Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2019/12/21
Update

映画『冬時間のパリ』あらすじネタバレと感想。オリヴィエ・アサイヤス監督が新作で描いたのは大人たちの会話劇

  • Writer :
  • こたきもえか

オリヴィエ・アサイヤス監督が新境地に挑んだ映画『冬時間のパリ』。

二組の男女の不倫が絡む恋なんてよく聞く話。

どうにもならないことが多いのが恋愛だけれど、それでも恋することの喜びや、可笑しさを魅力的に謳いあげるのがフランス映画の真骨頂。

2019年の冬の時期に同時に日本公開された、フランス流大人のラブストーリーのルイ・ガレル監督の『パリの恋人たち』に続き、オリヴィエ・アサイヤス監督の本作『冬時間のパリ』もパリからやってき大人ならではの恋愛模様を軽やかな刺激とともに与えてくれます。

スポンサーリンク

映画『冬時間のパリ』の作品情報


(C)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

【公開】
2018年(フランス映画)

【原題】
Doubles vies

【監督】
オリヴィエ・アサイヤス

【キャスト】
ギョーム・カネ、ジュリエット・ビノシュ、バンサン・マケーニュ、ノラ・ハムザウィ、クリスタ・テレ、パスカル・グレゴリー、ロラン・ポワトルノー、シグリッド・ブアジズ、リオネル・ドレー、アントワン・ライナルツ、ニコラ・ブショー、オレリア・プティ、オリビア・ロス


【作品概要】
監督はクリステン・スチュワート主演の映画『パーソナル・ショッパー』(2016)でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞、また『夏時間の庭』(2008)で知られるオリヴィエ・アサイヤス。主演は『ザ・ビーチ』(2000)『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(2018)、マリオン・コティヤールの夫でもあるギョーム・カネ。

『灼熱の肌』(2011)『夜明けの祈り』(2016)のバンサン・マケーニュ。そしての『ポンヌフの恋人』(1991)でヨーロッパ映画賞女優賞を、『トリコロール/青の愛』(1993)でヴェネツィア国際映画祭 女優賞とセザール賞主演女優賞を、『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)でベルリン国際映画祭銀熊賞とアカデミー助演女優賞を、『トスカーナの贋作』(2010)でカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞している世界三大映画祭を制した女優、ジュリエット・ビノシュとフランスの名優たちが集います。

『冬時間のパリ』あらすじとネタバレ


(C)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

電子書籍ブームの時代に順応しようと奮闘する敏腕編集者アランのもとを訪れたのは、長年担当している作家であり友人のレオナール。

レオナールは電子書籍や執筆の現代的なスタイルに否定的な考えを抱いています。

正直、レオナールの作風に飽き飽きしていたアランは新作の出版を拒否。しかし、アランの妻で女優のセレナはアランの作品を支持していました。

レオナールの妻は政治家の秘書ヴァレリー。アランとセレナは友人たちと電子書籍化の波や、現代の芸術のあり方について友人たちとも話し合います。

ある日アランは、勤務する出版社にオンライン化の担当者としてやってきた若い女性、ロールと一夜を共にします。

しかし、アランの妻セレナとレオナールは、6年もの間恋人関係にありました。レオナールの最新作『終止符』はセレナとの関係を基にしたもの。彼は以前も元妻との関係を私小説として出版したことがあり、ネットでは度々非難されています。

セレナは夫のアランに、レオナールの作品を出版するよう勧めていますが、アランはなかなか受け入れようとしません。

以下、『冬時間のパリ』ネタバレ・結末の記載がございます。『冬時間のパリ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク


(C)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

アランはロールと関係を持ちますが、電子化に多いに賛成の彼女におおいに頷けることはなかなかありません。

アランとヘレン、レオナールとヴァレリー二組の夫婦はパートナーの不倫をわずかに感知して不穏、曖昧な関係にあります。

会社の買収の話を持ちかけられたのちアランはイギリスに旅立つロールとは別れることにします。

ヘレンもレオナールと別れることを決め、彼に絶対この話は小説に書かないように言います。レオナールはヘレンと不倫関係にあったことをヴァレリーに告白しますが、彼女は小説に書いてあるから知っていると冷静な対応をみせました。

レオナールの最新作『終止符』も出版されたそのあと、四人はアランとヘレンの別荘で会います。

出版や仕事についての話を交わす、今は何事もない四人。ヴァレリーは二人っきりになった時、レオナールに妊娠していることを告げます。新しい幸せを噛み締める二人。

スポンサーリンク

映画『冬時間のパリ』の感想と評価


(C)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

本作『冬時間のパリ』の軸となるのは不倫の恋愛関係…と思いきや、会話の大半を占めるのはデジタル化が進む出版、変わりゆく小説をはじめとする芸術のあり方についての問答。

物質主義じゃないと言いつつも、その考えは自己愛だと言われてしまう小説家レオナール、現代のスタイルに順応しようと奮闘するもどうしても割り切れない編集者アラン。

また、成長を感じることがなくても長年続いている連続ドラマに出演し続けている女優のヘレン。問題を抱えている政治家の秘書として必死に支えているヴァレリー。

『夏時間の庭』のアサイヤス監督が描き出すキャラクターたちの生活、セリフはあまりにリアルで事細かく、それでいて説教臭さも媚びもないため、レオナールの小説のごとく「これはノンフィクションなのか?」と思ってしまうほどです。

「インターネットが書くことを自由にした」「ツイッターはたかだか短文だ」「でも何度も名文句を繰り返し書くのはフランス的だ、目新しいことじゃない」など、彼らの知的で洗練された会話に入りたくなってしまいます。

「変わらないためには変わらなくてはいけない」ルキノ・ヴィスコンティの『山猫』がくさいぐらいぴったりに引用される本作は、動きゆく時代に順応しようとする大人たちの物語ですが、恋愛関係、夫婦関係だけは、これからもこの4人のように曖昧で微妙なものなのではないかと感じさせてくれます。


(C)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

敏腕編集者を演じるギョーム・カネのスマートな魅力はもちろんですが、彼以上に存在感を発揮しているのはレオナールを演じるバンサン・マケーニュ。

起き抜けの姿のだらしなさ、ぽっちゃりした中年体型、薄くなった髪の持ち主で、自分の私生活や恋愛のことばかりを書き元妻や読者から批判を浴びているレオナール。

それなのに書くことに対する彼の思いは、時代の流れにそぐわずとも純粋で、憎めない愛おしさがこみ上げる不思議なダンディさなのです。

そして、いつまでも恋する気持ちを持ち、ウィットに富んだ言葉のキャッチボールを得意とする艶やかな女優ヘレンを演じるジュリエット・ビノシュは安定に素晴らしく、こんな女性でありたいと気持ちを軽やかにさせるパリの女性の魅力でいっぱいです。

まとめ


(C)CG CINEMA / ARTE FRANCE CINEMA / VORTEX SUTRA / PLAYTIME

何も突飛なことが起こらなくても懸命に仕事をし、男と女があり、言葉を交わし合う。それだけで気がついたときには一冊の本が仕上がっているかもしれない。

混じりけのない真実はいつも複雑そうに見えてストレート、シンプルなのに重みがあります。

映画『冬時間のパリ』は、ふっと心に問題を投げかけ、スクリーンと会話をさせ、愛する人の隣に並んで手をつなぎたくなる、“大人の微妙な恋模様”といたずらっぽくオススメしたくなる映画です。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『空母いぶき』キャストの新波歳也役は佐々木蔵之介。演技力とプロフィール紹介

累計400万部を突破する人気コミック作品・かわぐちかいじ原作の『空母いぶき』を実写化した映画が、2019年5月24日より公開されます。 監督は、『ホワイトアウト』『沈まぬ太陽』などで知られる若松節朗。 …

ヒューマンドラマ映画

松坂桃李映画『居眠り磐音』あらすじネタバレと感想。NHK版からのリブート作品の見所は

映画『居眠り磐音』は、2019年5月17日(金)よりロードショー! 時代小説累計6500万超えのベストセラー作家佐伯泰英の代表作『居眠り磐音』が初の映画化。 主人公の坂崎磐音に松坂桃李。共演に木村文乃 …

ヒューマンドラマ映画

映画『チア男子!!』キャストの坂東晴希役は横浜流星。演技力とプロフィール紹介

映画『チア男子!!』は2019年5月10日(金)ロードショー! 『桐島、部活やめるってよ』『何者』で知られる直木賞作家・朝井リョウが、実在する男子チアリーディングングチームをモデルに書き上げた『チア男 …

ヒューマンドラマ映画

映画『燃えよ剣』感想レビュー評価。原田眞人監督が問う‟土方歳三の敗者の美徳”

原田眞人監督×司馬遼太郎原作『燃えよ剣』近日公開 原田眞人監督が描く映画『燃えよ剣』は、武家政権の終わりを描いています。スポットが当たるのは、幕末に6年間だけ存在した史上最強の剣客集団“新撰組”の副長 …

ヒューマンドラマ映画

映画『オーバーナイトウォーク』あらすじと感想評価。女優になるために上京した妹と関西に残った姉が真夜中のボケツッコミな道行き

磯部鉄平監督作品が、アップリンク吉祥寺にてレイトショー公開 「大阪アジアン映画祭」インディ・フォーラム部門「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」「Kisssh-Kissssssh映画祭」など、さまざまな …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
映画『朝が来る』2020年10月23日(金)より全国公開
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学
国内ドラマ情報サイトDRAMAP