伝説のバンドQUEENが、史上最高のエンターテイナー、フレディ・マーキュリーがスクリーンに蘇る!
完成までに8年を費やし、ついに誕生した音楽伝記映画の傑作。数々の名曲、見た目だけでなく動きや癖までフレディを再現したラミ・マレックの鬼気迫る演技。
2018年に劇場で見るべき映画『ボヘミアンラプソディ』を楽曲と物語の関連性について解説していきます。
CONTENTS
映画『ボヘミアンラプソディ』の作品情報
【公開】
2018年(イギリス映画)
【原題】
Bohemian Rhapsody
【監督】
ブライアン・シンガー
【キャスト】
ラミ・マレック、ルーシー・ボーイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョセフ・マッゼロ、エイダン・ギレン、アレン・リーチ、トム・ホランダー、マイク・マイヤーズ、アーロン・マカスカー
【作品概要】
伝説のロックバンド「QUEEN」。リードボーカルにして”史上最高のエンターテイナー”と呼ばれたフレディ・マーキュリーの半生を描いた映画。
ひとりの男が才能の代償として孤独な人生を送り、そして居場所を見つけるまでの物語でもあり、そんな天才を見守り、愛した人々の物語です。
映画『ボヘミアンラプソディ』のあらすじとネタバレ
1985年7月13日、20世紀最大のチャリティライブイベント「ライブエイド」当日。
「QUEEN」のボーカル、フレディ・マーキュリーは目を覚ますと身支度をし、会場のウェンブリースタジアムに向かいます。
フレディの出番となり、お馴染みのタンクトップ姿になると、ウォーミングアップをして大観衆の前へと飛び込んでいきます。
時代は遡り1970年。
インド系イギリス人のファルーク・バルサラ青年は空港で荷物運びの仕事をしていました。彼は帰宅すると家族との食事も取らず、近所のライブハウスに向かいます。
父親に夜遊びばかりしていることを咎められ、「将来を考えろ。善き行いをしろ!」と諭しますが、ファルークは「それを守っていいことあった?」と反論します。
彼はその頃自分のことを”フレディ”と呼び始めていました。
ライブハウスに行くと「スマイル」というバンドが演奏をしており、彼らに興味を持ったフレディは、ライブ終了後、バンドメンバーを探します。
ライブハウスにいた女性に「スマイル」の居場所を尋ねると、店の裏にいるのではと答えます。
彼女の名はメアリーといい、美しい彼女にフレディは心を奪われます。
一方スマイルのギターのブライアン・メイとドラムのロジャー・テイラーは、ボーカルがもっと有望なバンドに行くと脱退してしまい途方に暮れていました。
そこにフレディが現れると、自身が書いた歌詞カードを渡し、「代わりのボーカルなら俺はどう?」と言います。
ロジャーはフレディの顔を見て「その出っ歯じゃ無理だろ」と笑いますが、彼はその場で素晴らしい歌声を披露し「歯が出ている分、口が広くて音域が高い」と言い、ブライアンもロジャーも彼を気に入ります。
フレディはメアリーとも親しくなり、彼女が働いている服屋に行き、女性ものも含めていろんな衣装を試します。
次のライブからベースのジョン・ディーコンも加わり、新生スマイルの活動が始まります。
フレディはアートスクールで芸術を学んでおり、ブライアンはロケット工学者、ロジャーは歯医者の資格を持ち、ジョンは電気技師のスキルを持つインテリの異色なバンド。
彼らは斬新なパフォーマンスで人気になっていきます。それから1年後、フレディの発案でバンド名は「QUEEN」に変わっていました。
またフレディは、メアリーと恋人になり、数匹の猫と一緒に同居していました。
フレディの提案でバンドの移動に使っていた車を売り、そのお金でファーストアルバム『戦慄の王女』を収録するQUEENメンバー。
彼らはドラムやピアノの上にコインをばら撒いてそれが跳ねる音を収録したり、音を左右に振ったり斬新な手法を試します。
その後、フレディはメアリーと彼女の父、バンドメンバーを実家に招きます。
メアリーの父は聾者で手話を使っていました。
そしてフレディがインド系の出身だということを初めて知る一同。
父親は「更正させようとボクシングなどを習わしたがダメだった」とぼやきます。
フレディは話を遮るように「ハッピーバースデートゥーミー、ハッピーバースデーMr.マーキュリー!」と歌い出します。
彼は芸名ではなく正式にフレディ・マーキュリーに改名していました。
父親は「違う誰かになろうとしても無駄だ!」と言いますが、パーティの最中に電話がかかってきます。
エルトン・ジョンを有名にした実績を持つ名プロデューサー、ジョン・リードがQUEENのアルバムのデモを聞いて連絡してきたのです。
リードとの初顔合わせ。彼はメンバーたちにメディアへの露出を約束しますが、フレディはさらにその先を見ていました。
この日はバンドの実質的サポート役となるポール・フレンターも同席していました。
国営放送BBCの音楽番組の音楽番組に出演しますが、彼らは口パクでパフォーマンスさせられます。しかし、そこで披露した「キラークイーン」が注目されてQUEENは大人気となりました。
1975年フレディはある朝メアリーに指輪を見せて「結婚してくれる?」と告げ、メアリーは快諾しました。するとそこにブライアンたちがやってきてある報告をします。なんと、米国ツアーが決まったのです。
全米各地を巡り、どこでもツアーは大成功。フレディはライブのことなどを国際電話でメアリーに話していました。
しかし彼は、電話の途中で前を横切った男性が男子トイレに入っていく姿を、なぜか目で追ってしまいます。
その後、帰国すると彼らは、名プロデューサーのレイ・フォスターのもとで次のアルバムを作ることになりました。
レイに「キラークイーンのような曲を作ってくれ」と要求されますが、メンバーたちは「同じことはやらない」と述べ、フレディは「次はオペラ級の曲を作るんだ」と宣言します。
そこでQUEENの弁護士を務めることになる、ジム・ビーチもチームに加わります。
ウェールズの田舎のスタジオに泊まり込みでアルバム「オペラ座の夜」の収録が行われました。
一人一人が作詞作曲をするバンドゆえに各曲に出来不出来があり、お互いに指摘しあうことでさまざまな衝突がありますが、次々と楽曲は完成していきます。
ある夜、フレディはメアリーに捧げるために書いたラブソング「LOVE OF MY LIFE」を作っていましたが、その時、そばで聞いていたマネージャーのポールが急にフレディにキスをします。
フレディは「勘違いするな、君はただの仕事仲間だ」と言いますが、満更でもない表情を浮かべていました。
別の日の朝、フレディは目玉となる「ボヘミアンラプソディ」の歌詞をピアノで弾き語りしていました。
「ママ、ぼくは人を殺してしまった」「生まれてこなければよかったと思うこともある」と歌うと、フレディはハッとした表情を浮かべ歌を中断します。
その後、各人のコーラス、楽器パートを収録し、サビも歌い、オペラとバラードとロックンロールが融合し曲の展開で様々な表情を見せる唯一無二の名曲「ボヘミアンラプソディ」が完成しました。
しかしプロデューサーのレイの反応は芳しくありません。
「6分もあってこんなわけのわからない歌詞の曲はラジオにかけられないし、売れない!」と、彼は他の楽曲を目玉にしようとしますが、メンバーは反対。ビーチとポール、リードもQUEEN側につきます。
彼らは、結局レイの支援を受けず彼の元を離れます。
知り合いのラジオDJケニー・エヴェレットの番組に出たフレディは、発売されてもいない「ボヘミアンラプソディ」をゲリラ的に放送します。
評論家や雑誌等のメディアからはボロクソに叩かれますが、翌年1976年には「ボヘミアンラプソディ」は、大人気の楽曲となっていました。
世界各地でライブを行い、QUEEN人気はどんどん高まっていきます。
フレディとポールの関係は、徐々に深まっていましたがフレディは変わらずメアリーを愛していました。
ある夜久しぶりに家に戻れたフレディは、とあるライブで観客が「LOVE OF MY LIFE」の出だしとサビを歌ってくれた映像を見せながらメアリーにその時の喜びを語ります。
しかしメアリーの表情は暗いものでした。
「何か私に隠しているでしょ」と言われたフレディは、「ぼくはバイセクシャルだ」と告白しますが、メアリーは「あなたはゲイよ」と言い放ちます。
メアリーがそのまま指輪を外そうとしたため、フレディは必死で止めます。彼女に「私に何を望むの?」と聞かれ彼は「君のすべてだ」と答えます。
メアリーは「これからは辛い道のりになるわ」と言いました。
1980年、フレディはメアリーと離婚して、豪邸に愛猫達と暮らしていました。
メアリーはフレディがプレゼントした隣の家に住んでおり、時折電話をしていましたが彼女の反応はどんどん冷たくなっていきました。
フレディはかつてのロン毛で派手な衣装から、角刈りで上半身裸かタンクトップのみでパフォーマンスするスタイルに変わっており、ゲイっぽくなったとロジャーから指摘されます。
フレディ以外のメンバーは家庭を持ち子供もいました。
ある晩フレディはポールに頼んで、自宅でメンバーやその家族、業界人やポールと知り合いのゲイと様々な人々を呼んだパーティを開きます。
しかし、とことん騒いで踊ろうというフレディを尻目にメンバーたちは、早々に家に帰ってしまいました。
メンバーたちは、フレディと親密になり、バンドのことにも口を多く挟んでくるようになったポールを疎ましく思っていました。
パーティが終わり、フレディは家の片付けをしているウェイターが気になり、彼のお尻を触ってしまいます。
最初は拒絶したウェイターでしたが、数時間後にはフレディと親密になっていました。
彼はジム・ハットンという名前だけ教えて去り、フレディは後々もジムのことを忘れられなくなっていきます。
フレディは曲作りの際にスタジオに遅刻することが多くなっていました。
ある日、いつまでたってもやってこないフレディに業を煮やしたブライアンは、ロジャーとジョン、彼らの奥さんもステージに上げて「この間のライブは観客が歌ってくれて最高だった。本格的に観客が歌える曲を作ろう」と言います。
ブライアンはみんなに2回足踏みしたあと、手拍子を1回するという動作を繰り返させ、どんどんその場が盛り上がっていきます。
そこにフレディがやってきて、遅刻を詫びたあと、曲の趣旨を聞き「歌詞はどうする?」と聞きました。
しばらく立ち、QUEENの新曲「ウィーウィルロックユー」は大人気でライブの定番曲になっていました。
とあるライブ後の打ち上げでポールとリードは、QUEENの絶好調ぶりを喜んでいました。そこでポールが「じつはフレディにソロデビューの話が来ている。」と打ち明けます。
打ち上げにはメアリーも来ていましたが、新しい彼氏を連れてきており、フレディは複雑な表情を浮かべます。
リムジンで帰る途中、リードはフレディに破格の契約金でソロデビューの話が来ていることを言いますが、「バンドを解散しろというのか!」とフレディは激怒。
リードはフレディをたしなめ「ポール、君からも言ってくれ」と述べると、ポールは「一体何の話だ」とシラを切ります。
フレディはリードをその場でクビにして車から降ろします。リードは「気をつけろ、裏切り者は他にいる」と言い捨てました。
2人きりになった社内でフレディは「バンドは家族だ」と言います。しかしポールは同じセクシャリティを持つものとして彼の孤独を見抜いていました。
後日、フレディは、勝手にリードをクビにしたことをロジャーに責められ、彼は軽く謝罪したあと、次のマネージャーはビーチにすること、次の曲はディスコ調にすることを宣言します。
ロジャーは「勝手に決めるな!それにそんな曲QUEENらしくない!」と言いますが、フレディも「”らしさ”は俺が決める!」と怒鳴り返します。
ブライアンは2人を仲裁しようとしますが止まりません。しかし、そこでずっとベースをいじっていたジョンが耳に残るフレーズを弾き始めます。
フレディはそれが気に入り、フレーズの繰り返しを基に曲を作り始めました。
ジョン作曲の新作「地獄へ道連れ」は今までとは違うディスコ調の曲で人気になります。
サビで「またひとり死んだ」「また一人死んだ」とくり返し歌うフレディ。
その頃、フレディはポールに連れられてゲイコミュニティに入り浸っていました。
そして時期を同じくして、当時まだ原因のわからないエイズという病気が、同性愛者の間で流行りだしていたのです。
フレディは破滅への道を歩み始めていました。
メンバーたちもライブ中でさえフレディに対する態度がよそよそしくなっていきます。
1982年の新作アルバム発表記者会見でフレディはマスコミからアルバムとは関係ない出自やコンプレックスの出っ歯、セクシャリティのことを聞かれ、苛立って乱暴な返答を繰り返します。
家からメアリーに電話をしても彼女は反応しなくなっていました。
ある日、フレディはメンバーたちを呼び出し「アルバムを出してはツアーの繰り返しのバンド活動は飽きた。」といい、ソロデビューの契約をしたことを話します。
彼はQUEENを脱退するわけではなく、成長したいだけだと言いますが、ロジャーは「空港にいたのを拾ってやったのに!」と怒鳴ります。
フレディは「お前らこそ、俺がいなけりゃただの歯医者に天体学者に電気技師だ」と言い返しますが、ブライアンは彼に「君が思っている以上に、君には俺たちが必要だ」と言います。
フレディは「俺には誰も必要ない」と言って部屋を出て行き、彼らは決別してしまいました。
映画『ボヘミアンラプソディ』の感想と評価
本作はとにかく伝説のバンドQUEENの名曲がたくさん使われています。
それはただのファンサービスではなく、要所要所で物語と呼応するように使われていました。
「愛にすべてを/Somebody to love」
映画予告編で印象的に使われていた名曲の数々を抑えてOPはこの曲。
ライブエイドに向かうフレディの背中を捉えながら流れる「誰か、俺に愛すべき誰かを見つけてくれないか」「俺は毎朝鏡を見て死にたくなる」と高らかに歌い上げる美しいメロディ。
この映画はフレディが「自分のコンプレックスとも向き合い」「愛すべき誰か」を探す物語だというのをOPで提示しながら彼が一人ぼっちでステージに向かう姿を映します。
そして終盤では同じくフレディがステージに向かう所を捉えながら、同一画角に他のメンバーもいるというシーンの呼応のさせ方をしています。
円環構造でフレディがバンドの仲間という「愛すべき誰か」を見つけたことを表すとても感動的な演出がされています。
またジム・ハットンの家を探し当てるシーンで同じ曲が流れており、ジムも「愛すべき誰か」であることが表現されています。
「Love Of Mylife」
この曲はフレディが終世愛したメアリー・オースティンに捧げたものだと言われています。
劇中でもそのように描かれていますが、シーンでの使われ方は非常に皮肉です。
「オペラ座の夜」を作る際の合宿でフレディが1人でこの曲を作っていますが、その際に彼は初めてポールにキスをされ、そこから彼女との関係が崩壊するきっかけが生まれています。
メアリーとフレディが決別することになる夜のシーンでもライブ映像を流す形でこの曲が使われていますが、この場面では肝心の「君は僕の全てだ」や「僕のもとを去らないで」という部分はフレディではなく観客が歌っているのです。
この演出によって「フレディの思いがメアリーに伝わっていない」「メアリーはただフレディからの愛が欲しかったのにそれが叶わない」ということをあらわすシーンとなっています。
「ウィーウィルロックユー」
この曲が生まれるシーンではスタジオでみんなで足踏みをしていますが、他のメンバーが奥さんと一緒にやっているのに対し、フレディだけが1人で彼の孤独を表しています。
歌詞の意味は「今町でくすぶっている若者たちよ、お前たちを揺さぶってやる」という内容。
観客たちへのメッセージ性も強いですが、劇中でフレディがこの歌を熱唱している時は、家庭を作って安寧し始めているメンバーたちに再度火を付けようとしているようにも見えます。
作詞作曲ともにブライアン・メイですが、それでもフレディの魂の叫びのように聞こえてしまうのがQUEENの特徴でもあります。
「地獄へ道づれ/Another one bite a dust」
ベースのジョン・ディーコン作曲でクイーンの楽曲の幅広さを象徴する一曲。
「また一人、また一人死んだ」という内容の歌詞はポールの影響で、ゲイコミュニティに行くようになったフレディがエイズとなり、どんどん亡くなっていく仲間たちの姿を見ている場面に重なります。
そしてフレディ自身も「地獄へ道づれ」にされそうになっていきます。
「リヴ・フォーエヴァー/Who Wants To Live Forever」
フレディがエイズの診察を受け、エイズに苦しむ人々をテレビで観る場面がありそこでこの曲は流れます。
「俺たちにはもう時間が残っていない」「永遠に生きていたい人間なんているのだろうか」
自分の余命を悟り、そして命を燃やしながらライブエイドの舞台へ挑むフレディの決意、自分と同じく苦しむ人々のために立ち上がることを表す場面になっていました。
ライブエイドでの伝説の20分間
再びQUEENのメンバーが絆を取り戻して挑むライブエイドの舞台で演奏されるのは以下の4曲。
実際のライブエイドでも演奏されている曲ですが映画を通してみるとしっかり作品的メッセージが盛り込まれているように見えます。
映画の演出ではなく元々フレディの人生が歌詞に込められているのがQUEENの曲の凄さであり愛される理由です。
1曲目「ボヘミアンラプソディ」
QUEENの曲の中でも最も有名かつ難解だと言われる一作。
昨今の説では「ママ僕は人を殺してしまった」という出だしは、インド人のファルーク・バルサラという出自を捨てて、音楽の道に行くため別人になったフレディ本人を指したことだと言われています。
本作でもフレディが名前を変えていく過程が段階を踏んで描かれています。
そしてライブエイドで演奏されるのはフレディのピアノソロパートのみ。
「ママ僕は人を殺してしまった」から「生まれてこなければよかったと思うこともある」というパートまでの部分の歌詞は、1973年に作られた曲にもかかわらず、エイズで死期を悟っている1985年のフレディの状況や心境に驚くほどシンクロしています。
そして「ボヘミアン」という言葉には”放浪的な生活をする人(寄る辺のない人)”という意味もあります。
これはフレディ自身のことであり、彼の歌に感動した同性愛者たちや、その他のマイノリティたちのことでもあります。
フレディは長い放浪の果てにバンドという家族やメアリー、ジム、再び自分を受け入れていくれた家族という寄る辺を見つけるのです。まさにこの映画のタイトルになるべき一曲です。
2曲目「レディオ・ガガ」
ラジオの思い出、ラジオへの愛を叫び、「君はまだやれるんだよ、まだみんな君を愛しているよ」とラジオを鼓舞する歌です。
ラジオで名声を高めたQUEENらしい曲ですし、ラジオをQUEENというバンドに置き換えるとよりグッとくる内容です。
そしてロジャー・テイラーが作った初のヒット曲でもあります。
3曲目「ハマー・トゥ・フォール」
ブライアン・メイ作詞作曲。フレディを演じたラミ・マレックはこの曲が一番好きなそうです。
明るい曲調ですが歌詞は「ハンマーが打ち下ろされる時を僕らは、ただ待っている」「もう一度やり直させてくれ」。
この曲もフレディの死を予見させる内容になっていますが、フレディはこの曲を満面の笑みで全力で歌い上げています。
「僕らはただ叫びたいだけ」というフレーズがあり、この場面でのフレディの心情も表しています。
最終曲「伝説のチャンピオン/We are the champions」
映画の締めに相応しい名曲。「代償は払ってきた。屈辱も味わった。」「これは全人類への挑戦状だ」。
そして会場全員で「俺たちは勝者だ」と歌い上げます。
フレディの苦難の人生を表し、そして虐げられてきたマイノリティを鼓舞する歌です。
代償はエイズなどの自分の破滅、挑戦状は自らのセクシャリティ。しかしそれでも自分だけではなく「”俺たち”は勝者だ」と叫び、観客への感謝も述べます。
本作の予告編でも印象的に使われる「確かに伝説だ、”俺たちがね”」というセリフも、この楽曲にかかっています。
これを歌い終わったあとフレディは、ファンに感謝と別れを告げ、メンバー3人を振り返って見つめます。
彼が大事に思っているものがはっきりわかる忘れがたいラストです。
ライブエイドシーンの映画ならではの見所としてはフレディがパフォーマンスをしている時のメンバーたちや袖の人たちの心底嬉しそうな顔や、客席にたくさんの同性愛者がいるのをしっかり描写しており、より感動が増すようになっています。
エンドロールの2曲
エンドロールで流れるのは「ドント・ストップ・ミー・ナウ」と「ショー・マスト・ゴー・オン」。
フレディがその後エイズで死んだことを字幕で出しながらも、「俺は今最高に楽しいから止めてくれるな」とノリノリで歌う彼を映して爽やかな印象を与え、最後はフレディが1991年の死の淵にいた状態で作られた「ショー・マスト・ゴー・オン」で「それでも命ある限り舞台に立つんだ」というメッセージを伝えてきます。
そしてフレディが死んでもQUEENは終わっていないという意味にも取れます。
エンドロールの選曲ですらストーリー性があり最後までぐっときます。
まとめ
フレディを演じたラミ・マレックはインタビューで、フレディの曲に通じるテーマを聞かれ「間違いなく愛だ」と答えています。
本作『ボヘミアンラプソディ』を観ると、歌を通して彼は愛を求めていることがわかります。
そして愛を追い続けるフレディの物語を描くために、「彼の遺志を守るため」に、ブライアン・メイとロジャー・テイラーが音楽すべてを監修しているというのも感動的でした。
QUEENファンの方は既にもう見に行かれているでしょうが、そうでないQUEENのことを知らない人も楽しめて、魂を揺さぶられること間違いなしの大傑作です。