2021年1月22日(金)映画『どん底作家の人生に幸あれ!』がTOHOシネマズシャンテ、シネマカリテほか全国順次公開されます。
映画『どん底作家の人生に幸あれ!』の原作は、2020年が没後150年にあたるチャールズ・ディケンズの代表作『デイヴィッド・コパフィールド』。
『スターリンの葬送狂騒曲』のアーマンド・イアヌッチ監督が手掛けて、ブラックユーモアあふれる作品に仕上がりました。
幸せな少年時代が母の再婚とともに一変。家を飛び出し都会の工場で強制労働をするデイヴィッド。あることがきっかけで、どん底人生から這い上がろうとするのですが……。
主人公デイヴィットは『LION/ライオン~25年目のただいま~』のデヴ・パテルが務め、奇人変人が続々出て来る楽しい作品となっています。
CONTENTS
映画『どん底作家の人生に幸あれ!』の作品情報
【日本公開】
2021年(イギリス・アメリカ合作映画)
【監督】
アーマンド・イアヌッチ
【脚本】
アーマンド・イアヌッチ、サイモン・ブラックウェル
【キャスト】
デヴ・パテル、アナイリン・バーナード、デイジー・メイ・クーパー、ヒュー・ローリー、ピーター・キャパルディ、ロザリンド・エリーザー、ティルダ・スウィントン、ベン・ウィショー、モーフィッド・クラーク、ベネディクト・ウォン
【作品概要】
文豪チャールズ・ディケンズの半自伝的傑作小説『デイヴィッド・コパフィールド』を『スターリンの葬送狂騒曲』(2017)の鬼才アーマンド・イアヌッチ監督が映画化。英国屈指の豪華なキャストで、ディケンズの波乱万丈ストーリーを描きます。
デイヴィッドを演じたのは、『LION/ライオン~25年目のただいま~』(2016)でアカデミー賞®にノミネートされたデヴ・パテル。伯母には、『フィクサー』(2007)でアカデミー賞®助演女優賞を受賞したティルダ・スウィントン。その同居人に、人気TVシリーズ「Dr.HOUSE -ドクター・ハウス-」のヒュー・ローリー。さらに「007」シリーズ最新作の公開も控えるベン・ウィショーなど、現代にふさわしいダイバーシティなキャスティングによって、奇人変人を嬉々として演じる豪華アンサンブルは見逃せません。また、イギリス・ヴィクトリア朝時代の上流家庭から最底辺まで、人々の暮らしぶりを再現した美術セットや衣装も見どころとなります。
映画『どん底作家の人生に幸あれ!』のあらすじ
デイヴィッド(デヴ・バテル)は少年の頃、周囲の“変わり者”たちのことを書き留めては、空想して遊んでいました。
優しい母と家政婦の3人で幸せに暮らしていましたが、暴力的な継父の登場によって人生が一変。都会の工場へ売り飛ばされ、強制労働をするハメになります。
しかも里親は、借金まみれの老紳士。歳月が過ぎ、ドン底の中で逞しく成長した彼は、母の死をきっかけに工場から脱走します。
たった一人の肉親である裕福な伯母(ティルダ・スウィントン)の助けで、上流階級の名門校に通い始めたデイヴィッドは、卒業後に法律事務所で働き始め、さらに令嬢ドーラ(モーフィッド・クラーク)と恋に落ち、順風満帆な人生を手に入れたかに見えました。
しかし、彼の過去を知る者たちによって、ドン底に再び引き戻されそうになります。
デイヴィッドの数奇な運命の行方は!? すべてを失っても綴り続けた、愛すべき変人たちとの《物語》が完成した時、彼の人生に“奇跡”が巻き起こります。
映画『どん底作家の人生に幸あれ!』の感想と評価
波乱万丈なデイヴィッドの人生をコメディタッチに表現
主人公のデイヴィッドは、心優しい母親と世話好きで気のいい家政婦ペゴディと幸せな暮らしをしていました。
そんなデイヴィッドの平穏な生活は、母親の再婚で大きく変化をしてしまいます。義理の父親は威圧的で気に入らないことがあると暴力をふるう人物。その姉は氷のように冷たい女性でした。
義理の父親に反抗したデイヴィッドは、家を追い出され、ロンドンの工場で働くことになります。「お坊ちゃん」だったデイヴィッドが、一気に貧乏人へ転落していく瞬間でした。
青年になるまでロンドンの工場で真面目に働き続けますが、継父とその姉から心無い言葉で母親の死を知らされた瞬間、デイヴィッドはこれまで耐えてきたものがプツンと切れてしまいます。
そして「自分にふさわしい人生があるはず」と言い放ち、唯一の親族である伯母を頼り、自分の人生を切り拓こうとしていきます。
一見変わった人だけれども心優しい伯母とそのいとこであるミスター・ディック(ヒュー・ローリー)と出会ったことで、デイヴィッドの人生は大きく変わっていきます。
貧乏のどん底で波乱万丈な人生を送るデイヴィッドですが、アーマンド・イアヌッチ監督は、おもしろおかしく描いています。
例えば、ロンドンの工場から逃げ出し、満身創痍で伯母の家に到着したデイヴィッドの場面。不審者だと勘違いし、自分の甥だと気付かない伯母に対して必死にアピールするデイヴィッドに、思わずクスッと笑ってしまいます。
そしてそこに登場する、伯母の家に同居しているミスター・ディック(ヒュー・ローリー)がからみ、「疲れ果てたデイヴィッドを前に、その会話?」とツッコミを入れたくなるような会話劇が繰り広げられます。
幼い頃から、自分のまわりにいる「変わった人」を観察しては、その人たちが放つ言葉をメモに書き留めていたデイヴィッド。
そんなデイヴィッドは、変わり者であるミスター・ディックと馬が合い、彼との間で交わされる会話がこの物語のエッセンスになっています。
デイヴィッドを取り囲む“癖の強い”人々
デイヴィッドのまわりに集まってくる「変わった人」は、ミスター・ディックだけではありません。
デイヴィッドが家を追い出され、初めてロンドンに来た時の下宿先の主、ミスター・ミコーバー(ピーター・キャバルディ)は借金まみれで、常に借金取りが押しかけてくる家でした。
妻と子どもたちと、借金の肩代わりにモノを取られないよう、息をひそめて暮らしているものの、実際のところは一癖も二癖もある人物。「こんな人生はもうウンザリだ!かみそりで首を切って死ぬ」というミスター・ミコーバーに「だったら私も一緒に死ぬ」と叫ぶ妻。
大騒ぎをしながらも、デイヴィッドが放ったある言葉で、あっさり態度を変える姿に苦笑いしてしまいます。
そして成長したデイヴィッドが初めて恋に落ちる女性、ドーラは、愛犬・シップだけに心を許している世間知らずのお嬢様。
シップを交えてデイヴィッドと会話をするドーラは、どう見ても少し変わった女性ですが、恋をしてしまったデイヴィッドは気にも留めず、彼女に合わせようとします。二人が繰り広げる会話もなかなかの見ものです。
デイヴィッドを幸せな気分にさせるドーラとは反対に、奈落の底へ突き落とすべく、虎視眈々と狙っている男の存在もありました。
裕福な伯母のおかげで、有名進学校へ通うことができたデイヴィッドの世話係・ユライア(ベン・ウィショー)です。
最初はこびへつらうのですが、デイヴィッドの出自を知るやいなや、じわじわと嫌がらせをする姿は、まるでヘビのよう。何を考えているか分からないところは変わった人というよりも不気味です。
こうした人たちを観察し、印象に残った言葉をメモして、彼らの口真似をするデイヴィッド。積み重ねてきたものが、デイヴィッドの人生を大きく変えるわけですが、そういうことができるデイヴィッド自身も「変わった人」の部類に入るのでは…と感じる人も少なくないかもしれません。
まとめ
デイヴィッドが生きた時代は、ヴィクトリア朝時代のイギリスですが、本作ではその時代の雰囲気をうまく映像で表現しています。
少年時代に働いた工場の暗い雰囲気を出したかと思えば、美しい海岸線や草原、紳士・淑女たちが着る衣装に至るまで、「チャールズ・ディケンズが生きた時代はこうだったのだろう」と思いを馳せることができます。
不遇な時でも、自分のまわりにいる変わった人たちをネタに、空想をしてきたデイヴィッド。
それが文豪・チャールズ・ディケンズを生み出したのだと思うと、何が人生を変えるか分からないものだなあとしみじみ思います。
物語のラスト、デイヴィッドが少年時代のデイヴィッドに語り掛けるある言葉が、胸にズシンと響くことでしょう。
映画『どん底作家の人生に幸あれ!』は、2021年1月22日(金)TOHOシネマズシャンテ、シネマカリテほか全国順次公開。