ナチス・ドイツに反抗したフランスのレジスタンスを描いた戦争ドラマ。
ジャン=ピエール・メルヴィルが脚本・監督を務めた、1969年製作のフランス・イタリア合作の戦争ドラマ映画『影の軍隊』。
第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下にあるフランスを舞台に、レジスタンスの一員である土木技師が収容所から脱走し、同志たちと共に死と隣り合わせの戦いに身を投じていく姿とは、具体的にどんな姿だったのでしょうか。
フランスの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルが、ナチス・ドイツに反抗したフランスのレジスタンスを描いた、リノ・ヴァンチュラ主演の戦争ドラマ映画『影の軍隊』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『影の軍隊』の作品情報
【公開】
1970年(フランス・イタリア合作映画)
【原作】
ジョゼフ・ケッセルの小説『L’armée des ombres』
【監督】
ジャン=ピエール・メルヴィル
【キャスト】
リノ・ヴァンチュラ、シモーヌ・シニョレ、ジャン=ピエール・カッセル、ポール・ムーリス、クロード・マン、ポール・クローシェ、クリスチャン・バルビエ、セルジュ・レジアーニ、アンドレ・ドゥバブリン、アラン・ドゥコック、アラン・モテ、アラン・リボール、ジャン・マリー・ロバン、アルベール・ミシェル、ドゥニ・サディエ、ジョルジュ・セリエ、マルコ・ペラン、ユベール・ド・ラパロン、コリン・マン、アンソニー・スチュアート、ミシェル・フルトー
【作品概要】
『海の沈黙』(1949)や『サムライ』(1967)などを手掛けたフランスの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルが脚本・監督を務めた、フランス・イタリア合作の戦争ドラマ作品。
原作はフランスの小説家・ジャーナリスト・脚本家のジョゼフ・ケッセルの小説『L’armée des ombres』。『冒険者たち』(1967)のリノ・ヴァンチュラが主演を務めています。
映画『影の軍隊』のあらすじとネタバレ
第二次世界大戦中の1942年10月20日、ナチス・ドイツの占領下にあるフランス。41歳の土木技師フィリップ・ジェルビエは、仲間の密告で対独抵抗地下運動「レジスタンス」の一員であることがドイツ軍にバレてしまい、収容所に入れられました。
世界各国の囚人が収容されているその収容所で、ジェルビエは同じ小屋に収容された共産党員ルグランと出会います。
ある日の夜、ジェルビエはルグランから、収容所からの脱走計画について相談されました。
しかし脱走計画を実行する前に、ジェルビエは収容所からナチス・ドイツ占領地区にあるホテルへ連れ出されてしまいます。
ホテルに到着後、ジェルビエは一瞬の隙を突いて見張りのドイツ兵を殺し、先に逃がした男を囮にしてホテルから脱出。少し離れた場所にある床屋に駆け込み、ドイツ兵の追跡を逃れました。
後日。ジェルビエはフランス最大の港湾都市マルセイユにて、同志のフェリックス・ルペルク、ル・ビゾン、ル・マスクと合流。ドイツ軍に自分を売った裏切り者のポール・ドゥナを捕まえ処刑しました。
その後、軍人御用達のバーへ赴いたルペルクは、元軍人の旧友ジャン=フランソワ・ジャルディと再会し、彼をレジスタンスへと誘いました。
ジェルビエたちに協力することを決めたジャン=フランソワは、パリにいるレジスタンスの一員マチルドに無線機を届けます。
そのついでに、ジャン=フランソワは変わり者の兄リュックに会いに行き、久しぶりに兄弟水入らずで楽しいひと時を過ごしました。
その日の夜。マルセイユに戻ったジャン=フランソワは、港近くにある農場でジェルビエたちと合流。ジェルビエと世界各国の同志たちが乗船するイギリスの潜水艦に、レジスタンスの指揮官を乗船させるのを手伝いました。
ですがジャン=フランソワは、辺りが真っ暗だったせいで、レジスタンスの指揮官がリュックだと気づきませんでした。
映画『影の軍隊』の感想と評価
ナチス・ドイツ占領下のフランスを舞台に、ジェルビエたちレジスタンスは自由フランス軍の協力のもと、対独抵抗運動をしていました。
しかし物語の序盤では、レジスタンスの主要人物たるジェルビエが、手塩にかけて育ててきた仲間に裏切られ、ドイツ軍に捕まってしまいます。
だからといって大人しくいるわけではなく、ジェルビエはそこで知り合った共産党員と脱走計画を企てるのです。
いかなる状況に置かれても冷静に自分が置かれた状況を分析し、生きるためにはどうするべきか考えるジェルビエの姿勢に驚嘆させられることばかり。
そしてそんなジェルビエはもちろん、彼の同志ビゾンたちもまた、同志を大事に想っているのが画面越しにでも伝わってきます。
危険を顧みず仲間の命を救ってきたマチルド。もしかしたら、作中でリュックが語っていたように、どうせ死ぬなら味方の手で死にたいと望んでいたのでしょう。
マチルドは自分を殺しに来たジェルビエたちに驚きはしたものの、逃げることなくその銃弾を浴びました。
無言のまま、その場を立ち去ったジェルビエたち。きっと心の内では彼女が死ななければならなかったことに涙し、彼女と戦った日々に思いを馳せているのではないかと考察します。
まとめ
第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下のフランスを舞台に、フランスのレジスタンスが自由フランス軍の協力のもとに戦った姿を描いた、フランス・イタリア合作の戦争ドラマ作品でした。
作中で拷問を受けたルペルクと、彼に作戦内容を伝えるためにわざとゲシュタポに捕まったジャン=フランソワがその後どうなったのか記されていません。
ですが物語の最後の字幕で、マチルドを射殺したジェルビエたち4人のその後が記されていました。
「マスクことクロード・ウルマンは1943年11月8日、青酸カリを飲み込んで自殺しました。ビゾンことG・ヴェルメッシュは同年12月16日、ドイツの刑務所で斬首刑に。
リュック・ジャルディは本名を明かしたのち、拷問にて死亡。同年2月13日、フィリップ・ジェルビエ死去、今度は走りませんでした」
のちに非業の死を遂げることとなるフランスのレジスタンスが、命をかけてナチス・ドイツ相手に抗い続けた、緊張感あふれる戦争ドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。