優しい私の父親は犯罪者だった――衝撃の実話を映画化
映画『フラッグ・デイ 父を想う日』が、2022年12月23日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショーとなります。
2度のオスカーに輝く名優ショーン・ペンが初めて自身の監督作に出演し、実娘ディラン・ペンと父娘役を演じたヒューマンドラマの見どころをご紹介します。
CONTENTS
映画『フラッグ・デイ 父を想う日』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Flag Day
【監督】
ショーン・ペン
【製作】
ウィリアム・ホーバーグ、ジョン・キリク、フェルナンド・サリチン
【脚本】
ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース
【原作】
ジェニファー・ヴォーゲル
【編集】
バルディス・オスカードゥティル、ミシェル・テゾーロ
【キャスト】
ショーン・ペン、ディラン・ペン、レジーナ・キング、ジョシュ・ブローリン、デイル・ディッキー、エディ・マーサン、ベイリー・ノーブル、ホッパー・ジャック・ペン、キャサリン・ウィニック
【作品概要】
アメリカのジャーナリスト、ジェニファー・ヴォーゲルが2005年に発表した回顧録を、アカデミー賞に2度輝くショーン・ペンが構想15年かけ、監督と主演を務めたヒューマンドラマ。
アメリカ最大級の贋作事件を起こした父ジョンと、その娘ジェニファーの家族愛を描き、ショーンがジョンを、ジェニファーをショーンの長女ディラン・ペンがそれぞれ熱演。
共演にレジーナ・キング、ジョシュ・ブローリン、エディ・マーサンのほか、ショーンの長男ホッパー・ジャック・ペン(ディランの実弟)も名を連ねます。
第74回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門に出品されました。
映画『フラッグ・デイ 父を想う日』のあらすじ
1992年、アメリカ最大級の贋札事件の犯人ジョン・ヴォーゲルが、裁判を前にして逃亡したというニュースが流れます。彼にはジャーナリストをしている娘ジェニファーがいました。
ジェニファーは、父の犯罪の顛末を聞き驚くも、「私は父が大好き」とつぶやきます。
史上最高額の贋札を非常に高度な技術で偽造したジョンとは、いったいどんな男だったのか?父の素顔を知っても愛情は変わらなかった娘との関係とは?
幼い頃から「平凡な日々を見違えるほど驚きの瞬間に変えた」父との想い出を、ジェニファーは回想していくのでした──。
映画『フラッグ・デイ 父を想う日』の感想と評価
ショーン・ペンとディラン・ペンの“父娘共演”
本作『フラッグ・デイ 父を想う日』は、アメリカでジャーナリストとして活躍するジェニファー・ヴォーゲルによる回顧録『Flim-Flam Man: The True Story of My Father’s Counterfeit Life(詐欺師:私の父の真実の物語)』を映画化したものです。
全米を揺るがす贋札事件の犯人だった父ジョンとの思い出をふり返る、ジェニファーの葛藤と家族の絆を丹念に描きます。
監督とジョン役を務めたのはショーン・ペン。『ミスティック・リバー』(2003)と『ミルク』(2008)でアカデミー賞主演俳優賞を獲得し、『インディアン・ランナー』(1991)、『プレッジ』(2001)など6本の監督作を手がけていますが、自身の監督作に出演したのは本作が初となります。
ジェニファーを演じるのは、ショーンと女優ロビン・ライトとの間に生まれた長女ディラン・ペン。面影が母ロビンとそっくりな彼女ですが、父とは本作が初共演。なおディランの弟で、若かりし頃のショーンと瓜二つなホッパー・ジャック・ペンとも初共演となります。
ショーンは当初、ジョン役をマット・デイモンにオファーするも、「ショーン自身が演じたほうがいいのでは」とマットから逆に薦められ、自ら出演を決意。そのためジェニファー役も、リアルで自然な演技の出来る俳優でなければならないとして、実娘ディランにオファーしました。
10代から30代までの、時代によって変化を遂げていくジェニファーを演じたディランは、父との仕事について「ものすごく強烈だった。父のおかげで弱さを見せ、本質的、そして感情的にありのままの自分を暴け出せた」と語るように、実の親子が起こす化学反応が、奥行きと深い余韻を与えています。
社会に適応できなかった「父」との思い出
4人家族で育ったジェニファーにとって、ジョンはいつも優しく、ショパンをこよなく愛する楽しい父でした。
タイトルの「フラッグ・デイ」とは、6月14日のアメリカ国旗制定記念日を指し、この日に生まれたジョンは、自分は生まれながら祝福されている者として、何事にも成功すると信じきっています。
しかし、定職に就かずに事業を興そうとして失敗したジョンは、借金を残して突如行方をくらまし、それにより母のパティは酒におぼれることに。やがて一家は破綻し、ジェニファーと弟のニックは伯父ベックの世話になります。
ショーン・ペンは、社会に適応できず疎外された者や、平凡な生き方に疑問を持つ者に強い思い入れを抱くフィルムメーカーです。監督デビュー作『インディアン・ランナー』ではPTSDを患いトラブルを起こすベトナム帰還兵、『イントゥ・ザ・ワイルド』(2008)では恵まれた環境を捨てて一人旅に出る青年クリスを、それぞれ主人公に据えました。
本作のジョンも、思い通りに行かず、何度も犯罪に手を染めてしまう人物。だからこそ、ショーンは光明を差し、寄り添います。
参考動画;映画『イントゥ・ザ・ワイルド』(2008)
またいつか、憧れだった父と一緒に暮らせることを望むも、成長するにつれ彼の実像を知っていくジェニファー。「パパは自分が肯定されたいときだけ姿を現すのよ」と反発し自立心が芽生えていく姿は、『イントゥ・ザ・ワイルド』のクリスと重なります。
しかし、完全に独り立ちしたはずなのに、心の底では父を完全に切り離すことができない――ジェニファーは、ショーンの代わりにジョンに寄り添います。
ショーンは父娘の関係を描くにあたり、「デジタルの画では時が過ぎゆく人生の美しさが欠けてしまう」として、ARRIのカメラとヴィンテージのレンズ、そして16ミリのコダック製の在庫フィルムで撮影。
「フィルムの感光乳剤は深みに加え、デジタルでは難しい懐かしさを提供してくれる」という撮影監督ダニー・モダーの言葉どおり、2人が生きてきた1970~90年代アメリカの原風景を再現しています。
まとめ
本作ジェニファーが幼い頃から貴い物としてきた、「平凡な日々を見違えるほど驚きの瞬間に変えた」父との想い出とは?
プロデューサーのウィリアム・ホーバーグは、原作であるジェニファー・ヴォーゲルの回顧録について「家族、愛、喪失、ウソへの真実の窓だと感じた」と振り返ります。
温かく正しいものだけがすべてではなく、不完全な人間への愛情もある。
2022年を締めくくるにふさわしい、観る者の心を掴む珠玉の一作です。
映画『フラッグ・デイ 父を想う日』は、2022年12月23日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。