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Entry 2024/07/05
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『墓泥棒と失われた女神』あらすじ感想と評価考察。ギリシャ神話から誕生する幻想的ラブストーリー

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『墓泥棒と失われた女神』は2024年7月19日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

『墓泥棒と失われた女神』は、アリーチェ・ロルヴァケル監督の最新作(2024年7月現在)です。

フェリーニ、ヴィスコンティなどの豊かなイタリア映画史の遺伝子を確かに受け継ぎながら革新的な作品を発表し続け、カンヌ国際映画祭グランプリ作『夏をゆく人々』(2015)や2018年同映画祭脚本賞受賞作『幸福なラザロ』(2019)を発表してきたロルヴァケル監督は、スコセッシ、ポン・ジュノら世界中の映画人から愛される才能の持ち主です。

ギリシャ神話をモチーフにした墓泥棒たちの数奇な物語が描かれます。主演は監督の才能に惚れ込み逆オファーを果たしたジョシュ・オコナーが務めます。共演はイザベラ・ロッセリーニ。

古代エトルリア人の墓を探し当てる能力を持つアーサー。彼は泥棒仲間たちと共に、いくつもの墓に入って盗みを繰り返します。しかし、アーサーの目的は金だけではありませんでした。彼が本当に手に入れたかったものとは何だったのでしょうか。

アリーチェ・ロルヴァケル監督最新作『墓泥棒と失われた女神』が2024年7月19日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開されます。

映画『墓泥棒と失われた女神』の作品情報


(C)2023 tempesta srl, Ad Vitam Production, Amka Films Productions, Arte France Cinéma

【日本公開】
2024年(イタリア・フランス・スイス合作映画)

【監督・脚本】
アリーチェ・ロルヴァケル

【編集】
ネリー・ケティエ

【キャスト】
ジョシュ・オコナー、イザベラ・ロッセリーニ、アルバ・ロルヴァケル、カロル・ドゥアルテ、ヴィンチェンツォ・ネモラート

【作品概要】
スコセッシ、ポン・ジュノ、グレタ・ガーウィグら世界中の映画人が惚れ込んだ女性監督アリーチェ・ロルヴァケル監督の最新作です。

2014年カンヌ国際映画祭審査員グランプリの『夏をゆく人々』(2015)や2018年同映画祭脚本賞の『幸福なラザロ』(2019)などを送り出してきた才豊かなロルヴァケル監督が、ギリシャ神話の悲劇のラブストーリーをモチーフに、「幻想(キメラ)」を追い求める墓泥棒たちの数奇な物語を描きます。

『幸福なラザロ』に感銘を受け出演を熱烈逆オファーした、『帰らない日曜日』(2022)
のジョシュ・オコナーが主演を務め、『ブルーベルベット』(1987)のイザベラ・ロッセリーニが共演します。

監督の実姉で、常連俳優のアルバ・ロルヴァケルも出演します。

映画『墓泥棒と失われた女神』のあらすじ


(C)2023 tempesta srl, Ad Vitam Production, Amka Films Productions, Arte France Cinéma

80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。刑務所から戻った考古学愛好家のイギリス人・アーサーを、仲間のピッロが迎えに来ました。

アーサーは、紀元前に繁栄した古代エトルリア人の墓をなぜかダウジングで発見できる特殊能力を持っています。彼はピッロら墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいては、日銭を稼ぐ日々を送っていました。

そんなアーサーにはもうひとつ探しているものがあります。それは行方知れずの恋人・ベニアミーナでした。

ベニアミーナの母のフローラもアーサーが彼女を見つけてくれることを期待していました。しかし、彼女の失踪には何やら事情があるようです。

ある日、アーサーたちが稀少な価値を持つ美しい女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展していき…。

映画『墓泥棒と失われた女神』の感想と評価


(C)2023 tempesta srl, Ad Vitam Production, Amka Films Productions, Arte France Cinéma

現実と虚構の世界が入り交じったような、独特の世界観を持つ作品です。現代でも、古き時代と共生するイタリアの町だからこそ生まれるリアリズムと虚構。いつの間にか迷路に迷い込んだかのように錯覚することでしょう。

主人公のアーサーはイギリス人で、なぜか古代エトルリア人の墓がどこにあるかわかる特殊な能力を持っています。希有な能力を頼りに、数名の仲間たちとともに古代の墓から副葬品を盗んで売り払っては日銭を稼いでいました。

墓の中は、古い時代、そして死者の世界とつながっているかのような空間です。アーサーたち泥棒仲間は死の世界に入り込んでは、地上に戻ってくる生活をしています

やがて、アーサーには探し人がいることが明かされます。

本作がギリシャ神話にある「オルフェウスとエウリュディケ」をモチーフとしており、亡き妻を探しに夫が冥界に探しにでる内容であることを思えば、アーサーの探し求めるベニアミーナはすでにこの世にいないと考えられます。だからこそ、アーサーは冥界とつながっているかのような墓に何度も入りこみ、彼女の姿を追い求めずにはいられなかったのでしょう。

ベニアミーナの母で元歌手だったフローラのもとには、声楽の弟子・イタリアがいました。彼女に歌の才はありませんが、フローラは彼女を側に置いて身の回りの世話をさせています。

軽んじられても意に介さず、フローラの言うがままになっていたイタリアですが、実はとてもしたたかな面を持っていることが徐々に明かされます。陽気で強い光を放つイタリアは、ベニアミーナとは対極にいる存在といえるでしょう。

ベニアミーナの帰りを待ちわびる母のフローラ、フローラの欲深い娘達、アーサーの墓泥棒の仲間たち、盗品を買い取っている謎の存在・スパルタコ。登場する誰もが個性的でとても魅力的です。彼らの思いが交錯するさまも見応えたっぷりに描かれます。

まとめ


(C)2023 tempesta srl, Ad Vitam Production, Amka Films Productions, Arte France Cinéma

古代エトルリア人の墓をあばいて盗品を売りさばく男・アーサーの、魂の遍歴を丁寧にファンタジックに描く傑作『墓泥棒と失われた女神』

彼が必死でひとりの女性を追い求め続ける姿に、胸が締め付けられます。アーサーと一緒に、生の世界と死の世界を行き来しながら本作をどうぞ楽しんでください。

映画『墓泥棒と失われた女神』は2024年7月19日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開です。


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