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『盤上の向日葵』映画原作の小説ネタバレあらすじ感想評価。”孤狼の血で人気の柚月裕子”が贈るイチオシの人間ドラマ

  • Writer :
  • 星野しげみ

柚月裕子の小説『盤上の向日葵』が映画化決定!

『孤狼の血』や『朽ちないサクラ』の原作者柚月裕子の将棋士を主人公にしたミステリー小説『盤上の向日葵』。

将棋の世界を背景にしながらも、将棋を知らない読者も多く惹きつけ、2018年本屋大賞第2位となった作品です。

執筆にあたって作者がテーマにしたのは、「光と影」「人間の業」「人生を生き切る」の3つ

「人生の光と影を描いた重厚な人間ドラマ」にほれ込んだ、『君に届け』(2010)『ユリゴコロ』(2017)『隣人X 疑惑の彼女』(2023)の熊澤尚人監督が、自ら脚本を書き上げました。

キャストには、異色の天才棋士・上条に坂口健太郎、上条に大きな影響を与える男・東明役に渡辺謙が抜擢されています。

映画『盤上の向日葵』は、2025年10月31日(金)に全国ロードショー。映画公開に先駆けて、小説『盤上の向日葵』をネタバレありでご紹介します。

小説『盤上の向日葵』の主な登場人物

【上条桂介】
天才将棋士

【東明重慶】
元将棋のアマチュア名人、日本最強とも噂される真剣師

【唐沢光一郎】
子ども時代の桂介に将棋を教えた恩人

【佐野直也】
埼玉県警大宮署轄巡査、事件の捜査にあたる

【石破剛志】
埼玉県県警捜査一課警部舗 事件の捜査にあたる

【上条庸一】
桂介の父親

小説『盤上の向日葵』のあらすじとネタバレ

平成6年8月

白骨化した遺体が埼玉県大宮市天木山の山中から発見されました。

年齢は40~50代の男性。身に付けていた服には刺された跡があり、血液が付着。胸元には将棋の駒が入った駒袋がありました。

殺人事件として、埼玉県警はすぐに捜査本部を立ち上げます。この事件のカギを握るのは、遺体とともに埋葬されていた将棋の駒「初代菊水月作、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒」。値をつければ600万円は下らない名品中の名品です。

捜査にあたった大宮北署地域課の佐野直也巡査は、なぜそんな貴重な駒が遺体と一緒に埋められていたのだろうか?と不思議に思います。

遺体の顔復元は、1カ月以内に完成するそうですが、それまでは遺体の身元がわからず、遺留品となった将棋の駒が犯人に結び付く重要な手掛かりとみた県警は、駒の所有者を捜す捜査班を設置しました。

佐野は無類の将棋好きでした。その点を買われ、佐野は捜査一課の石破剛志警部補と組んで、将棋の駒の捜査をするように命じられます。

「初代菊水月作、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒」は世に7組しかないという名品です。2人は全国に散らばった7作品の持ち主を一つ一つ当たる旅に出ました。

昭和46年1月

長野県諏訪市で元教師の唐沢光一郎は、のんびりとした悠々自適の定年後の老後生活を送っていました。

ある時、唐沢は不用になった古紙から将棋の本を抜き取る新聞配達の少年と出会います。やせ細った汚い身なりの少年は、当時小学三年生の上条桂介でした。

桂介の母・春子は精神を病み、若くして他界。それをきっかけに、味噌作り職人の父・庸一は博打と酒におぼれるようになり、今では桂介に食事すらまともに与えていません。

桂介のことを不憫に思う者は多かったのですが、他人の家庭問題に口を出すのは難しく、庸一に進言しても聞き入れてくれなかったのです。

学校すらろくに行けなかった桂介の唯一の楽しみは、唐沢が古紙として出す将棋の本を見ることだったのです。

唐沢は桂介に日曜日ごとに自宅に来るように言い、桂介に食事を与え、風呂に入らせ、そして将棋を教えました。

将棋に関して並々ならぬ天分を持っているのを唐沢はすぐに見抜きます。唐沢夫婦には子どもがなかったので、夫婦は実の子どものように桂介のことを可愛がりました。

桂介は将棋の天分を持っていたばかりでなく、IQは140という天才でした。教えれば教えるだけ将棋の腕前は上がり、たった2年で自称アマ3段の唐沢と互角に戦えるほど強くなりました。

桂介にプロの資質を感じた唐沢は、考え抜いた末に「桂介を奨励会へ入会させる」という大きな決断を下します。

奨励会とはプロ棋士を養成するための専門組織で、プロ棋士になるのは東大に合格するより難しいと言われています。また、その経済的負担も大きいものでした。

唐沢は一切の金銭的負担を引き受けてでも、桂介を奨励会に入れるべきだと思ったのです。桂介は自分の未来を見つめ承諾しますが、問題は桂介の父・庸一でした。

庸一は桂介の新聞配達のバイト代までギャンブルに使っていました。ろくに桂介の面倒もみずに暴力をふるい、そのうえ金を稼いでくる桂介を手放したくないのです。

庸一のクズさに腹を立てた唐沢。ついに「桂介を養子にする」と言い放ちます。喜んだ桂介ですが、「俺をひとりぼっちにしてよぉ……」と急に泣き出した庸一を憐れみ、唐沢の好意を断りました。

その日を境に、桂介は唐沢の家に来なくなりました。

昭和55年10月

桂介が東京大学に入学してから半年が経ちます。天才の桂介は懸命に勉強し、東京大学へ入学。相変わらず飲んだくれ、ギャンブルに明け暮れる庸一に、東大に入ると良い会社に就職できて金が稼げるからと説得して、実家を出ました。

故郷を離れる前に恩人である唐沢に桂介は挨拶に行きました。唐沢はその時、餞別の意味を込めて、自分が大枚をはたいて手に入れた「初代菊水月作、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒」を、桂介にプレゼントしました。

東京に出て来た桂介は、奨学金をもらい、塾のアルバイトで細々と生計をたてています。ある日、いつもと違う帰り道を歩き、懐かしい音につられてそこにあった将棋道場に足を踏み入れ、東明重慶という男に出会います。

東明重慶は、元アマ名人にして、日本最強とも噂される真剣師(賭け将棋を生業とする人)でした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『盤上の向日葵』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『盤上の向日葵』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

昭和56年2月

東北の地で、人知れず世紀の名勝負が繰り広げられました。東明vs東北最強の真剣師・元治です。一局のかけ金は100万円。それを7局行います。

プロのタイトル戦に勝るとも劣らない大一番の席に、東明に「駒を貸せ」と頼まれた桂介もその場にいます。

上京するとき、唐沢から餞別として贈られた「初代菊水月作、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒」は桂介の宝物でした。誰にも教えなかったのに、知り合ってすぐに酔いつぶれて桂介の下宿に泊まった東明にその存在を知られてしまったのです。

実父同様にクズっぽいものを持っている東明ですが、将棋の勝負士としての実力は一級品。駒を預けたくない気持ちと、東明の将棋を間近で見たい気持ちがせめぎ合い、結局桂介は東明の同行者となりました。

東明は最初の1戦で負けたあと、桂介の初代菊水月を担保に、勝負の立会人である角舘銀次郎から400万円を借りました。

6勝1敗で500万円。初代菊水月を質に入れた金が400万円で、合わせて900万円。東明は桂介の初代菊水月を犠牲にして、勝ち金を手にそのまま逃げました。桂介はすぐに東明の計画を察しましたが、すでに手遅れでした。

桂介は今は初代菊水月の所有者となった角舘に「いつか必ず買い戻すから人に売らないでほしい」と懇願し、約束を取り付けます。

昭和61年

桂介は東京大学を卒業し、外資系の企業に就職。丸2年働いて、やっと5年前に金をためて失った駒を買い戻しました。24歳の桂介は、約束を守り駒を売らないでいた角舘には深く感謝をします。

駒をとり戻すと、桂介は勤めていた企業を辞めてソフトウェア会社を立ち上げました。事業は波にのり、2年で年商30億円を達成します。

誰もが桂介のことを‟時代の風雲児”と見ます。ですが、桂介は衝動的に死を想うことが多かったのです。精神を病み亡くなった母親の影響かなと桂介は思っていました。

そんなある日、桂介の成功を知った庸一が会社にやってきました。桂介は庸一に自分の居場所や連絡先を知らせていませんので、9年ぶりの再会となるのですが、庸一はみすぼらしさがさらに増しています。

彼の用件はもちろん金の無心。桂介はこれで最後だと言ってお金を渡しましたが、それ以来、たびたび金の無心に来るようになりました。

桂介が庸一のことで頭を悩ませている、ちょうどその頃、東明重慶も訪ねてきました。こちらは、8年ぶりの再会です。東明はひどく痩せていて、病で先が長くないのだろうと一目でわかりました。

この男も金の無心かと思ったのですが、しかし、東明は一局10万円の賭け将棋を持ちかけました。桂介は即座に断りますが、結局根負けして勝負にのぞみ、桂介の5連敗で終わります。

東明は賭け金の借りを帳消しにする代わりに、誰か殺してほしいやつはいないかと言ってきました。桂介の脳裏に庸一の顔が浮かびましたが、すぐに首をふり、負け金を払いました。

その後も庸一の無心は続き、この1年半で桂介は庸一に600万円以上渡しました。「お前を育ててやったから、当然の権利だ」と言い放つ庸一。ついに桂介は堪忍袋の緒が切れ、庸一に手切れ金を渡して完全に縁を切ることを決意しました。

長野の実家の前で、雀荘帰りの酔っぱらった庸一をつかまえ、「手切れ金を渡す代わりに二度と目の前に現れるな」と、桂介は庸一に迫りますが、油断したすきに金の入ったバッグを持ち逃げされそうになりました。

すぐに追いかけ、庸一を捕まえたのですが、庸一が「赤の他人の子どもを育ててやったってのに」とつぶやいた一言に、桂介は驚きました。

庸一は、桂介は春子の子どもに間違いないけれど、庸一の子どもではないと言うのです。春子の家は島根県で味噌蔵を営む地元の名士でした。美人でよくモテた春子ですが、実の兄・彰浩と愛し合っていました。

庸一が味噌職人として奉公にあがって3年目、庸一が18歳の時のことです。短大に入学した春子の妊娠が発覚し、その10日後に兄・彰浩が自殺をします。

「お腹の子の父親は、まさか彰浩なのでは」と疑いをかけられた春子は、2人の逢瀬を偶然目撃していた庸一と駆け落ちします。春子と庸一は長野県に移り住み、夫婦となってやがて桂介が生まれました。

実は、桂介の本当の父親は、春子の実兄だったのです。春子は桂介の誕生を喜んでいたのですが、桂介は成長するにつれて、亡き彰浩にそっくりになってきます。

そんな桂介を見るにつれ、春子は精神に変調をきたし、やがて完全に精神を病み、若くしてこの世を去りました。

地元の名士だった春子の家では、古くから近親婚が多かったと言います。そのせいで頭は良くとも精神を狂わせる人間が多く、まともな最期を迎えた人間はいない家系だったとも。

「いかれた血が、お前にも流れてるのよ」と庸一は言い放ち、金が入ったバッグを手に取ると、逃げ出しました。桂介は自分の出生の秘密を聞かされ、驚きのあまり立ち上がる気力さえ、残っていませんでした。

幼い頃から自覚していた《死への憧れ》の原因が体に流れる《狂った血》にあると知り、また母の病気は自分にあったと知った桂介は、計り知れないショックを受けました。

その反面、自分が父と呼んでいた上条庸一から、このような仕打ちをされっぱなしでは、桂介の腹の虫がおさまりません。桂介は決心すると、東明に連絡を取りました。

桂介が東明に「依頼」をしてから半年後(竜昇戦のおよそ2年半前)、東明から桂介に約束は果たしたという電話がかかってきた。

今度は俺の頼みを聞いてほしいからと、東明は車で天木山に連れていってほしいと言いました。そこで初代菊水月を使って将棋を指したいという東明の頼みを、桂介は素直に聞き入れることにします。

再会した東明は、すでに一人では歩けないほど弱っていました。桂介はそんな東明に肩を貸して天木山を登ります。

天木山のふもとには、その昔東明が一番人間らしい人生を送っていた町があったと言います。その町を眺められるところで死にたいと東明は言いました。

勝負一局のかけは、東明が勝ったら、東明を殺してこの場所に埋めること。桂介が勝ったら、東明のことはほっておいて、このまま山を下りろというものでした。

一進一退の攻防が続き、勝負は終盤戦。幽鬼のような気迫を感じさせる東明が放った一手は「二歩」。最後の勝負は反則負けです。

大の字に倒れ込んだ東明。近づいて肩を抱き起こす桂介に、「お前はプロになれ。お前ならなれる」と言いました。言い終わると東明は隠し持っていた匕首を抜き、腹に突き立てて絶命しました。

ひとりその場に残された桂介はひたすら土を掘り返し、遺体を埋葬できるくらいの穴を掘ると、亡骸をそこに横たえました。桂介は「初代菊水月作、錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒」を磨いて駒袋に入れると、遺体の胸に抱かせました。

金にがめついろくでなしであり、超一流の真剣師でもある東明への香典のつもりです。「地獄でも、この駒さえあれば、何とかするだろう。この男なら」という思いからでした。

平成6年12月

山中で男の遺体が発見されてから4カ月後、将棋界最高峰のタイトル戦「竜昇戦」が行われました。戦うのは、将棋界でいま最も注目されている2人の棋士です。

7つあるプロ将棋のタイトルのうち6冠を保持している、24歳の正統派の天才・壬生芳樹。対するのは、将棋の名門奨励会を経ず、実業界から転身して特例でプロになった東大卒のエリート棋士・33歳の上条桂介でした。

東明との別れの後、桂介はプロ棋士になり、将棋界最高峰のタイトル「竜昇戦」を戦っていました。勝負は3勝3敗で最終戦にもつれこみ、最終局面を迎えていました。

将棋を指していると、桂介はよく小さな向日葵の幻影を見ます。向日葵は亡き母の好きだった花。母への思慕が幻影となるのかと、桂介は思っていました。

その幻影はすーっと消えていくのですが、いつも1カ所だけ向日葵の残像が消えないマス目がありました。向日葵が次に指すべき一手を示しているのです。

対局はお互いに数十手先を読み合う難解な盤面で持ち時間を使い切り、状況は互角。この桂介の一手で、すべてが決まります。桂介は向日葵の幻影を待ちますが、いくら願っても向日葵の幻影は現れません。

桂介は直感に従って駒を動かしましたが、「二歩」を指してしまいます。それは、初心者にありがちな、反則負けでした。

竜昇戦の最終戦に相応しくない反則負けをした桂介は、翌日の朝、誰にも見られることなく始発の東京行き新幹線に乗りました。

そんな桂介をこっそりと見張る影が2つ。埼玉県警の石破剛志刑事と、大宮北署の佐野直也刑事です。2人は天木山で発見された白骨遺体の謎追うため、初代菊水月の持ち主を追いました。

7組ある駒の持ち主は、2組が天童市将棋資料館と御蔵島美術館にあり、あと2組の存在も確認しています。残り3組。徐々に確認をすすめ、最後の駒が仙台の佐々木商店にあることを突き止めました。

そこへ赴いて駒を確かめると、それは初代の駒ではなく、二代目の駒でした。店の記録を遡り、初代の駒は戦後の食糧難の時期に茨城県の大洞という人物に売られたことが判明。

その後の調べで大洞の持っていた駒は、巡り巡って長野県の唐沢光一郎が購入したことが分かりました。

2人は唐沢に会いに行きますが、唐沢はすでに故人となり、特別養護老人ホームにいるその妻と会います。妻ははっきりと、駒は息子のように思っていた上条桂介に譲ったと証言したのです。

こうしてたどり着いたのが、今や時の人となった上条桂介でした。この頃になると、遺体の頭蓋骨からの顔複元の結果も出て、遺体が東明重慶であることが判明しました。

東明と桂介に繋がりがあることや、桂介がなんらかの形で事件に関わっていることは明らかです。最低でも遺棄の罪状があるのは間違いないとして、令状もすでにとれています。

2人は世間の注目が集まる竜昇戦が終わるまで、じっと桂介の行動を監視していたのです。

東京駅に降り立った桂介は、背後から声をかけられました。「埼玉県警のものですが、天木山山中で見つかった遺体について伺いたいことがあります。大宮北署まで、ご同行願えませんか」。

その時、入線のアナウンスがホームに流れ、上り新幹線が近づいてきたことを知らせます。

桂介はゆっくりと息を吐き、バッグをホームに置き、若い刑事がそれを手にしようと腰をかがめました。そのときを逃さず、桂介は身を躍らせました。

銀色に光る雪が、満開の向日葵にとって代わり、桂介は向日葵へ向かって舞いました。

小説『盤上の向日葵』の感想と評価

山中で発見された遺体とともにあった高価な将棋駒。この遺体は誰で、将棋駒が一緒にあった理由は何か。

1組の高価な将棋駒から刑事たちが事件の真相を探り始め、ストーリーは展開します。実は、事件のキーマンは1人の天才棋士でした。

主人公のキーマン・上条桂介は、貧しい父子家庭で育った薄幸の少年時代に唐沢という恩人のおかげで、将棋への天分が開花させられました。

そのままプロ棋士への道を進めば、上条桂介はまさしく成功者となったのでしょうが、運命は彼に苛酷な試練を与えます。

金への執着心が強く、人間としてどうしようもないクズの2人、父の庸一と元将棋のアマチュア名人の真剣師・東明重明が、桂介の運命を狂わせました

運命に翻弄されながらも、桂介が一筋の希望を見出していたのが‟将棋”です。盤上での真剣勝負に自分の全てをかけて挑む桂介。

幼少期の辛いことも哀しいことも忘れて打ち込むことのできる将棋は、彼の唯一の生きていることの証明だったのでしょう。

そんな彼の恩人といえる唐沢から譲り受けた将棋の駒「初代菊水月作」が、彼の人生を見届けます。

稀有な人生をおくったとしか言えない桂介の物語は、「人生の光と影」を強烈なインパクトで描き出す、重厚な人間ドラマでした。

映画『盤上の向日葵』の見どころ

柚月裕子原作小説は、将棋の天才の数奇な半生を描いています。

本作に深い感銘を受けた熊澤尚人監督は、高価な将棋の駒を死体と一緒に何故埋めたのかという謎を解くだけに終わらず、親子の葛藤と人間の業、人生の光と影を描いた重厚な人間ドラマとして大変面白く、映画化したいと思ったと語ります。

桂介を演じる坂口は本作について「年齢を重ねて、自分の見え方が多少なりとも変わってきたんだなということをあらためて確信した作品」と言います。

一方の東明重明を演じる渡辺謙も「将棋界を描きながら、深い業を背負った男の生き様に心奪われました」と作品の魅力を述べています。

初共演となる2人の俳優の矜持も役どころでぶつかり、一番の見どころと言える2人の対局シーンでは、手に汗握る名勝負を演じてくれることでしょう。

映画『盤上の向日葵』の作品情報

【日本公開】
2025年(日本映画)

【原作】
『盤上の向日葵』(著者・柚月裕子/中央公論新社)

【脚本・監督】
熊澤尚人

【音楽】
富貴晴美

【キャスト】
坂口健太郎、渡辺謙

まとめ


(C)2025映画「盤上の向日葵」製作委員会

柚月裕子原作の小説『盤上の向日葵』をご紹介しました。

主人公の上条桂介は、不運な星のもとに生まれ付いた希有な天才棋士。そんな桂介が出会ったのは、日本最強とも噂される真剣師で元将棋のアマチュア名人の東明重慶です。

東明は金にだらしない人間のクズでしたが、棋士としては誰にも引けを取らない凄腕を持っています。

小説ではこの2人が出会ったことで起こる悲劇を、殺人事件を追う2人の刑事が紐解いていく形で進みますが、果たして映画ではどうなるのでしょう。事件のあらましを知ると、桂介の不幸に胸が痛みます。

一方で、薄幸の天才棋士と日本最強の真剣師との息詰まるような将棋の対局は、這いずりながらも自らの人生をかけた将棋に挑む男たちの真剣勝負を描く重要なシーンでした。

小説でも印象深いこのシーン、映画では坂口健太郎と渡辺謙が演じますから、期待は高まります。

映画『盤上の向日葵』は、2025年10月31日(金)に全国ロードショー。乞うご期待!




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