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Entry 2019/06/23
Update

サーフィン映画『ブレス あの波の向こうへ』感想評価と内容解説。サイモン・ベイカーが俳優のみならず監督に挑む

  • Writer :
  • 増田健

『ブレス あの波の向こうへ』は2019年7月27日(土)より、新宿シネマカリテほか全国ロードショー!

オーストラリアで最も栄誉ある、マイルズ・フランクリン文学賞を受賞した、ティム・ウィントンの自伝的小説である「ブレス 呼吸」。

その話題を作品をテレビドラマ『メンタリスト』の主演で、世界的な人気を獲得している俳優サイモン・ベイカーが、自ら出演しつつ監督も務め映画化しました。

1970年代のオーストラリア西南部の小さな街を舞台に、サーフィンの魅力に見せられた少年の姿を描いた作品で、演技初挑戦ながら主役を演じた撮影時15歳のサムソン・コールターの、みずみずしい姿も注目を集めた作品です。

本国オーストラリアで5週連続トップ10を記録した大ヒット映画『ブレス あの波の向こうへ』をご紹介いたします。

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映画『ブレス あの波の向こうへ』


(C)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd

【日本公開】
2019年7月27日(土)(オーストラリア映画)

【原題】
Breath

【監督・脚本】
サイモン・ベイカー

【出演】
サイモン・ベイカー、エリザベス・デビッキ、サムソン・コールター、ベン・スペンス、リチャード・ロクスバーグ、レイチェル・ブレイク

【作品概要】
スリルを求めサーフィンに出会った少年。様々な体験を通し成長する彼の姿を通して、多感な青春時代を描いた映画です。

原作小説を映画化する話を聞き、原作に惚れこんだサイモン・ベイカーが出演だけでなく、作者のティム・ウィントンと共に脚本を執筆し、自ら監督した初の長編映画となりました。

2018年オーストラリア・アカデミー賞の9部門にノミネートされるなど、高い評価を得ている作品です。

映画『ブレス あの波の向こうへ』のあらすじ


(C)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd

1970年代、オーストラリア南西部の街で、読書好きで内向的な少年パイクレット(サムソン・コールター)は、正反対の性格で無鉄砲な友人ルーニー(ベン・スペンス)を追うように、2人で刺激を求めて冒険に明け暮れる日々を送っていました。

ある日彼らは、ミステリアスな雰囲気を持つ人物、サンドー(サイモン・ベイカー)に出会い、サーフィンを教えてもらう事になります。

かつて伝説的なサーファーとして活躍したサンドーは、2人を連日のように海にいざないます。彼の導きで、サーフィンの持つ魅力のとりこになってゆく少年たち。

次々と大きな波に挑戦するうちに、互いにライバル心を抱くようになったパイクレットとルーニー。2人はいつしかサンドーを、人生の師として仰ぐようになります。

サンドーの家に出入りする2人は、どこか影を感じさせる彼の妻、イーヴァ(エリザベス・デビッキ)の態度の中に、秘められたものが潜んでいると気付きます。

そんな折、ある出来事によってパイクレットは、自分の生き方をサンドーとルーニーに対峙させる事になります。

パイクレットは様々な出来事を経験し、その記憶と共に成長していきます…。

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映画『ブレス あの波の向こうへ』の感想と評価


(C)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd

大自然の美しさと荒々しさを描くサーフシーン

輝く太陽の下に青い波、白く渦巻く泡。その中を進む華麗に進む、サーファーの姿

サーフィン映画と言えば、誰もがこの様なシーンをイメージするでしょう。この作品でもサイモン・ベイカーと、サーフィンの腕を買われて映画に初出演した、サムソン・コールターとそしてベン・スペンスの姿が描かれています。

ところがこの映画の見所は、美しく爽快に描かれた、華麗なサーフシーンだけではありません。

巨大な波を求めて沖へとボートを進め、灰色の空の下で荒れ狂う波に挑む。激しい自然と対峙し、それに挑むサーファーの姿を描いています

映画では波に呑まれ、水中に沈むサーファーの姿も描いています。サーフィンのシーンに限らず、幾つか象徴的に登場する水の中のシーン。スリルを味わう魅力的な体験は、時に死につながり兼ねない、危険な行為である事を描いています。

サーフシーンや水中シーンを手がけたのは、『ドリフト』など多くの作品でサーフ撮影を担当している水中カメラマンの名手、リック・リフィチです

これらのシーンと相対するように描かれる、主人公パイクレットの日常にある静かなシーンを通じて、大人になってゆく少年の姿を巧みに表現しています。

スリルと危険に魅かれた少年が大人へと成長する姿


(C)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd

主人公パイクレットを演じる、新人サムソン・コールターの姿が話題となってるこの作品。

彼と主人公の友人、ルーニーを演じるベン・スペンスは、この映画のために行われたサーフィン経験者を対象とする、オーディションを経て選ばれた新人です

映画は彼がサーフィンを通じてスリルと危険に向き合い、今まで知らなかった大人たちと出会い、その体験を通じて成長してゆく姿を描きます。

それは無邪気にスリルに憧れていた少年が、改めて自分自身と向き合い、今まで家族と共にあった日常の価値に気付いてゆく過程でもあります。

パイクレットが自分の道を歩み始めるのと同様に、サーフィンとの出会いから、新たな道を突き進んでゆくルーニー。

2人の少年の成長に、サイモン・ベイカー演じるサーファー、サンドーがどの様に関わっていくのでしょうか。

『ブレス あの波の向こうへ』はサーフィン映画であると同時に、少年が大人へと変化してゆく姿を描いた、優れた青春映画でもあります。

そしてサムソン・コールターはサーフシーンだけでは無く、多感な青春時代を表現した姿でも、見事な演技と存在感を披露しています

優れた物語を生み出したサイモン・ベイカー


(C)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd

「ブレス 呼吸」を映画化する話が持ち込まれた際、原作小説を読んでその魅力に取りつかれたサイモン・ベイカー

プロデューサーから、監督する事を持ちかけられ喜んで引き受けますが、人気のTVドラマ『メンタリスト』の撮影中に映画を監督する事は不可能でした。

そこでサイモン・ベイカーは『メンタリスト』の最後の1年半は、ドラマの出演と平行して『ブレス あの波の向こうへ』を監督する準備を整えていきます

この準備期間に、サイモン・ベイカーは原作者ティム・ウィントンと会い、意気投合して2人で脚本の執筆にあたります。

過去の作品に戻り、映画のために手を加えるのは、作者にとって稀な経験であったとティム・ウィントンは語っています。

こうして2人の共同作業を行い、原作から何を削り何を残すかを検討し、情報を圧縮し順序を入れ替える作業を行い、映画の脚本を完成させました。

脚本の製作過程でティム・ウィントンは、実に寛容で協力的であったと、サイモン・ベイカーは語っています。

青春映画としても優れた映画であるこの作品は、この様な過程を経て誕生しました。なおティム・ウィントンはこの映画に、ナレーションとして登場しています。

まとめ


(C)2017 Screen Australia, Screenwest and Breath Productions Pty Ltd

伝説のサーファー・サンドー役として出演を果たし、同時にサイモン・ベイカーにとって、初の長編映画監督作品となった『ブレス あの波の向こうへ』

彼はTVドラマ『メンタリスト』や『墜ちた弁護士~ニック・フォーリン~』でも、数話で出演と監督を同時に務めた経験があり、その経験が映画に生かされています

演技初挑戦のサムソン・コールとベン・スペンスから、魅力ある演技を引き出したのは間違いなく彼の功績です。

この3人がオーストラリアの海原で、体当たりで挑む様々なサーフシーンは当然ながら見所の一つ。水中カメラマン、リック・リフィチによって迫力あるシーンに仕上がっています。

大ヒットしたこの作品は、2018年オーストラリアで公開されたインディーズ映画部門では、1位となる興行成績を記録しています。

サイモン・ベイカーのマルチに発揮された才能と、彼に見いだされた新人・サムソン・コールの、フレッシュな演技に注目して下さい

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