ドン・マイケル・コルレオーネの苦悩が明らかとなる最終章
フランシス・フォード・コッポラ監督による傑作『ゴッドファーザー』3部作の完結編。
マフィアのドンとして君臨するマイケルの苦悩と孤独、そして老いが描かれます。
前2作のキャストであるマイケル役のアル・パチーノ、妻・ケイ役のダイアン・キートン、妹・コニー役のタリア・シャイアが続投するほか、アンディ・ガルシアやソフィア・コッポラが新たに出演します。
CONTENTS
映画『ゴッドファーザー最終章マイケル・コルレオーネの最期』の作品情報
【公開】
2020年(アメリカ映画)
【脚本】
フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ
【監督】
フランシス・フォード・コッポラ
【編集】
バリー・マルキン、リサ・フラックマン、ウォルター・マーチ
【出演】
アル・パチーノ、ダイアン・キートン、タリア・シャイア、アンディ・ガルシア、ブリジット・フォンダ、ソフィア・コッポラ
【作品概要】
1975年公開の第2作『ゴッドファーザーPARTII』(1975)から15年の時を経て製作されたファン待望の完結編『ゴッドファーザーPARTⅢ』(1991)を、全米公開30周年を記念してコッポラ監督が再編集した新バージョン。
オリジナルネガからの4Kスキャンやデジタルレストア、新たなオープニング、エンディングシーン、音楽の追加などが行われました。
老境に入ったコルレオーネ・ファミリーのドンであるマイケルの苦悩するさまが克明に描かれます。
主演のアル・パチーノをはじめ、ダイアン・キートン、タリア・シャイアらが再集結。
第1作に登場したマイケルの長兄の息子ヴィンセント役でアンディ・ガルシア、マイケルの愛娘メアリー役でコッポラ監督の愛娘ソフィア・コッポラが新たに参戦しています。
映画『ゴッドファーザー最終章マイケル・コルレオーネの最期』のあらすじとネタバレ
1979年。マイケル・コルレオーネは バチカンのギルディ大司教と手を結びます。
バチカンの票が動かす資産60億ドルの大企業インモビリアーレの支配権と交換に、大司教らが横領して発生した損失金を埋めるための5億ドルをバチカン銀行に振り込むことを約束するマイケル。
彼はギャンブルや非合法組織と手を切り、合法ビジネスへの転換をはかっていました。
教育は母のケイにゆだねてなかなか会えずにいた愛する我が子たちに、マイケルはケイを誘って祝賀会に来てほしいと手紙を書きます。
マイケルやコニーも顔を揃えた祝賀パーティーに、ソニーの息子のヴィンセントもやってきました。ヴィトー・コルレオーネ財団の名誉会長として出席していたマイケルの娘のメアリーが彼に声をかけます。
そこにマイケルの元妻のケイが現れ、8年ぶりにマイケルと再会。彼女は息子のアンソニーがオペラ歌手になりたがっていることを話します。アンソニー自身もまた、マイケルに父の仕事を継ぐことも大学を卒業することも拒否するとはっきり告げました。
アンソニーはマイケルが実兄のフレドを殺したことを知っていました。ケイは元夫に「あなたを忌み恐れている」と言いますが、メアリーが父をとても愛していることを伝えます。アンソニーに干渉しないことをマイケルは承諾しました。
ヴィンセントは美人記者のグレイスと言葉を交わします。グレイスはマイケルに話を聞こうとしますが、追い出されました。
かつてのコルレオーネの縄張りを牛耳るジョーイ・ザザがやってきました。ヴィンセントとのトラブルを聞いたマイケルは、甥を部屋に呼びます。
ソニーと同じく血の気の多いヴィンセントはジョーイに怒鳴りつけ、マイケルの下で働きたいと言いますが、マイケルは断りジョーイと仲直りするように言います。
しかし挑発されたヴィンセントはジョーイの耳にかみつき、ジョーイは悲鳴をあげながら部屋を出ていきました。
ヴィンセントはマイケルに、ジョーイがコルレオーネを恨んでいることを教え、自分がマイケルを守りたいと言います。マイケルはしばらくヴィンセントをしばらく側に置くことにしました。
コルレオーネファミリーで家族写真を撮った後、マイケルはメアリーの手をとって笑顔で踊ります。
映画『ゴッドファーザー最終章マイケル・コルレオーネの最期』の感想と評価
老いゆくマイケルから若きヴィンセントへの襷
第1作、第2作と無敵の帝王として君臨してきたマイケルの老境を描く完結編の本作。これまで非情な決断を下してきたマイケルの心の中に積み重なった罪の重さが映し出されます。
コッポラ監督はPARTⅡとPARTⅢの違いはマイケルにあると語っています。ボロボロになったマイケルを見て、彼にも良心があったのだということにきっと観客は驚くだろう、と。
一番彼の心に重くのしかかっていたのは、実の兄・フレドを殺害したことでした。兄であると同時に、愛する父の子、そして母の子である息子を葬ったという罪の意識にさいなまれつづけていたことが明らかになります。
枢機卿に懺悔をするマイケル。見知らぬ人にすべてをさらけだしたことに家族は驚きを禁じ得ません。マイケルはそれほどまでに老いて気弱になっていました。
彼の老いを際立たせるのが、若い新キャラクター2人の登場です。アンディ・ガルシア演じる第1作目で壮絶な死を遂げた、短気で喧嘩っぱやい長兄ソニーの息子のヴィンセントと、ソフィア・コッポラ演じるマイケルの愛娘メアリーのはちきれんばかりの若さが、マイケルの弱々しさをさらに強調します。
『アンタッチャブル』(1987)「オーシャンズ」シリーズなどで活躍する人気俳優アンディ・ガルシアが、父・ソニーが乗り移ったかのような血の気の多い若者を演じてファンを魅了しました。
しかし、赤く燃えさかる火のような性格だったソニーと対照的に、青白い炎が燃えているかのようにヴィンセントの表情や目は至ってクールです。コニーが言うように、ヴィンセントの姿はヴィトーの血が流れていることを強く感じさせます。
老いと糖尿によって心身の弱っていたマイケルに引退の引導を渡したのは、若くパワーあふれるヴィンセントの登場にあったことをは間違いありません。
メアリーを演じるソフィア・コッポラは、フランシス・フォード・コッポラ監督の愛娘です。
第1作目ではコニーの息子のマイケル・リッツィとして、洗礼を受ける赤子役で生後3週間で出演。19歳となった本作では悲劇のヒロイン・メアリーを演じ大きな話題となりました。
メアリーの健康的な若さと美しさが、マイケルのたどった年月の長さをより強調し、娘という人生最大の光を失った父の悲しみを際立たせます。
まとめ
前作から15年の時を経てファンから熱狂的に迎えられた映画史上最高傑作と呼ばれる大人気シリーズの最終章。
コッポラ監督が公開30周年となる2020年9月にフィルムと音声を修復し、新たなオープニングとエンディング及び音楽を付け加えて再構成しました。
監督は編集作業を振り返り、古いセーターの修復に例えて、糸のほつれを直す内に新しいセーターを編むことになったと表現しています。
多くの人々に愛されたシリーズ完結編の新たなバージョンは、主演のアル・パチーノ、ダイアン・キートンにも愛される仕上がりとなりました。
マイケルの栄枯盛衰をみつめることで、自身のこれまでの人生を振り返る方もきっと多くいらっしゃったのではないでしょうか。
多くの観客のみならず、監督はじめスタッフ、そして出演俳優陣からも深く愛され続ける感動の超大作のエンディングをしっかりと見届けて下さい。