若き日のヴィトーとマイケルを交錯させて描くマフィア映画の金字塔『ゴッドファーザー』の続編
フランシス・フォード・コッポラ監督の代表作「ゴッドファーザー」(1972)のシリーズ第2作。
コルレオーネ・ファミリーのドンとなったマイケルの苦悩の日々と、彼の父であるヴィトーの若き日を交錯させながら描きます。
前作に続く大ヒットとなり、第47回アカデミー賞で作品賞など6部門を受賞するなど高く評価されました。
主人公のマイケルを演じるアル・パチーノをはじめ、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン、タリア・シャイアらが続投しています。
若き日のヴィトーを演じたロバート・デ・ニーロはアカデミー賞助演男優賞に輝きました。
CONTENTS
映画『ゴッドファーザーPARTⅡ』の作品情報
【公開】
1975年(アメリカ映画)
【原作】
マリオ・プーゾ
【脚本】
フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾ
【監督】
フランシス・フォード・コッポラ
【編集】
ピーター・ウィンナー、バリー・マルキン、リチャード・マークス
【出演】
アル・パチーノ、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン、ロバート・デ・ニーロ、タリア・シャイア、ジョン・カザール
【作品概要】
フランシス・フォード・コッポラ監督による大人気映画『ゴッドファーザー』(1972)の続編。
前作でマフィアのコルレオーネ・ファミリーの首領となったアル・パチーノ演じるマイケルの苦闘と、ロバート・デ・ニーロ演じる若き日の父ヴィトーの姿が平行して映し出されます。
第47回アカデミー賞で作品賞など6部門を、ロバート・デ・ニーロは同助演男優賞を受賞しました。
アル・パチーノをはじめ、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン、タリア・シャイア、ジョン・カザールらコルレオーネファミリーが再集結しています。
映画『ゴッドファーザーPARTⅡ』のあらすじとネタバレ
シチリア島コルレオーネ村で、後にゴッドファーザーとなるヴィトー・アンドリーニは生まれました。
1901年に彼の父は地元のマフィアのドン・チッチオに殺され、復讐を誓い姿を消した兄のパオロも殺されてしまいます。
母は9歳のヴィトーを連れてドン・チッチオを訪問して命乞いしますが、ドンは許しませんでした。母はナイフをドンに突き付けてヴィトーを逃がし、その後撃ち殺されます。
町の人はヴィトーを隠して脱出させてくれました。船でアメリカへと渡った彼はヴィトー・コルレオーネとなり、天然痘だったことからエリス島に3カ月間隔離されました。
1958年ネバダ州。タホ湖の湖岸で、ヴィトーの孫のアンソニー・ヴィトー・コルレオーネは初聖体式を迎え、父・マイケルの邸宅で盛大なパーティーが開かれました。
クレメンザの死後、跡を継いだフランクがマイケルを訪ねてきます。彼はロサト兄弟と対立していましたが、兄弟のバックにいるユダヤ系マフィアのハイマン・ロスと争いたくないマイケルはががまんするように諭します。
しかし、フランクは反発したまま帰っていきました。
妹のコニーが、マールという男との結婚の承諾をもらいにマイケルに会いに来ました。子どもにも会わずに、離婚してすぐに結婚しようとする妹を怒鳴りつけるマイケル。兄のフレドは奔放な妻に手を焼いていました。
マイケルの妻・ケイは、5年で裏の世界と手を切ると言ってから7年もたつと言って夫を責めます。
その夜、ケイといたマイケルは寝室で何者かに銃撃されます。なんとか無事に済んだマイケルの身を案じるトム。
マイケルはトムに隠し事をしていることを謝り、信用できるのはお前だけだと話します。ドンの仕事すべてと妻子をトムに任せ、マイケルは犯人捜しに乗り出しました。
1917年ニューヨーク。青果店で働くヴィトー・コルレオーネは妻と幼い我が子ソニーと暮らしていました。劇場を訪れた彼は、ドン・ファヌッチが劇場の男を脅す現場を見てしまいます。
ある晩、イタリア語を話す男・クレメンザから突然挙銃を強引に渡され、預かってくれと頼まれます。
ヴィトーの雇い主はファヌッチに金を脅し取られた上、彼の甥を雇うことになりました。代わりにヴィトーをやめさせなければならなくなって必死で謝る店主を、ヴィトーは許して立ち去ります。
銃を預かってくれたお礼にヴィトーに絨毯を渡すと言うクレメンザ。しかし、彼は鍵を壊して勝手に他人の部屋に入り込み、ヴィトーに手伝わせて絨毯を盗み出しました。
映画『ゴッドファーザーPARTⅡ』の感想と評価
ブランドからの襷をデ・ニーロがつなぐヴィトーの物語
マフィア映画の金字塔『ゴッドファーザー』の第2作目にあたる本作では、主人公マイケルの物語とともに、父・ヴィトーの若き日の物語が交錯して描かれます。
前作ではゴッドファーザーであるヴィトーを名優マーロン・ブランドが圧倒的な存在感で演じました。
本作で若き日のヴィトーを演じるロバート・デ・ニーロは、前作ヴィトーそっくりなしゃがれた声で威厳あるオーラを放ち、見事な演技で観る者を魅了。デ・ニーロの演技は高く評価され、アカデミー賞助演男優賞に輝きました。
故郷シチリアで両親も兄もマフィアに殺され、9歳にして単身アメリカに渡ったヴィトーの厳しい生い立ち。肝のすわっている彼は、妻と小さな子供たちを守るためにクレメンザたちと窃盗に手を染め、利益を横取りしようとする汚いファヌッチをためらいなく撃ち殺します。
後年ゴッドファーザーとなったヴィトーが義理や愛情を重んじたように、若き日のヴィトーもまた弱い立場の者の力になることで、人々の信頼を勝ち得ていきます。
実は、ロバート・デ・ニーロは第1作目でマイケルの兄・ソニー役に応募してきたそうです。激しい殺し屋のソニーのタイプではないと思いながらも、デ・ニーロを忘れられなかったコッポラ監督が、若き日のヴィトーに抜擢したといいます。
デ・ニーロは口ひげをつけるかどうか迷ってコインで決めたそうです。
ラストの回想シーン、ヴィトーの誕生祝に集まった家族団らんの席にヴィトーは登場しませんが、当初はマーロン・ブランドが出演予定だったという裏話があります。
契約問題でとうとうその日ブランドが現れなかったために、帰宅したヴィトーを家族が出迎えに席を立つという演出に変更され、更に父の存在感を際立たせることに成功したそうです。
ヴィトー編とマイケル編を組み合わせた本作の編集には大変な苦労があったといいます。しかし、最終的に素晴らしい映画となってファンに熱狂的に迎えられ、アカデミー賞で作品賞を含む6部門受賞の快挙を成し遂げました。
マイケルの壮絶な孤独
古き良き時代のヴィトーの物語と並行して、現在ゴッドファーザーとなったマイケルの苦悩の物語が綴られます。その対比は残酷なほどに際立ちます。
どんな手段もいとわない冷酷なマイケル。そんな中でも、彼は父・ヴィトーの教えを守り、家族だけは何よりも大切にして生きてきました。
しかし、彼の独断的な姿勢、すぐに相手を恫喝する態度は、家族の心を遠ざけていきます。
気が弱く器が小さな兄のフレドは、小物の自覚がありながらも弟から下に見られることに我慢がならず、敵の内通者に成り下がります。
妹のコニーもまた、マイケルへの嫉妬心から奔放な生活に身を落としていました。
マイケルの子をふたりも生んだ妻のケイは、裏社会から足を洗うという彼の言葉を信じて待ち続けていましたが、やがて彼が決して変わらないことを理解し、身ごもった我が子を堕胎するほど彼を憎むようになります。
ケイはマイケルの前から去り、母の死後にフレドはマイケルによって殺されます。
父の代からつかえていたフランクも、マイケルを憎みながら自身の命を絶ちました。
ラストシーンで家族と過ごしていた昔を振り返りながら、現実世界ではひとりぼっちになっていたマイケル。彼の背負ったもの、そして守ろうとしたものは何だったのでしょうか。
壮絶な孤独の中に立ち尽くす彼こそ、その問いの答えを知りたかったに違いありません。
まとめ
壮大な家族の物語「ゴッドファーザー」シリーズ第2作目の本作は、過去と現在を行き来してコルレオーネファミリーの歴史を描く傑作です。
古き時代にギラギラとした目でのし上がっていくヴィトー、現在の世界でたくさんのものを背負い、殺される前に殺しに行くという殺伐とした戦いを繰り返していくマイケル。
家族を守ることに成功した父と、家族を次々に失い続けていく哀れな息子との対比があざやかに映し出されます。
202分という大作ですが緊迫感は途切れることなく、観る者の心をとらえて離さない魅力あふれる一作です。