『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』は、2019年3月29日(金)より、東京・TOHOシネマズシャンテほかロードショー!
イラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器の存在に疑問を持ち、真実を追い続けた実在の新聞社の記者たちを描く映画、『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』。
ここでは、9.11テロやイラク戦争、そしてメディア報道といった、『記者たち』から派生する事象に関する映画を紹介。
それらを観ることで、イラク戦争とはなんだったのか、そしてそれを報道するジャーナリズムの実情が分かります。
なお、『記者たち』の内容に触れる箇所が一部ありますので、未見の方はご注意を。
CONTENTS
映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Shock and Awe
【監督】
ロブ・ライナー
【キャスト】
ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、ロブ・ライナー、ジェシカ・ビール、ミラ・ジョヴォヴィッチ、トミー・リー・ジョーンズ
【作品概要】
2002年に、イラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器の存在に疑問を持ち、真実を追い続けた実在の新聞社「ナイト・リッダー」の記者たちの奮闘を描きます。
『スタンド・バイ・ミー』(1986)、『ミザリー』(1990)、『最高の人生の見つけ方』(2007)など、ジャンルに囚われない映画製作を行う名匠ロブ・ライナー監督が放つ、社会派ドラマです。
映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』のあらすじ
2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生し、時の米大統領ジョージ・W・ブッシュは、国連総会での演説でテロとの戦いを宣言。
イスラム系テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを、首謀者と断定します。
そんな中、31紙の新聞を傘下に持つナイト・リッダー社のワシントンD.C.支局長のジョン・ウォルコットは、ブッシュがビンラディンだけでなく、イラクのサダム・フセイン大統領との戦争も視野に入れているという情報を得ます。
真相を掴むべくウォルコットは、部下のジョナサン・ランデーとウォーレン・ストロベルに取材を命じます。
2人の地道な調査取材の末に、ウォルコットは政府がビンラディンとフセインがつながっている確固たる根拠もなしに、イラク侵攻を進めていることを突き止めます。
しかし2002年1月29日、ブッシュはイラクが大量破壊兵器を保持していることを理由に、イラクとの開戦を正式宣言。
これを受け、愛国心高まる国民の声を反映するかのように、ニューヨークタイムズ、ワシントン・ポストなどの新聞社や、CBS、ABC、FOXといったテレビ局までもが政府の方針に軒並み迎合していきます。
それでも政府がつく嘘を追及する姿勢を崩さないナイト・リッダーは、元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイを招へいし、ジャーナリズムの信念の元、真実を世に知らしめるべく動きます。
9.11テロ、イラク戦争に関する作品
映画『ホース・ソルジャー』(2018)
9.11テロが起きた翌日の2001年9月12日に、テロ首謀者タリバンを制圧すべくいち早くアフガニスタンに赴いた、12人のアメリカ陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の実話を描きます。
タリバン勢力が潜むとされる山岳地帯に、乗り慣れない馬で向かう兵士たちは、さながら騎馬隊のよう。
敵戦車との激しいバトルシーンなど、演出面でかなり“盛って”いる部分もあるものの、9.11テロの根本要因でもあったアフガン紛争の背景が分かる仕組みとなっています。
映画『ゼロ・ダーク・サーティ』(2013)
2011年5月2日にパキスタンで実行された、アルカイダの指導者ビンラディンの捕縛・暗殺作戦の裏側を映画化。
テロリストを追跡するCIAの女性分析官を主人公に、作戦に携わった人々の使命感や苦悩を描きます。
9.11テロの首謀者とされるビンラディンの捕縛に、約10年もの歳月をかけてしまったアメリカ政府の暗部を晒け出すという、『ハート・ロッカー』(2010)のキャスリン・ビグロー監督らしい骨太な作品です。
9.11テロを受けてのブッシュ政権、及びメディア報道に関する作品
映画『バイス』(2019)
ジョージ・W・ブッシュ政権下において、「アメリカ史上最も権力を持った副大統領」と言われたディック・チェイニーを描く社会派ブラックコメディ。
とにかくブッシュの無知さをいい事に、自分の独断でイラク戦争に導いた(とされる)チェイニーの実態を、笑うに笑えないほど茶化した演出で斬っていきます。
なお、『記者たち』ではチェイニーと、同じくブッシュの懐刀だったドナルド・ラムズフェルド国防長官本人の記録映像も登場しますが、本作鑑賞後に『バイス』を観れば、チェイニー役のクリスチャン・ベールと、ラムズフェルド役のスティーブ・カレルのソックリぶりに驚くはず。
日本公開時期も近い『記者たち』と『バイス』は、テーマ時にも併せて観ることを推奨します。
映画『ニュースの真相』(2016)
ブッシュ政権に対するアメリカ国内の不満が高まりつつあった2004年、放送局CBSのプロデューサーのメアリー・メイプスは、局の看板番組でブッシュの軍歴詐欺疑惑を報道。
しかし、その疑惑を確証する証拠を、保守派勢力に「偽造」と断定されたことで、事態が一変します。
イラク侵攻開始当初こそブッシュ政権に迎合していたCBSが、一向に事態が収束しないことに対する反発で取り上げたスクープ報道がもたらす波紋を描きます。
「ブッシュが軍歴を詐称していた」として追及するメアリーと、「イラクには大量破壊兵器がある」と戦争を仕掛けたブッシュ政権の、両者を対比させる構成となっています。
『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』の登場人物に関わる作品
映画『大統領の陰謀』(1976)
『記者たち』の劇中、自分たちのイラク戦争批判記事が受け入れられないことについて、
ランデーが同僚のストロベルに、「俺たちが記者を志したのは、ウォーターゲート事件を暴く記者の映画を観たからなのに…」とグチるシーンがあります。
その映画とは、1972年6月に起こったウォーターゲート事件の真相を暴き、ニクソン大統領を失脚に導いた2人のワシントン・ポスト紙記者を描く『大統領の陰謀』のこと。
真のジャーナリズムとは何たるかを描いた秀作として知られるこの作品。
しかし、『記者たち』では、ワシントン・ポスト紙がイラク侵攻を後押しするメディアとなっているのが、なんとも皮肉としか言いようがありません。
映画『ワンス・アンド・フォーエバー』(2002)
『記者たち』で、ナイト・リッダー社に協力することとなるジャーナリストのジョー・ギャロウェイ。
コリン・パウエル国務長官のスペシャルコンサルタントを務めていた彼は、かつて従軍記者としてベトナム戦争での戦況を取材していました。
その戦況をまとめた手記は、2002年にメル・ギブソン主演で、『ワンス・アンド・フォーエバー』という映画になっています。
劇中、『ワンス・アンド・フォーエバー』の記者会見の場で、ギャロウェイが映画の出来を問われて憮然とした返答をするシーンがありますが、これはギャロウェイ本人に、映画が全体的にヒロイックな内容にされてしまったことへの不満があったからと言われています。
まとめ
都合の悪い報道を「フェイクニュース」と断罪する某国大統領や、特定メディアからの質問を拒否する政府関係者。
さらに一般人ですら、画像を加工してありもしないニュースを作ることが可能になるなど、昨今は嘘と真実の境目が曖昧となっています。
そんな中で、イラク侵攻作戦名「衝撃と畏怖」をタイトルに掲げた本作は、真実の調査報道に尽力した記者の誇りを描いた、意義ある作品となっています。
91分という、短めのランニングタイムで観られるのも高ポイント。
映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』は2019年3月29日(金)より、東京・TOHOシネマズシャンテほかでロードショー。