Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

映画『ザ・サークル』結末ネタバレと感想。エマ・ワトソン演技力の評価

  • Writer :
  • 桃から生まれた尻太郎

もし個人情報の全てを他人と共有したら?

SNS依存度の高まる世の中に一石を投じる映画『ザ・サークル』。

近い将来にあり得るかも知れない恐ろしさを体験できる作品は、エマ・ワトソン主演、トム・ハンクス共演によるSNSをテーマにしたサスペンススリラー!

1.映画『ザ・サークル』の作品情報


(C)2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.

【公開】
2017年(アメリカ映画)

【原題】
The Circle

【監督】
ジェームス・ポンソルト

【キャスト】
エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョンボイエガ、カレン・ギラン、エラー・コルトーン、ビル・パクストン、エレン・ウォン、パットン・オズワルト、グレン・へドリー、フレッド・コーラー

【作品概要】
「ハリーポッター」シリーズ、『美女と野獣』のエマ・ワトソンと、『ハドソン川の奇跡』『フォレスト・ガンプ/一期一会』などのトム・ハンクスの共演が話題を呼んでいるSNSを題材にしたサスペンス・スリラー。

2.映画『ザ・サークル』のあらすじとネタバレ


(C)2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.

派遣社員としてコールセンターでクレーム対応の仕事をしていたメイは、友人のアニーの紹介で大企業のサークルに転職します。

サークルはカリスマ経営者のイーモンが率いた、シーカメラという小型カメラを利用したSNS「トゥルー・ユー」を運営している企業。

その社内は開放的なデザインの仕事場から始まり、病院、ジム、はたまたアーティストのライブまで行われていました。

社員の家族への待遇も良く、障害を抱えているメイの父親のケアも対応してもらえるなど、メイは一変して理想的な働き方をスタートさせます。

しかし、趣味や生い立ち、親の障害の情報まで徹底的な個人情報のシェアを求めるサークルの社風に、メイは次第に戸惑い始めます。

さらにメイの実家に取り付けられた地元の友人マーサーが作った鹿の角を使用したシャンデリアの写真を、何気なくトゥルーユーに投稿したところ、“鹿殺し”とSNS上で批判を集めてしまいマーサーとも疎遠になってしまいます。

ある夜、ストレスを溜めたメイは、店から趣味であるカヌーを盗み出し霧のかかる川に漕ぎだします。

ひとりの時間を求めようとしたメイですが、視界が悪く船との衝突事故を起こしてしまいます。

転覆し命の危険にさらされた彼女は、近くに設置されていたシーカメラのおかげで九死に一生を得ました。

そんなメイに目をつけた経営者のイーモンは、新サービス「シーチェンジ」のモデルになることを提案します。

シーチェンジとは自らに特殊なカメラをつけ、その動向を24時間全てネットに公開するというものでした。

シーカメラに命を救われたこともあり、シーチェンジのモデルを引き受けたメイはすぐに数百万のフォロワーを集め、アイドルのように人気を博しこれをきっかけに社内での地位も上げていきます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ザ・サークル』ネタバレ・結末の記載がございます。『ザ・サークル』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
サークルはSNSでの選挙への投票を可能にすること、またアカウントを作ることを義務化させ投票率100%を目指していくなど、どんどんその規模を拡大させていきます。

そんな中、メイは新サービス「ソウルサーチ」のプロジェクトリーダーに抜擢されます。

ソウルサーチとはSNSを利用して行方不明者を捜索するサービスでした。

多くの社員の視線を浴びたメイは、ソウルサーチの発表スピーチで、見事に逃亡中の犯罪者を発見し逮捕することに成功した性能を最大限に披露します。

勢いづいて「次に探すのは誰がいい?」と問いかけるメイでしたが、“鹿殺し”で注目を集めて以降、音信不通になっていた友人のマーサーが選ばれてしまいました。

ソウルサーチによって居所を知られ突然、周囲の人間に騒ぎ立てられたマーサーは、動揺してその場から逃げ出したために、走らせた車の運転を誤り、帰らぬ人となってしまいます。

心を痛めたメイは、自らにつけていたカメラを外してシーチェンジの状況から離れます。

やがて、メイは実家で両親と共に過ごし心を癒しことにしました。しかし、数日後にはメイはまたしても自らにカメラをつけて果敢にサークルに復帰します。

復帰後すぐにシーモンは新たなサービスのスピーチをメイに提案し、メイはそれを引き受けます。

その新サービスのスピーチ中メイはシーモンを呼び出し、「指導者にこそ透明性を」とシーチェンジのカメラをシーモンに取り付けます。

またこれまでの極秘会議の詳細やメールまでをも公開し、自分だけプライベートは晒さずに私腹を肥やしていたシーモンの真の姿を暴くのです。

3.映画『ザ・サークル』の感想と評価


(C)2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.

見所ポイント① 俳優の生きる姿と役柄のリンク

SNSを扱い現代社会とリンクする部分の多い内容ですが、社会問題のリアリティを底上げするキャスティングのセンスが素晴らしい作品でした。

一切のプライベートがなくなってしまうメイを演じるのは、「ハリーポッター」シリーズで子役時代からお馴染みであり、注目され続けるエマ・ワトソン。

その友人マーサーは、2014年にゴールデングローブ賞を受賞した『6歳のボクが、大人になるまで。』で、幼少期から12年間に渡る撮影を経たエラー・コルトーンが演じています。

彼は12年間にも及ぶ成長する過程を密着で映画撮影に収めてきた俳優としての経緯もあるので、SNS嫌いマーサーがという設定はユーモアを感じました

参考映画:『6歳のボクが、大人になるまで。』

このように俳優の私生活や他の作品と関係性を提示させることは、近年の映画では珍しいことではありません

例をあげれば、マイケル・キートン主演による、2015年の米国オスカー映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』や、2017年日本公開のアン・ハサウェイの『シンクロナイズドモンスター』も、それにあたります。

俳優の人生と役柄をリンクさせることによって、セリフや感情に説得力や深みが増していく、これは本作『ザ・サークル』の大きな魅力になっています。

見所ポイント② 個人情報がすべて監視される映画

参考映画:『トゥルーマン・ショー』(1998)

プライベートの大切さを描いた作品としてジム・キャリー主演の『トゥルー・マン・ショー』があります。

この作品は主人公が生まれた瞬間から全世界にその生活を放映されており、身の回りの人物は全てエキストラという衝撃的な内容なのですが、『ザ・サークル』のメイの心境と共通する部分は多いと考えられます。

また、SNSを扱った映画としては、2016年公開された朝井リョウ原作の『何者』があります。

こちらは『ザ・サークル』とは逆に、SNSでしか言えないこと、SNSだけでの人格などまた違った問題を扱っています。

このように近いテーマを見つけて見比べてみることも楽しいですし、映画の理解を深めるうえでおすすめです

エマ・ワトソン演じた全てを公開し生活しなければならないメイにとって、部屋のドア一枚を閉めるだけの行為に違和感を醸し出したり、人と接していない時間が異常なまでに長く感じる感覚など、近年にはない現代的な問題を描きつつ、今まで味わったことのない映画体験に満ちている作品です。

しかし考えてみると、女優エマ・ワトソンを見た際に、2001年に公開された『ハリー・ポッターと賢者の石』にはじまり、シリーズの全てを通じてハリーの親友ハーマイオニーを見続けてきた私たち

マーサー役のエラー・コルトーン同様に、メイ役のエマ・ワトソンの私生活もまた、映像とともになるのかも知れません

日々、スマホを眺めてSNSを通じて誰かの生活を眺める時間が増えている人は、楽しめること間違いなしです。

まとめ

エマ・ワトソンとトムハンクスの共演が光る作品。

現代人にとって切り離せない身近な問題に恐怖を覚えます。

これを機にネットとの関わり方を考えてみるのはいかかでしょうか?

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『メイド・イン・バングラデシュ』あらすじ感想と評価解説。課題に向き合う“女性の生き方”を通して“開発途上国の問題”と対峙する

映画『メイド・イン・バングラデシュ』は2022年4月16日(土)より岩波ホールにて公開、以後順次全国ロードショー! 繊維産業で世界的急伸を遂げたバングラデシュ。その裏に潜む影を、底辺で苦しみながら戦う …

ヒューマンドラマ映画

映画『いっちょらい』あらすじ感想と評価解説。福井の方言をタイトルに夢をあきらめた男が追い求めた“本当の幸せ”を問う

映画『いっちょらい』は2023年6月17日(土)池袋シネマ・ロサにて劇場公開 『轟⾳』でスペイン・シッチェス映画祭などで国際的に⾼く評価された⽚⼭享監督による作品『いっちょらい』が、2023年6⽉17 …

ヒューマンドラマ映画

ポール・ダノ初監督映画『ワイルドライフ』あらすじネタバレと感想。ジェイク・ジレンホール&キャリー・マリガン共演の秀作とは

血が繋がった家族という“他人”、両親が変わっていく姿を僕は一番近くで見ていた…。 2018年秋、アメリカで静かなエネルギーに満ちた新たな家族映画の秀作が公開されました。 実力派俳優ポール・ダノの初監督 …

ヒューマンドラマ映画

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

常に弱い立場の人に寄り添い、数々の名作を生み出してきたイギリスの名匠ケン・ローチ監督が、引退宣言を覆し、撮ったのがこの作品です。 彼が見過ごすわけにいかなかった問題とはどのようなものなのでしょうか。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『息衝く』あらすじとキャスト一覧!木村文洋監督の作品情報は?

映画『へばの』『愛のゆくえ(仮)』で、社会と個のあり方について鋭く問題を投げかけた 木村文洋監督。 2018年2月下旬より上映される映画『息衝く』では、日本ではタブーとなった「宗教、原発、家族」を軸に …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学