素敵な音楽と感動のドラマ。
人生に悩む時、音楽は生まれる。
元ミュージシャンの父と母親の才能を受け継ぐ娘が、音楽活動を通してお互いの人生を考え、前に進んで行くストーリー。
将来への希望と不安、愛する人への恋心。溢れる想いを歌に込め、親子は歌います。その歌は、これからの人生に大きな勇気を与えてくれました。
素敵な音楽に心満たされる映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』を紹介します。
CONTENTS
映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ)
【監督】
ブレット・ヘイリー
【キャスト】
ニック・オファーマン、カーシー・クレモンズ、テッド・ダンソン、サッシャ・レイン、ブライス・ダナー、トニ・コレット
【作品概要】
サンダンス映画祭やサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で話題を集めたヒューマンドラマ『ハーツ・ビート・ラウド』。
元ミュージシャンの父・フランクと、医大進学を目指す娘・サムの親子バンドが、音楽活動を通して成長していく姿を描いた映画です。
フランク役のニック・オファーマンの見事なギターソロと、サム役のカーシー・クレモンズのソウルフルな歌声に注目です。
映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』のあらすじとネタバレ
ここは、ニューヨーク、ブルックリンの小さな街、レッドフック。街の片隅に、17年続くレコードショップ「レッドフックレコーズ」がありました。
オーナーのフランク・フィッシャーは、赤字続きのこの店を閉める決心をしていました。それは娘の進学のため。そして、これからの家族のためです。
フランクは元ミュージシャンでしたが、一緒に音楽活動をしていた妻の死によりすべてが一変しました。それからは、娘のサムと2人暮らしです。
サムは将来の夢のためにLAの医大進学を目指していました。フランクは娘の夢を応援したい気持ちと、学費の心配もありました。
そして、痴呆症が進む母・マリアンヌとの同居も考えなければなりません。
フランクは店の貸主で友人のレスリーに、お店を閉めることを告げます。「このままじゃダメだ」。フランクは人生に迷っていました。
その夜、フランクは勉強を頑張るサムを強引にセッションに誘います。フランクは何よりこの時間が楽しみなのです。
父のわがままに付き合うサムもまた、音楽が好きなのでした。父のギターに娘のシンセサイザーで音を重ねていきます。
サムは想いを歌詞にのせて歌います。歌声は伸び、重なる音も増えていきます。親子は夜通し曲作りに励みます。
フランクはサムの才能に一目置いていました。娘とバンドを組むのが父の夢です。曲の完成度にテンションが上がったフランクは、バンドを組もうとサムを誘います。
サムは現実主義者です。そんな父に、「私は医者になるの。私たちはバンドじゃないわ」。と突っぱねます。
それでもフランクは諦めきれません。完成した曲に「ハーツ・ビート・ラウド」と名付け、ネットの音楽サイトに投稿します。バンド名は「We’re Not a Band.」。
驚いたことに、その曲は音楽サイトで人気の曲としてプレイリスト入りします。フランクは、カフェで流れた自分たちの曲に大喜びです。
「これで本物のバンドだ」。フランクは、音楽サンプラーに新しいギターを購入し、サムの説得に乗り出します。
しかし、サムにはサムの人生があります。進学が決まっている医学部、そして出会ったばかりの恋人ローズとの関係、向き合わなければならない大事なことで精一杯です。
父の暴走に呆れながらも、彼の音楽への愛情を誰よりも知っているサムは、もう少し父に付き合うことにします。
次に書く曲はラブソング。ローズへの想いを歌にします。タイトルは「Blink(One Million Miles)」。
「人生に悩んだ時、曲が生まれる」。フランクは、昔自分が作った妻と娘へのラブソングを思い出していました。
映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』の感想と評価
耳に残る音楽と感動のドラマ。音楽っていいな!と思わせてくれる作品のひとつとなりました。
歌に思いを込め、親子が一緒に曲を作り上げていく作業風景にわくわくします。父フランクのギターに合わせ、娘サムがシンセサイザーで音を重ねて行く。そして吹き込まれる歌声。鳥肌が立ちます。
タイトル曲にもなっている「ハーツ・ビート・ラウド」は、思わず体を揺らしてしまうほど素敵な曲です。サム役のカーシー・クレモンズのソウルフルな歌声に魅了されます。
閉店するレコード店でのライブシーンは、まるで自分も店内の観客になってライブを見ているかのようです。
また、音楽好きな心をくすぐる小ネタが、映画の随所に散りばめられています。
映画の冒頭で、フランクが経営するレコードショップのパソコンで見ていた動画は、親子バンド「トゥイーディ」。ウィルコのジェフ・トゥイーディが息子のスペンサーと結成したバンドです。
さらには、ジェフ・トゥイーディ本人が出演も果たしています。
フランクは親子バンド・トゥイーディを聞きながら、自分とサムの姿を重ねていたのかもしれません。
また、サムの音楽好きが垣間見えるシーンに、YouTubeで流れているミュージシャンは、Mitskiの「Your Best American Girl」。
レコードショップでフランクがレスリーに勧めるのは、地元ブルックリンで結成されたバンド「アニマル・コレクティヴ」。細部の音楽にもこだわりを感じます。
音楽の素晴らしさの他にもこの映画の見どころは、フランクとサムの親子関係にあります。
サムの音楽の才能に、自分の夢を託してしまう父フランク。そこには、亡き妻と組んでいたバンドの思い出もありました。
そんな父の思いを痛いほど分かるサムでしたが、自分が描く将来の夢もあります。まだ若く希望に輝くサムの姿は、フランクからすると眩しい存在だったのかもしれません。
そんなフランクとサムの親子は、それぞれ恋愛の悩みも抱えていました。サムはレズビアンです。そのことを理解し応援するフランク。素敵な親子関係です。
サムとアーティストであるローズとの出会いのシーンは、印象的です。ギャラリーで出会う2人はアーティスト同士のインスピレーションで恋に落ちます。
ローズは、サムを癒し包み込み、成長させてくれる偉大な存在となります。自転車事故で母を亡くしたサムは、ローズのおかげで乗れなかった自転車を克服することが出来ました。
そのことでサムは大きく成長します。自分の道を切り開く勇気が沸いてきます。父フランクとも真っ直ぐ向き合えるようになります。
順調な娘の恋愛に比べ、父フランクは恋愛にも不器用です。レスリーとの友情と愛情の狭間でひとり苦しみます。
人生に悩んだ時、曲は生まれる。親子は、それぞれの思いを歌に込め歌いあげます。そしてその歌は、伝えきれなかった気持ちを大切な人に届けます。
まとめ
親子バンドの素敵な音楽と、感動のドラマが詰まった映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』を紹介しました。
誰もが人生で抱える悩み、将来の夢と現実、寂しい別れ。半面、誰もが人生で感じる喜び、出会いと感動、そして希望。
溢れる思いは歌になり、多くの人の心に届きます。そして、前に進む勇気を与えてくれます。
見終わったあと、サウンドトラックを探してしまう自分がいるはず。