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映画『地獄の黙示録』最後の解説とネタバレあらすじ。特別完全版とファイナルカット版の違いを比較

  • Writer :
  • 黒井猫

映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』IMAX版は2020年2月28日から全国ロードショー

フランシス・フォード・コッポラの名作映画『地獄の黙示録』

そのストーリーの難解さとリアリズム溢れる映像美によって、多くの方々を魅了し考察を生んでいる作品である本作。

このたび公開40周年を記念し、2001年に公開された「特別完全版」にコッポラ監督が新たに編集を施した『地獄の黙示録 ファイナルカット』が、リストア、さらにはIMAX規格によって蘇りました。ベトナム戦争の狂気を描いたその映像美と迫力はより素晴らしいものになっています。

今回は映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』IMAX版について紹介させていただきます。

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映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』の作品情報


(C)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
1979年(アメリカ映画)

【原題】
Apocalypse Now

【監督】
フランシス・フォード・コッポラ

【キャスト】
マーロン・ブランド、ロバート・デュヴァル、マーティン・シーン、フレデリック・フォレスト、サム・ボトムズ、ローレンス・フィッシュバーン、アルバート・ホール、ハリソン・フォード、デニス・ホッパー

【作品概要】
「ゴッド・ファーザー」シリーズのフランシス・フォード・コッポラ監督が1979年に発表し、カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞したほか、膨大な製作費や過酷な撮影環境、CGなしの壮大なスケールの映像など、数々の伝説を残した戦争映画の傑作『地獄の黙示録』を、コッポラ監督自身が望むかたちに再編集した最終版。

1979年のオリジナル版より30分長く、2001年に発表された特別完全版より20分短いバージョンであり、IMAX上映に向けて新たにデジタル修復も施された。

脚本はジョン・ミリアスとフランシス・フォード・コッポラの共同制作。撮影はビットリオ・ストラーロ、美術はディーン・タボウラリス、編集はリチャード・マークスが務め、音楽はカーマイン・コッポラとフランシス・フォード・コッポラが務める。

映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』のあらすじとネタバレ


(C)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

ベトナム戦争末期、アメリカに一時帰国をしていたアメリカ陸軍空挺将校のベンジャミン・L・ウィラード大尉(マーティン・シーン)は、妻と離婚し、再びベトナムへと戻ってきています。

サイゴンのホテルで指令を待っていたウィラードは情報司令部から呼び出されます。司令部に行くと司令部のコーマン将軍(G・D・スプラドリン)と副官のルーカス大佐から任務を受けます。

その任務は、元グリーンベレー隊長のウォルター・E・カーツ大佐(マーロン・ブランド)の暗殺指令でした。カーツはかつては優秀な軍人でしたが、ダブルスパイをしていたベトナム人4名を殺害した罪に問われ、軍部の命令を無視した挙句にカンボジアのジャングルに逃げ込み、そこで王国を築き、現地人から神として崇められていると聞かされます。

ウィラードは正気を失ったカーツを暗殺するために、海軍の河川哨戒艇でヌン川を上り、カーツの王国へ向かうよう命じられます。

ウィラードは作戦の目的を告げることなく、哨戒艇のメンバーであるジョージ・“チーフ”・フィリップス(アルバート・ホール)、元プロサーファーのランス・B・ジョンソン(サム・ボトムズ)、ソース作りの修業をしていたジェイ・“シェフ”・ニックス(フレデリック・フォレスト)、若兵のタイロン・“クリーン”・ミラー(ローレンス・フィッシュバーン)の四人とともにカンボジア国境付近へと向かいます。

危険地帯を通過するため、ウィラード一行は“空の騎兵隊”と呼ばれているビル・キルゴア中佐(ロバート・デュバル)に護衛を頼みます。サーフィン好きであるキルゴアは一行の中にランスがいること、ヌン川の下流には良い波があることを知り、依頼を受けます。

そして、サーフィンをするためベトコンの基地を襲撃します。大量のミサイルと銃弾、ナパームによる空爆で一方的な虐殺を行い、その狂気を目の当たりにしたランスとウィラードはキルゴアのサーフボードを盗んで逃げます。

一行はキルゴアに追跡されつつも、隠れながら川を上流していきます。途中、米軍の関所に燃料を補給する為立ち寄ると、今夜ショーがあるから見ないかと誘われます。そのショーではプレイボーイによる慰安活動が行われます。

ショーに興奮した軍人たちが暴れて舞台に上がり、収集がつかなくなる前にショーは中断されます。

その後、一行は再び川を上流していくとベトナム人の船を発見します。ウィラードは放っておけと言いますが、仕事に忠実なチーフは停船検査を始めます。検査中、ベトナム人女性が壺を隠そうと抵抗したことに危険を感じたクリーンは船に乗っていたベトナム人全員を撃ち殺します。

その壺に入っていたものは子犬でした。チーフは虫の息のベトナム人女性を手当てするために船に乗せようとしますが、その偽善に嫌気が差していたウィラードは女性を撃ち殺します。

川を進んでいくと、ド・ラン橋の米軍関所にたどり着きます。そこで再び燃料を補給するためウィラードとランスは立ち寄ります。しかし、そこでは指揮官不在の米軍兵士とベトコンとの戦闘が繰り広げられていました。一行はなんとか補給を済ませて先へ進みます。

しかし、ド・ラン橋を超えた先で敵襲に遭います。そこで母からのテープレターを聞いていたクリーンは銃で撃たれ死んでしまいます。四人はクリーンの死を嘆きながらも先へ進みます。

濃い霧の中、先へ進むとフレンチ・プランテーションを営んでいるユベール・ド・マレ(クリスチャン・マルカン)に出会います。彼らはそこで農園を営んでいてベトコンから家族と土地を守って戦っていました。一行はクリーンの埋葬をしてもらい、ユベール一家と一夜を共にします。

第一次インドシナ戦争を経験しているユベールは「私たちは負け続けてきた。だからここでは勝つ。私たちは農園を守るために戦っているのにアメリカは何のために戦っているんだ。」と言い、ベトナム戦争の原因はアメリカにあるとウィラードを責めます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『地獄の黙示録 ファイナルカット』ネタバレ・結末の記載がございます。『地獄の黙示録 ファイナルカット』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

農園を離れ、先を進むとカーツのいる王国が目前で原住民の襲撃に遭い、投げられた槍がチーフに当たります。チーフはウィラードを睨みつけながら息を引き取ります。

ここまできたら進むしかないとシェフが船を運転します。そして、遂に三人はカーツのいる王国へと辿り着きます。王国ではアメリカ人報道写真家(デニス・ホッパー)が出迎えてくれました。

写真家が言うには、カーツ大佐は仲間を引き連れてジャングルの奥地へ入っていったということでした。ここまできて帰るわけにいかないウィラードはカーツが王国に帰ってくるまで待つことを決めます。

一旦船に戻ったウィラードはシェフに「22時までに戻らなければ爆撃を要請してくれ」と頼み、王国内で待ちます。そして王国内で待っているとカーツが戻ってきて襲撃されます。カーツはウィラードが暗殺するために来たことを見抜いており、ウィラードを拘束します。

ウィラードが目覚めるとカーツはシェフの生首をウィラードの足の上におき、ウィラードは叫びます。カーツはその後ウィラードの拘束を解きます。自由になったウィラードはカーツを殺そうとしますが、行動するに至りませんでした。

カーツはウィラードに自分自身が目の当たりにした地獄を語り、「地獄を知らないものに私を殺す資格はない」と告げ、息子に真実を全て伝えて欲しいと頼みます。そして「必要な軍事行動は果断に、無慈悲に、怯むことなくやりとげなければならない」と告げます。

ウィラードはカーツが裏切り者ではなく、誇り高い軍人としての死を望んでいることを悟り、カーツ暗殺を決意します。そして原住民の儀式の日にウィラードはカーツを暗殺します。カーツは抵抗なく受け入れました。

そしてウィラードはカーツの手記を持ち、ランスと共に船に乗り川を下ります。軍からの連絡が無線に入りますが応答することなく進んでいきます。

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映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』の感想と解説

映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』はデジタルIMAX規格に編集され、巨大なスクリーンに映されることでベトナム戦争の狂気を観客に体感させる作品となっています。

そしてフランシス・フォード・コッポラの代表作『地獄の黙示録』はストーリーの難解さとその撮影規模の大きさゆえに、公開当時から現在にかけてまで様々な物議を生んでいます。

『地獄の黙示録』の戦場のような撮影現場


(C)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『地獄の黙示録』の脚本に影響をうけている文学作品としてコンラッドの『闇の奥』、T・S・エリオットの『荒地』『うつろな人々』、聖杯伝説、フレイザーの『金枝篇』などが挙げられます。

『風とライオン』『ビッグウェンズデー』のジョン・ミリアスが初めに脚本を書き、その後コッポラ自身が撮影と並行してアドリブで次々と書き換えていきます。その為元々の脚本とは大きくかけ離れており、それゆえに莫大な製作費と時間が費やされることとなります。

撮影が延びていく中で台風が直撃し、セットが壊れたり、予算が底を尽きてしまいエキストラが集まらなかったり、さらにはカーツ大佐役のマーロン・ブランドが太っていた挙句に原作である『闇の奥』も読んでいなかったなど様々な問題が起こります。

コッポラはその想定外に振り回されるたびに脚本のリライトを繰り返し、拷問のような自己葛藤に苦しんだ末ある種の出口を見つけます。それは「良い映画監督はアドリブで現場に合わせて良い画を撮る。」「ベトナム戦争そのものが矛盾であるため、脚本に矛盾がつきまとうことは当たり前。」ということです。

その気付きにより、台風によって破壊されたセットを“嵐で不時着し、動きが取れなくなった”という設定に変更し、エンディングにおける本物の山岳民族であるイフガオ族の祭りと本物の水牛を儀式的に屠る場面など、偶然的に撮られたシーンを使うことで、“王殺しによる王位継承”を上手く編集し、繋げることで描いています。

特にウィラードがカーツを殺すことを決意して原始的な沼から頭を出すシーンは、思いつきからたった三時間で作られたシーンだそうです。

フランシス・フォード・コッポラの配偶者であるエレノア・コッポラ夫人は『地獄の黙示録 撮影全記録』で次のように語っています。

「成功せねば全財産を失うというプレッシャーからウィラード大尉だったフランシスが、いつの間にかカーツ大佐になっていた。」

この言葉から映画『地獄の黙示録』の撮影現場も地獄絵図となっていたことが想像できます。

コッポラが映画『地獄の黙示録』で暴いた“欺瞞”


(C)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

その苦難と葛藤からコッポラが考え抜いた本作はストーリーの難解さも見どころの一つにあります。

本作のウィラードが書類上のカーツを探す旅は“自己を探究する道程”のメタファーになっています。つまり地理的にカーツに近づくにつれ、様々な地獄の情景を目の当たりにしたウィラードがカーツに同化していき最終的に“父殺し”として乗り越える旅でもあります。

コッポラがこの映画の主題として置いたことは“人間社会、あるいは人間の欺瞞を暴くこと”にあります。

見境なく村人を虐殺した挙句に治療する、ハラワタが出るまで戦ったから水をやるといって水筒を差し出す、機関銃を浴びせた女性を手当てするといった様々な偽善がウィラードの前で行われます。それを目の当たりにしたウィラードは偽善に対して嫌気がさし、脱走したカーツに共感し始めます。

それを象徴する台詞として作品の中で「なぜキルゴアがやっていることは許されて、カーツがやっていることは許されないのか」という台詞があります。

現実では1970年に「カンボジア侵攻作戦」が起き、アメリカがカンボジア領に攻撃を始めます。つまりカーツが行ったことと同じことを現実にアメリカ軍はしているのです。

その侵攻作戦には大義名分などなく、ただ作戦上必要だから行われたのですが、それはカーツの論理である“必要な軍事行動は果断に、無慈悲に、怯むことなくやりとげなければならない”ということと全く同じなのです。

カーツに共感していくなかでウィラードは、その偽善が剥ぎ取られた裸の戦争の論理そのものであるカーツを目の当たりにしたとき、カーツは共感できるものではなかったのです。

カーツ自身もまたニヒリズムと自己神格と原始的本能というもうひとつの偽善に塗り固められた存在だとウィラードは知ったのです。そして、子が父親を乗り越えるように王の持っていた論理(原始的本能)を乗り越え、道徳的判断によりウィラードはカーツを殺すことを決意します。

最後はイフガオ族の儀式に使われる水牛がカーツのいる祭壇の階段を降りていき、儀式と同時にカーツと水牛が殺されます。

このようにして、コッポラはベトナム戦争だけではなく大義名分のない戦争やテロリズムに対する一つの解を提示したかったのかもしれません。

またこの映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』IMAX版では、最後に寺院爆破シーンがないものになっています。寺院爆破シーンは画として美しく素晴らしいものではありますが、コッポラ自身が寺院爆破シーンは原住民の殺戮を意味している場面であり、描きたかった主題とは違うものになっていると言っています。

本作は映像がとても綺麗に修復されていて、迫力ある音響と合わせることで、ベトナム戦争の地獄を観客に体感させる映画となっていました。確かに上映時間が長く、難解ではありますが、大きなスクリーンで見るべき作品でしょう。

まとめ


(C)2019 ZOETROPE CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『地獄の黙示録 ファイナルカット』IMAX版はコッポラのセンスある編集とリアリズムあふれる映像美、そして緊張感溢れる映画体験を与えてくれる作品となっています。

そして『地獄の黙示録』という映画は、この記事だけでは語り切れないほどの素晴らしい重層構造や演出、編集、テーマがあります。本作を鑑賞することで色々と考察してみても面白いでしょう。

この機会に是非劇場に足を運んでご鑑賞ください。

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