性差別撤廃に奮闘した女性弁護士ルース・ベイダー・ギンズバーグの伝記映画『ビリーブ 未来への大逆転』。
泣く子も黙る法曹界のレジェンドであり、女性解放運動のパイオニアでもある女性、ルース・ベイダー・ギンズバーグの半生を描く作品です。
性差別撤廃への大きな一歩として、歴史的判決となった名高い裁判を彼女は一体どのようにして闘ったのか。
ルースの強い信念と不屈の精神が彼女を支える夫や娘の家族愛とともに描かれています。
映画『ビリーブ 未来への大逆転』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
On the Basis of Sex
【監督】
ミミ・レダー
【キャスト】
フェリシティ・ジョーンズ、アーミー・ハマー、ジャスティン・セロー、サム・ウォーターストーン、キャシー・ベイツ
【作品概要】
86歳となった現在もアメリカ最高裁判事として活躍するルース・ベイダー・ギンズバーグの伝記映画。学生時代から彼女が挑む歴史的な裁判までを描いています。
ルース役には『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、『ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー』でもヒロインを好演したフェリシティ・ジョーンズが抜擢。
彼女を支える夫マーティンを『君の名前で僕を呼んで』であのティモシー・シャラメが恋するセクシーな大学生役だったアーミー・ハーマーが演じます。
映画『ビリーブ 未来への大逆転』のあらすじとネタバレ
若かりしルースがハーバード法科大学院に入学した1950年代。当時、500人の生徒のうち女性は、たったの9人。女子トイレすらありませんでした。
授業での発言は一蹴され、学部長の家に招かれた際には「男子学生の席を奪ってまで入学した理由は?」などと聞かれるありさま。
それでも、彼女はその場で波風立てず、帰宅後に同じ学校で学ぶ夫のマーティンに不満を聞いてもらうのでした。
在学中には2人の間に娘が生まれますが、家事や育児をサポートしてくれるマーティンのおかげでルースは勉強を続けられました。そんなルースの良き理解者でもある彼がある日、精巣がんを発病します。
その間、ルースは看病や子育てをしながら自分の授業と彼の授業どちらにも出席し、彼のためにノートを取ったりレポートを代筆したりします。
ルースの献身的な支えあって、無事に治療を終えたマーティンは卒業後ニューヨークの法律事務所に就職が決まりました。
彼女は夫の身体を心配し、ついて行くことを決意。学部長の反対を押し切り、在学中のハーバードからニューヨークにあるコロンビア大学へ移籍します。
コロンビア大学でも学業に励み、主席で卒業したルース。しかし、女性で母親がユダヤ人という理由でどこの弁護士事務所も彼女を雇ってはくれないのでした。
仕方なく彼女が選んだのは、ラトガース大学教授の道。
大学では熱心に性差別に関する講義をします。家では反抗期でもある娘のジェーンと上手くいっていない様子。そんなある日、出席したパーティーでマーティンの上司から言われた言葉に腹を立て、パーティーが終わるとマーティンと言い争いになります。
そこで、これまで我慢してきた思いが爆発するのです。教授の何が不満なんだ? と問うマーティンに対し、若い弁護士を育てるのではなく、本当は自分が弁護士になりたかったのだと強い口調で本音を伝えるのでした。
そんな彼女の思いを知り、マーティンはある判例を差し出します。原告は男性。実母の介護費用の税控除が男性だからという理由だけで却下されたのです。
男性であっても性差別は同じ。ルースは裁判所にこの法律を憲法違反だと認めさせたら、法律上の性差別を認めた先例になると考えます。
性差別のシステムを崩せると確信したルースは、地方法廷で負けている裁判の上訴をするために、原告を説得しに向かいます。
原告とともに闘うことを決めたルースは、自分とマーティンだけでは信頼されないのではと「アメリカ自由人権協会」に所属する旧友のメル・ウルフや、かつて女性の権利のために闘ってきた女性弁護士のドロシー・ケニオンに協力を仰ぎます。
少しでも力になってほしいと懇願するルースでしたが、どちらも首は縦に振ってくれませんでした。
ドロシーは判例には興味を持ってくれたものの、「社会が変わらないと法律は変わらない」と法廷で訴えるには時期尚早だと言われてしまいます。
諦めようとするルース。しかし、ドロシーに会いに行った帰りに男性からの暴言に怯まず言い返す娘を見て気づきます。
女性が男性に言い返すだなんて、20年前なら考えられなかったこと。ドロシーは間違っている、社会はもう変わっているのだと実感するのです。
映画『ビリーブ 未来への大逆転』の感想と評価
JFKといえば、ジョン・F・ケネディ大統領。MLKといえば、マーティン・ルーサー・キング。アメリカでは、3つのイニシャルだけで知られている著名人がいます。そして、この作品で描かれたルース・ベイダー・ギンズバーグもその一人。
「RBG」の愛称で親しまれるルースは1970年代から男女平等を求めて闘った女性解放運動のパイオニア的存在。
そして、御年86歳の今も最高裁判事として現役で活躍するいわば法曹界のレジェンドです。そんなあまりにも名高く、存命中でもある人物を演じたフェリシティはさぞかしプレッシャーであっただろうと思います。
しかし、映画を観終わるとそんな心配もなんのその。大学在学中から法廷で闘うまでとかなり年齢にも幅があったのですが、彼女自身が持つ品の良さ、知性やエネルギーなんかが溢れ出ていて見事にルースを演じきっていました。素晴らしかったです。
それを象徴するかのように、歴史的判決となる裁判の法廷で彼女が行う5分32秒にわたるスピーチはまさに圧巻。同じ女性として、「自分も信念を大切に強く生きていこう」とスクリーンを前に武者震いしてしまうほどでした。
そして、忘れてはならないのが夫マーティンの存在。マーティンを演じたアーミー・ハマーと言えば、2017年の映画『君の名前で僕を呼んで』でティモシー・シャラメが恋する大学生ですね。
こちらも素敵だったけど、今回の役もとにかくこんなによくできた旦那さまいるのかしら!? と羨ましさを通り越して驚きでした。
弁護士としてバリバリ働きながら、妻であるルースを全面的にサポートしてくれるのですが、家事はもちろん、彼女が娘と上手くいかない時も間に入って解決してくれるし、最後にはルースの訴訟だって助けてくれる。これが70年代のことって考えると相当すごいですね。
男性の素晴らしいロールモデル的存在でもありました。そういう意味では、女性だけでなく、男性にも観てほしい作品。もしかしたら、カップルや夫婦で観に行くのもいいかもしれませんね!
この作品全体を貫いていたのは、ルースの強い信念や不屈の精神。家族に支えられながら性差別と闘ってきた彼女の生き様は、現代においても、逆境に苦しむ人々に勇気や力を与えてくれるはずです。
まとめ
#MeToo運動などからもわかるように、今は比較的女性が声を上げやすい時代ですが、ルースはそういう道を切り開いてきてくれた一人。
監督を務めたミミ・レダーも、インタビューでは「私が監督になれたもの彼女(ルース)のおかげ」と語っています。
国は違えど、ルースが強い信念と不屈の精神で変えてきた社会を生きる私たちにとってまさに今観るべき作品ではないでしょうか。
また、ルースのドキュメンタリー映画『RBG 最強の85才』も2019年5月10日(金)よりロードショーです。
ぜひこちらも合わせてご覧になってください。