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大映男優祭を特集上映!『座頭市』『炎上』など代表作のあらすじ紹介

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

4月14日(土)~5月11日(金)まで角川シネマ新宿にて「大映男優祭」を開催。

“その男たちは、清らかで、美しい――”と、あのしっとりと艶やか湿度をもった大映作品の中から、2017年の「大映女優祭」に続き、「大映男優祭」を特集上映されます。

大映の特有な映像美で昭和イケメンの「大映男優祭」

1942年に誕生した映画会社の大映株式会社。

ここで当時、映画製作された作品は、日本特有の湿度と湿り気を感じさせる映像が味わえる特徴を持っていました。

その独特な色彩で作られた映画の中で、長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、川口浩、船越英二、田宮二郎、 京マチ子、山本富士子、若尾文子、中村玉緒、藤村志保、関根恵子(高橋惠子)、渥美マリたち、伝説の映画俳優を数多く輩出。

その創立75周年にあたる2017年夏に「おとなの大映祭」、冬に開催された「大映女優祭」に続き、最後を締めくくる第3弾は、男性が主人公の「大映男優祭」と銘打ち、彼らの華やかな魅力が解き放たれた、厳選45作品を一挙上映されます。

大映作品の男優たちが演じた男たちは、定の境遇に生きたとこの友情や愛する女性を守る姿、そして、正義や己の自分の野心のために行動する独りの男の姿を描いています。

愛に生き、正義を守り、欲望に生きる、“昭和のイケメン俳優の美しさ”を魅力的にスクリーンで堪能できます。

すでに大映ファンを自称する通なあなた、そしてこれから大映ファンになるだろうあなた。

新旧映画のファンにお楽しみいただける艶やかで贅沢な“男祭”特集です。

勝新太郎主演の『座頭市物語』(1962)


(C)KADOKAWA1962

第1作目は、言わずもと知れた伝説的名優と呼べる勝新太郎の代表作で、「座頭市」シリーズの1962年の第1作『座頭市物語』

その後、北野武監督によって座頭市にリスペクトしたリメイク作品も作られたが、本家であるこの作品は「座頭市」シリーズの中でも原点にして、その世界観では頂点を極めた作品と言えます。

また、世界的にも座頭市のインパクトのあるキャラクターは人気が高く、20世紀最後の巨匠と呼ばれたフランス人画家・バルテュスも座頭市や勝新太郎のファンであったのは有名な話

坊主頭の出で立ち、居合抜きをする勝新太郎の演技は絶品の一言。

さらには、“くりくりお目目”が愛らしいと言われた当時イケメン俳優だった勝新の魅力である瞳の封印して挑んだという、斬新なアイデアに満ちた意欲作です。

また、本作では、同じく昭和イケメン美男子の天知茂も出演しています。

天知茂といえば、テレビドラマ「江戸川乱歩の美女」シリーズの明智小五郎役が有名ですが、本作『座頭市物語』の平手造酒(ひらてみき)役は助演ながらも彼の代表作となっています。

大映映画『座頭市物語』のあらすじ


(C)KADOKAWA1962

盲目でありながら居合いの達人として知られたやくざ者の市。

昔のなじみであった下総飯岡の貸元である助五郎のもとに草鞋を脱いで世話になっていました。

しかし、助五郎はあいにく留守であったため、雑魚部屋に通されてしまった市は、丁半博打で彼のハンディキャップを尻目に騙そうとした飯岡の子分たちから、まんまと逆に金を巻き上げてしまいます。

そんな義理人情に欠く飯岡一家に見切りをつけて再び旅に出ようとした市の命を狙った子分衆の蓼吉が追うが、ちょうどそこに親分の助五郎が帰ってきました。

そんな助五郎は同じ町の笹川の繁造一家と対立中であり、昔に市の居合いを間近で見たこともあって、市に長逗留を勧めてきました。すると、助五郎親分は、市の身の回りの世話には蓼吉に命じます。

ある日、1人で川釣りに出かけた市は、繁造一家の用心棒で平手造酒(ひらて・みき)と出会います。

2人は互いにただならぬ気配を感じるなか、対立する組にそれぞれ縁は持つものの、不思議な友情を感じ合いますが…。

長谷川一夫主演の『地獄門』(1953)


(C)KADOKAWA1953
2作目は、第7回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール獲得や、第27回アカデミー賞で名誉賞と衣裳デザイン賞を受賞した傑作時代劇『地獄門』。

長谷川一夫演じる盛遠と京マチ子演じる袈裟の男と女のエロティックさに切なさを見い出せる作品です。

原作は菊池寛の戯曲『袈裟の良人』で、美術の色彩指導に洋画家の和田三造を起用して平安時代の和色を再現したことでも知られています。

大映映画『地獄門』のあらすじ


(C)KADOKAWA1953

平清盛の厳島詣の留守を狙って平治の乱が勃発。

平康忠は焼き討ちをされた御所から上皇と御妹の上西門院を救うため、身替りを立てて敵を欺きます。

上西門院の身替りとなる袈裟の車を譲る遠藤武者盛遠。

彼は敵を蹴散らして彼女を彼の兄盛忠の家に届けますが、袈裟の美しさに心を奪われてしまいます。

清盛派の権臣の首が法性寺の山門地獄門にあルコとで、盛遠は重囲を突破して厳島に急行。

そして都に攻め入った平氏は一挙に源氏を破り乱は治り、袈裟と再会した盛遠はいっそう心を惹かれていきますが…。

≪場面写真≫ この度、世界的にも高く評価された人気の高い3作品と 舞台挨拶が行われる2作品の場面写真を一挙公開いたします!

田宮二郎主演の『白い巨塔』(1966)


(C)KADOKAWA1966

3作目は、医学界の腐敗を暴いた原作山崎豊子の長編小説の映画化した『白い巨塔』。

医学ドラマが流行する昨今の中でも何度も映像化された作品ですが、鋭い眼差しを向けて主演を務めた田宮二郎が、やはり本家と言える作品です。

田宮二郎自身が1966年に公開された本作以後も、1978年に放送されたテレビドラマ(全31話)でも主演を務め、また、映画公開前の1965年にはラジオ番組としての連続ドラマで主演を果たしています。

いかに田宮二郎というイケメン俳優の主演作品『白い巨塔』であるか分かりますし、彼なくしてこの映像化はありえない人気ぶりだったか知れる作品です。

大映映画『白い巨塔』のあらすじ


(C)KADOKAWA1966

食道噴門ガンの手術を得意とする国立浪速大学第一外科助教授の財前五郎。

彼は次期教授の座を狙う野心を抱いた男でした。

一方で、財前の同窓である第一内科助教授の里見脩二は、患者を第一に考える研究一筋の人物でした。

食道噴門ガンの若き権威者として名声を誇る財前のもとには、全国から救いを求める患者が集まってきます。

その多くは著名な有力者などの特診患者たちです。

卓越したオペ手術と実績を見せた自信と野心家として、あくが強い性格の持ち主である財前を快く思わない第一外科教授の東貞蔵は何かにつけて苦言を呈します。

しかし、財前は次期教授の座を得るためと、表面上は上手に受け流して聞く耳など持ちません…。

市川雷蔵主演の『斬る』(1962)


(C)KADOKAWA1962

4作目は、薄幸の美剣士が辿る数奇な運命を、大映のみならず、日本映画界きっての伝説的な美男子で知られる“雷蔵さま”こと。

市川雷蔵が演じた時代劇の代表作『斬る』。

のちに「剣三部作」となる三隅研次監督と市川雷蔵コンビの最初の作品で雷蔵時代劇の頂点!

大映で雷蔵と同期入社であり親友であった勝新太郎は、「雷ちゃんは顔で斬る」と言わしめたほどのイケメンです。

また、本作『斬る』の監督である三隅研次は、先出した『座頭市物語』の監督でもあります。

日本の時代劇といえば“クロサワ映画”だと、あなたが思い込んでいるなら、三隅研次監督のこの2作品を観たら間違いなく意識は変わることでしょう。

シナリオの脚色に映画監督としても知られる新藤兼人が執筆している点も要チェックです。

大映映画『斬る』のあらすじ


(C)KADOKAWA1962

小諸藩士である養父の高倉信右衛門から許しを得た高倉信吾は、3年間の武道修行に出ます。

やがて3年の歳月が流れ、信吾の帰りを最も喜んだのは義妹の芳尾でした。

信吾は藩主牧野遠江守の求めにより、水戸の剣客として知られる庄司嘉兵衛と立会います。

その際に信吾は「三絃の構え」という異様な構えの型を見せ、嘉兵衛を破りました。

やがて、下城中の信吾は、信右衛門と芳尾が隣家の池辺親子に命を奪われたと知らせを受けます。

池辺義一郎は、伜義十郎の嫁に芳尾を望んだが、断わられこれを根に持ち行った行為でした。

そこで信吾は池辺親子を国境に追いつめます。その際に討ち取ることはできたものの、信吾は自分の出生の秘密を知ることとなります…。

市川雷蔵主演の『炎上』(1958)


(C)KADOKAWA1958

5作目は、海外からも人気の高い文豪の三島由紀夫が執筆した小説『金閣寺』の映画化。

本作の主演は大映の時代劇俳優として人気であった市川雷蔵のデビューから4年目の作品です。

48本目の映画となる雷蔵の初の現代劇の主演作としても、公開当時大きな話題となりました。

また、市川雷蔵は吃音症の青年という役所を好演したことで、第20回ベニス国際映画祭では、イタリアの映画誌『シネマ・ヌオボ』最優秀男優賞を獲得、国内では第3第32回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞、第9回ブルー・リボン賞ベスト・テン主演男優賞なども受賞しています。

雷蔵はこの作品の出演によって、演技力が大きく評価され、彼のストイックな性格も相まって、三島作品などは芸術性の高い作品の出演を望むようになります。

しかし、雷蔵は『眠狂四郎』や『忍びの者』の人気シリーズが人気の頂点であり多忙の中、画策した三島作品の企画も思うようには進みませんでした。

また名匠川島雄三監督の死去もそれと重なったことなどもあります。

本作『炎上』での市川雷蔵の演技に魅せられた三島由紀夫は、雷蔵を「雷蔵丈」と呼んで敬意を表して俳優として活躍に期待しました。

「君の演技に、今まで映画でしか接することのなかつた私であるが、「炎上」の君には全く感心した。市川崑監督としても、すばらしい仕事であつたが、君の主役も、リアルな意味で、他の人のこの役は考へられぬところまで行つていた。ああいふ孤独感は、なかなか出せないものだが、君はあの役に、君の人生から汲み上げたあらゆるものを注ぎ込んだのであらう。私もあの原作に「金閣寺」の主人公に、やはり自分の人生から汲み上げたあらゆるものを注ぎ込んだ。さういふとき、作家の仕事も俳優の仕事も境地において何ら変るところがない」

三島由紀夫「雷蔵丈のこと」

文豪や自身も俳優として活動した三島由紀夫が惚れ込んだ、昭和イケメンとしてナンバー1といってもよい、“雷蔵さま”こと、市川雷蔵には、「大映男優祭」の中でもお見逃しなく!

大映映画『炎上』のあらすじ


(C)KADOKAWA1958

驟閣寺の徒弟である21歳になった溝口吾市は、驟閣寺を放火した疑いにより取調室で調書を取られます。

しかし、一言も発することなく、刑事たちを手こずらせていました。

溝口は小刀とカルチモンを所持し、胸には自死しようとした刀傷がありました。

茫然とした様子の溝口は、放火に至るまでの様子を思い起こします…。

7年前、舞鶴市の成生岬の小寺の僧侶だった父親承道が亡くなり、父の遺言書にに従い、溝口は父親が修業時代を共に過ごした友人の田山道詮老師が住職を務める驟閣寺に修行するこになります。

驟閣寺の副司は、溝口がやって来たことで後継が自分の息子でなく、溝口になると考え面白く思いませんでした。

溝口が吃音症だと見るやいな、「なんや吃りか」と馬鹿にします。

やがて、溝口は大学の同級生たちに吃音をからかわれるようになります。

また、同級生たちが尊敬する海軍機関学校に進むことになった先輩が、大切にしていた美しい短剣の鞘に醜い傷をつけたことを思い出すのだが…。

まとめ

昭和のイケメン俳優たちがズラッと並び特集上映される「大映男優祭」。

4月14日(土)~5月11日(金)まで角川シネマ新宿にて「大映男優祭」は開催されます。

今回は5本のみのご紹介ですが、引き続き45本の名画、名作が上映されます。

しっとりと艶やか湿度をもった大映の男優たち。

映画好きな女子、必見ですよ、お見逃しなく!

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