリング主演作『ラースと、その彼女』の魅力についてご紹介します。
映画『ラースと、その彼女』の作品情報
【公開】
2008年(アメリカ映画)
【原題】
Lars and the Real Girl
【監督】
クレイグ・ガレスピー
【キャスト】
ライアン・ゴズリング、エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー、パトリシア・クラークソン
【作品概要】
アメリカの田舎町に住む26歳の青年ラースはとてもシャイな青年で、兄のガスと妻のカリンが暮らす家の裏にあるガレージを改装した部屋に一人で住んでおり、限られた人間関係しか築くことができないでいました。
ある日兄のガスはラースから、インターネットで知り合った女性を紹介したいと言われます。女性と話すことが特に苦手なラースからの報告に喜ぶガスとカリン。ところがその“彼女”は、アダルトサイトで販売されているリアルドールだったのです…。
主人公ラースを演じるのは子役時代から活躍し、『ブルーバレンタイン』や『話題を席巻した『ラ・ラ・ランド』、『ブレードランナー2049』に出演するカナダ出身の俳優ライアン・ゴズリング。
『ドライヴ』や『オンリー・ゴッド』、『ブレードランナー2049』など寡黙で孤独を抱える一匹狼の役を演じるイメージのあるライアン・ゴズリングですが、『ラースと、その彼女』では少々ぽっちゃりした内気な男性を好演しています。
人々の交流を繊細に描いた本作は第80回アカデミー賞脚本賞にノミネートされました。
映画『ラースと、その彼女』のあらすじとネタバレ
アメリカの静かな田舎町に住む心優しくシャイな青年ラース。
その性格から一人でひっそりと住み、職場の同僚マーゴに好意を寄せられてもうまく交流することができないでいます。
兄ガスの妻カリンはラースを特に心配し、ガスも同じ家で一緒に住むことを何度も提案しますが彼は断り続けています。
そんなある日ラースが「インターネットで知り合った女性がいるから、会わせたい」とガスとカリンに報告。
今まで恋人なんて連れてきたことがなかった彼の発言に2人は大興奮。ところがラースが連れてきたのはアダルトサイトで購入した等身大のリアルドール、“ビアンカ”だったのです。
ラースは、ガスとカリンにビアンカのことを紹介します。
彼女はブラジル人で修道院で育ち、内気な性格、職業は宣教師。車椅子に乗っていますが、空港で荷物と一緒に盗まれてしまった言いました。
幸せそうに彼女を語るラースを見てガスとカリンは、何も言えなくなってしまいます。
ガスはラースがおかしくなってしまったとパニックになり、病院で診てもらうことにしようとカリンに相談します。
女医のバーマンからの提案で、ラースのビアンカについての妄想は何か理由があるはずだから、街の皆で彼に合わせて様子を見ることにしました。
ガスとカリンは教会の年長者たちに提案し、街の住人たちはリアルドールのビアンカをラースのガールフレンドとして扱うことに決めました。
ラースはビアンカをパーティーに連れて行き友人たちに紹介したり、本を読んであげたり、両親の墓へ案内したりと2人で幸せな時を過ごします。
映画『ラースと、その彼女』の感想と評価
ラースが大人になることを怖がっている理由、彼が人々との交流を避けてきた理由、それはラースとガスのお母さんが彼を産む時に亡くなってしまったことでした。
兄の妻カリンが妊娠したことによりその無意識の恐怖とトラウマが蘇り、ビアンカという“イマジナリーフレンド”を生み出したのです。
本作の大きな魅力の1つは登場人物たちの性格描写です。
ラースのことを心から気にかける優しい義姉、心配から彼に終盤声を荒げるカリン。
弟の頭がおかしくなったとうろたえながらしっかりと向き合い、自分と全く違うラースを理解しようと努めるガス。
「大人になった瞬間を教えて」と聞くラースとガスの会話は胸に迫るものがあります。
街の人々も大きな愛でラースを包み込みます。ビアンカはラースの心が生んだ“本当は存在しない人間”しかし周りの人々の“愛”という不確かなものを強固にしていくのです。
愛することを失いたくない気持ちから、どこにも去らなければ消えもしない、人形の女性を恋人にしたラース。
しかし実際の人間生活はそうはいきません。人と人は影響し合い、時に傷つけ離れ離れになることもあります。
これからラースは少しずつ恐れずに、他者と関わりながら生きてゆくことができるでしょう。
まとめ
皆それぞれ不完全な部分を持っているもの。
それを補い、優しさで支え合いながら共存する温かさを教えてくれるハートフルな映画『ラースと、その彼女』人形でなくても、自分を成長させる“ビアンカ”のような存在は一人一人の中にいるのかもしれません。
彼らの愛が詰まった心の交流が繊細な会話と共に綴られる本作、ぜひご覧になってみてください。